議論には、テクニックがある。

前回は三角ロジックの導入の話を書きました。だいたいどこのディスのテキストにも、三角ロジックについては、一応ひととおりの記述がしてあるのですが、参照している親文献が一緒だからなのでしょうか、ほとんどみんな、紋切り型の文章でしか書かれていなくって、そしたら、実際、どういうふうに議論に乗っけていくべきなのかについては、触れていません。テキストではなく、実地で教えたり、身に付けていくことなのでしょうが、そうだと割り切ってしまったら、ディスカッションという活動、きわめて少数の、頭の回転のいい人たちだけのための活動に、なりさがってしまいます。できるだけ、たくさんの人たちと、議論を重ねてこその、ディスカッションです。難しいことを、いかに普遍的に説明するか、できるか、っていうところに、先輩としての生命線がかかっています。

・・・って、えらそうなことを言ってしまいましたが、これにも、もちろん、先行文献は、あります。一回生当時、青山学院の方に、無理を言って譲っていただいたテキストで、Tactics Of Discussion”っていう、ブックレットです。それを噛み砕いて、抵抗なく読んでいただけるように、改訂してみました。ここまでが、前置き。

まず、こんな例から。

桶田「おれ、実は、西武ファンなんですよ。」
長友「うそつくなよ、おまえ。」
桶田「うそちゃいますって、だって、関西の西武の試合、たいてい見に行ってますもん。」
伊東「桶田さん、ふだん、甲子園の話しか、せえへんやないですか。」
桶田「でも、おれ、たまに、西武のグランドコート着てきたりしてるでしょ。」
長友「でも、阪神ファンであると同時に西武ファンって、なんか、中途半端やなぁー・・・」
桶田「何がどう中途半端なんすかぁー!!」

っていう、小芝居を、設定しました。ちょっと三角ロジックで考えてみると、

関西の西武の試合は、たいてい見に行く。

 


          ファンだからこそ、見に行く。

 

桶田は、西武ファンだ。

 

西武のグランドコートを持っている。

 


          ファンだからこそ、持っている。

 

くどいが、桶田は、西武ファンだ。

っていう、手はずになります。ワラントになる部分は、普段は、言いません。ので、ここが弱くなってしまう傾向があります。この例でもし長友さんがごねはったら、もちろん、「ファンだからこそ見に行くんでしょ?! わっざわざ、大正区まで・・・」とか、言いますよね。ワラントを普段の会話の中で「ファンだからこそ、試合後にバスを待って伊東さんに挨拶したりするんですよ」などとさりげなくちりばめておくと、意見の信憑性が、ぐっと高まりますよね。

で、最後のほうで、桶田のほうが「ムキョーッ」ときてしまいました。クレームを二つ出しているのに、まだ信用が得られないことに対しての、感情表現です。長友さんの発言をロジックの三角形でいうと、

阪神ファンであり、西武ファンである

 


          2つのチームのファンは、ありえない ← 「何がどう・・・」と、アタックをかけた。

 

なにか、中途半端だ

ということになりますが、もしもこの時点で「もう、ええ!」っていうことになって、会話が終了したとすると、長友さんと伊東くんは、桶田のクレームを受け入れたということになります。桶田は自分のクレームを2つ出し、それをサポートするために2つのロジックを出しました。しかし、長友さんの出したロジックは1つ、しかも、そのロジックに対して、ワラントにダウトをかけています。

ロジックの強さは、数で表される、必ずしもそういうわけではないのですが、この程度の話題でしたら、数に物を言わせて、相手をねじ伏せることが、できます。質で勝負、というのであれば、信憑性のあるデータを持ち出したり、強力なワラントを明示して相手に物を言わせないようにしたり、それこそレトリックを持ち出してクレームに目を行かせたり、いろいろ、方法は、ありますよね。

ああ、なるほどねぇ、なんてことを思わされる、ロジックの三角形の応用に、落語家さんが良くやる、謎かけ問答、これをあげることができるとおもいます。「笑点」でよくやっているような、あれです。

「阪神とかけまして、笑点の、楽太郎と、ときます。」「そのココロは」「いつまでたっても、若手が出てきません」

という例をロジックにあてると、

阪神

 


          いつまでたっても、若手が出てこない。

 

笑点の、楽太郎。

というふうに、形の上では、なります。しかし、川柳などと一緒で、べつにワラントで遊んでいるわけではなく、この裏には皮肉がこもっている、つまり、話者が、桶田ではなくて、三遊亭楽太郎であるならば、こういうロジックが成立するでしょう。

いつまでたっても、若手が出てこない。

 


          阪神がそれで失敗してるでしょ

 

もっと若手をいれてくれよ

ワラントをデータにもってきて、空いたワラントに阪神の現状を持ってきて、新しいクレームに対してのロジックの要素としています。ここのロジックで攻めるべき点とするならば、ワラントに「笑点は成功してる番組だ」というアタックをかけるか、データに「大喜利以外のコーナーでは若手をたくさん出してるだろ」と、カウンタークレームをだして、切り崩しをかけるか、でしょう。クレームをいきなり頭ごなしに否定しても、それは、ただの感情論になってしまいます。聞く耳なんか、持たれません。

ともかくも、ロジックやレトリックを組み立てる際、何が一番必要かつ重要かって、やっぱり、ワラントだとおもいます。プレゼンテーションなんかを組み立てるときにも、ワラントを、どこまで出すか、どこから出さないか、っていうところで、聞く側の食いつき方が、全く違ってきます。言いたいことを完璧に言ってしまうプレゼンは、発表する側は悦に入るでしょうが、聞く側にしてみたら、入り込む余地が全然ない分、つまらないものになってしまいます。あるていどの「遊び」を残しておかないと、議論やフィードバックが盛り上がりませんし、独り善がり、という評価を下されてしまいます。実際、桶田が、そうでした。ので、これは自分に対しての戒めでもあるわけでして・・・。

・・・っていうわけで、「議論には、テクニックがある」、ひとまず、ここで、区切っておきます。次は「意見の良否を判断するポイント」という話題で書いてみようとおもいます。

ご意見・ご感想は、メール、または、掲示板で。