合成シャトル試打

2009年10月26日に新聞で人工シャトル(合成シャトル)発売のニュースが流れました。スポーツメーカーのミズノが開発したもので、2010年1月10日から専門店協会で売り出すという内容です。
鳥インフルエンザやSARSといった感染症の懸念や、羽毛の産地である中国の産業構造の変化に伴って良質のシャトルが得られにくくなったことから考え出されたシャトルです。
ミズノのWEBサイトで紹介されているように、「コンポジットフェザーシャトルコックN−300」(N−300)という名前で、コルク部分はそのままに羽毛部分を発泡ポリエチレンで代替したものです。触れ込みでは約3倍長持ちするとのことで中学生の練習用としての需要が見込まれています。値段はオープンですが2300円(12個)程度になるようです。

産経新聞の記事を引用すると
 ミズノは26日、天然羽根に近い弾道を実現した人工羽根のバドミントンシャトルの開発に成功したと発表した。鳥インフルエンザや食習慣の変化などの影響で、ガチョウなど水鳥の羽毛は価格が高騰し、安定供給の観点から人工羽根に期待が集まっていた。来年1月10日に初中級者の練習用から発売を開始し、将来的にはトップレベル用の発売も視野に入れている。

 ミズノは天然羽根シャトルの構造や特性を徹底的に分析。重心位置や空気抵抗を工夫することで、天然の飛行性能に近づけた。素材に発泡ポリエチレンや強化ナイロンを使用することで、天然の3倍近い耐久性も実現した。

 オープン価格を予定しているが、天然より2〜3割安価になる見込み。ミズノは「学校のバドミントン部では、活動費に占めるシャトルの経費の割合が大きい。負担低減と練習環境改善で、競技人口低下に歯止めをかけたい」と意気込んでいる。

今回 専門店協会の高井氏と1個ですが試打する機会がありましたので、レポートを書くことにします。
まず重さを測定すると5.3グラムあります。4番の天然シャトルが5.3グラムですから同じ重さです。
シャトルの羽は天然シャトルが16枚に対して写真でもわかるとおり15枚です。そのぶん1枚の大きさが若干大きいです。素材はいわゆる「発泡スチロール」です。厳密には発泡ポリエチレンですが、一般の感覚では発泡スチロールといっていいでしょう。内部に軸が入っているので2枚を圧着して作っているようで強度を維持するのと相まって分厚いです。
軸はいわゆるプラスチックです。かがっている糸もナイロン糸であることはわかります。また最大の特徴は 羽毛部分にある3目の糸です。羽毛部に2個の穴を開け「の」の字に羽毛軸を通って一周しています。ミズノのサイトでは交錯防止糸と書かれています。写真でもわかるとおりコルク部分に「M」のミズノのシールはありません。
1月に発売されるとき、この形で出てくるかどうかは未定ですのでこれ以上確実なことは言えません。

何も知らずに初めて見る人は、最初は何も考えずに手にとって「え? 何これ?」という感覚でシャトルを見ます。遠くからみて人工シャトルとは判別できません。
実際に打ってみると感覚の違いに気がつきます。
多くの人が感じる感覚は、音が違うということです。フライトに関係なく打球音が低いです。ロブを上げたりするとスウィートスポットに当てないと「ボコ」っという音になります。「カン」というシャトル独特に音ではありません。
次に感じるのは「重い」か「軽い」かという点ですが、音だけ聞けば「重い」と感じる人が多いです。しかし飛距離をみるとそれほど変わらず、むしろよく飛ぶと感じる人も多いです。周囲の温度を考えれば現在のスピードナンバーは4番というところでしょうが、番号表示が無いのでこのシャトルがどのようなスピード番号だかは判りません。重さが同じであれば5.3グラムなら4番でしょう。

ドロップ、ロブ、ヘアピンのあとハイクリアを打っていると羽根が1枚折れました。(写真右)
交錯防止糸のおかげで散ることはありませんが、これが後にどのようになるのかは少し不安になりました。中学生の練習球として発売するのであれば、羽根が1本くらい折れたシャトルは基礎打用に使用されて、そのうちノック球になります。このとき折れた羽根がブラブラしているのは1枚くらいならよくても何枚もあれば明らかに使い物になりません。羽根は散ったほうがよいこともあるのです。
その後も打ち続けましたが折れるのは必ず、交錯防止糸より内側です。
天然シャトルのフライトに近づけることを優先すれば確かに交錯防止糸をつけるのは意味があるのでしょうが、壊れたシャトルを下級生用に使い回したりノック球にするときにはかえって迷惑なものになってしまう可能性があります。

