Micro stringer 7 使用記

 2005年3月5日 SIONの中根様からマイクロストリンガー7(MicroStringer-7:MS7)の供与を受けました。自由に使用してレポートを書くという約束です。
 この製品に関しては、国際特許が成立していて他社が類似品を製作・販売することはできないそうです。

 供与後2週間経ち、現時点で使用記を書くことにしました。特に以前のマイクロストリンガー2002(MS-2002)との変更点などを中心に他のストリングマシンとの比較をすることにします。
組み立て

 箱は以前の金属製とは異なりプラスチックケースです。コスト削減という意味と、ユーザーから中身のみでよいとの意見があったことが、プラケースになった理由だそうです。
 箱を開けると中にプチプチにくるまれたパーツが入っています。持ち運びにはこれでよいのでしょうが、プチプチが無くても箱の中でパーツが動きにくい方法はないかと考えてしまいました。
 組み立ては簡単です。ボルトを六角レンチで締めこむだけです。基本的にはマニュアルを見なくても上下を間違えなければ1分でできます。気になるのはボルトがMS-2002では蝶ネジで抜けませんでしたが、これは完全に抜いてしまわないと分解できないことです。コンパクトな分、自宅に置いておくのではなく持ち運んで何度も組み立て・分解をするような使い方を想定しているのであれば、ボルトやレンチを紛失すると使えなくなりますから。小さなパーツ数はできるだけ少なくするようにしたほうがいいと思います。以前の脱着しなくてもいい蝶ネジに戻して欲しいところです。
 マニュアル(取扱説明書)に1枚でもカラー写真があれば、どのパーツをどこへ取り付けるのか分かりやすいところでしょう。

セッティング

 ラケットをラケットホルダーにセットします。マニュアルではラケットホルダーにセットしたあとでガイドストッパーをかけると書いてありますが、事前にガイドストッパーをはめ込んでおいた方が楽かもしれません。
 最初に4点で留めるガイドストッパー(フィックスチャー)にはめ込みます。MS-2002がグロメットの穴に通すものであったのに対して、V字型に挟み込む形になっているのでグロメットの穴を痛めないこやと、穴の大きさで通りにくいといった欠点はなくなりました。両サイドにバネが付いていて横糸(クロス)を張ってラケットが縦方向に伸びたときの脱落防止になっています。ガイドストッパーは軽量な本製品のなかでは重量感があります。ただ六角柱の棒よりは平板のほうがネジは留めやすいと感じましたが大きな問題点ではありません。むしろ頑丈さがが好まれるのかもしれません。はめ込んだあとネジ留めしますが、バネによって縦長になる心配があったのですが、多少横長になるくらいがいいかもしれません。  なおマニュアル14頁と15頁にはMS-2002の図が描かれていて、ガイドストッパーの図が異なっています。早急に改善を求めたいところです。
 この時点でガットをセンター2本だけ通しておきます。 次に白いプレスチック製のネジをはずしてラケットホルダー(回転ステージ)にセットします。これで6点支持ができます。
 よくみればマニュアルにも書いてあるのですが、固定ピラー部分にラケットのトップを固定します。最初に上下逆にセットしていましたがそれには理由があります。マニュアルにある写真と実物では少しですが違いがあったからです。写真では可動式ピラー部分の白いネジ位置が外側になっていますがマニュアルでは内側になっています。小さな違いのようでどちらでもよさそうなものですが、チャックを絞める黒いバーが白いネジに当たって干渉し強く絞めることができません。これが製品組付のミスかもしれません。ネジが内側に付いていればもう少し強く絞めることができます。
縦張り

 ふだんやっている1本張りをするため10mガット(YONEX 強チタン BG-65Ti レモンイエロー)をラケット長の4倍分だけ左、残りを右に振り分けます。(実際は左半分を3.7倍でカバーしますが、今回は余裕を見て4倍にしました)
 クランパーをかけて動かないようにします。クランパーについては後述します。  さて最初にテンション(張力)をかけて引くことにします。MS-2002では板バネのたわみによって圧力を感知する形式でしたが、MS-7ではガットの伸びによってテンションを決めています。とりあえず22lbs(ポンド)に設定しました。
 22lbsにした理由はマシンのゲージの中心位置が22だったからで、たいていの機械はゲージの中心付近が最も精度がよいであろうことが予測されるからです。また別のマシン(MS-2002やST-200など)で22lbsで張ることが多く、経験上張っている途中や張り上がりの状態を知っているということもあります。

