3 張學錬氏の辞任問題

  (平成16年5月25日初出)

 

 懇談会の終盤に、委員の一人・張學錬氏が懇談会のあり方を批判して辞任し、そのことを新聞社に売り込んで記事にさせるという「騒ぎ」が起きた。懇談会としては、反論する手立てがない中で、一方的に嘘を宣伝され、迷惑を受けた。

 何よりも驚いたのは、張氏に呼応して、張氏の言うがままを記事にした新聞社が、それもいくつも現れたことである。ジャーナリズムの暴力と無法をいやというほど体験させられた。

 今や、報告書も会議録もすべて公表されたので、張氏に対しても、新聞社に対しても、堂々と反論・批判できる。

 嘘をもとにした誹謗に対して、懇談会の名誉を守るために、以下、真実を明らかにしておきたい。

 

   目  次

1 張學錬氏とはどういう人物か

2 懇談会における言動

3 辞任 ──民主主義に反する行為

4 嘘の数々 ──事実のねつ造

5 「基本法に逆行・骨抜き」という悪宣伝

6 張氏に呼応した悪質な新聞記事

7 張氏と新聞社への抗議文

8 張氏の「辞任の理由」

9 張氏の「辞任の理由」への批判文

 

 

1 張學錬氏とはどういう人物か 

 まず、騒ぎを引き起した張學錬氏とはどういう人物かを明らかにしておく必要がある。彼の国籍や思想信条が、今回の彼の行動と密接に関係していると見なさざるをえないからである。

 もとより私は彼について、わずかなことしか知らない。これから書く二つの事実はインターネットの検索を通じて知り得たことである。これらは彼が公にしている活動であり、彼の所属する団体のHPに掲載している文章である。つまり誰でも知りうる(そして公にすることを本人が承知している)事実である。

 張氏が弁護士として活動していることの一つは、朝鮮人学校の卒業生が大学を受験できる資格を容易に取得できるようにすることである。

 今の日本の制度では、朝鮮中高級学校は高等学校としては認められておらず、各種学校の扱いとなっている。したがって日本の大学を受験するためには、検定試験(いわゆる大検)を受けなければならない。これを免除されるためには、受験する大学の学長が「入学資格認定書」を交付する必要がある。張氏は、一橋大学等の学長に対して、この「認定書」を交付させようと活動しているのである。

 この問題が人権上どうだとか、差別に当たるかどうかといったことは、ここでは問題にしない。ここで私が注目するのは、その政治的な意味である。

 朝鮮人学校が朝鮮総連の幹部養成の役割を果たしてきたことは、つとに指摘されてきた。そして朝鮮総連は北朝鮮の出先機関としての役割を果たしてきた。日本における拉致などの北朝鮮の工作の中心的な拠点であったことは、元幹部たちの証言によって今では完全に明らかになっている。

 拉致が北朝鮮によることが、第一回首脳会談以来明らかになってから、朝鮮総連から脱退する者が多くなり、また朝鮮人学校への入学者が半減しているそうである。要するに北朝鮮とその手先たちにとってピンチになっているのである。それに対してテコ入れをする役割をしているのが、朝鮮人学校の卒業生の大学受験を容易にするという運動なのである。つまり張學錬氏のやっていることは、北朝鮮のために働いていると言っても決して言い過ぎではないのである。

 

 さて、次に、彼がどのようなことを主張しているのかを見てみよう。

 彼は特定非営利活動法人「他民族共生人権教育センター」のHPの「オピニオン」に「北朝鮮問題雑感」と題する文章を載せている。そこで彼は、拉致事件について、北朝鮮の主張そのままの、「5人の被害者を約束どおりに一旦北朝鮮に返せ」という主張をしているのである。以下はその文章からの抜粋である。

 

 私は韓国籍であり、韓国系の民団とも縁が深いが、それとは関係なく、いわゆる北朝鮮という国についてかねてよりとりわけ厳しい評価をもっている者であり、その厳しさにおいて人後に落ちないつもりである。

 その私に言わせても、今の状況は理性を忘れた状況である。彼の国により拉致された自国民を返せと要求する点については全く正当であるが、むこうが責任を認めて協議の結果、1ないし2週間という期限付きで帰国を認めるとの合意を見て被拉致者を一時帰国させたのである以上、その約束は国際合意として守られて当然であるのに、日本では、もはや彼の国に戻しては二度と帰国できないとばかりに、「永住帰国」させるというのである。そして、国際合意に基づいて一旦戻すべきだと主張した外務省の田中局長は、ほとんど国賊扱いされていた。

 しかし、ここで拉致に直接に関係のない第三者である我々にあっては、少し立ち止まって考えてみなければならない問題がある。すなわち、日本においては居住移転及び国籍離脱の自由が認められ、この原則に立てば、日本に帰国するか、彼の国に残るかは、最終的には被拉致者自身が決めることであって、拉致被害家族にも日本国政府にもそれを決定する権限は全くないということである。

 もちろん、彼の国に帰国させることは、被拉致者を拉致者の元に返す行為であり、それ自体通常はあってはならない行為であって、国民が自由に意思表明することすらできない状況であることを考えれば、彼の国に戻しての判断内容は、自由な意思決定の前提を欠くものであり、そのような状況下での判断を妥当なものと認めることはできなかろう。

