ガットの手張り講座

はじめに

 バドミントンをやる人でも、ガットを自分で張れる人の割合はそれほど多くないような気がします。張り方にも幾通りかのやり方(流儀?)があるようで、人によってまたショップによっても少しずつ異なるようです。ここでは私がやっているガットの張り方を紹介します。メーカーが推奨する張り方はありますが、正しい張り方というのはありません。それぞれ工夫して自分の打ちやすいラケットに調整すればよいと思います。

ガットの種類

 一般にガットとよばれる糸の正式な名称はストリングスと言います。ガットとはウシの腸のことで昔はシープとよばれるヒツジの腸とともにストリングスの素材として使用されていたのでこのような俗称が現在まで使われるようになっています。
 いろいろな種類のガットがありますが、最近はマルチフィラメントとよばれる多くの繊維を束ねたものが主流のようです。過去には中空オイル入り、ステンレスワイヤ入りなどがありましたが今はほとんど見かけません。私は主にYONEXのBG65を使っていますが、たまにはGOSENのOG−SHEEP1800Tや1600を使用します。YONEXのBG70は弱いので使いません。(試合の時だけBG70を張るという贅沢な人もたまにはいますが・・・)(写真はヨネックス、アッシャウェイ、ゴーセンのガット)

 メーカーは国内ではYONEX(ヨネックス・旭化成の繊維使用)、GOSEN(ゴーセン・東レの繊維使用)の2社でシェアを独占しています。輸入物ではASHAWAY(アッシャウェイ・デュポンの繊維使用)が有名です。以前はYONEXガットはASHAWAYのOEMでした。
 中学生や高校生の女の子はラケットもガットも色から選ぶ人が多いようです。もちろん好みにもよりますが、最近はピンクや黒を好む人が多いようです。スウィートスポットやらシャフトバランスがどうのとカタログスペックばかり知っている男子とはえらい違いです。

テンション

 テンションというのは、ガットの張りの強さです。ヨネックスのラケットを買うと18ポンドくらいが適正と書いてありますが、このテンションで打っているのは初心者くらいなもので、ほとんどのプレーヤーがより高いテンションに調整しています。これは打球感が向上する(いい音がする)のとスマッシュなどが速くなる(ような気がする?)ためです。ただしテンションが高ければいいというものではありません。高すぎるテンションのラケットは衝撃に弱く寿命を短くします。私は実テンション20〜22ポンドくらいを目安にしています。(日本チャンプの町田選手は30ポンドらしいです・・これは非常に強くよほど上手く張らないとラケットが壊れます)なお、私のテンションに幅があるのは、ラケットの場所によって力の強さを変えているからです。
 外国の一流選手はテンションを20ポンド以下に抑えている人が多いと聞きますが、真偽は定かではありません。なお機械張りの場合でも使用するマシンやストリンガー(張る人)の技量によってテンションは大きく変化します。機械だからテンション一定というのは幻想です。

張り方

 張り方には、機械張りと手張りがあります。ここでは手張りを紹介しますが、私の機械は分銅式のもので1995年に約5万円で購入しました。(販売MOAA EX−600 15〜80ポンドでテニスラケットにも対応 結構頑丈でお買い得でした)その後、分銅式が古くなってきたので、新しくバネ式ストリングマシン EAGNAS ST−200(YONEX ST−200と同じ物)を約4万円で購入しました。バドミントン専用で現在はこれを主に使用しています。また2002年秋に携帯式のMS2002というのを約3万5千円で購入しました。
 手張りの場合、テンションは勘で調整するしかありません。ここでは、実際の試合などで切れたガットをその場で張らねばならないことを想定して、手張りの手順について書いてみます。

必要な道具

 機械張りのとき・・ガット張り機、ストッパー2個以上、ニッパ、精密マイナスドライバ、目打ち(あれば便利だが無くてもよい)
 手張りのとき・・・ガットフィックスチャー、ストッパー2個以上、ニッパ、精密マイナスドライバ、目打ち、巻き棒(巻き取り棒)(写真を見て下さい)


名称

 ガットを張るうえで必要な、ラケットの名称は次の通りです。ハトメ(穴)の位置はシャフトに近い順から勝手に番号をつけました。正式番号があるかもしれませんが知りません。またラケットはYONEX(例外あり)やGOSENのものを用いています、特殊な形状のラケット(プリンス等)ではハトメの位置や数が異なります。

