喜多嶋 隆・フィッシングあれこれ

 

 

このページでは、僕らがこだわっている、スポーツ・フィッシングに

ついて、あれこれ書いていきたいと思う。

僕らが、おもにやるのは、トローリング。その光景は、僕の小説

にもよく出てくる。

トローリングの場面を書いていて、難しいのは、ルアーの描写だ。

トローリング用ルアーを説明するのは、とても難しい。そこで、

この機会に、実物を見てもらおうと思う。この写真は、典型的なトローリング・ルアーだ。(ハワイで

創られている、マーリン・マジックという有名なルアーで、僕の船でも、よく使っている)頭の部分は、

レジンというかたい樹脂で、中に貝が入っている。後ろは、スカートと呼ばれ、ゴムでできている。

この、スカートの中に釣り針がセットされるのだ。

昨シーズン、僕らの船では、このマーリン・マジックで、3匹のカジキをヒットさせた。釣り上げたのは

1匹だけだった。カジキがくわえたルアーには、すごいビル(角)のあとが残り、スカートは破れかけていた。

今シーズンは、どんな出会いと闘いが待っているのだろう・・・・・。 (98・4・14)

 

カジキの眼は、悲しいほど、青かった。

僕が、はじめてカジキを釣ったのは、ハワイだった。

ハワイ島・コナ。カジキ釣りの世界的なポイントだ。僕と仲間は、1週間、コナに

滞在して、カジキを狙った。現地のトローリング・ボートを、チャーターした。

ヒットがあったのは、2日目だった。ふいにリールが、鳴った。悲鳴のような音だった。

300メートルほど後方でカジキがジャンプした。船のクルーは、すでに、素早く動いていた。

僕は、ファイティング・チェアーに座り、ハーネスをつけた。

キャプテンもクルーも、一流の人間なので、ファイトは楽だった。僕は、確実に

リールを巻いた。約15分で、カジキは釣り上げられた。ファースト・マーリンなので

船にあげてくれと、キャプテンに声をかけてあったのだ。

船に上げられたカジキは、美しかった。逞しい魚体ももちろんだけれど、

その眼が、美しかった。淡いブルーの瞳が、悲しいほど美しかった。

その姿には、一種の威厳があった。この魚に、多くのアングラーが夢中になる、

その理由がわかった気がした。

ファースト・マーリンを釣り上げて、僕は、充実感に、満たされていた。

しかし、それと同時に、ある不満が、心の中にわき上がってきたことも、事実だった。

それは、ごく単純に言ってしまえば、こういう事かもしれない。

これほど美しく威厳にみちた魚が、自分の命を賭けて闘っているのに、

アングラーである自分は、安全すぎないか・・・。なんのリスクも、

背負っていないではないか・・・。という事なのだ。

 

コナ・ウインドゥに吹かれながら、考えた

船は、コナのハーバーに着いた。僕が釣ったカジキは、岸壁のクレーンで

つり上げられた。そこで、記念写真の撮影ということになる。

僕も、いちおうカジキと並んで、写真におさまった。けれど、その写真の自分は、

あまり嬉しそうな顔をしていない。それは、撮影中にわかっていた。

照れていたのでもなく、緊張していたのでもなく、心の底から喜ぶ気になれなかったのだ。

釣り上げてから時間がたっているので、カジキの体の色は褪せていた。

けれど、眼の色は、そのままだった。悲しいほど美しいブルー・・・。

どんな天才画家でも描けないのではと思わせるほど美しい瞳だった。

僕は、じっと、その瞳を見つめていた。コナ・ウインドゥと呼ばれる、

カラリとした風が、Tシャツのそでを揺らして過ぎる・・・。

船の上でわきあがった思いは、さらに強くなっていた。

これではない。これではない。これではない・・・。

まず荒れることのない海。大きな船。そして、ベテランの船長とクルー。

これでは、カジキと勝負したことにならないではないか。

これほど美しく尊厳に満ちた魚を釣るには、できうる限り、五分五分の勝負を

する・・・それしか、自分を納得させる方法はないだろう。僕は、そう思った。

では、五分五分の勝負とはなんだろう・・・。これは、簡単に答えがでた。

あたりまえのことだ。カジキが命賭けなのだから、こっちも命懸けで釣るのだ。

たとえば、日本でカジキを釣るとしたら、どうだろう・・・。

僕は、自分の船をもって、もう5年たっていた。少しは、日本の海を経験していた。

静かな海面が、1時間たらずで大荒れになる日本の海・・・。

そして、カジキを狙うとなると、片道2時間は走る覚悟がいる。そんな日本の海で

カジキを釣ろうとすれば、半ば命懸けといえるかもしれない。

それでカジキを釣れば自分でも納得がいくかもしれない。

そんなことを、コナの風に吹かれながら、考えていた。頭上では、カジキを釣った

ことを示す青いフラッグが、ハワイ島の乾いた風にはためいていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その後、いろいろあったけれど、僕は29フィートの船で、カジキを釣り始めた。

この4年半で、11本のカジキを釣った。

やはり、日本の海はシケやすく、どれも、楽な釣りではなかった。

命がけとまでは言わないが、かなりハードな体験だった。

そんなカジキ釣果の一部を、紹介してみたいと思う。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2001年8月14日。

房総半島の南端、野島崎沖。

9時35分に、1回目のヒット。約1時間のファイトで、116キロの

ブルー・マーリンを釣る。(写真、右側)

 

12時40分に、2回目のヒット。これも、約1時間のファイトで、

140キロのブルー・マーリンを釣る。(写真、左側)

ルアーはともに片山ルアー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

8月26日、8時25分にヒット!

(場所は、利島近くのウドネダシ。カジキは、推定100キロ)

約20分のファイトで、船に寄せたが、そばには大型のサメ。

カジキの尾から3分の1は、サメに食いちぎられていた。(日本近海では、珍しいこと)

ハーバーで、ギザギザに食われた部分を切り捨てたら、

5分の3という感じになってしまった。

写真でカジキをかかえているのは、アングラーの熊木。

今回も片山ルアー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

9月30日、11時45分、ヒット。

(場所は、房総半島南端・野島崎沖7マイル)

1時間40分のファイトの末、ランディング。(またまた、片山ルアー!)

検量の結果、150キロ・ジャスト。

うちの船で、今シーズン最大となった。

立って、ロッドを持っているのが、アングラー・福浦利幸。

彼にとって、ファースト・マーリンとなった。

前で、しやがんでいる左が、リーダーマンの熊木(クマ)。

右が、ギャフマンの中西(たつさん)。