 だが、忘れてならないのは数十年という時間の重みである。被拉致者は、既にむこうで結婚して家庭を持ち、子をなしているのであって、彼らには彼らの生活があり、配偶者がむこうに居続けたいといえばそれを拒絶できないし、彼の国もその気になればそれを阻止できるのである。そうであれば、今の日本政府の政策を前提とすると、今度は新しい家族が引き裂かれることにならざるをえない。これでは、体のいい拉致の意趣返し・繰り返しに過ぎない。義憤に駆られてしたことが新たな犯罪をもたらすことは、我々の業界では珍しいことではない。

 このような事態を避けるために、政府は一時帰国の前に、帰国後は一旦被拉致者をむこうに戻すことについて予め十分説得し承諾を得るなどしておくべきであった。その点で、こうした迷走の原因は、日本政府にあると言わざるを得ない。

 このような拉致問題には全員を満足させる解決というものはあり得ない。せいぜい、被拉致者が日本に帰国することや被害家族が彼の国に親族訪問することを完全に自由化するといった程度の方策以外ないのではないかと思われる。

 

 

 御覧のように「私は韓国籍」だとか「北朝鮮に厳しい」というエクスキューズを言いながら、内容は北朝鮮の主張をまったくそのまま代弁している。「被害者を一旦北朝鮮に返す」ことと、「自由往来」という、今では一笑に付されるような、北朝鮮一辺倒の主張である。彼はまさに北朝鮮の言い分を忠実に代弁している人間なのである。

 

2 懇談会における言動 ──妨害・かく乱・引き延ばし

 懇談会の冒頭で自己紹介をし合ったとき、張氏が韓国籍だと言ったときには、私は自分の耳を疑った。どうして日本の一自治体の懇談会に韓国籍の人間が入っているのか。あとで聞いたところによると、区が委員を決めるときに、弁護士にも入ってもらいたいと考え、東京弁護士会に人選を依頼した。そこで推薦されてきたのが張氏だったということらしい。

 張氏は突出して発言が多く、いちいち反対意見を述べるという有り様で、そのために時間がいつも超過するという状態であった。とくに第六回の後半と第七回では委員発言全体の半分以上が張氏の発言であり、ほとんど張氏と他の誰かとの論争という形になっていた。

 そのくせ会長の発言が多すぎると批判するので、「会長の発言のうち大部分は議長としての発言であり、委員個人としての発言はそれほど多くない」と反論すると、「それでは会議録の行数を数えてみよう」と言い出す始末で(もちろんそんなバカバカしいことは私が即座に拒否したが)、この一事をもってしても、彼が妨害と引き延ばしを意図していたことは明らかである。

 彼は常に会長に難くせをつけたり、くってかかるという態度で、いわゆる左翼用語で、会長を「浮かす」ために懸命であった。私としては、委員のあいだで公平に発言の機会を確保したいと思ったが、張氏が発言を求めるのを、内容を聞かずに禁止するわけにもいかず、他の委員のあいだから不満の声もあり、苦慮したものである。

 では、肝心の男女共同参画について、どれほどの見識を持っていたのかというと、これがなんともお粗末であった。例えば、彼は「職場の実態」として「男性は私服(ないしスーツ)、女性は制服という区別がある」「女性は結婚とともに退職すべきであるとか、女性の停年が男性より早いとか、女性がコピーとりや茶菓の提供を担当させられる、管理職になれない」という実態が存在していると主張して、区の女性委員から「そんなことは今時ありません、少なくとも荒川区にはありません」と批判され、皆の失笑を買うという場面もあった。フェミニスト系の委員の一人が「張さんの考えはレトロなフェミニズムだ」と評したほどに、一昔前の現状認識や、古いフェミニズムの公式を唱えるばかりで、だんだん誰からも相手にされなくなり、彼の方が「浮いて」いき、孤立していった。

 その孤立状態を打開しようと、他の委員に働きかけて、自分に同調するように要求したり、いわゆる左翼用語のオルグをしたり、辞任にあたって自分に同調するようにさかんに働きかけたが、結局誰も同調しなかったのである。

 張氏は、フェミニズムの問題そのものについても男女共同参画社会基本法についてもきわめて不勉強であり、第3回目までは張氏の発言の中に男女共同参画社会基本法についての言及はなかった(第4回目は欠席)。張氏は会議のさなかに男女共同参画社会基本法やその解説書を読みふけるというありさまで、基本法について発言しはじめたのも第5回目以降であり、それもただ第4条についてのみ繰り返し発言したにすぎない。

 また張氏は事前に送付した会議録等の資料をきちんと読んでいないまま見当はずれの批判をして会長にくってかかって時間を30分も空費させる等、事前の勉強や準備をおろそかにしていた事実がある。また前回の会議録等の資料を事前に送ってあるのに、「送られていない」と事務局に文句を言うなど(送っていないということは絶対にありえない、自分の管理が悪かっただけであろう)、無茶苦茶であった。

 要するに張氏の態度は、妨害と撹乱を目的にしていたと言う以外に理解できないようなところがあった。

 

3 辞任 ──民主主義に反する行動

 そして張氏はついに辞任劇を演ずるにいたる。計8回の予定のうち、7回が終わったあとである。7回目までで、報告書に入れる内容はほぼ完全に決定されていた。最後の会合はそれを文章化するだけ、それも主要な部分は文章まで確定していた。

