【02年 夏山合宿】

中央ア・太田切沢
月日:2002年8月29日〜9月1日
参加者:府川宏、佐宗謙一、早川健司

8月29日(木)

横浜==小田原==大井松田IC==(東名)==御殿場IC==(富士五湖道路)==御坂一宮IC==(中央道)==駒ケ根IC==駒ケ根高原(P)(泊)


 一年前の恋ノ岐川遡上で、渓谷歩きと渓流釣り、河原での焚火など、すっかり沢登りの魅力にハマった府川会長と佐宗が要望し、今回も沢登りを中心とした夏山合宿となった。
 当初は北ア・双六谷の予定だったが、そこはイワナ禁漁との話を聞き、急遽中央ア・太田切沢へ変更した(イワナに関しては、結果は同じだったが。)
 太田切本谷は中央アの盟主・空木岳より東に流れ下り、天竜川へと注ぐ清流である。ガイドブック(『関東周辺沢登りベスト50コース』山と渓谷社)によれば、中級の比較的易しいコースとのことであったのだが...。

 参加者は府川、佐宗に加え、渓流釣りのスペシャリスト早川師匠の3名。横浜を21:00頃出発、小田原経由で、AM1:30駒ケ根IC、駒ケ根高原の黒川平駐車場にはAM2:00には到着し、そこで仮眠を摂った。

8月30日(金)晴れ

駒ケ根高原(P)==(バス)==桧尾橋--太田切沢取水口--梯子沢--二股(泊)

 
 AM6:30起床、7:15発のしらび平行きバスに乗り、桧尾橋にて途中下車。車窓からはニホンカモシカを見かけることが出来た。

 桧尾橋7:50発、ここより太田切沢の入渓場所となる取水管理小屋へ向かう。管理用の整備されたトラバース道だが、数箇所ある隧道の天井が低く、ウドの大木こと佐宗は苦労する。

 30分ほど歩き吊橋を渡り管理小屋に到着。ここから沢に降りるために堰堤を迂回するのにひと苦労する。
 河原に下り、朝食・沢登の支度を済ませ、AM8:50いよいよ入渓。ここからが、いきなりこの谷の核心部・ゴルジュ帯歩きとなる。久振りの沢登りだけに気が引き締まる。

 歩き出して最初の3mナメ滝。ここで、左側の水際を登攀中、佐宗は首から下げたカメラを濡らしてしまう。すぐ確認すると案の定、シャッターが下りない。
 歩き始めてたった5分でこの隊唯一のカメラにアクシデント発生。前回の恋ノ岐に続く失敗(参照)。学習能力のなさに本人含む一同呆れ果てる。
(結局乾くまでの約1日間カメラは使用不能だった)

 


↑太田切沢に入渓。
(さすがにヘルメット姿が似合うドボッカー早川)


 釣りのガイドブックによれば、イワナは途中の雨ダル沢の出合付近より上流にはいないとのこと、ということは最初の1時間しかチャンスが無い。早川師匠、歩きながらも竿を伸ばすが、アタリどころか魚影すら見ることが出来なかった。

 コースは滝つぼに架かった丸太を渡ったり、何度も渡渉することはあったが、特に大きな滝もなく、問題なく進むことができた。
 ただ、一箇所、3m程の高さの岩と岩の間をよじ登る所ではちょっと苦戦した。トップの佐宗は頭の中のイメージではすんなり登れるはずが、腕力が無くて途中でずり落ち、次に早川が佐宗の背中を土台にしてチャレンジするもまた失敗。結局、一度ザックを下ろし、空身でやっと乗り越えることができた。
 この間約5分間、滝つぼの中で腰まで冷たい水に浸かった状態で待たされた府川さんはお気の毒であった。

 そうこうしてるうち、右手に落差50mの梯子タルの滝が見えてきた。この下で一本。幅20mほどの岩盤に水がカーテンのように広がって流れ落ち、見事。この谷のハイライトと言える景観を前に、つくづくカメラ水没→使用不能のドジが悔やまれる。 


おニューのメット、グローブ、ハーネス、スパッツで
いつになく?キマってる府川さん。
 

(しばらく写真はありません。
想像力でお楽しみ下さい...)

