News Letter No14 2016年4月23日 国内活動
 インドネシアで読み聞かせー実践報告会 

 場所:発達支援事業所ソラアル(チェルク事務所)

2016424日(日)、葛飾区亀有ソラアルの会場をお借りし、教具や絵本に囲まれたほのぼのとした環境で行われました。インドネシアのコーヒー「Kopi」やおせんべいをつまむなど、寛いだ雰囲気のなか実施されました

●参加者:9名 (子ども3名)   

●チェルク設立のきっかけ       
 1996年から松本代表が個人的に訪れていたインドネシア・バリ島。2003年から縁があってソロのCBR-DTCCommunity Based Rehabilitation  - Development Training Center)での職員養成のための活動が始まりました。その後、ジャカルタジャパンネットワークが支援している絵本を寄付する活動に参加。2009年ジョグジャカルタ 「アウリア」(養護施設)に訪問したおり、施設長による読み聞かせの様子を見学しました。その時の施設長の語りのうまさに感動しました。子ども達が本の周りに自然に集まる子供たちの姿に、このような場面を通して子どもたちへの読み聞かせがひろまる潜在的な力がこの国にはあると確信しました。絵本の導入に適切な年齢として幼児教育、特別支援教育に焦点をあてて活動してきましたが、教師が読み聞かせをするより、子供に読ませようとする教師の姿に、研修を行うことの大切さを感じました。そこで、「The Storybook JourneyPathways to Learning through Story and Play 2011,Sue  McCord」を参考にして「Storybookカリキュラム」を実施する活動をすることが、子供たちにより多くの利益を還元できるのではと考えました。その活動を実践するためには、団体を立ち上げて組織的な活動をすること、そして助成金などの資金を得ることを考え、2013612日「子ども支援チェルク」が設立されました

     
 ●実践の報告
1.これまでの実践から(松本美代子)
       過去、2009年、2010年に、広島祈りの石の助成を受けて図書コーナーを作る活動を行いました。2014年から幼児教育と特別支援教育に焦点を当てた活動をはじめて、今年度の2016年度で3年目になります。助成は引き続き広島祈りの石より受けています。支援する地域は、毎年カウンターパートのムンタリ・ファジャールと話し合いながらを決めています。2014年度はバリ州バドゥン県と中部ジャワ州ソロで計13か所。昨年度2015年度はバリ州クルンクン県13か所、中部ジャワ州ソロ3か所、
16か所に図書と研修を提供してきました。

 2015
年度の支援先のクルンクン県は観光地から少し離れた素朴な地域。ソロは人口100万の文化、経済において歴史のある都市。(現大統領ジョコ・ウィドドの出身地) 同じインドネシアでも、それぞれに文化的背景の違いがあります。しかも、それぞれの島ごとに言語が異なるほど様々な違いがあります。ですから、現地の事情に合わせた活動の大切さを感じています。
去る12月に図書の寄付と研修会を行いましたが、この42日には、事後研修を行いました。そこで、先生方の経験談を聞くと、読み聞かせの大切さの意味が少しずつ浸透してきているように感じました。それでも、先生方の「子どもたちのリクエストが毎回同じである」「子どもたちが乱暴に本を扱うので破れてしまう」「読んだ後の片付け方について手立てはないか」などなど、素朴な問題で困っている先生方の声を聞きました。子どものリクエストが毎回同じであることについては、まだまだ子どもたちに紹介されている本の数が少ない中での現象のようです。子供たちの心に入り込む物語の選択と与え方などの検討が必要のようです
また、本の片付けに関しては「きちんとそろえなさい」などの言葉かけだけではなく「あら?本さんが泣いているのが聞こえるなあ?」とか、片付け方の手本を実際に見せるなど、幼児期の発達段階に沿ったはたらきかけや手立てを提案しました。

 クルンクン県の
幼児教育協会会長、ウィダヌ氏は積極的に図書の活動に取り組んでいます。12月の研修会のビデオを県の行政に 見せたところ、理解を得て、全幼稚園を対象にした様々な支援が始まることになりました。大きな成果で、喜んでいます。
  ・県内全幼稚園に、絵本を約40冊配布する。
  ・6月にエコロージーをテーマに、廃品を利用した造形イベントを行う。(スイミーのお話しを参考に)
  ・7月「おおきなかぶ」のお話を参考にして、「協力」をテーマにしたイベントを行う。
 