 もし内容に不満だというなら、第7回が終わった時点で辞任していたはずである。ところが、3月26日の第7回が終わってから、会議録の作成や報告書の原案の作成に手間どって、一か月くらいたって、ようやく次回の日程が決まった4月27日の時点で、急に辞任したのである。不可解な行動と言わなければならない。

 まず指摘しなければならないのは、自分の主張が通らないからといって辞任するのは、民主主義の原則に反しているということである。言うまでもなく、民主主義的な会議においては、自分の主張が通らなくても、全体の決定に従うのが原則である。自分の思い通りにいかないからといって途中で義務を投げ出すのは、無責任のそしりを免れない。

 もし議長が横暴であるとか、明白に誤りを犯したのに改めないとか、議論もしないで強行裁決したという場合があれば(もちろん私は議長として横暴な言動や誤りは全く行っていないと確信しているし、そうした批判は他の委員からは全く出ていないが)、議長のリコールを申し立てるというのが、正常な異議申し立ての手続きというものである。そうした手続きなしに、いきなり辞任をして、ただちにマスコミに通告したり、未公開の懇談会の内容(しかもまだ決定されていない提案の段階)をもらすという行動に出ることは、民主主義に反するばかりか、信義にもとる反道徳的な行為と言わざるをえない。

 結局、張氏には、荒川区民のため、ひいては日本のために委員全員と協力しあい、真摯に答申案を作ろうという気がなかったとしか思えない。そうでなければ、途中で自分の責務を投げ出すようなことはないはずである。

 

4 嘘の数々 ──事実のねつ造 

 しかも、張氏が記者に語ったという事実には、無数といっていいほどたくさんの嘘が含まれているのである。すでに公開されている会議録を見れば、それらの嘘は簡単に確かめることができる。

一 まず第6回会合までの会議録に照らして嘘であることが明瞭な部分。

 第一の嘘。「なぜ非公開なのか。区民が監視できない形で進めるのはおかしい」(東京新聞)。「非公開」というのは嘘である。会議の内容の概略と結論は、張氏が嘘を言った時点でも、荒川区の公式のホームページで第6回までは公開されていて、誰でも見ることができた。

 第二の嘘。「基本法に批判的な林氏や高橋氏の意見が載った雑誌や新聞記事が配られた」(東京新聞)。私や高橋氏の意見を含めて、基本法に批判的な意見が配られたことは一度もない。私や高橋氏の意見が配られたことはあるが、他の委員の意見や論文も多く配られている。張氏の意見が配られたこともある。どんな資料が配られたかを、上記のHPで見ていただきたい。多岐にわたるいろいろな資料が配られている。

 第三の嘘。「議論も、子育てや介護は家庭の中で行うべきといった話ばかりに終止した」(東京新聞)。「ばかりに終止した」などというばかばかしい嘘をどうして平気でつけるのか、その神経を疑う。これも第6回までの会議録を見れば、簡単にデタラメであることが分かる。

 第四の嘘。「男女差別をなくそうという積極的な姿勢が見られず」(朝日)。男女差別をなくすべきということは全委員が積極的に賛成であるので、議論にならないだけのこと。そのことを条例案に入れることは確認されているので、張氏も承知しているはず。議論がないからといって「積極的な姿勢が見られず」というのは、言いがかりとしか言えない。

 第五の嘘。「ジェンダーフリー教育の弊害をいかに防止するか、といった議論ばかりしている」(朝日)。「ばかりしている」というのも、公表されている議事内容を見れば、簡単に嘘だと分かる。

 

二 第7回会合の議事録に照らして嘘であることが明瞭な部分。

 1 「第7回会合で、林会長が」「条例に盛り込むべき内容の整理案」を提案した。(東京新聞)

 まず第一に、会長が提案したものではない。「整理案」とは、各委員が「条例に盛り込むべき内容」として前もって文書で提案したものを会長が項目別に整理したものである。

 2 「整理案は男女共同参画の基本理念や推進体制より『乱用の防止と是正』の項目に多くの紙幅が割かれ」(毎日新聞)。

 これは間違いである。量的に見ても「基本理念や推進体制より『乱用の防止と是正』の項目に多くの紙幅が割かれ」は間違い。ただし、

 「整理案」には、すでに審議済みの「論点」に属する内容は含まれておらず、また項目を確認するためのものであり、まだ文章化されていない。したがって短いという印象を与えるのは当然である。

 「乱用の防止と是正」は議論が予想されるので、「論点」なみに詳しく内容を提示したから、紙幅が多いのは当然である。両者の部分を単純に比べることが、そもそもおかしいのである。

 なお「乱用の防止と是正」の内容は数人の委員から提案があり、それを会長が整理したものであって、会長の提案というのは間違いである。

 3 したがって、「会長案で審議紛糾」(東京新聞)というのも、間違いである。「会長案」というのが間違いであるばかりでなく、「審議紛糾」というのも間違いである。このような言い方は、張氏が終始一貫会長を悪者に描こうとしていた態度と合致している。

 第7回会議は予定より時間が長引いたが、それは一つには審議の内容が多かったことと、いま一つは議論を尽くそうとできるだけ時間を割いたためであり、なによりも張氏がことごとに修正案を出したためでもあり、騒ぎが起こって審議が中断したなどの「紛糾」とか「混乱」という言葉に当たるような事態はなかった。

 それまでの審議と異なったところは、張氏が何度も修正案を出し、裁決することを主張したので裁決によって決定した部分があった点である。それは通常の民主的な手続きの範囲内のことである。

