電波少年・まぐまぐ・情報通貨

誰かが「私はテレビの専門家です」と言ったらどんなイメージを浮かべますか?ディレクターとかプロデューサとか脚本とかテレビ局に出入りする人じゃないかと思います。ひょっとして、テレビの回路を設計する技術者とか想像した人も少しはいるかもしれません。

では、私は「テレビを革新する者です」はどうでしょう?電波少年や月9ドラマを超えるような凄い番組を作っているのかあ、と思いますか?飛び出すテレビとかおりたためるテレビでも開発しているのかあというイメージですか?

じゃ、「インターネットの専門家」「インターネットを革新するもの」というとどういうイメージでしょうか?こちらは、どっちかというとコンピュータとかプログラマーがからんだイメージが強くないでしょうか?

私のイメージでは「テレビの〜」というまくらことばだと、なんとなくギョーカイ系の人が出てきそうで、「インターネットの〜」というとその後ろが同じでも「テレビの〜」より、どうも、プログラマというか真面目な技術者然とした人が出てきそうな気がします。

何が言いたいかというと、テレビというメディアは今コンテンツのレベルまで進化しているけど、インターネットはそうではないということです。「テレビは〜」という方がギョーカイ系のにおいが強いのは、テレビという単語は今は基本的にコンテンツを表すものとして使われていて、インターネットはそうではないということです。

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私は、こういう技術は3段階でとらえるべきだと思います。 まず最初に、インフラストラクチャのレベルがあります。テレビで言うと電波のレベル、インターネットで言うと、IPパケット交換ネットワークのレベルです。一番基礎的な技術で他の全ての元になる部分です。その次がアプリケーションのレベル、つまり、インフラの技術をどのような製品として応用するかというレベルです。電波を利用して、テレビやラジオや携帯電話やポケベルが出来ました。こういう製品がアプリケーションのレベルです。インターネットでは、WEBとかEメールとかです。

インターネットの発展段階はこのアプリケーションのレベルだと思います。基盤となっているIPパケット交換ネットワークという技術はほぼ確立して、その上で実際どんなことが可能か試行錯誤している段階です。ネットゲームとかストリーミングオーディオなど新しいアプリケーションがまだまだいろいろ試されています。

しかし、一方でWEBについてはコンテンツレベルの議論、コンテンツレベルの専門家もボチボチ現れています。はっきり目に見える形としては、ホームページデザイナーという職種が確立しかけていることです。通信の技術とかパソコンのOSとか一切関係なくWEBの可能性というかできることを論じる人も多くなってきています。

しかし、今のコンテンツレベルの議論というのは、全く他のメディアの方法論をそのまま持ち込んだ状態ではないでしょうか。テレビで言えば、アナウンサーがそのままニュースを読む(ラジオの論理)とか、生でカメラワークの工夫がないドラマ(舞台演劇の論理)というレベルだと思います。

本来のテレビとしてのコンテンツとは何かというと、例えば電波少年、月9ドラマ、スマスマと言った所でしょうか。他のメディアから持ち込んだものでもないし、他のメディアに応用できない、まさにテレビ的でテレビでしかありえない、そしてテレビのよさを最も生かしたコンテンツ。私の独断で言えば「おれたちひょうきん族」→「元気が出るテレビ」→「電波少年」という流れが、こういうテレビでしかありえないコンテンツを切り開いてきたように思えます。

今のWEBは、こういうレベルでWEBの特性を生かしたものとはとても言えません。それなりに面白いものはたくさんありますが、基本的に雑誌や新聞、テレビの論理を借りてきて作られたコンテンツがほとんどで、インタラクティブとか言ってもとってつけたようなインタラクティブです。本当にWEBの特性を理解して、WEBでしかありえないようなインタラクティブなコンテンツというのはなかなかありません。

私の目から見て、このようなコンテンツとして評価できるサイト、デザインがいいとか、読むのが面白いという他のメディアの評価基準でなく、WEBのコンテンツとして評価できるサイトは2つだけです。

