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医学ことわざ雑学シリ−ズ<9> 
『柿が赤くなると医者が青くなる』

今は昔、田舎では秋になると柿は子供達の、いや大人達にとっても食べ放題のおやつであった。欧米で柿の鈴なりを見たことがない からだろうか、私の中では柿のイメージは極めて日本的であり、柿食えば鐘がなるなり法隆寺(子規)、なのである。そこで調べてみると、 原産地は日本、韓国、中国あたりらしい。

柿にはいろんな種類がある。大きく分ければ甘柿と渋柿、前者には富有柿、次郎柿、筆柿、禅寺丸、後者には甲州百目、西条柿などがある。 私は大人になるまで、柿の定番である富有柿のことを冬柿だと思い込んでいた。信じ難いが、日本には1000種ほどの柿があるらしい。柿は果実の中のタンニン細胞にシブオールという物質を持ち、これが果実の中でとけた状態だと渋味を感じさせる。渋柿と言えば、 フォーリーブスから始まりたのきんトリオ・しぶがき隊・少年隊・男闘呼組・忍者・光さてあなたはどの世代。どれもご存じなければ、 相当ご年配か変わり者。
渋柿と言えば佐渡の八珍柿が有名で、種が無い。八珍柿は何も手を加えないと渋柿なのだが、渋を焼酎で抜いて甘くすると「さわし柿」と 言う。この「さわし柿」が珍味と評判をとっており、佐渡の農業収入の稼ぎ頭になっていることから、一度は試してみる価値がありそうだ。
以前は子供達でも、これは渋柿、これは甘柿と区別ができていたものである。最近の近の子供達にとって、熟柿などと言う言葉はほとんど死語に 近いかも知れない。渋柿は干し柿(吊るし柿)にして食べるが、10月あるいは11月頃の代表的な季節の風物詩となっていて、農家の軒先の 端から端まで連なる黄色く輝く干し柿が、写真誌をしばしば飾っている。

甘柿に含まれているビタミンCはレモンやイチゴに決して負けてはいない。ほかにも、ビタミンK、B1、B2、カロチン、タンニン、 ミネラルなどを多く含んでいるため、「柿が赤くなれば、医者が青くなる」という言葉があるほど、柿の栄養価は高い。 また、「二日酔いには柿」といわれている訳は、ビタミンCとタンニンが血液中のアルコール分を外へ排出してくれるからで、 豊富なカリウムの利尿作用のおかげともいわれている。ビタミン欠乏症は食糧事情の良い日本ではほとんど見られない。 起こるとすると極めて特殊な状況下、すなわち長期間の抗生物質や抗腫瘍薬の使用、妊娠や授乳時、などである。従って普通の生活をしている 人々にビタミンを補充する必要性はほとんど無いのである。参考までにビタミン欠乏症をまとめてみた(表9-1.)が、もしもこれらの症状に 思い当たる人がいたら、医者に相談したほうが良いかもしれない。ビタミン異常症には摂取不足による欠乏症の他に、一般には知られてい ないが、剰症および依存症もあるが、知っていても役に立たないので省略した。

柿渋は紙・網などの強化/防腐剤になる。私が小学生の頃には“置き傘”と称して、柿渋を塗った番傘が学校に置いてあり、それを差して 帰った記憶がある。最近は芝居の小道具くらいでしか、番傘など見かけない。下校途中で雨が上がると、傘やランドセルを投げ出し、 遊びほうけ、腹が減ると柿の一つか二つを盗み食いし、そのまま帰ったものだ。丘の家に柿かがやけり田の家も(秋桜子)。番傘には学校名と 番号、ランドセルには氏名が大きな字で書いてあり、泥棒が名刺を置いて帰るようなものであった。その日の内に、遅くとも翌日には、柿と 一緒に忘れ物は我が家に届けられていた。

柿と牡蠣は同じカキでもアクセントが異なるから分かる。とは言っても、関東と関西で全く逆のアクセントなので困る事もある。高知では、 柿に“お”を付けて“お柿”と言うことがあり、我々よそ者にとっては煎餅類の“オカキ”と聞き間違えてしまう。 柿に“お”をつける 地方は日本では稀である。

ことわざ『柿が赤くなると・・・』は、「柿が色付くころは気候が良く、病人が少なくなるので医者が困る」、という意味だが、 「柿が色付く頃は農家にとっては収穫期で、少々体調が悪くても病院なんかに行く暇は無い」とも取られている。他の果物でも同じような 着想がなされていて、『柚子が黄色くなると医者が青くなる』、『トマトが赤くなると・・・』、『蜜柑の皮が色付くと藪医者の顔が 青くなる』なども時に使われているようである。

国民医療費の推移(図9-1)をみると、1955年(昭和30年度)に2388億円だったものが、1965年(昭和40年度)には1兆円、1978年 (昭和53年度)には10兆円を超え、1999年(平成11年度)には30兆円を超えてしまった。2000年(平成12年度)の国民医療費は一時的に 減少しているが、これは介護保険が施行されたことに伴い、従来、国民医療費の対象となっていた費用のうちの一部が介護保険の費用に 移行しただけであり、実際に国民医療費が減少したのではない。これほど医療費がかさんでいることから、さぞかし病院は、医者は儲けて いると思われるかもしれないが、10年、20年前と較べて、病院や診療所の経営状態は悪化の一途をたどっている。病院も一般の営利企業と 同様に、人員削減や仕事の効率化が計られている。「医は仁術なり」などと、のんきな事は言っていられない。「医は仁術であり、算術でも ある」と考えを改めなければ、病院も倒産する時代である。

“病気は医者が作り出す”などと言われることがある。検診などで検査値が少し異常だからと言って、食事療法や運動療法が第一選択で あるにもかかわらず、薬を飲んでいる人も少なからずいるのではないだろうか。患者も即効性の治療を期待する。食事療法や運動療法では 医者は儲からない。算術が優先する医者も時にはいる。医者の仕事は、ケガや病気で苦しむ人々を救うことであり、人々がケガを しないように、病気にならないように努めることである。たわわに実る柿が、国民1人当たりの医療費24万4200円(平成14年度)を 削減してはくれないだろうか。

 

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最終更新日 : 2011/04/15