 4 「審議が紛糾、8日が予定の最終回が開けなくなった」(東京新聞)。「紛糾」したために「開けなくなった」かのような印象を与える書き方をしている。これは上で述べたように、張氏が混乱させようとしただけのことであり、それにもかかわらず、会議は民主的な手続きにのっとり、きちんと行われた。

 5 「会長の提案」に「ジェンダーフリー(性別による格差の是正)教育は行ってはならない」という「項目が入っている」(東京新聞)。

 「会長の提案」ではない上に、案にはそのような言葉は入っていない。とくに「ジェンダーフリー」を「性別による格差の是正」と言い換えると、「差別を是正する教育」に反対しているかのような誤った印象を与えるという意味で、これは悪質なデマと言うべきである。われわれは「ジェンダーフリー」を「性差否定」という意味で使っており、「性別による差別の是正」と言い換えると逆の意味になる。正確には案では「性差否定(ジェンダーフリー)教育は行ってはならない」という表現になっていたが、審議の結果「ジェンダーフリー」という言葉も誤解をまねく恐れがあるとして削除された。そうした経緯を知っているはずの張氏が、こうした誤った記事を「誘導する」のは理解に苦しむところである。

 要するに、これらの無数の嘘をもし信じたら、荒川区の懇談会は無茶苦茶な審議をしていて、基本法に反する反動的な内容を出そうとしているので、たまりかねた張氏が危機感から辞任をして、世間に訴えたという図式が浮かんでくる。どうやらそれを報じた新聞やその記事を読んだ一部の人々は、責任ある職業である弁護士がそれほど訴えるからには、まさか嘘ではないと信じてしまったふしが見られる。恐ろしいことである。新聞記者が判断を誤ると、嘘が広範に流布され、多くの人の人権や名誉を傷付け、さらに多くの人たちの判断を狂わせる。本当に恐ろしいことである。

 

5 「基本法に逆行・骨抜き」という悪宣伝

 張氏は辞任した理由をこう語っているそうである。「このままでは、男女共同参画社会基本法の考えに反する条例ができる」「整理案は基本法を完全に骨抜きにする内容」「男女の固定的な役割分担を克服しようという法の趣旨から全く逆方向に誘導しようとしている」(毎日新聞)。「男女共同参画社会基本法を骨抜きにする案を作ろうとしている」(朝日新聞)。「男女共同参画の理念に逆行する」(東京新聞)。

 当懇談会案の中には、男女共同参画社会基本法に反したり、逆行するような内容はまったく含まれていない。張氏は基本法が「男女の固定的な役割分担を克服しようとしている」と解釈し、懇談会がその意図に反した態度をとっていると宣伝している。しかし、懇談会は基本法第4条は「男女の固定的な役割分担を否定」するという趣旨ではないと解釈している。もし基本法が「固定的」とみなしている特定の役割分担のあり方を否定するものだとしたら、それはその役割分担を選択している人々を差別することになり、差別を否定している基本法の趣旨に反することになる。その意味からも、張氏の基本法解釈は決して肯定することのできないものである。張氏はその間違った解釈から、懇談会を「基本法に逆行」と間違って批判しているにすぎない。ちなみに張氏は基本法の第4条しか頭になく、その他の点では懇談会の報告書が基本法に反しているとは言っていない。

 次に張氏は、懇談会が「乱用の防止と是正」を入れることによって基本法を「骨抜きにする」と宣伝しているが、およそ法と名のつくものに歯止めが必要なのは常識であり、行き過ぎや逸脱に歯止めをかけることを「骨抜き」というのは言いがかりにすぎない。

 

6 張氏に呼応した悪質な新聞記事 ──裏も取らないで一方的言い分をそのまま載せる怖さ

 最後に、張氏の言い分をそのまま載せた新聞の非道徳的な態度に対して、批判しておかなければならない。

 まず第一に大きな問題なのは、張氏の言い分をそのまま載せたという記事の作り方である。ジャーナリストの基本として、誰かから情報の提供があったときには、それが真実かどうか裏を取る作業は欠かせない最低限の心得でなければならない。しかるに、これら三新聞社の記事とも、事実についての裏を取るということはまったくなしに、張氏の主張をそのまま紹介している。東京新聞と朝日新聞の記者は私にコメントを頼んできたので、私は「まだ最終的な結論が出ていないし、まだ未公開の内容に関することなのでコメントはできない」と断ったとともに、「張氏の言っていることは事実でないから、懇談会の最終結論が出るまで待った方がいい」と忠告したにもかかわらず、朝日の記者は「もう載せることは決まっている」と言って、聞く耳持たずという態度であった。

 

張氏の嘘を確かめなかった朝日と東京新聞の不思議

 朝日と東京新聞の記者は異口同音に「毎日に載ったので、うちも取り上げることにしました」と言った。その毎日の記事の最後には「同懇談会の内容は区のホームページで見ることができる」として荒川区のHPのアドレスが載っている。朝日と東京新聞の記者は懇談会の内容を見なかったのだろうか。見なかったのなら、ジャーナリストとしての基本をないがしろにしたという意味で記者失格である。見たのなら、張氏の嘘を承知で記事にしたということになる。確信犯である。

 もしこれらの記者が警察官であったら、どうであろうか。誰かからある団体が悪事を企んでいるという情報提供があったとして、警察が裏付けを取らないで、その情報を鵜呑みにして踏み込んだり世間に発表したら、新聞は血相変えて告発するだろう。

