19世紀のバドミントンファッション再現

 バドミントン(badminton)の歴史は18世紀以前までさかのぼれるようです。このことは「バドミントン伝来記念碑の調査」で長崎出島でオランダ人が「ウーラング」とよばれるシャトルを打ち合っていたという記録をご覧ください。18世紀末の「紅毛雑話」とよばれる絵巻物に記述があります。当時インドに進出し植民地化いたオランダやイギリスが、インドの羽根突き遊び「プーナ」(poona)を取り入れ自らも遊んでいたと考えられます。19世紀には在インドのイギリス人が3人対3人のプレーをしている図が残されています。ルールは不明ですが、現在でもトリプルスという試合形式がおこなわれている国も多いです。
ただしイギリスには「バトルドーアンドシャトルコック」(battledore and shuttlecock)という遊びが古くからあり、これがバドミントンの源流になったという説もあります。バトルドーアンドシャトルコックではラケットは卓球のラケットが少し長くなったような形をしていて、ラケットフェイスは木製または布を張ったものになっています。バドミントンのようにストリングスを張ったものではありません。
このように発祥の地は定かではありませんが、インドまたはイギリスのどちらかであることは間違いないようで、インドで発祥した遊びが、当時インドを植民地にしていたオランダ人やイギリス人によって母国や海外の居留地まで伝えられたと考えるのが妥当なようです。

 いずれにせよ「バドミントン」という名前は、イギリスのグロースターシャー州にあるボーフォート公爵の私邸があるバドミントンハウスに由来するものであることは間違いなく、ゲームとしてのバドミントンの歴史は19世紀後半(1873年)に始まったと考えて差し支えないでしょう。インド帰りの将校が公爵のホームパーティの席上でインドでおこなわれていた「プーナ遊び」を再現するためシャンペンボトルのコルクに鳥の羽を刺してテニスラケットで打ち合ったのが最初と言われています。


 当時のバドミントンは貴族の遊びという趣もあり、紳士・淑女のゲームだったようで、現在でも「不品行な行為はフォルト(反則)」というルールがあります。最初のショットである「サービス」も対戦相手に打ちやすい球を供給するという意味から来ています。「違反じゃなければ何でもあり」「審判に見つからないずるがしこいプレーが良い」とされるサッカーなどの庶民のスポーツとは一線を画したルーツが伺えます。プレイヤーは真の意味でレディース&ジェントルマンであることを要求されています。

 さて19世紀終盤のバドミントンファッションはいくつかのサイトで見ることができます。日本では東海女子大学の蘭 和真(あららぎかずま)先生のサイトが最も内容が濃く信頼できます。英国に渡りアンティークショップで19世紀にバドミントングッズや絵画を収集されています。バドミントンアカデミーでおなじみの有田圭一さんのサイトにも当時の絵が掲載されています。またアメリカのハーバード大学のバドミントンサークルのトップにも古い時代のバドミントンウェアが紹介されています。


左:「The Graphic」誌1871.5.13、バトルドーアンドシャトルコック
中:19世紀の写真(いずれも蘭和真氏所蔵)
右:バドミントンマガジン誌の写真(1997.3)


 2004年4月29日にキャロットクラブのインターネットオフ会がおこなわれることになりました。チーム結成から13年、WEBサイト開設5周年になり記念になるイベントをしたいと考えているとき、何げなく取り出した古いバドミントンマガジン誌の記事をみて思いつきました。

 これらをもとに当時にバドミントンファッションを再現することを試みました。蘭先生のサイトにある絵画、バドミントンマガジン誌に掲載された全英オープンで披露されたレプリカを参考に衣装のレプリカを制作しました。特に参考にしたのは服の後ろが見える女性の絵です。もちろん私にそのような才能があるわけもなく、京都府精華町の岸本利子さんに協力を依頼しました。
 存在するのは絵と雑誌の写真のみです。単に衣装を縫うのではなく、絵や写真から想像してこのような構造になっていたのだろうと当たりをつけ、型を起こすのにご苦労されたようです。実際に作ってみても着た人間がシャトルを追って走ったりするものでなければなりません。何度か試行錯誤のすえ写真のようなエプロンドレスが完成しました。多少現代風にアレンジしてますが可愛く仕上がっています。男性の方は現在とあまり変わらないようで、蝶ネクタイにブレザーという現代の衣装を流用することにしました。
 実際に打ってみると、腕の部分は開いていて打ちやすいのですが、やはり裾が邪魔になるようで速い動きはできません。当時の絵画でも女性は左手で裾をつまんでいますので動きにくかったことが想像できます。和服を着て羽子板で羽根突きをするのと似た感覚のようです。あやこ談「これではとても実力が発揮できません。昔はおしとやかなスポーツだったんですね」

 空虚な理論をもてあそんでわかったような話をするより、実験や実証により実際にやってみることでしかわからないということは多いものです。

 この企画は絵画の掲載を許可してくださり、日本にあるものとしては最古と思われる1907年製の貴重なラケット(写真の女性二人が持っています)を貸してくださった東海女子大学の蘭和真先生、衣装の制作に快く応じてくださった岸本利子さん、グッズを貸してくださったバドミントンショップ「ネット・イン」の田主店長さんなど多くの無償の協力が無ければできないものでした。本当に有り難うございました。

 この日は大阪日日新聞社の取材を受け、4月30日付の朝刊に掲載して頂きました。

2004.5.2
2008.4.22加筆


関連サイト
蘭 研究室 バドグッズ、絵画のコレクション多数
BADMINTON HISTORY英語 19世紀の書籍写真など
HICKOK BADMINTION HISTORY英語 19世紀のプレースタイルなど
BADMINTION HISTORY英語 古いラケットの写真など
Battledore and Shuttlecock英語 バドミントンになる前の遊び ルール解説もあり
ケンブリッジ バドミントンクラブ英語 これの訳文がどっかのパクリサイトにあります