 
 その滝を見送り、本谷を進む。1個所、ブッシュの中に入って高巻く所があったが、さして難もなく、ゴルジュ帯を抜けきった。あとは左右から落ちる滝を見物しながらの河原歩き。

 PM2:00頃、ちょっと早いが東熊沢出合(二俣)にて幕営することにした。持参したのは2人用テントとツェルト各1。河原より一段高くなった砂地で、石を取り除けると、最高の「しとね」ができあがった。
 設営の最中、2人組が追い越していった。今回谷の中で見掛けた唯一の別パーティーであった。

 辺りには薪となる流木もフンダンにあったので、盛大な焚火ができた。イワナが釣れない場合の保険?のため持参した土岐さん差し入れの「河豚の猛毒卵巣の味噌漬け」など、つまみ類をごっそりとザックから出し、陽の高いうちから酒盛り開始。ビールに日本酒、ウィスキーと酒が進む。

 清流で洗ったゴクうまソーメンの夕食後、PM7:30シュラフに入る。満天の星をテントの窓から眺め、瀬音を聞きながら眠りに就いた。

8月31日(土)晴れ

二俣--稜線--木曽殿山荘--空木岳--木曽殿山荘


 AM4:40起床。いつも早起きの府川さんは既に朝食の準備にかかっている。今日は沢を詰めて稜線に立つ木曽殿山荘へ、そこから空木岳を往復、さらに4時間ほど歩いた桧尾岳頂上のキャンプ地まで縦走と、約9時間行動の長い行程が予定されている。早々に「けんちんうどん」をかっ込み、テントを撤収。
 AM6:15発。またしばらくはゴーロ歩き。だが、徐々に傾斜が増してくる。1時間も歩くと、行く手にこの沢の遡上の終点・東川岳の南にあるコルが間近に見える。振り返れば宿泊地の二俣の河原、ゴルジュ帯など昨日の道程が見下ろせた。

 

グングン高度を稼ぐ。
振り返れば昨晩停泊した河原もかなり下に見える↑

終点の主稜線も見えてくる。水量も減ってわずかに→


ボロボロのルンゼを登る早川師匠。今回唯一の難場


 やがて、沖熊沢出合付近まで登ると、ついに水流が無くなりかける。ここで水を補給。

 あとは急なルンゼを稜線まで詰めるだけだ。ゴールは近いように思えた。しかし、実はここからが、もう一苦労、二苦労あるのだった。
 AM9:00、屏風岩沢を過ぎたCS4mの滝。ホールドは豊富なように見えたが、岩質はもろい花崗岩で、指をかけた岩がそのままぽろりと取れて手のひらに収まり、その遣り場に困るということが何度かあった。
 引き続いての6mの滝では、今回初めてザイルを出し、念のため確保しながら空身で登攀。ここで30分ほど時間を費やしてしまった。

 一服後、行動再開。前述のガイドブックには「草付きながらも素直なルンゼ」とあるが、浮き石が多く、神経を使う。人があまり入ってないせいだろうか。
 佐宗が2度ほど落石を引き起こすが、後ろの府川さんはとっさに躱し難を逃れる。(本当に申し訳ありませんでした)
 また、府川さん自身もちょっと掴まったひと抱えほどの大岩がそのまま剥がれ、なんとか身をよじって、うっちゃるという場面もあった。


 最後の急斜面は枝につかまりながら腕力で突破し、やっとハイマツの稜線上に這い出た。
 5分ほどハイマツを漕いでいくと、先頭の早川の歓声が聞え、ほんの50mほど先に木曽殿山荘の施設が見えた。やれやれと思ったが、そこまでたどり着くには、かすかな踏み跡のある崖をトラバースしなければならない。これが左側がすっぱりと数百メートル切れ、足下はザレた砂礫という「しょっぱい」所。両手でハイマツの枝にぶら下がり、背中に冷や汗を流しながら、なんとか通過することができた。
 10:45木曽殿山荘到着。常にトップで引っ張ってくれた早川君、府川リーダーに感謝。

 渓流靴をスニーカに履き替え、空身で空木岳を往復。歩きながら周囲を見渡せば、中央アルプスや八ケ岳、南アルプス、富士山、御嶽山などの山々、左手真下には今回遡上した太田切本谷、足下にはコマウスユキソウなどの高山植物。それらを眺め、写真に撮り、楽しみながらのんびり歩く。
早川曰く「浮き石の無い登山道の有り難さが身にしみて分かった。」

 PM0:10空木岳(2864m)着。府川さんは携帯電話をとり出し、留守本部・土岐宅へ「こっちはサイコーです」という恒例となった嫌がらせ?コールする。その嬉しそうな顔を見よ!(左下写真参考)