 しかし、今回三つの新聞がやったことは、まさにこの架空の警察官がやったことと同じである。毎日は私に何の連絡もなかったし、朝日と東京は私が事実でないと言っているのに、裏付けをとらなかったどころか、一方的な批判だけを載せた。ジャーナリズムの巨大な影響力を考えると、こういう一方的なマスコミ暴力は絶対に許せない。被害者は訂正のしようがないのであるから、つくづく恐ろしいことだと実感した。松本サリン事件のときには、河野氏に対する予断から氏の人権を傷つけたのは、周知の事実である。その教訓から何も学んでいないのか。

 

とくに悪質な『東京新聞』の記事

 これはまさしく言論による暴力であるが、その点ではとくに『東京新聞』の記事が悪質であり、記者のモラルに大きく反していることを指摘し、抗議するとともに反省を促したい。書いた記者の名前は出田阿生(いでたあお)、女性である(これも検索してみれば、張氏とのつながりが分かる)。彼女は前の晩に私に電話をしてきて、私のコメントを頼んだので、「審議は途中であり、また張氏の話は未公開の部分についてなので、コメントはできない」と断ったのに、「林会長の話」が載っている。これは明確な信義違反であり、記者としてのモラルに反した行為と言わざるをえない。

 さらに出田記者は「国の動きと『まったく別の条例』を作ろうとしている区の思惑が透けて見える」と書いている。私が電話で、何度も「張氏だけの話から判断して記事を書かないように」「答申案の全体が出て、それを見てから判断して記事を書くように」と忠告したにもかかわらず、張氏の話だけから「区の意図」を透視(?!)してしまったようである。なんとも軽卒かつ偏った記事の書き方だと言わざるをえない。

 さらに悪いことには、最後に担当課長の話として「次の会合を開く見通しすら立っていない」と書き、記者の結論として「紛糾は当分収まりそうにない」と書いている。まるで張氏の辞任のために会合が開けなくなっていて、次の会合を開くメドがたっていないかのように見せ掛けようとしている。これはまったく事実と違っている。担当課長はそのような言い方をしていないと言っている。ただ「次回は延期になって、日にちはまだ決まっていない」と言っただけであり、延期の理由はただ事務的な準備ができないだけのことである。(ちなみに朝日は課長の話として「張氏の辞任は残念。今後は16人で議論を進めたい。延期は事務的な理由で、張氏の辞任とは関係ない」と書いている。)

 荒川区役所には、この記事が真実だと思った人たちから、抗議やら質問やら多くの電話がかかってきたそうである。それだけでも多大な迷惑をかけている。懇談会に対する名誉毀損であり、懇談会とその委員への中傷と言える。

 

7 資料 張氏と新聞社への抗議文 


張學錬氏への抗議文

 貴殿は当懇談会を辞任した直後に新聞社等に対して誤った事実を多く含む情報提供を行い、それが『毎日新聞』平成16年4月29日付、『朝日新聞』平成16年5月7日付、『東京新聞』平成16年5月7日付において記事になった。

 それらの記事の中で貴殿が語ったとされる内容には多くの事実の間違いがあり、それらは当懇談会に対して誤ったイメージを与え、名誉を毀損するものである。

 また、貴殿は、未公開の内容を断片的に伝えることによって、当懇談会に対する歪んだ印象を与えた。未公開の内容を、それも間違えた形において、また断片的に漏らすことは反道徳的な行為であり、到底是認することのできないものである。

 よって、当懇談会は貴殿に対して、今後このようなことのないように厳しい抗議の意を表するものである。

 

新聞社(『毎日新聞』『朝日新聞』『東京新聞』)への抗議文

 貴紙の平成16年○月○日の「  」(注)の記事は、張学錬氏の一方的な情報提供をもとに書かれたものであるが、張氏が語ったとされる話には多くの事実の間違いが含まれており、その間違いは既に荒川区のホームページで公表されていた当懇談会の内容に照らしても簡単に間違いと分かるものが多く含まれている。それらの間違いを確認もせずに一方的に記事にするのは、公器たる新聞として行ってはならない、道徳に反する行為である。

 また張氏は、未公開の内容を断片的に伝えることによって、当懇談会に対する歪んだ印象を与えている。未公開の内容を、それも間違えた形において、また断片的に漏らすという反道徳的な行為に呼応する形で、その内容をそのまま記事にすることは、新聞の中立・公正の原則に反するものと言わざるをえない。

(以上は3紙に共通の部分、以下は『朝日新聞』『東京新聞』に対する部分)

 とくに会長が記者の取材に対して、「それらの内容は未公開であるから、コメントには応じられない、内容が公開されるまで記事にするのは待ってほしい」と要請したにもかかわらず、一方的に記事を発表したことは、新聞の倫理に反する行為と言うべきである。

(以下、3紙に共通の部分)

 したがって、当懇談会は貴紙に対して、厳しく抗議するものである。

(注)毎日新聞の場合、4月29日付「荒川区男女共同参画基本条例案『法の趣旨と逆方向』 懇談会委員の弁護士辞任」 

(注)朝日新聞の場合、5月7日付「荒川区の男女共同参画社会懇談会 弁護士が委員辞任 『差別なくす姿勢みられぬ』」

(注)東京新聞の場合、5月7日付「『性の区別』めぐり対立」(「基本法と一線画す会長提案」、「会長案で審議紛糾」「あすの最終会合開けず」)

