Micro stringer 2002 使用記
会社見学

 2002年10月 バドミントンマガジン誌の広告でMicro Stringer 2002というストリングマシンの広告を見つけました。日本製で超軽量・コンパクト・安値・簡単のキャッチフレーズで34800円(税別)とあります。ストリングマシンは重厚というイメージがあるなか、アルミケース込みで2.8kgとは他社の5分の1程度の軽さです。本当にこんなものでガットが張れるのか不思議に思いました。ホームページを見ると「バミントン」とあります。なんだかなぁ とも思いましたが逆に興味もわいてきました。
 広告には製造販売元ので京都生研の所在地は京都府久世郡久御山町とあります。でも誤植かどうかわかりませんが表示が「新荒見」なのに「新荒兄」と間違っています。以前に住んでいた宇治市の隣で土地勘があるため、一度どんなものか会社見学をさせてもらおうと電話をすると快く応じていただきました。

 10月30日 午後から京都生研を訪ねました。開発を担当されたお二人のエンジニアに会って話を聞くことができました。会社のプレートにもあるとおり半導体関係の会社でラケットやストリングマシンとは縁もゆかりもない会社ですが、ひょんなことからマシンの製作を始められたようです。構想から開発まで約1年 春に試作機が完成し京都府内の各大会でデモをされたそうです。
 取り出された実機を見て「これは小さい」と感じました。正直言ってラケットホルダーは小さなボルト1本で留まっているだけですから、従来のマシンを見慣れていると限りなく「弱そう」に見えます。しかし売り出すからにはそれなりの耐久性テストはされているのだろうと考えました。とにかく実際に張って見せてくれるというので、もし買うのならノウハウを見ておこうと思い、持ち込んだデジカメでの撮影許可をもらい写しながらデモを見ることにしました。

デモンストレーション

 まずマシンの組立です。ケースから取り出したパーツを組み立てます。実際にはアルミ製のスタンドを蝶ナットで締めるのと、黒いグリップハンドルをねじ込むだけです。次にテンションの調整をします。14〜22の数値が書かれていて、そこに設定リングをスライドさせて合わせるだけです。実際にグリップレバーを引いてみると内部のバネがカチッと小さな音をたてて適性テンション到達を教えてくれます。


 デモラケットとストリングスはアルミフレームのYONEXグラフレックス+強チタン(ゲージ0.70mm)の組み合わせです。縦糸(メイン)の中央から周辺部に向かって張っていくのは普通の機械張りと同じです。違うのは、ラケットホルダーがラケットをネックのところで留めるだけの役目で、ラケットの変形防止の役にはたっていないことです。2個の蝶ナットでホールドします。ガットはセンター部分を事前に通しておかないとホールド後は通せません。このあたりの脱着をユーザーが簡単できるようにするには機構が複雑になりコストがかかるので現在の形になったということです。
 変形防止のためには2点支持のガットフィックスチャーと全く同じ働きをするガイドストッパーが2種類あり、メインガイドストッパーをセンターに2点支持させ、ワイヤー製のサブガイドストッパーをややトップ側(上から13番目の穴)にかけるます。こうすることによって4点支持が実現できています。

 マニュアルに従ってセンターにネジ式クランパー(ストッパーと同じ働きをします)をかけるのですが、お話によればこのクランパーの開発にもっとも手間取ったということです。GOSENのストッパー(洗濯ばさみのような形のもの)と同じようなものは特許法に触れる可能性があること、また最大の問題は洗濯ばさみ形状ではハイテンションの時ガットがすべってしまうことで、この悩みを解消する目的でネジ留め式のクランパーができたというわけです。これでガットを傷つけずしっかりホールドできるのが自慢のようでした。ただし脱着には洗濯ばさみ状のものより時間がかかります。クランパーをメインガイドストッパーに接して使用すると、チャックを外したときガットが元の位置に戻ろうとするのを防ぐことができるので、より正確なテンションを得ることができます。このあたりに開発者のこだわりがあるとみました。その後は一般的な張り方で両サイドまで張り、最後だけは手の力で結び目(ノット)を作ります。


 横糸は下から上に向かって張っていきます。上方にはサブガイドストッパーがあるので下からしか張れません。張る手順は手張り講座にある方法と全く同じです。メインガイドストッパーの手前まで張ればストッパーを外します。このときサブガイドストッパーがあるので変形防止になっているのがミソです。よく考えられていると感じました。サブガイドストッパーの手前まで張ってサブガイドストッパーを外します。あとは手張りと同じ要領です。