スウィートスポットとは打球感の最も良いところで、インパクトの瞬間の衝撃がシャフトの振動と相殺してグリップに伝わらないところです。一般にシャフトの延長でフレームの下から2/5の位置にあるのが普通です。ラケットを普通に握り、もう片方の拳でフレーム面を軽くたたいてみるとグリップに振動が伝わらないのでわかります。


ラケットの点検

 自分のラケットなら壊しても自己責任ですが、他人のラケットなら壊すと弁償ということにもなりかねません。しかも、最初からキズがあったのに責任をとらされるのもイヤなので、よく点検をしましょう。特にフレームのキズはカーボン繊維が切れていると100%ラケットが壊れます。ガットが完全に張られている状態なら、テンションが高くとも各糸に均等に力が割り振られていますが、張っている途中は一点に力が集中するので壊れやすいのです。
 ラケットの形状でいわゆる厚ラケは力の集中に弱い構造をしているので、よく点検しましょう。メーカ別ではミズノのラケットはずいぶん頑丈です。またカールトンとブリジストンは弱いです。ヨネックスの初級者向けのラケットは柔らかいのでどんどん変形して、いくら締めても強く張ることができません(そのうち壊れます)。ヨネックスやゴーセンの上級モデルはさすがにバランスがとれています。

手順

@ガットの切断
 ガットの小売りは1本用10mのものと、長巻100m、200mのものがあります。どちらにせよ、最初に縦糸を張るので必要な長さ約5mをニッパで切ります。切り口は少し斜めに切るのがコツです。長さが分からないときには、ラケットの長さ(約68〜70cm)を基準に7.5倍すればよいでしょう。(10m巻なら半分にすればいい)

Aガットフィックスチャー
 ガットフィックスチャーをラケットの中心を通るように、19番のハトメを使って横に張ります。これがないと強く締めたときラケットが変形して壊れます。もっともフィックスチャーは2点にしか力を掛けないので、4点で支える機械に比べて強く張ることはできません、どうしても無理な力がかかってしまいがちになりますので気を付けましょう。最近は手に入れにくくなりました。

B縦糸張り1
 ラケットの中心線(シャフトの延長方向)を基準にして、長さが完全に左右等しくなるようにガットを通します。そして最上方にストッパーをかけます
 そのまま左右とも9本までガットを通します。するとガットは9番ハトメから出ているはずです。
このあと9番→10番→27番→26番→12番と通します。(9番→12番→26番→27番→10番でもいいです。11番は通しません)巻棒を使って少しだけ強く(最終テンションの半分くらいの感じ)で片側(A)のガットを閉めます。できたらストッパーをかけて動かないようにします。
 反対側(B)のガットを上と同じ要領で締めていきますが、上の閉め方より若干強めに締めます。中央上にあるストッパーをはずして、そのストッパーを10本目と11本目にかけて留めます。
 Aの側に戻ってBと同じくらいの強さで締めながら、11本目まで通してからストッパーで留めます。この時点で、余っているガット(左右の下の孔から出ている)の長さが同じになるように調整します。長さが同じと言うことは、左右のラケットにかかる力のトータルが等しい(各部分では異なる可能性もあります)ことと同じですから、ラケットの左右による歪みはあまりないはずです。

 この状態ではまだまだ緩いので、さらに強く締めることにします。このときは、中心から外に向かってガットを広げるように伸ばす動作(下の写真を見てね)を、順に繰り返し最後の余りを巻棒で巻き取り、ストッパーをかけます。時々、ギターの弦をつま弾くようにのように音を聞きながら、この作業を繰り返します。左右の同じ部分で音程が異なっていれば、その部分のテンションに差があるので、同じ音程になるよう調整します。このあたり多少の熟練が必要です。(ちょっとしたコツのようなもので、うまく文章にできません)

C縦糸張り2
 この時点で両端にストッパーが付いた状態になっています。ガットの先端が12番の穴から出ているはずです。この先端を内側の穴に通して留めます。
 このあたりは分かりにくいので、下の写真を見て下さい。

 ここだけは力が入りにくいので、一度留めてからガットを持って上方に引き上げ、さっと下ろして強く締まるようにします。できたら、2重に留めて補強します。左右ともできたらストッパーをはずします。