 

8 張氏の「辞任の理由」 

 (張氏は辞任にさいして2004年4月27日付で区長宛に「辞任届」を提出したが、それに「辞任の理由」という文書を添付した。これは区長宛の文書であり、公表されていないので、勝手に引用できないものである。しかるに北田暁大氏のHPにそのほとんど全文が引用されている。当然、張氏の承認があるはずである。したがって私もその部分をここに引用し、それに対して私が区長宛に提出した反論文を以下に紹介する。)

 

 この懇談会は、言うまでもなく、男女共同参画社会基本法及び(東京都における)東京都男女平等参画基本条例の制定を受け、同法14条に基づき特別区として市町村男女共同参画計画を定め、その基本的事項について議論するため(及び施策のあり方について議論するため)に召集されたものと理解しております(設置要綱)。

 しかしながら、実際に集まった委員の方々は、基本的にこの法律自体を全く勉強していない方がほとんどであった(法律の専門でない方が多い以上致し方ないのですが)にもかかわらず、会長(議長)となった林道義委員は、この法律の基本理念・構成・条文・制度等について何ら資料配布も解説もせず(会長・副会長の書いた基本法に批判的な文章のみ配布し続けていましたが)、懇談会全体でこれらについて勉強することもなく、各委員が消化不良のままいきなり難しい論点を提示して大上段に振りかぶった議論を始めるということからこの懇談会を立ち上げました。

 実際、これまでの懇談会の議論は、基本法がもっとも重視している、男女の固定的な役割分担観に基づく制度や慣習を克服するという試みを完全に否定し、この社会に残存する性別に基づく固定的役割分担に対して「沈黙する」ことを確認するという内容でした。この点について、いくら固定的役割分担を克服すべきであるとの主張をしても会長はこれを頭から否定し、あるべき男女共同参画社会とは言えない現状の温存をもくろんでいました。

 その一方で、従前の荒川区の提言や基本計画については、ジェンダーフリーを推進するとして、中身を吟味することすらせずに頭から否定してしまいました。それから、これまでのジェンダーに関する各地での取組のうちで実際にあったかどうかさえ確認されていない怪しく極端な事例をことさらに引き合いに出して、ジェンダーフリーの弊害として警戒を呼びかけ、その反対にジェンダーバイアスがもたらす弊害に対しては完全に沈黙する、というより、男らしい・女らしいということの尊重という言い方でむしろジェンダーバイアスを強化するかのごとき態度をとってきています。

 その他議論の進め方一つとってみても、会長は自分の気に入らない発言は言下に否定し、懇談会内でろくに議論すらさせず、その一方で自分と考え方の近い意見については偏重するという、極めて偏頗な議事進行をしてきたわけですが、そうしたことを度外視しても、この懇談会の議論は、基本的な法律の学習すらしないまま、基本的な概念や歴史的背景についても一切考慮しないまま、ただただ手抜きの条例案を急いででっちあげるという極めて「不真面目」なものであったと評価するほかありません。

 したがって、これまでの懇談会で確認されたことは、その多くが基本法に違反するか、基本法の理念に反する内容であり、あるいはこれとは無関係なものであって、その反対に基本法の理念を実現する観点からすれば、全く何の成果もないものでした。

 

9 張氏の「辞任の理由」への会長反論全文 

 

  張学錬委員の辞任について

              平成16年4月30日

 

荒川区長 藤沢志光様

荒川区男女共同参画懇談会委員各位

荒川区男女共同参画懇談会陪席者各位

 

      荒川区男女共同参画懇談会会長 林道義

 

 張学錬氏より平成16年4月27日付をもって委員辞任届が提出されました。

 辞任届には「辞任の理由」が添えられていますが、その大半は会長にたいする誹謗中傷であり、また懇談会が確認した内容を「基本法の理念を破壊する策動」であると断じているのも同じく誹謗中傷としか言いようがありません。

 よってここに張学錬氏に反論し抗議するとともに、その民主主義に反する行動を批判するものであります。

 

 一 民主主義に反する行為 

 

 まず指摘しなければならないのは、自分の主張が通らないからといって辞任するのは、民主主義の原則に反しているということであります。言うまでもなく、民主主義的な会議においては、自分の主張が通らなくても、全体の決定に従うのが原則であります。自分の思い通りにいかないからといって途中で義務を投げ出すのは、無責任のそしりを免れません。

 もし議長が横暴であるとか明白に誤りを犯したのに改めないとか、議論もしないで強行裁決したという場合があれば(もちろん私は議長として横暴な言動や誤りは全く行っていないと確信していますし、そうした批判は他の委員からは全く出ていませんが)、議長のリコールを申し立てるというのが、正常な異議申し立ての手続きというものです。そうした手続きなしに、いきなり辞任をして、ただちにマスコミに通告したり、非公開の懇談会の内容(しかもまだ決定もしていない)をもらすという行動に出ることは、民主主義に反するばかりか、信義にもとる反道徳的な行為と言わざるをえません。

 

 二 会長に対する事実を歪曲した上での中傷 

 