 約1時間半ですがいろいろと開発にかかわる話を聞かせてもらいました。お二人ともバドミントンはまったくされないらしく、最初はストリングマシンも見たことがなかったとか。そのなかで必要とされる機能を満たすマシンを一から開発されたようで、他社のマシンは見ると影響されるので参考にされなかったそうです。もし見ていたらユニークな機構を持つこのマシンは多分できなかっただろうとそのとき思いました。すでに縦糸が通っている穴に横糸を通すのに、目打ちを使わずに済む方法として「ガット通し線」なるものを考案されたことで「これは便利と言われる」と話しておられました。テンションゲージは最初デジタルにしようとしたがコスト削減でできなくなったこと、そのかわりゲージにネジをつけ固定できるようにしたことなどの開発秘話を聞かせてもらいました。またインターネットの記事を参考にされたとのことで、集められた資料を見せてもらうと、なんとキャロットクラブの「ラケット・ストリングス」のネタが3本も入っていました。ねこんたの記事が開発に役立っている?ということを知ってちょっと感激です。いろいろなラケット談義をしてきました。というわけで 実機をみて「使える」と踏んで購入を決意しました。その場でアルミケース入りのマシンをゲットしました。

自分で張ってみる

 10月31日 時間がとれたので自分で使ってみることにしました。
まず重さを測ってみます。カタログには本体+キャリングケースで2.8kgとありますが、本体(ガイドストッパー、クランパーを含む)1.6kg、アルミケース0.9kgで2.5kg程度しかありません。はっきりいって軽いです。ちなみに ST−200は約14kgありますからケース込みで5分の1以下の重さです。

 組み立てて昨日見たのと同じ方法でガットを張ってみることにしました。テンションメーターでテンションゲージの精度を測定しましたがほぼ適性テンションが出ています。グラパワー110ロング+GOSEN BS318(ゲージ0.68mm)です。テンションは22にセットしました。
 GOSENのラケットはハトメの穴がトップから13番目にかけるサブガイドストッパーに合わないので、ちょっと無理に通しましたが、ラケットが痛むほどではなさそうです。メインガイドストッパーは問題なく通ります。さっそくガットを通してみました。
 ところがなぜか上手くできません。いきなり縦糸のところで困ってしまいました。しっかりチャックをホールドしてレバーを引くと 引きしろが足りません。ST-200のようなマシンでも最初はかなり長く引くのですが、小さな機械では最大に引いても適性テンションに到達しないのです。しばらく考えて、最初に少し引いてクランパーをかけ、さらにそこからもう一度引くことによって適性テンションを得ることができました。とくにセンター付近はガットが長いので最初に手で引きガットのたるみを取っておかないと、ハイテンションでは引きしろ不足になりそうです。

 クランパーをかけた後は、チャックを解放してからグリップハンドルのストッパーを外す方が自然のように感じます。逆順だと一気にグリップハンドルが戻って歯車が痛みそうです。ところがチャックを解放するためのレバーが長いため(あるいはチャックを含めたラケットの水平位置が低い)ためアルミスタンドと干渉して完全解放できないときがあります。このあたり改良の余地があるようです。
 最初はすこし悩んだりしましたが、縦糸については問題なく張れます。

 横糸はどうでしょう? 他社のがっしりしたマシンとは違い、ラケットがネックのとことで留まっているだけ、さらにホルダー自信が中央のボルト一個で回転する機構なので、横糸を通すときグラグラしてなんだか不安定です。鉄板の厚さは問題ありませんが、ボルトにもうすこし頑丈そうに見える物を使えば安心感が増すと思いますので、今後この部分だけ自分で取り替えるかもしれません。
 張り始めてから小一時間かかって張り上がりました。張り心地については満足できるものです。


 11月1日 2本目を体育館に持ち込んでYONEX MP-80+強チタンで張ってみました。床にへたり込んでやってみると、最初のガイドストッパーや縦糸をセットするのに時間がかかります。手が入りにくく下からかけるクランパーなどのパーツが着脱しにくいのです。やはりもう少し(数センチメートル程度)ラケットホルダーを高くして欲しいと思いました。ただしそうすると現行のケースには収まりません。また他のマシンと違いグリップハンドルを手前に引くのが張りやすいのですが、引いたとき全体が浮き上がってしまいます。重さ不足ですが、これは軽いというマシンの性格上仕方のない事でしょう。

 使った全体の感想を言えば、あまり過大に期待するのは良くないが、値段と軽さを考えれば充分使えると感じました。マシンの性格からみてアマチュアのパーソナルな使用なら問題なしです。手張りと機械張りの中間のイメージで「正しいテンションで張れる手張り工具」といった趣です。マニュアルも45ページの見やすいものが付いています。これからは体育館に持ち込んで試合中に切れたガットを張るといったことができそうです。


写真説明 上から 京都生研のプレート、縦糸を張り始め(デモ)、張り終わり間近(デモ)、ケースを開けたところ、本体にラケットをホールドした状態、テンションゲージ

2002.11.2
2002.11.28追補

マイクロストリンガー7

 2005年になりMicro Stringer 2002の後継機としてMicro Stringer 7(マイクロストリンガー7)というマシンがSIONから発売されました。
2005年3月5日 マイクロストリンガー7の開発者とお会いしてモニターマシンを貸与して頂けることになりました。使用記を書きたいと思いますので期待してください。

2005.3.7