D横糸張り1
 ここで、私は他の方と違う張り方をします。普通は上から下に向かって張るのですが、私は下(グリップに近い方)から上(ラケット先端)に向かって横糸を張ることにしています。以前は上から下に向かうオーソドックスな方法で張っていましたが、機械で張るときはそれでもよいのですが手張りの場合は、上方のテンションが低くなるような感じがします。(あくまで感触です)
 ガットを4.2mに切ります。ラケットの長さのおよそ6倍でいけます。10m巻のガットなら縦糸に約5m使ったので、残りすべてを使います。(余れば後で切ればいいだけです)
 まず、下の6番ハトメの外側からガットを通し、縦糸に絡ませて結び目を作ります。このとき、輪を作って少しくらい強く引いても簡単に抜けにくくするのがコツです。通すのが難しくても6番か8番で結び目を作り開始点にしましょう。奇数番だと通しやすいのですがその分抜けやすくなります。


E横糸張り2
 ガットの先端をニッパで斜めに切断して尖らせておき、通しやすくしておきます。こうして加工した先端を9番に通し、縦糸を交互にくぐらせ編んでいきます。(私は、10番は通しにくいので空白にしておきます(後で飾りを入れたりします)が、強度が不足すると思われる方は10番も通してください。)9、11、12番と3回通してから巻き取り棒を使って締めていきます。1、2回通しただけで締めると結び目がはずれることがあります。下の方はゆるんでいるので、指でガットを引きながら少しずつ強く巻き取ります。


 できあがった部分にはストッパーをかけて緩まないようにします。
 横糸を編むように通して、巻き取り棒を使って締めてからストッパーをかけるという動作を、13番から19番まで繰り返します。このときラケットの状態が最も不安定になっているので、できるだけ短時間でおこなうようにしましょう。ラケットを壊してしまったりするのはこのときが最も多いのです。ギシギシとかピキッと音がするようなら力が強すぎてフレームのカーボン繊維が破断しているので、すぐに張るのをやめましょう。(修理はできません。すでに壊れています)

F横糸張り3
 横糸がガットフィックスチャーの手前まで張れたら、フィックスチャーを緩めて取り外します。フィックスチャーが少し浮いている程度になっているのが理想的です。フィックスチャーを取り外すときも力が大きく変化する事があるので注意が必要です。ストッパーがはずれることあるので、安全のために2個ともかけておきます。


G横糸張り4
 残った部分を順に張り上げていきます。一般にラケットは先端ほどフレームが細くなっているので、力加減には注意しますが、ここまでくれば後一息です。ラケットの原形に対して細長くなりすぎないように気をつけます。
 縦糸と横糸を同じ穴に通さなければならなくなります。通りやすい穴と通りにくい穴(26、27、30)があります。通りにくい時には目打ち(千枚通し)を使って穴を少し拡げます。また、ガットの先端が折れて通りにくくなるので、ニッパで少しだけ斜めに切り取って通しやすくするのも良いでしょう。通りにくい穴でも逆方向(ラケットを水平にして縦糸の上から通すか下から通すか)にすれば簡単に通すことができます。
 横糸を20回(10番も張ると21回)張ると、最後は通りにくい穴(30)になるので、ここは1個とばして通りやすい穴(31)に通します。最後に30番に通して玉結びを2回繰り返して横糸張りが終わります。

H最後に
 一応これで完成ですが、張り上げたばかりのラケットは、テンションが場所によってばらついています。スゥィートスポットをヒザなどで軽くたたくか、シャトルを打ってみて安定するのを待ちます。
私のラケットは11番が空いているので、赤や青などのガットを緩く張って飾りにしています。これなら自分のラケットであると確認することができます。

おわりに

 これでガット張り講座はおしまいです。自分でガットが張れるとラケットにも愛着がわきますし、なにより安くつきます。店によって工賃がガット代金の2倍以上もするので、浮いたお金で遊べます。もちろん、初期投資が必要なのでガットを5本以上張ると得をするくらいでしょうか。
 お金に余裕があれば ストリングマシン(ガット張り機)を購入されることをお勧めします。分銅式・バネ式・電動式などがありますが、自宅で自分や仲間のガットを張る程度なら電動式は不要で、分銅式やバネ式で充分です。バドミントン専用なら4万円でおつりがきます。
 私の使っているストリングマシンです。左から分銅式・バネ式・携帯専用機です。分銅式はチームメイトにレンタル中
 ST−200とMS−2002は使用記を書きましたので参考にしてください。

1999.6.27
2001.6.10 補足
2002.11.03 追補