
| ゴーストシップ(2002/米/WB) GHOST SHIP |
| 監督=スティーヴ・ベック 脚本=マーク・ハンロン、ジョン・ポーグ 撮影=ゲール・タッターソール 編集=ロジャー・バートン 音楽=ジョン・フリッツェル キャスティング=ローラ・ケネディ、フィオナ・マクマスター、トム・マクスィーニー プロダクション・デザイン=グラハム・ウォーカー 美術=リチャード・ホブス 装飾=ベヴァリー・ダン 特殊効果=ブライアン・コックス 視覚効果スーパーヴァイザー=デール・デュグイド 製作総指揮=ブルース・バーマン、スティーヴ・リチャーズ 製作=ギルバート・アドラー、ジョエル・シルヴァー、ロバート・ゼメキス ※ダークキャッスル・エンターテインメント製作作品。 出演=ガブリエル・バーン(ショーン・マーフィー船長) ジュリアナ・マグリース(モーリーン・エップス) ロン・エルダード(ドッジ) デズモンド・ハリントン(ジャック・ヘリマン) アイザイア・ワシントン(グリーア) アレックス・ディミトリアデス(サントス) カール・アーバン(マンダー) エミリー・ブロウニング(ケイティ・ハーグロウブ) フランチェスカ・レットンディニ(フランチェスカ) ボブ・ルッジェロ(アントニア・グラーザ号船長) ボリス・バーキク(給仕長) ジャミー・ギッデンズ(航海士) |
| 1962年、船舶の全電化により始まった海上交通のスピード化に乗り遅れたイタリア造船業界は超豪華客船の建造で対抗しようとするが、その第一号となったアントニア・グラーザ号が大西洋上を航行中に失踪するという事件が発生する。 その40年後、アラスカで曳航業を営むマーフィー船長と仲間たちに、北極海で気象調査を行うパイロットのジャックが、ベーリング海を漂う無人船の話を持ってくる。海上漂流物は第一発見者がその所有権を主張することが出来るという海事法の取り決めにより、マーフィーはこの漂流船を手に入れて一儲けを企もうと、仲間を連れてベーリング海へと向う。 ところが、この船こそが、40年前に船上で起きた謎の大量虐殺事件により失踪したアントニア・グラーザ号だったのだ。マーフィーと仲間たちは、船倉で大量の金塊を発見して喜ぶが、この船に秘められた邪悪な罠は、マーフィーたちに容赦なく襲い掛かろうとしていた。 |
| ウィリアム・キャッスル監督作品を次々とリメイクしたダークキャッスル・エンターテインメント初のオリジナル作品。監督は前作『13ゴースト』で非凡な才能を披露したスティーヴ・ベックで、彼は2本の恐怖映画を続けざまに撮ったことになる。しかし、この新作は楽しさと恐ろしさが混在していた前作とはまた異なった、本格的なゴシックホラーになっていて、次々と手練手管を繰り出すさまは、この監督の器用さを強烈に印象づける。 マリー・セレスト号を髣髴とさせる幽霊船の物語である。作中にもマリー・セレスト号の事件に言及する場面がある。非常にオーソドックスな恐怖映画のパターンを、荒っぽい海の男たちの物語の中で咀嚼していて(この海の男たち、男たちの中に一人これまた男勝りな女がいるという図式は『雷鳴の湾』や『パーフェクト・ストーム』から受け継がれているものだ)、前作の『13ゴースト』が家族ドラマと幽霊屋敷ものを融合させたのと同じように、ジャンルの錯綜が行われている。男勝りの女を中心として結束を固めている男たちの家族が、他に欲望の対象(この映画では金塊)が出来た時に急激に結束を崩していくというパターンも、実に古典的なハリウッド映画そのものだ。スティーヴ・ベックという人は、現代のハリウッドにおいて、ジャンルというものに最も敏感な監督であると思う。 ちょっと残念なのは、監督がおそらく更にジャンルを錯綜させようとフィルム・ノワールのドラマを用意しつつも、それが巧く機能しなかった点である。フランチェスカという船で雇われた歌手を巡るドラマがそれなのだが、彼女が曳航船の乗組員の一人を誘惑し、幻想を見せた後に死に至らしめる場面は、幽霊船のラウンジが一瞬にして豪奢なパーティー会場になったり、何よりフランチェスカ役の女優フランチェスカ・レットンディニが着る不吉な赤いドレスがノワールな物語を期待させたりと、その後に来る破滅のドラマを予感させるだけに、彼女がファム・ファタール(宿命の女)になる経緯がスピードの速いフラッシュバックで処理されたのは少しがっかりしてしまった。まあ、時間的にこのような処理をしなければ映画がまとまらないというのは良く理解できるのだけれど、逆に少し欲張りすぎたような嫌いも感じられるのだ。ただ、金塊と同じく、海の男たちの結束を乱す要素としては、このドラマは実に巧く機能しているんだけれど。 死神がノルマ達成のため(?)、自ら大量虐殺を計画・実行し、殺された人間の霊魂を船に閉じ込めていたという結末の謎解きも、まあ、ちょっと突飛な気がした。不本意に閉じ込められた魂の解放という点では、『13ゴースト』からの流れを作っており、スティーヴ・ベックの主題論的なこだわりも感じさせるのだけれど、今回は前作のF・マーリー・エイブラハムのような強烈な個性を持ってこなかった分、少し物語的なインパクトが弱かったように思われる。 『13ゴースト』が偶然の要因も手伝って出来上がった傑作だとすれば、今回はその偶然が抜けた分努力賞程度にしかなっていない。ただ、スティーヴ・ベックの非凡さや独自のスタイルは健在なので、次回作ではまた練りに練った恐怖映画を見せてくれるだろうという期待は持てる。 余談だが、海の怪談やマリー・セレスト号の遭難事件、そしてフィルム・ノワールとの錯綜という作劇法は『マタンゴ』を思い出させる。極限状態に置かれてパニックを起こした乗組員を船倉に閉じ込めたり、古い缶詰を不用意に食べたりするのも『マタンゴ』そっくり。ただ、『マタンゴ』のような退廃的な魅力が欠如しているのは、やはりスティーヴ・ベックの若さに起因するものだと思うが。まあ、恐怖映画を基点にさまざまなジャンルを錯綜させるという点で、スティーヴ・ベックはひょっとしたらアメリカの本多猪四郎になり得るかも知れないけれど。 |
| ★★★☆ |
| 2002/12/31。渋谷パンテオン。 |