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一つ目はまぐまぐ、メールマガジンの発行サイトです。このサイトは、本当の意味でインタラクティブ性を生かしています。インタラクティブということは、ユーザが情報提供者になりうることで、このサイトでは、自分が情報を作ったり発掘したりしないで、振り分けるだけです。それも、雑誌がいうような意味での編集でなく、提供された情報をそのままユーザに届けるだけです。まさに、インターネットでしかできないコンテンツです。

HotWiredにまぐまぐの主催者のインタビューが出ていて、驚いたことにこの人、こういうことをかなり意識してやっているのですね。だいたい、こういう人は本能的に動いて、理論は他の人がつけるものですが、この人は自分でやっていることに対して非常に鋭い解説をしています。

このコンセプトを掲げるだけでも凄いけど、それをきちっと実現して採算も取るっていうのは神業です。「俯瞰したときにシステム自身が情報を整理/収集しているように見える」というのは、インターネットでしかありえないコンセプトを最も見事に表す言葉かもしれません。

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そして、こういうコンセプトを実現しそうなもうひとつのサイトが、ExpertsExchangeです。このサイトは、いわば生きたFAQを作るサイトです。と言っても、パット見はただの掲示板とか会議室のたぐいと同じです。プログラミングやコンピュータを中心に会議室のような部屋がテーマ別に分かれていて、自分の知りたい疑問をユーザが書き込みます。そして、それについて知っているが答えるというだけの仕組みです。

これが独特なのは、「ポイント」という仕組みを導入していることです。このサイトにアクセスするには無料の会員登録をする必要がありますが、登録と同時に200「ポイント」もらえます。そして、質問の答えを見る時にこのポイントを使うのです。質問はポイントを消費せずに見ることができるのですが、どの質問でも答えを見るには10ポイント消費するのです。従って、初期ポイントでは質問に対する回答を20個見たら、それ以上アクセスできなくなります。

では、どうやってポイントを稼ぐのかというと、他人の質問に答えることでポイントを獲得するのです。それも1つの質問に複数の回答があった場合、その中で一番いい回答、適切な回答にポイントが割り振られます。回答を選択するのは、最初に質問を出した人です。

これは、単にROMオンリーのメンバーを減らすだけのものかもしれません。このサイトでいろいろ調べたければ、自分も答えを入れなくちゃいけないし、それもちゃんとした答え、質問者にとって役に立つ情報を入れないと、ポイントを稼げません。自然と、普通の掲示板より良質の回答が集まる仕組みになっているのです。

しかし、このサイトの狙いはそれ以上のものがあるような気がします。あちこちにポイント数のランキングが出てくるのです。全体のベスト10、Windows Linux C++と言った技術的なテーマごとのベスト10、そういうランキングがたくさんあるのです。つまり、ポイントを集めてランキング入りするようなユーザを集めようとしているような気がします。

最初に言ったように、ここのポイントは質問者が「なるほど、これは知らなかった。こんな手があるのか、いや〜、こりゃ役にたった」と言わないともらえません。単に数うちゃあたるような要素がないので、かなり難しい、技術的な知識はもちろん、相手の真意を見抜く力、作文、関連資料を提示できる情報力、などいろいろな能力が要求されます。ここのランキングに出てくるようになれば、結構、本物の技術者と言えるかもしれません。

このサイトの真のねらいはここにあるような気がします。人材募集の条件に、「求む、Linux技術者。ExpertsExchageのポイント10000以上」みたいな広告が出てくるような権威みたいなものです。あるいは「ボーイブレンド募集!身長180cm以上で、20000ポイント以上、かつポルシェにのっている人」とか(笑)

