松本張子

 江戸期より張子が作られていた産地としては三春が大変有名ですが、信州からもごくまれに植物染料が使用された古い張子人形が採集されます。伝世品のほとんどは天神なのですが、福神物、動物物、達磨なども残されているようです。多くの先輩方か、産地を特定すべく長野およびその周辺地域を調査されました。作者は特定できていないようですが、信州郷土人形研究会の調査では餌差町近辺で作成されていたとのことです。以前は伝松本張子天神と呼ばれていましたが、松本の可能性がかなり高いようですので、松本張子として紹介します。

天神

 松本張子といえば何といっても天神です。きわめて特異的な構造をしていて、頭は練物、胴体は薄張りの平べったい張子、飾ってしまうとわからないのですが、頭からのびた長い串が、張子の胴体の内部をと木製の台座の中心にあけられた穴の中を貫通し全体を固定しています。松本押絵も櫛を木製の台座に固定する技法が使われており、松本押絵との関連性が指摘されています。
 高さ20cm前後の作品が多い中、掲載の人形は、高さも台込みで36cmと堂々としており、鋭さと茶目っ気が溶け合った表情も絶妙です。赤は蘇芳と思われる植物染料が使用されています。松本張子天神の最高傑作、調布市郷土博物館の加藤文成氏旧蔵品には及びませんが、大きさ、面相、時代、保存状態、すべてにおいて、第一級の資料ではないでしょうか。