フェミニズム批判  

14 しつこく繰り返されるエセ調査研究

 

   ──「母親の就労は子の発達とは関係ない」

        (平成15年7月14日初出)

 

 「母親の就労は子の発達とは関係ない」という結論に達した「研究」「調査」は限りなくある。しかし、いくらウソの「研究・調査」を積み重ねても、ここ5年くらいのあいだに起きた十指にあまる凶悪な犯罪を起こした少年の家庭では、判で押したように母親がいないとか共働きであったという事実を隠すことはできない。

 母親の就労が子供の心になんの影響もないということはありえないのである。

 母親の就労が発達に影響するか否かは、これも私が何度も強調してきたように、思春期における現われを観察しないでは、何も言うことができないのである。すべての少年犯罪はまさにその思春期に起きているのである。この重い現実から目をそらしてはならない。

 現実から目をそらさせるという意味で、「母親の就労は子の発達とは関係ない」というエセ学問やエセ調査は、まさしく犯罪的と言うべきだ。

 

問題のありか

 フェミニストたちが持って回る「母親の就労は子の発達とは関係ない」という研究を、私はその都度、批判してきた。いずれも方法論的に重大な欠陥のあるものであり、とうてい「学問的研究」の名に値しないことを証明してきた。『母性崩壊』では当時フェミニストがしきりに宣伝していたゴットフライド夫妻の「研究」と、いわゆる「大阪レポート」の欠陥を指摘した。最近では菅原ますみ氏の研究の方法論的欠陥を批判した(本HP「母性とフェミニズム」13)。

 こうしたエセ研究は、何度でも装いを新たにして「より最新の、より包括的な」というふれこみで現われる。しかし必ず同じ欠陥とごまかしを含んでいる。それもそのはず、研究を始める前に結論が決まっているからである。すなわち「母親の就労は子の発達に悪影響を及ぼさない」ということを証明するために行われる調査なのである。始めに結論ありき、これがこの種の「研究」の公然の秘密である。

 

フェミニストの巣窟・内閣府の「青少年の育成に関する有識者懇談会」

 同様のごまかしの最新版は、平成14年4月に組織され平成15年3月に報告書を提出した内閣府の「青少年の育成に関する有識者懇談会」である。これは一年間にわたって14回の会合を開き、延べ34時間を費やしたそうである。

 委員の顔ぶれを見て、驚いた。今をときめく札付きのフェミニストがずらりと顔をそろえている。たとえば、座長の本田和子・お茶の水女子大学長は、アリエスの『「子供」の誕生』をふまえて、子供を保護と教育の対象とした近代家族と近代学校を否定し、既成の「子ども観」「成長観」「家族観」は破綻しつつあるから、新しい「子ども─大人関係」を樹立し直せと言っている(『変貌する子ども世界』中公新書)。その新しい「子ども─大人関係」は、「子ども」とは「精子と卵子の結合の所産に他ならず、その結合を成功させるための技術的営み以外のなにものでもないとすら言い得る」という「新しい」「子ども観」をもとに構築されるべきだと言っている。これは最も即物的な親子関係の捉え方であり、まるでラディカル・フェミニズムの世界観と同じである。

 こういう座長のもとに、たとえば例の落合恵美子氏(本HPの「家族」1-2)、広田照幸氏(本HP「母性とフェミニズム」9、「時事評論」11)、といった名前が見える。他も押して知るべし、フェミニズムの息のかかった者たちが多いのであろう。

 

あいも変わらぬエセ学問

 報告書の最後に「資料」がついており、その最後に(フェミニストは最後に重要な党派的内容を滑り込ませる習性がある)「保育が子どもの成長に及ぼす影響に関する調査」という項目がある。

 網野武博・上智大学文学部教授の研究をもとに「内外の研究結果」をまとめたと称している。

 細かいデータや研究方法については、いずれ詳しく批判するが、ここでは結論を見ておこう。まず外国の調査研究文献では、「保育が子どもの発達にプラスの影響を持つという分析が16点、マイナスの影響を持つという分析が7点、残りの71点は有意な差は出ていないというものであった」。

 中でもアメリカの国家プロジェクトである「大規模な縦断調査」の結果を見ると、

 

 一般的に言えば、長時間保育を受けていても主に母親が保育をしていても、保育の要素よりも家族の特徴と母子関係の質の方が子どもの発達に強い関連性を持っている。

 

 生後3年間における母親の就労は、それだけでは子の発達に対して有意な効果はみられないこと、……が明らかになった。 

 

と結論している。

 

 また国内では「菅原ますみ他による調査が規模・期間とも最大である」と前置きした上で、

 

 三歳未満の母親の就労が児童期の問題行動や親子関係の良好さとは関連しないことが明らかになった。むしろ母親が就労している方が、問題行動が少なくなることが示唆されている。

 

と述べている。

 フェミニストのあいだで鳴り物入りで宣伝されている、この菅原レポートがいかに杜撰な方法論的欠陥をもっているかについては、前記の私の批判を参照されたい。最大の欠陥は、「関係ない」という結論を出してほしいと思っている当の母親に「子供の問題行動はありますか」と質問するという、およそ客観性というものを無視した方法で調査をしている点である。その他、追跡が児童期までで、本当の問題が出る思春期まで行っていないとか、「発達」や「問題」という概念から情緒面がはずされているなど、肝心のところが欠けている欠陥調査なのである。

 

結論に含まれるごまかし

 全体の結論は「保育所に預けるかどうかより、母子関係の質の方が大切」だから、「保育所に長時間預けても大丈夫ですよ」と保証することが目的なのである。

 なるほど一般論として、「母子関係の質の方が大切」と言われると、たいていの人はだまされてしまうだろう。この命題のごまかしは、「他人に保育をまかせる」ことと「母子関係の質」をなんの因果関係もないかのように切り離しているところにある。

 たしかに、いくら長時間保育所に預けても、母子関係の質が確保されれば問題ないと言えるかもしれない。しかし問題なのは、長時間保育所に預けた場合、母子関係の質が確保できるのかという点である。間違いなく「否」であろう。一日に11時間だの13時間という保育時間を確保することを政府や自治体に認めさせておきながら、「保育の質」や「母子関係の質」さえよければ問題ないと主張するのは、欺瞞以外の何物でもない。

 「保育所での保育」と「母子関係の質」とは反比例の関係にあることは火を見るより明らかである。この両者の関連を故意に無視した結論は、百害あって一利なしと言わざるをえない。

 こんな馬鹿馬鹿しい欺瞞的な結論を出すために、14回も会合を重ね、税金を無駄遣いしたとは、内閣府というのは、どこまで腐っているのか。夫婦別姓に関するインチキ世論調査をしたのも内閣府であった。

 フェミニズム周辺には、学問をイデオロギーに従属させる曲学阿世の徒が多いが、それを重用する内閣府その他も困ったものである。

 日本国民もいいかげんに目を覚ましてほしいものである。

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