1 報告書・全文 

  (平成16年5月25日初出)

 

平成16年 5月24日

荒川区長 藤 澤 志 光  殿

荒川区男女共同参画社会懇談会会長 林  道 義

荒川区男女共同参画社会懇談会検討結果報告

平成16年12月20日付15荒地青第432号で貴職から検討依頼された「荒川区における男女共同参画社会の形成に関する基本的な考え方に関すること」及び「荒川区における男女共同参画社会の形成に関する施策のあり方に関すること」について、別添のとおり検討結果を取りまとめましたので、ご報告いたします。
今後、男女共同参画社会の形成に関する条例の制定及び施策の推進にあたっては、懇談会報告の趣旨を反映されるようお願いいたします。

荒川区男女共同参画社会懇談会検討結果報告

1 はじめに

本懇談会は、平成15年12月20日に区長から荒川区における男女共同参画社会の形成に関する検討の依頼を受けてから今日まで延べ8回にわたって会議を開催し、日本国憲法並びに男女共同参画社会基本法を踏まえつつ鋭意検討を進めてきた。
もとより男性と女性は平等であり、男女の違いを認めながら、互いに尊敬し合い、協力し合って社会をつくることの重要性については、全委員が共通に認識するところである。
今日の社会状況を見れば、少子高齢化の進展、国際化の進行など、大きな変化に直面しており、荒川区においても例外ではない。人情味があふれる温かいまちである荒川区には、社会の基盤である家庭を基本に、隣人同士の助け合いや支え合いなどの風土が今なお息づいている。今後も下町人情があふれ、暮らしやすいまちであるためには、区民がこれまで受け継いできた良き伝統や文化を尊重しながら、男女が様々な分野に対等な立場で参画し、互いに力を合わせていく必要がある。
懇談会では、そのような男女共同参画社会を荒川区において形成することができるよう、一部に存する男女共同参画に対する誤解や偏見の解消を念頭に置いて、男女共同参画社会の形成に関する基本的な考え方や施策のあり方などについて議論してきた。
このたび、検討結果をとりまとめたので、報告書として提出する。

2 基本的な考え方

(1)男女が協力し合う社会の実現

男女共同参画社会は、職場や学校、地域など社会生活全般及び家庭生活において、男女がその特性を生かし、必要に応じて適切に役割を分担しつつ、互いが対等な立場で協力し補完しあうことにより実現される。

(2)男女の人権の平等と性別による差別の禁止

男女共同参画社会は、憲法にうたわれている個人の尊重、男女平等の理念の実現を前提に、互いの特性を認めつつ、性別による差別的取扱いや性に起因する暴力が根絶され、一人の人間として尊重される社会でなければならない。
男女の人権はそのどちらに対しても平等に尊重されなければならない。性別を理由とする差別は、何人といえども、またいついかなる場合においても行ってはならない。

(3)社会参画への機会の平等

男女が社会的活動に参加する機会が、男女それぞれに対して平等であり、対等に確保されていることは、男女共同参画社会を形成していくうえで重要である。
   男女一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、自分の能力が発揮できる生き方を自ら選択でき、社会における対等な構成員として、方針の立案や決定を含む様々な場に、男女が共に参画できる機会が確保されなければならない。

(4)家庭の尊重

男女共同参画を推進していく上においては、家族の絆と家庭教育を強めるような配慮がなされなくてはならない。そのためには、育児、介護その他の家事について、家族の構成員の間で負担が偏らないように適切な分担を行い、かつ、必要に応じて社会の支援を得つつ、なるべく家族の中で行うようにすることが有益である。
 また、父親と母親が責任を持ち協力し合って子育てに関わることは子供の自我を確立し、その健全な発達を促す上で重要である。特に乳幼児期における母子関係は重要であるから、母親がその選択に基づき子育てに専念することは、その人の生き方として尊重されなければならない。男女が以上の家庭責任を担えるような社会的な環境整備が必要である。

(5)職場の環境整備

男女がともに家庭責任を十分に担えるためには、家庭における躾など父母が家庭教育に十分な関心と時間を確保し、かつ、家族の構成員が家庭の仕事を共同して担えるような社会環境、とりわけ労働環境の整備が図られなければならない。その際、女性に対して求められがちな家庭と職業の二重負担、男女に関わりなく求められる長時間労働、そのような親の労働実態に起因する子供の長時間保育などの弊害についても、その解消に特段の配慮が払われるよう、できる限りの努力が必要である。
加えて、各職場においては、男女共同参画を妨げる直接的・間接的な差別や慣行、男性優位の意識を改めるような努力がより強く求められる。そのためには、男女ともに快適に働ける職場環境が整備されなければならず、とりわけ、育児、介護等の休暇取得の推進と職場復帰の保障については充実させる必要がある。