 つぎに「辞任の理由」の大半が会長である私に対する批判になっているので、それに対して逐一反論したいと思います。

 第一点。「会長(議長)となった林道義委員は、この法律の基本理念・構成・条文・制度等について何らの資料配付も解説もせずに」。

 これは事実に反しています。男女共同参画社会基本法をはじめ多くの自治体の条例を配布しています。

 第二点。「懇談会全体でこれらについて勉強することもなく」「基本的な法律の学習すらしないまま」。

 懇談会は勉強会ではありません。懇談会の中で「学習会」をするなどいう話は聞いたこともありません。委員は各自基本法その他の男女共同参画条例について勉強し、それぞれの見解を持って参加していることを前提にして議論を進めるのは、議長として当然のことであり、勉強会や学習会や解説をしなかったといってなんら非難される謂われはありません。

 第三点。「難しい論点を提示して大上段にふりかぶった議論を始めるということからこの懇談会を立ち上げました」。

 懇談会の議論は、まず争点になりそうな基本的な論点から始めました。たとえば、ジェンダーフリーについてどう考えるか、性別分業をどう考えるか、家庭での義務を果たすことと労働形態の関係等、すべて男女共同参画に関する基本的な問題であり、男女共同参画に関する懇談会で討論すべきことは当然すぎるほど当然であります。

 またそれらの論点は決してそれ自体「難しい論点」ではありません。審議の中で用語や論じ方が難しいという苦情は出ましたが、論点そのものが難しいという意見は出ていません。それを「難しい論点」と言い「大上段にふりかぶった議論」と言うのは、言いがかりというものでしょう。

 なお、いくつかの論点について最初に討論することは張氏も含めて全員が賛成したことであり、今ごろになって異を唱えるのは不可解です。

 第四点。「現在に至るも関連資料・論文や統計に基づいた中身のある議論を全くせず」。

 関連資料・論文や統計は各委員の要請に基づいて逐一配布しており、各委員はそれらを参照した上で意見を述べているはずです。もちろん資料の一つ一つについて、いちいち議論することは時間的に不可能ですが、委員が必要に応じて資料の参照を求めつつ発言することは可能であり、また事実そのような場合も実際にありました。

 第五点。「会長は自分の気に入らない発言は言下に否定し、懇談会内でろくに議論すらさせず、その一方で自分と考えの近い意見については偏重するという、極めて扁?な議事進行をしてきた」。

 まったく事実に反した中傷です。実際には会議録を見れば明白なように、私は私の意見に反対する意見の方に、より多く発言の機会を与えてきています。とくに張氏は突出して発言が多く、第六回の後半と第七回では委員発言全体の半分以上が張氏の発言であり、ほとんど張氏と他の誰かとの論争という形になっていました。もし私が「自分の気に入らない発言を言下に否定し」ていたなら、張氏はほとんど発言できなかったということになるはずです。「自分の気に入らない発言は言下に否定し」などという言い方がいかに事実に反しているかあまりにも明白です。

 第六点。「ひたすらゆがんだ自説を押しつけるということにのみ汲々として」「中身としては基本法を完全に骨抜きにするためのまとめ案を作り上げようとしています」。

 「ゆがんだ」とか「骨抜きにするため」という表現は張氏の主観的な偏見による悪口にすぎず、そういう見方の方が歪んでいると言わざるをえません。「骨抜きの意図は、弊害と是正という観点で明瞭に集約されています」と書かれていますが、「弊害と是正」という観点があるとどうして「骨抜きの意図」がある証拠になるのか、まったく理解できない言いがかりであります。

 

 三 懇談会(委員)に対する侮辱と中傷

 

 張氏は懇談会の委員や議論の内容についてまったく根拠のない数々の中傷と悪口を述べています。それらに対して逐一反論しておきたいと思います。

 第一点。「実際に集まった委員の方々は、基本的にこの法律(男女共同参画社会基本法)自体を全く勉強していない方がほとんどであった。」

 このように断定をする根拠は全く示されていない。一人一人をテストしてみなければ、このような断定はできないはずです。こうした断定は委員各位に対する失礼であると同時に侮辱であると思います。同様に(基本法について)「各委員が消化不良」であったというのも、各委員に対する侮辱であると思います。

 逆に張氏こそ、フェミニズムの問題そのものについても男女共同参画社会基本法についてもきわめて不勉強であり、第三回目までは張氏の発言の中に男女共同参画社会基本法についての言及はありません(第四回目は欠席)。張氏は会議のさなかに男女共同参画社会基本法やその解説書を読みふけるというありさまで、基本法について発言しはじめたのも第五回目以降であり、それもただ第四条についてのみ発言したにすぎません。他人の不勉強を言いつのる前に自分の不勉強を反省するのが先でしょう。

 また張氏は事前に送付した会議録等の資料をきちんと読んでいないまま見当はずれの議論をしては時間を空費させる等、事前の勉強や準備をおろそかにしていた事実があります。

 第二点。「これまでの懇談会の議論は、基本法がもっとも重視している、男女の固定的な役割分担観に基づく制度や慣習を克服するという試みを完全に否定し」。

 「固定的な役割分担」については懇談会でも多くの時間をかけて議論し、到達した結論は「固定的」という言葉は何を意味しているか分からないということと、基本法第四条は全体として何を言いたいのか理解不可能である、ということでした。理解不可能な条文を基にすることはできないという結論になりました。

 「いくら固定的役割分担を克服すべきであるとの主張をしても会長はこれを頭から否定し」と書かれていますが、私は「頭から否定」したことはありません。私が述べたことは「固定的役割分担克服ということが専業主婦形態を否定する意味ならば、それは専業主婦に対する差別であるし、また本懇談会が最初に確認した " 共働き形態も専業主婦形態もともに平等に認める" という原則に反している」ということです。「固定的」という言葉の意味が不明であるという意見に対しては、結局張氏からは明確な説明は聞かれませんでした。

