ST−200を使ったストリンキング(ガット張り)

イグナス(EAGNAS)のストリングマシンST−200を使ったストリンキング(ガット張り)の例を紹介します。
私自身が張っている1本張りによる方法です。スターティングクランプは使わず、3個のフローティングクランプと目打ち、ニッパ、プライヤーを使います。
ストリンキングにはどれが正解とか誤りというものはありません。自分のラケットや頼まれて友人のラケットを張る程度のホームストリンガーにとって大切なのは張り上がった形が最初のフレームのみの形と同じになっていること。使う本人にとって打球感がよければそれだけで良いと思います。

イグナスは台湾のストリングマシンメーカーで、日本に代理店があるので簡単に購入することができます。国内で販売されている手動式マシンの大半はイグナス製品かそのOEM商品です。多少工作精度などに不安もありましたが、購入して9年使用して今のところ現役で使用しています。慣れると1本20分くらいで張れるようになりますが早いのが良いとは限りません。素早く通すと摩擦でガットのコーティングが剥げたりするので丁寧を心がけるのが良いです。
EAGNAS社の販売サイト

1.準備するもの
 ストリングマシン(ST−200)とツール一式です。ラケットとガットは当然ですね。
 ツールは
 A:ニッパ
 B:プライヤー
 C:スターティングクランプ(今回は使いません)
 D:フローティングクランプ
 E:目打ち
 F:精密ドライバーマイナス
 今回は使いませんが、縦横別グロメットの場合、縦糸が邪魔(ブロックホール)になります。このとき縦糸を押してグロメットを見えるようにする時に使います。角を丸めてラケットを傷つけないようにしてあります。
2.前処理
 必要な長さのガット(ストリングス)を用意します。
 今回使用したラケット(YONEX ARC−ZS)はフレーム面が小さいので、ラケットの長さの12倍(約8.2m)で十分ですが、フレームの大きなものは12.5倍(8.5m)くらいは必要です。市販の1本分のガットは10mですので余裕を持って使えます。
 ニッパで先端を切り、尖らせます。
 通しにくい場所でも先端を尖らせておけば通りやすくなります。
 
3.ガットの長さ調節
 右図のように中央からガットを通し、Aサイド用にラケット長の3.6倍の長さに調節します。ここでフローティングクランプを中央に掛けます。3本分はわかりますが残りの0.6本分はグリップとシャフトの長さです。
 この3.6倍の長さのガットで図のAサイドの縦(メイン)を張ります。
 残りでBサイドの縦とすべての横(クロス)を張ります。
4.テンションの調整
 テンションヘッドに付いているテンションゲージのつまみを回して好みのテンションの数値を選びます。
 今回は28LBS(ポンド)の設定ですが、実際には24LBS程度になっています。ときどきテンションメーターを使って測定しています。
 このゲージは購入時からマイナス3LBS程度でしたが、9年使い込んで現在ではマイナス4くらいになっています。
 他のST−200と同じテンションヘッドを使っているマシンを見たり使ったりしたことがありますが、新品の時でも0〜−3程度の個体差があるようです。ゲージの数値が実際の値を示しているわけではないことは、ネット上で氾濫しているテンションの値がかなりいい加減だということを暗示しています。
5.縦糸(メイン)の張りかた
 ラケットをマシンにセットします。動かないように6点でホールドされています。
 上下2点を入れたとき、1ミリメートルか2ミリメートルほど縦長に変形させると、終わったあと元の形に戻りやすいです。理由はわかりませんが試行錯誤で得た経験的なものです。その後にサイドの4点をホールドします。

 中央にクランプを掛け、Aサイドを張ります。
 2本張ってAサイドが3本になれば、Bサイドに移ります。

 
6.バランスよく張る
 Aサイド→Bサイド→Bサイド→Aサイドの順でフレームにかかる力が均等になり変形しないように左右対称に張っていきます。
 大切なことは、無理な力がラケットにかからないようにすることです。
 私は 中央から数えてA3本→B4本→A5本→B6本となるように張ります。
 張っている途中では、少しテンションを掛けたときクランプを外してやると、すでに張った部分でも緩んでいればもう一度引くことによってテンションロスを減らせます。右手でクランクを回しながら、クラッチが外れて固定される前に左手でクランプを外します。
7.エンドが近づいたら
 Aサイドが張り終わったら、右のようにガットを緩まないようにクランプをずらして2個掛け、元に戻らないようにします。
 ターンテーブルにスイベルクランプが付いているストリングマシンなら1個で十分です。

 
8.ノットの処理(結び目)
 エイトノットという方法でガットを結びます。
 一気にエイトを作るのではなく、一度締めてからもう一度輪を作ってホールドします。
 私は確実にしたいので3回輪を作ります。
 最初の結びかたがわかりにくいので着色してみました。
 1回目のときに内側に手で引いて結び目を引き出し素早く戻すとテンションロスを防げます。
 はみ出た部分はニッパでカットします。
 