(6)母子の生命と健康の尊重

妊娠・出産や性に関連して、子供たちに対して精神的・道徳的及び発達段階に即した適切な情報が与えられ、また、男女の生涯にわたる健康が確保されなければならない。
胎児の生命と母子の健康を十分に尊重しつつ、男女両性が責任ある性行動をとり、出産については、両性(未成年の場合は親権者を含む)の対等な話し合いによって決定するのが望ましい。

(7)文化と伝統の尊重

日本人の精神を育んできた文化的・民俗的行事の中には、男女の区別や分離などの内容を含むものもあり、それらについては一概に否定することなく、差別的な要素を排除しつつも、良き文化遺産として保存するよう努めるべきである。

(8)国際協調

男女共同参画の推進にあたっては、国際社会の動向を参考にしながら、国際的協調を促進するよう配慮する必要がある。
地域における国際化の進展とともに、様々な文化的背景の人々が居住している現状を考慮し、外国人居住者が日本の文化や習俗を理解するための援助、及び他の国の文化に対する理解が深まるような努力が大切である。

3 施策のあり方

(1)施策の基本線

ア 差別的行為等の禁止

性別による差別的な取扱いをしてはならないこと、家庭の中などで配偶者等における身体的・精神的な苦痛を与える暴力その他のあらゆる暴力的行為をしてはならないこと、他人を不快にさせる性的な言動をしたり、その言動によって生活環境を乱し、若しくはその言動を受けた者の対応により、その者に不利益を与える行為をしてはならないことなど、性別に起因する差別的行為等を禁止する必要がある。

イ 子育て支援

子育て支援にあたっては、家族にその第一義的な責任があることを認識した上での支援策であるべきである。この場合においては、家庭育児と社会的育児の双方への支援が偏らないよう公平になされなければならない。しかし、現状では、社会的育児に関しては多大な支援がなされているのに対して、家庭育児への支援は非常に少ないので、このアンバランスは早急に是正されなければならない。家庭育児を支援するものとして、社会的な地域支援の施策のあり方も考えていく必要がある。

ウ 区、区民及び事業者の役割

@ 区 総合的に男女共同参画の推進に関する施策を策定・実施し、区民、事業者、国及び他の公共団体と連携・協力して男女共同参画の推進に取り組み、男女共同参画の推進のための組織の整備とともに、職員や教職員への啓発に取り組まなければならない。

A 区民 男女共同参画について理解を深め、社会の様々な分野において主体的かつ積極的に男女共同参画を推進するとともに、区が行う男女共同参画の推進に関する施策に協力するように努めなければならない。

B 事業者 事業活動に関し男女共同参画を推進するように努めるとともに、区が行う男女共同参画に関する施策に協力するように努めなければならない。

エ 荒川区の特性等を考慮した施策

区は、男女共同参画の推進に関する施策を実施するにあたっては、荒川区の特性、すなわち小規模の事業所・自営業・共働きが多いこと、高齢者が多いこと、外国人居住者が多いこと、女性の活動が活発であること、下町特有の人情と連帯意識が強いこと等を考慮して行うものとする。

(2)推進体制

ア 男女共同参画計画

区は、男女共同参画の推進に関する施策について、男女共同参画計画を定めるものとする。

イ 情報収集

区は、男女共同参画に関する施策を効果的に推進していくため、男女共同参画に関する情報を収集し、適時適切に提供する。
 
ウ 普及広報

区は、区民や事業者の男女共同参画についての理解を促進するため、普及広報活動に努める。

エ 苦情等への対応

男女共同参画の推進に関する施策を実施していく際、区民から寄せられた苦情や人権侵害に関する相談について、区長は適切に対応しなければならない。

オ 推進状況の公表

区は、男女共同参画の現状と成果及び進捗状況を調査し、区民に報告しなければならない。

(3)乱用の防止と是正

区、区民及び事業者は、男女共同参画を推進するにあたり、以下の条項に留意しなければならない。

ア 男女の区別を差別と見誤って否定の対象としないように、特に広報活動の中で単なる区別を差別と誤認して批判することのないようにしなければならない。

イ 性差を否定する教育は行ってはならない。また、思春期の青少年の教育にあたっては、性別に配慮するものとする。

ウ いかなる性別役割分担の形式といえども、それが主体的選択に基づくものであるかぎり否定されてはならない。また特定の性別役割分担を強制してはならない。

エ 数値目標を立てて男女の比率を同じにする方式は、その方法が適切な場合か否かについて、また性急な目標を立てることによる弊害や混乱が起こらないように、慎重に判断しなければならない。

オ 性情報は精神的・道徳的及び発達段階に即した形で提供されるべきであり、心と体のバランスを欠いた性教育に偏ってはならない

カ 以上の項目に反したことがなされている場合には、当該機関は速やかに是正措置を講じなければならない。