 第三点。「従前の荒川区の提言や基本計画については、ジェンダーフリーを推進するとして、中身を吟味することすらせずに頭から否定してしまいました」。

 区長の委嘱のご挨拶の中に、「これまでの懇談会の報告書にこだわることなく、新しい提言をしてほしい」というお言葉があり、それに則って今までのいきさつにこだわらず報告書をまとめるよう努力してきました。したがって今までの報告書を全面的に検討することから始めなかったのは当然です。

 ただし、今までの報告書を「中身を吟味することさえせず頭から否定した」というのは事実に反しています。審議の中には今までの報告書に関する意見も出ており、必要に応じて議論の対象にしました。

 第四点。「これまでのジェンダーに関する各地での取組のうちで実際にあったかどうかさえ確認されていない怪しく極端な事例をことさらに引き合いに出して」。

 懇談会では「実際にあったかどうかが確認できない」ような事例が出されたことは一度もありません。出された事例はいずれも責任ある大新聞に報道された事実や委員が実際に見聞した事例ばかりであり、「怪しい」事例など一つも言及されたことはありません。これも謂われなき言いがかりです。

 また「男らしさ・女らしは大切だ」という主張が「ジェンダーバイアスを強化する」というのも、理解不可能な言いがかりです。

 第五点。「この懇談会の議論は」「ただただ手抜きの条例案を急いででっち上げるという極めて『不真面目』なものであったと評価するほかありません。」

 この辺りにになると、本当に真面目に懇談会の議論に参加していた人の言葉かと疑うほどの、「不真面目な」評価としか言うことができません。「手抜き」とか「でっち上げる」「不真面目」という言葉は、日曜日や夜間になる場合があっても真剣に議論を進めてきた委員の皆さんに対する失礼であり侮辱だと思います。

 たとえば、第七回などは激論が展開され、2時間の予定が3時間20分にもおよびました。その論争も当の張氏を中心になされた経緯があります。張氏は自分が中心になった議論を「手抜き」だとか「不真面目」だったと考えているのでしょうか。

 第六点。「これまでの懇談会で確認されたことは、その多くが基本法に違反するか、基本法の理念に反する内容であり」「基本法の理念を実現する観点からすれば、全く何の成果もないものでした」。

 懇談会が作成した条例案を見れば明らかなように、この案は、どの点を取っても男女共同参画社会を作っていくという基本法の理念を実現する内容になっています。「基本法に違反する」「基本法に反する」内容はただの一箇所もないと思います。「全く何の成果もない」というのは、内容と関係なくただ懇談会を否定したいという衝動を満足させるための言辞と言うしかありません。

 第七点。当懇談会が「基本法の理念を破壊する策動」をしているというのも、根拠不明な言いがかりであり、悪質な中傷です。

 

 以上、逐一反論してきましたように、張氏の主張は多くの点で事実に反しているばかりか、何の根拠もない中傷に満ちており、人間として行ってよい限界を踏み超えた恥ずべき行為であり、名誉毀損と言っても決して言い過ぎではありません。これらの点について会長として張氏に厳重に抗議するものであります。

 

 

 しかも張氏は、一部マスコミに辞任したことを知らせ、張氏の主張が4月29日付『毎日新聞』に掲載されました。その中には懇談会の未公開の内容が記されています。

 非公開(または未公開)の内容を外部にもらすことは、委員(または元委員)としてやってはならない信義違反であり手続き違反です(公開することが決まっている場合にも、その前に内容を委員全員で確認した上で、所定の方法で公開すべきであり、その前に委員個人が勝手に公開することは許されないことです)。

 さらに張氏は意図的に誤った情報の提供の仕方をしています。すなわち「条例に盛り込むべき内容の整理案をまとめた」として「整理案」の文書だけを記者に見せたのでしょう、記事には「整理案は男女共同参画の基本理念や推進体制より『乱用の防止と是正』の項目に多くの紙幅が割かれ」と書かれています。

 「整理案」とは、すでに決定している7つの「論点」(論争になりうる論点について、予め討論し確定した内容)を除く内容で、委員の中で基本的に異論のない内容の項目だけを列挙したものであり、これから文章化するに先だって、これらの項目と順番でよいかについて了解を求めたものです。項目を列挙したものですから、量が少ないのは当然です。

 ただし「乱用の防止と是正」の部分については、今までの「論点」と同様に異論が出そうな部分なので、内容を具体的に出して討論していただいたものです。したがってこの部分だけが紙幅が多くなっているのは当然です。もちろんこれらのことは張氏も当然充分に承知していることです。

 ところが記事のように「基本理念や推進体制より『乱用の防止と是正』の項目に多くの紙幅が割かれ」と書かれると、いかにも基本理念や推進体制より「乱用の防止と是正」の項目が重視されているような印象を与えます。こうした誤った印象やイメージを与える情報の提供や記事の書き方は反道徳的だと思います。

 総じて今回の張氏の辞任劇とマスコミへのリークは、会長の運営と懇談会のあり方に問題ありと見せかけるための策動であり、火のない所に発煙筒を焚くような不明朗な策動をしているのは張氏の方です。この点についても張氏に強く抗議したいと思います。