9.横糸(クロス)の張りかた
 Bサイドで余ったガットを使って横を張ります。
 特に下から2番と4番目は縦糸の向きと、横糸を通す向きが同じなのでガットが入りにくいです。特に4番目はストリングマシンのアジャスター(固定爪)と重なるので注意が必要です。
 間違ってアジャスターのバネを巻き込んでしまうと悲惨な目に遭いますから気をつけます。
 Aサイドで余らしたガットでグリップ側数本を張るというやり方もありますが、横糸のテンションが不連続になるのでおこないません。
 グリップに近い3本はテンションはそのままで、4本目から1.5LBSテンションを上げます。YONEXの場合は横糸のテンションを10パーセント上げると書いてありますがあえて1.5増にしているのは経験値です。
10.通しにくい場所
 通りにくいときでもグロメットにガットを入れる角度を変えると通りやすい場合があります。斜め上から斜め下に向かって入れがちですが、斜め下から通してみると上手くいくときがあります。
 指でガットを摘めない場合は写真のようにプライヤーで摘んで押し込みます。
 どうしても通らないときは、ガットを傷つけないように目打ちを入れて穴を拡げます。
 少しでも出てくればプライヤーを使って引っ張り出します。ガットが縦糸を回り込んでねじれないように注意します。ねじれそうなら入れ直します。
 この方法はトップに近い場所でも有効です
 縦横のグロメットが別になっているラケットでは、縦糸がグロメットを塞ぐ形(ブロックホール)になる場合は、精密トライバーや目打ちで少しずらせます。ガットやラケットの塗装を傷つけないように気をつけます。
 
11.横糸を編んでいく
 いかにもガットを張っているというようなところで、横糸を縦糸を縫って通していきます。
 上・下を交互に繰り返しますが、間違わないようにします。慣れてくれば指の感覚で覚えてしまいますので、平行に進まず通りやすい斜めに進んで短時間で編むことが出来ます。
 テンションを掛け終わる前にクランプを外し波打ったところを修正すると、テンションロスを最小にすることができます。
12.終わりに近づくと
 横糸も残り2本くらいになると、指が通しにくくなります。
 最後はプライヤーで1本ずつ上下に通しながら終わりまでいきます。
 万が一ガットが少し不足して、テンションヘッドまで届かず引っ張れなくなったら、ST−200の場合はトラックアーム(テンションヘッドが動く横棒)のストッパーになっているボルト(一番上の写真のXの位置)を外せばヘッドをラケットまで近づけることができます。スターティングクランプに追加のガットをはさんで延長するという方法もあります。
 
13.最後です
 余ったガットをニッパで切っておしまいです。
 うまく張れました。
 ストリングマシンから外して、面を手のひらで軽く叩いてなじませます。
 
14.その他
 精密ドライバのマイナスはフレーム内部から横糸を通して外に出すとき、すでにある縦糸が邪魔になって通りにくい時に、外側のガットを押し動かしてグロメットから出やすいようにするのに使います。目打ちでもできますが、このほうが便利です。
 写真のGOSENのフローティングクランプは下に2本角のような突起が出ています。これはガットを通していくうちに直線にならず大きく波打った場合に、この部分を使って修正するものです。テンションを掛け始めてフローティングを外したときに使えばテンションロスを減らすことができます。
 左から イグナス製、GOSEN、イグナス製のフローティングクランプ、イグナスの目打ちです。この目打ちが意外に使えます。
 
15.その他−2
 2010年8月から チームで同じイグナス社製のEasy−3というストリングマシンを使っています。スイベルクランプが1個付いているので、ノットを結ぶときはクランプが1個ですみます。
 スタンドも付けているので作業は楽になりましたが、TV見ながらという自宅での作業はできませんので職場に置いています。
 テンションゲージはほぼ正しい値を示しています。
 私にとってはST−200と同じ使い勝手です。


 電話で品物があるかを確認して堺市の美原にある日本代理店に取りに行きました。山下さんという男性の方と英語を話す台湾人?の女性の方に対応してもらいました。
 マンションの1階が倉庫になっていて、いろいろなストリングマシンが山のように積み上げられていました。機械の調整をしてから出荷するようで、午前11時頃に行きましたが全国各地へ発送準備の整った商品が集配を持ったいる状態でした。大阪在住ですから、送料を考えると実物を見て買ったほうがずっとお得な感じです。ときどき実際に買いに来る人もいるようで、先日も女性客に売ったと言っておられました。
 実はスタンドはH型が欲しかったのですが、X型になってしまいました。販売サイトではH型もあると書いてありましたが、実際には無いそうです。サイトに書いてあったと言うと、あれは日本語が変で内容も誤っていることもあるんで困っているんだが自分では修正できないのでどうしようもない と嘆いておられました。修正できないのがアクセス権限がないということなのか技術がないということなのかまでは聞けませんでした。
 写真は倉庫で奥は写真に写っている範囲より広いです。
 

2010.11.15