補修が出来るか試してみました。内側から折れた部分をセロテープを巻いて接着しました。すこしバランスが崩れるかとも思いましたがそれほどでもありません。何度か打っているとセロテープがはがれてきました。

社会人チームの女性に渡したところ、1回打って即却下「これは使えません」という回答もありました。現在のところ微妙です。3倍長持ちで2300円なら買いですが、それで上達しなければ無意味なものになってしまいます。しかし将来的に公認球として認可され公式大会で使用されるようになれば、それようの対策も考えないといけません。ナイロン球にはナイロン球の戦術があるように、人工球には人工球の戦術が出現するかもしれません。
普及には時間がかかるかもしれませんが、オリンピックや全英オープンやジャパンオープンなどの大会で使用されるようになれば一流選手が使いますからそのときには爆発的に売れるでしょう。開発力や販売力より政治力になるはずです。オリンピックなら「エコ」を売り物にできるかもしれません。本物をどちらにするかの問題で、天然羽毛が「本物」である限り所詮「似たもの」でしかないのです。

今回の人工球はパイオニアですから、まだまだ進化の余地があるとは考えます。特許権などもあるのかもしれませんが多くのメーカーが参入してよりよいシャトルを安く提供してもらえればプレイヤーとしては文句の付けようがありません。

2009.11.14

その後の合成シャトル

2010年1月にミズノから NS300という商品名で発売されました。 ケースにはCOMPOSITE FEATHER SHUTTLECOK と書いてあり、スピードナンバー2〜6番までがあるようです。
当初 購入予定はなかったものの、中学の先生から「長持ちする」という評判を聞き購入を決めました。今回は4番を10本23000円(1本2300円)で購入しました。主に高校生初心者の練習用を想定しています。値段は少し高めですが、長持ちするという言葉を信じて購入しました。
筒が太く、他のシャトルと同じ筒には入りません。無理に入れると変形します。

ショップでの評判は「お金持ちのところでは評判は良くはないが、シャトル代に困っている学校の評判は良い」ということなので、昨年秋に感じた打球感の違和感は残っているものの耐久性はあるのだろうと感じました。また試作品よりはずいぶん改良されているともききました。

実際に打ってみた感想ですが、たしかに耐久性は向上しています。試作品にあった、かがり糸より内側で折れるということがほとんど無くなりました。写真を見ればわかるのですが、羽の先端部分から減っていきます。
初心者のゲームでは問題なく使え、1ゲームくらいでは原形が壊れず残っていてまだまだ使える印象です。水鳥球よりは明らかに長持ちします。2倍以上の耐久性はあります。

社会人の上級者や中級程度の高校生(女子)に使用させると印象は変わります。評判は良くありません。
「クリアを打つと稲妻のように曲がる」「軽すぎる」「スマッシュが伸びすぎる」「ガットが切れたかと思うような音がする」「静電気がくる」と悪評たらたらです。基本的に使えそうにないというのが結論ですが、特に打った瞬間フライトがS字状、あるいはZ字状に変化するのが最大の問題点だと感じました。
打球感は慣れればおしまいですが、フライトの変化は微妙なコントロールを乱しかねません。原因は羽根が水鳥に比べて柔らかく変形しやすく復元に時間がかかるからだろうと思います。
カットなどはあまり違和感がないのですが、クリア、スマッシュなどのパワーショットで感じる違和感が無くなれば使えるのだろうと感じます。

できたばかりで改良の余地はたくさんあるのでしょうが、シャトル=水鳥 の概念を覆す商品を発想するという点で今後も改良を加えて完成形にして検定合格品を作り出していただいきたいと考えます。個人的には、こういう商品を開発したミズノに賞賛を贈ります。
写真は中級者が基礎打ちとスマッシュ練習に使った後のNS300 試作品より羽根の千切れ方が優れていてノック球にすることができます。
2010.04.06