ヨネックス社独禁法違反疑惑に対する雑感

 2003年4月3日付の朝日新聞夕刊に「ヨネックスに立ち入り 他社製品排除の疑い」という記事が出ました。
要点は
バドミントンラケットではヨネックス社がシェア8割の独占企業であること。
独占企業の立場を利用して小売店に他社製品を置かないよう圧力を掛けたこと。
圧力の内容は、従わない小売店に出荷停止などのペナルティを設けたこと。
公正取引委員会は圧力の中身を独占禁止法違反と疑って立ち入り検査をしたこと。

です。

 ヨネックスは最初から独占企業だったわけではありません。1970年代まではヨネヤマラケット(ヨネックスの旧社名)、カワサキラケットがシェアを分け合っていて、サンバタ、レッドソン(ヒロウン)、カールトン(英国)などが残りのパイを食い合っていました。またヤマハやミズノ、プロケネックス(ゴーセン)などが参入しシェアを伸ばしていました。カワサキラケットがテニスのデカラケブームに乗り遅れ倒産したのち、ヨネックスがシェアを握りました。ヨネックスはテニスにも参入しナブラチローワ選手と契約しました。彼女が活躍してyyマークの角張ったラケットがテニス界を席巻し、ヨネックスのテニス参入は大成功をおさめたのです。  テニスで得た成功は信用をもたらし、開発費を大量に使うことができ次々と新製品を発表します。カーボネックス8、カーボネックス20は特に良くできたラケットで、多くの一流選手も支持しました。こうしてバドミントン界はいつの間にかヨネックスでなければラケットにあらずの様相になってしまいました。

 近年 バドミントン人口が増えています。そのせいで以前はバドミントン出身の人が経営するラケットショップでもバドミントン用品とテニス用品の両方を置いていたのが、バドミントン専門店として生計がなりたつようになってきています。つまりバドミントン産業というパイが大きくなっています。使える体育館などのインフラ整備が進み日本という社会が不況のなかでも成熟しつつあるのでしょう。
 私の住む大阪市内でもここ15年の間に なみはやドーム、舞洲スポーツアリーナの新築、中央体育館、府立体育館の建て替え、各区にスポーツセンターが新設されコート数は圧倒的に増えました。10年前は13部までしかなかった大阪社会人男子リーグも2002年には21部、女子も5部までだったものが9部まで増えました。

 パイが大きくなれば 独占企業にとってラケットやシャトルの売り上げは当然増えるので良いことだらけのようですが、どうもそうではないようです。近年バドミントン産業に関わる企業が増えてきました。最初はシャトルの通信販売業者です。特に資金不足に悩む学校などにパンフレットを送り安いシャトルを売り込むようになりました。中学校で公式球が合成球(ナイロンシャトル)から水鳥球へ変更されたのも、安い通販シャトルを使う学校が増えたきっかけになったと考えられます。教員間の口コミは素早いのです。それまでヨネックスしか選択枝がなかったところに多くの銘柄のシャトルがあふれかえりました。試合で使う公式球はヨネックスでも大量に消費する練習球は何割も安い中国製で充分なのです。シャトルでは明らかにヨネックスのシェアは低下しています。
 シャトルで儲けた企業の中にはガットやラケットを中国や台湾から輸入販売するところが出てきました。シャトルと違いラケットは試しに買って打ってみるということはなかなかできません。また店売りラケットのミズノやゴーセン、メトロレジャー(=カールトン)といった企業のうちゴーセンは攻勢に出てシェアを伸ばしつつあります。これらの企業がシェアを伸ばしている背景にはインターネットを通してヨネックス以外の選択枝があることを知ったユーザー層が存在するのではと秘かに考えています。
 つまり パイが大きくなったからといって 独占企業が必ずしも恩恵を受けるわけではないのです。確かに売り上げは伸びていたでしょうが、シェアはむしろ低下気味だったのではないかと推察できますし、たとえそうでなくてもその危惧をいだいていたということは間違いないでしょう。

 確かにヨネックスはバドミントン界のガリバーですが、最近のデフレ模様と情報網の発達がバドミントン界を微妙に変化させていると感じます。こうした空気の中で今回の新聞報道が起きたと考えられます。逆に言えば 独禁法違反を公取委が調査し立ち入り調査をしたということは それだけバドミントンがメジャーになってきたということなのかもしれません。小さなパイでは新聞記事にならなかったということです。

 これから書く文章は2008年4月の状況です。
 最初の文章を書いてから5年経ちました。バドミントンの日本での状況は「オグシオ」に代表されるスターの誕生によって認知度はかなり高くなってきたようです。だからといってプレイヤーの総数は微増といったところでしょうか? 5年前から比べるとそれほど状況が変わったとは思えませんが、弱小販売店がネットを中心にジワジワとシェアを伸ばしているようにも見えますが、反面 ヨネックス以外のゴーセンやミズノ、ヒロウン(レッドソン)などは縮小しているように思えます。ラケットについてのヨネックスのガリバー振りは営業努力もあって加速しているように見えます。
 ネット上でのラケット談義も せいぜいバボラや薫風が頑張っている程度で、ラケットの話題はヨネックスオンリーになっています。私個人も初心者に勧めるラケットはヨネックスにしています。他社のラケットでは肩身が狭い と考えるからです。性能や値段ではありません。ブランドというものはこういうところに存在するのだとつくづく感じます。
 逆にシャトルはヨネックス以外の製品のシェアが相当上がったのではないかと推察します。練習球でヨネックスはほとんど見ません。大会球でもシェアは低下しているように見受けられます。中国製のシャトルの品質低下(ガチョウ養殖不況による品不足)と値上げ(中国の人件費上昇・原油高・元切り上げなどが原因とされる)によって、本気で合成球の開発がおこなわれているという話も聞こえてきます。
 ラリーポイントが採用されて2年 バドミントンにとってはターニングポイントになる年ではないかと考えています。

2003.04.04
2008.04.21 追補