左に見える崖をトラバースして、無事、木曽殿山荘前に到着。
太田切沢の遡上を完遂し満足気な佐宗、早川、府川

空木岳山頂にて

「土岐さーん、こっちは最高です!」

木曽殿山荘前で酒盛り


 PM1:10木曽殿山荘着。ここで山小屋のご主人から情報を入手しつつ協議、桧尾のキャンプ地の水場が涸れていること、明日の晴天予報、佐宗の「かったるいから、ここで泊まりましょうよ」意見等を考慮し、桧尾岳行きを明日に伸ばし、ここで宿泊することとなった。

 記帳する時、「太田切本谷から上がってきました」と山小屋のご主人に告げると、「何か変わったこと無かった?」との質問が返ってきた。「...?」聞けば、「太田切本谷に入山して行方不明のままの人がいる。」とのことだった。

 府川さん、早川は山小屋泊まりの経験はほとんどないとのこと。佐宗は木曽殿山荘は5年ぶり2度目である。快適な1階食堂の木のテーブルにくつろぎながら陣取り、早速缶ビールを買って乾杯。
 ただ、誤算だったのは、ここの水場の「義仲の力水」が涸れていたこと。水を入手するにはミネラルウォーターのペットボトル(500ml/350円也!)を購入するしかなく、以降、一行は水不足に悩むことになる。

 その後は外のテーブルにて酒盛りの続き。
 小屋の準備してくれた夕食(まぜご飯、おでん)の後、AM7:00就寝。大部屋にはぎっしりの登山客。高いびきの早川以外の二人は浅い眠りのまま朝を迎える。

9月1日(日)晴れ

木曽殿山荘--東川岳--桧尾岳(2728m)--熊沢岳(2778m)--島田娘--宝剣岳(2931m)--木曽駒ヶ岳(2956m)--千畳敷ロープウェイ駅==しらび平駅==駒ケ根高原(P)==駒ケ根市内==駒ケ根IC==一ノ宮IC==帰宅


 今日は昨日の分と合わせ、約8時間行動の予定のため、AM3:00起床。小屋の外で朝食の準備。カレーとご飯のレトルトを温めるのだが、水が貴重で少量しか使えないため、時間がかかる。それにしても、(早朝3:30に食べるカレーライスはかなりつらいものがある)と思ったのは私だけだろうか。

 AM4:00ここより木曽駒ケ岳に向かって稜線を北上すべく、出発。ヘッドランプ行動で4:30東川岳着。
 AM5:05、2703mのピークにて、南アルプス・鋸岳付近から登るご来光を迎える。本日も3日続きの快晴。ただ、稜線上は風が強かった。

 

 


南アルプスから上がるご来光を眺める


 熊沢岳などのピークを経由、アップダウンを繰り返しつつ、7:30桧尾岳到着。
 ここで二度目の朝食としてレトルトの赤飯や混ぜご飯のにぎりめしを少量の水で無理矢理呑み込む。
 喫煙者の府川・早川両氏は早川が途中の沢でタバコを何箱か流失したため、水に加えタバコにも数量統制のある二重の禁欲生活を強いられる。

 8:45濁沢大峰着。途中の下りで脚を捻挫した佐宗は、ここで予定通り木曽駒を目指す2人と別れ、極楽平から直接千畳敷ロープウェイ駅に下ることにした。人からピークハンターと呼ばれる佐宗としては、5年前も宝剣岳〜空木岳を縦走しながら、天候等の都合により木曽駒に登頂できなかっただけに、断腸の思いであった。


どっしりとした空木岳をバックに

宝剣岳へと続く稜線

宝剣岳(手前)と木曽駒ヶ岳(左奥)

ロープウェイ千畳敷駅の前にて


 佐宗は10:40千畳敷ロープウェイ駅に着、生ビールを飲み、土産屋を冷やかしつつ、2人を待つ。

 府川、早川は鎖場だらけの宝剣岳を通過、宝剣山荘のビールで勢いを付けて、木曽駒を往復。宝剣山荘より千畳敷へ下山。

 11:50合流。観光客に混じり記念撮影。その後、一行はロープウェイ、バスと乗り継いで、駐車場に戻る。
 それから、駒ケ根高原の立ち寄り温泉「こまくさの湯」で汗を流し、駒ケ根市内で名物の「ソースかつどん」と蕎麦を肴に再び乾杯し、山行の無事終了を祝した。

 今回は中級の太田切本谷を遡上し、その後空木〜木曽駒と中央アルプスの北部主要部を縦走するという、ちょっと欲張り過ぎかな?と思うほど、贅沢な山行だった。
 3人とも最後には疲労困憊・満身創痍ではあったが、今夏最後の休日を充分満喫できたことと思う。

(記録:佐宗)