とにかく、ここのポイントをたくさん持っていることが、名誉であり権威になるような状況を起こしたいのではないか。そうなれば、プログラマたちは争って、回答を出してポイント稼ぎに必死になるので、よりこのサイトの有用性も高まるわけです。そして、有用なFAQサイト(質問数が多くて、そのどれにも適切な回答があるサイト)に自然と進化していくわけです。

こういうふうに、自分で手を下さないで、ユーザ同士が情報提供しあうような状況を作りだすというのが、ひとつのWEBらしいコンテンツの条件であるような気がします。

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さらに、私はこのサイト(またはその追随者)は次のように発展していくのではないかと思います。

まず、当然の帰結としてジャンルが広がります。今は、インターネットやプログラミングに関するジャンルが多いのですが、この仕組みは何にでも通じますから、それこそハムスターの飼い方から離婚する時の慰謝料の値切り方まで何でも通じるシステムです。

それと同時にマネをする所が出てくるでしょう。マネをする所は、ポイントの与え方にいろいろ工夫をすると思います。例えば、回答に対して後からそのQ&Aを見た人がさらにポイントを与えられるとか(いい回答は質問した人以外にも役に立つことが多い)。細かいポイントの配分とかを工夫して、よりよい回答と回答者(専門家)集めるようにいろいろ知恵を絞るでしょう。

そして、こういうQ&Aサイトが乱立してくるとどうなるか?ひょっとして、相互のポイントを流通できるようになるかもしれません。Aサイトでポイントを稼いだ強者が、新規に作られたBサイトに入ろうとした時、そこらのぺーぺーと同じ扱いでは面白くない、Aサイトでは「あの伝説のXXさん」として尊敬を集めていて、ポイントがいっぱいあるからどこでも好きなように見られるのに、Bサイトでは全くの新人扱いでは面白くありません。Bサイト側としても、Aサイトでポイントを持っているということは、ノウハウがあることの証明ですから、優遇してこちらへ引き入れたい。どうしたらよいでしょうか?

てっとり早いのは、AサイトのポイントをBサイトに持ってくることです。つまり、AサイトのポイントをBサイトでも通用するようにするわけです。しかし、AサイトのポイントをBサイトに持ってきた時に、A側のポイントを持ったままでは、何となくおかしいですね。A側のポイントからBに変更する操作を何度もやるとBのポイントが無限にたまってしまうので、うまくない。一番いいのは、AのポイントをBのポイントに「両替」するというシステムです。例えば、Aのポイントを1000減らすことで、Bのポイントを500もらえる(Bサイトは新参なので、交換比率が1:2となる)というような仕組みです。

いきなりこれをやったらAが怒るので無理ですが、BがBなりにエキスパートを集めてから相互乗り入れを申し込めば全く成り立たないことではない。ユーザから見て、AとBにそれぞれの良さがあるとしたら、両方コミで使えることがユーザにとって一番便利ですから、インターネットではだいたいそういう方向に流れるものです。

なお、ポイントの交換比率をどう決めるかという問題は、市場原理で運用することができます。つまり、AをBに変えたい人とその逆の人がそれぞれ自分の希望するレートを言って、両方納得できる中間のレートで折り合うわけです。Aの有用性が高まれば、Aのポイントが高くなり、Bが便利だという評判が広まれば今度はBが高くなります。また、システム的にこれができるかどうかは、電子マネーのシステムを流用できます。実際の金にリンクしていない分だけ、保険やリスク管理を手抜きできますから、コスト的に電子マネーより安くなりますので、流用は充分可能です。

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長くなったので、ここでいきなり結論に持ち込みますが、このような「ポイント」が相互に交換可能になっていくと、最終的に全てのポイントが一つ仮想的な通貨になる可能性があると思います。そして、例えばUOの通貨などもこのポイントと相互流用できるようになったりして、さまざまな「ポイント」がこれに収斂していく、すなわち「情報通貨」の出現です。

後2〜3年したら、金を集めるより、この情報通貨を稼ぐことに夢中になる人種が出現するかもしれません。

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