 2.造形教育を実践してみて(土屋 薫)
 ・ソロ、クルンクン双方でワークショップを行いました。どちらも事前に教員に向けて宿題を出し、彼らの造形能力の実際を伺  う一端としました。再現的な表現にとらわれているが繊細で丁寧なよさもあります。反面、空想性、独創性、ダイナミックさ  には欠けると判断しました。今度この部分の強化を狙いたいと思います。
 ・ワークショップでは上手い下手の差が出にくい教材を取り入れました。スイミーの読み聞かせの後「お魚の世界」という雰囲  気づくりから入りました。絵の具で紙にランダムな模様を描いたり、ビニール袋でお魚を作ったりした後、目やひれ、体の模  様を自由に飾りつけました。時間がたつにつれそれぞれのよさが発揮されたお魚が出来上がっていきました。出来上がった後  の作品の共有(みんなで遊ぶ、飾り付ける)まで行うことが出来ました。
 ・「自由に」造形活動をさせるのは日本でも相応の工夫が必要です。ましてやインドネシアで「自由に」を謳うには一層の工夫   が必要とされると強く感じました。
 ・言葉の壁が大きく、意に反した反応が返ってきた際に、言葉だけで修正できないもどかしさを感じました。
 3.質疑応答 
 ・絵本の使い方はどうか?
→絵とき風の読ませ方に陥る危険がある
  (絵本の絵を使って、これは何? 何色? いくつある? などの知識を教える活動)


 ・絵本にどんな教育的価値があると考えられているのか→ さらなるリサーチが必要
  (教科書としての「本」の認識を持っている教師が多いような印象を持っているが、あくまでも個人的な印象レベルである)

 ・教員養成課程に絵本を読む活動が組み入れられているのか? →さらなるリサーチが必要。
  Child Research Net(http://www.blog.crn.or.jp/)によれば、教育の知識を持った教師、免許を持った教師の増加が国家  政策レベルでも課題とされており、資格認定プログラムの受講によって認定される。その内容の詳細はわからないが、造形教  育のプログラムがあることは写真などの資料でわかる。絵本を使った取り組みについてはまだ情報が見つかっていないので、
  今後も調査したい。

 ・クルンクン県での成果と課題を教えてほしい → 幼児教育協会長によれば、子ども達に人気の本を調査したとのこと。あく までも、協会長が経営する幼稚園でのことらしいが、「おおきなかぶ」が1位、2位がインドネシアの「太陽神」の民話だった (「Equinox day」(春分の日・秋分の日)ができたお話し。絵が芸術的で美しい。)これも成果と言えるだろう。
 ※その他の変化は前述。課題としては、教師が絵本を読んでいないのではないかと思われること。時間がないこと、習慣がない  ことなどが推察されるが、お話が上手な教師もいるとの報告なのでお互いが刺激しあう機会を設けることが大切だろう。
 ※協会長の存在は大きいので、今後も協力関係が継続できるとよいと考えている。
 
4.インドネシア語で「大きなかぶ」の読み聞かせ
 松本代表によるインドネシア語で「大きなかぶ」の読み聞かせが行われました。外国語ながら、よく知られたお話だということ もあり、繰り返しのシチュエーションやフレーズの心地よさに浸ることができました。同じ会場にいた、遊びに夢中の参加者の お子さんも思わずフレーズを口ずさんでしまうなど、絵本の言葉の力を改めて感じました。

 ※日本人が実は知っているインドネシア語を紹介。例えば、ウルトラマン ティガ。ティガは「3」。「おおきなかぶ」のお話  の中で、日本語では「うんとこしょ、どっこいしょ」では、「Satu Dua Tiga!  イチ ニー サン!」で訳されています。
  インドネシアでみんなと一緒に引っ張るときにに、この掛け声で引っ張っている場面をよく見ます。この掛け声がページごと  に繰り返されるので、すぐに覚えられます!
                      
 報告会終了後も会場内に展示されたインドネシア語の絵本に触れてみたり、インドネシアの教育事情について質問や話し合いが続きました。我々の活動そのものだけでなく、国際協力について理解と関心が喚起でき、大きな手ごたえを感じました。
 今後は、どのように国内還元活動を行うかが私たちの課題です。