 ここでMS-7の欠点が明らかになります。
 それはテンションゲージです。通常ラケットの縦は約25cmあります。この長さのガットに22lbsのテンションをかけると約3.7cm伸びます。しかし約3.7cmはあくまで目安で、素材や太さ温度などによって伸びる長さは異なります。仮にどのガットでも25cmに対して3.7cm伸びると仮定しても、縦の最も短いところでは13cmしかなく同じテンションで引けば1.9cmしか伸びないはずです。
 このマシンは22lbsにセットすると、つねに同じ引きしろになってしまうので、長いところと短いところではテンションが異なるということになります。これでは同じテンションであるとは言い難いし、慣れない人がクランパーをかけたまま張ると両サイドでは引きすぎてガットが切れる可能性があります。
 実際にやってみると、最初の1本目で明らかにテンションが低いことがわかります。ガットを指で弦のように弾いて音を聞けば、別のマシンで22lbsで張るときより明らかに低音なのです。(強く張れば高音になります)伸びの長さを測ってみると1.8cmしか伸びていません。往復で50cmのガットを1.8cmしか引き延ばさないのですから、22lbsの値が出ているというのは間違いでしょう。
 マニュアルにも、最初の1回は往復で、2回目以降は片道張りと書いてあります。(マニュアル27頁) 往復でも片道でもガットの伸びが同じであるのは、明らかに変です。 22lbsで張っているのではなく、すべて一定の引きしろで張っているのですから、ポンド表示をするのは誤りです。最初に少しガットを手で伸ばして、たるみを取るという作業でどの程度手で伸ばすかで変わってくるようでは使えないのです。しかも片道にすると写真のようにガットが屈折してしまいます。

 アマチュアといえど、自分の設定したテンションで張りたいものです。日本で最も普及しているEAGNAS社のST-200はバネ式マシンに分類されます。最初にバネに一定の圧力をかけておきます。ガットを引く力(テンション)がバネによって設定した圧力を越えた瞬間に爪が外れてストッパーがかかる仕組みになっています。分銅式や電動式でも同じで、テンションを感知しているのですが、MS-7はガットの伸びを測っているだけなので、本当のテンションは最後までわかりません。その点 以前のMS-2002は正確さはともかくとして、あきらかにテンションを検知していましたから十分使えました。(個人的にはかなり正確だと思います)
 ガットを一定の強さで引くことにテンションの意味があるのですから、この部分だけは是非とも改善してもらいたいところです。

ガットにもいろいろな種類があります。直径が0.77mm〜0.66mm、素材もナイロンが主成分ならあまりかわらないと思いますが、タングステンやオイル入りのガットの伸び率が同じだとも思えないのです。(そういうデータは多分お持ちではないと思います)
クランパー
 クランパーは以前の直方体から円柱形になりました。(左はMS-2002用、右がMS-7用) 実際に使ってみると使いにくいです。理由はとっかかりがなく指が滑ってしまうからです。溝を切るななどの工夫が欲しいと思います。
 GOSENやYONEXの洗濯バサミ形のものは片手で操作できますが、このタイプは必ず両手を使わなければできないので、ガット張り全体の時間がかかる原因です。片手で引きながらクランパーを外すことができれば、テンションロスを解消するのにも役立ちます。(上に書いたように現行ではテンションロスがあるかどうかもわかりませんが・・)
 クランパーをかけた時、写真のように垂直になりません。補助金具の位置を高くすれば解消できるはずですが、ガイドストッパー・補助金具に円柱の一点で当たる現行クランパーより、以前の直方体のほうが線で支えるので安定感があると思います。
 
横張り
 上の記事を書いた時点で、正しいテンションがなにか全く分からなくなりました。これでは横張りは不可能です。自分の目指す張り上がりがイメージできないのです。
 ガットを張るという作業を断念してしまいました。

 テンションにこだわりすぎなのかもしれません。自分で打ちやすく張れればそれでいいのかもしれませんが、マシンとしてテンション表示をする限り数値を信じて張りたいものです。

 この文章は3月12日に書いて、その後マニュアルを読み直し再チャレンジしましたが、上手い方法を思いつくことができず停止したままです。
 3月5日には、開発にかかわる事情や国際特許に関する話、類似品の話などを聞きましたが、ここに書くことは控えておきます。あくまで使用した製品に対する真摯なレポートのつもりです。私自身は是非改良した製品が売れて欲しいと思う次第です。

2005.03.19