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スリット


by クラザメ


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静寂の内に従う影法師でさえ、その主の際立った造作を確信させる美身が、音も立てずに歩を進める。
回廊を、玉座を、庭園を――――陰影に佇む荒涼とした錆びた城を幽鬼の如く。

玉座を核とする古城は原子の領域。
量子の揺らめきの如く、その姿は如何様にも存在した。
時を同じく、しかも別々の場所に。

不可思議ではあるが、その麗容には寧ろ相応しいかもしれない。

「‥‥‥‥‥‥」

時間の停止した水面の様な回廊のただなかで、
不意に影は静止し、四角く切り取られた窓から差し込む月光を仰いだ。

薄紅とも青銀ともとれる色をした透けるような真円が浮かんでいる。
皓皓と自ら発光しているような月を美身が眺める。
自身の名とは違う淡き白輝に、ふと朱い月は思う。

この月は欠けたる事があっただろうか?
うつつの時間に取り残された世界、夢の狭間にある場に時の流れはあるのか。
夢の主が眠る間のみ存在し得るならば、昼の最中には一体?
あるいは深海に眠る蜃の夢の如く、常なる夢として存在するのか

―――――埒もない。

世界の在り様など、それこそ大いなる何者かにしか解るまい。
まさしく無為な思考の極みであった。
されど詮無き弄びをしてしまうのは、内面を徐々に侵食するものを意識せぬ為だ。

また歩き、また立ち止まり、何時しか眺める光景は、見えぬ埃のさえ不変な古城の一箇処。
過去も現在も、そして未来でも同じ視界である筈が、何者かを浮かべずにはいられない。
何をしたか、どんな言葉を交わしたか、触れた心地はどうだったのか?
それらは全て魔眼の主と繋がってしまう。
ただ一つの名へと収束するのだ。

「―――」

額に手をあて、朱い月は声を出さずに苦笑した。
やはり名状し難い特別な感情を認めずにはいられない。
気が付けば自身の内を占領する心の動きを。

冷徹な意識の大海へと小石を投げ入れた波紋は、すぐにも霧散する些細なものだった筈。
否、だからこそ口許から微妙な歪みを排除できない不可解さへと、それは繋がるのかもしれない。
細切れにした邂逅から幾度、夢の身はいつしか寂寥さえ感じる女へと染められていた。

「‥‥‥‥‥‥‥」

古城の暗がりとは異なるあかりに明眸が微かに細まる。
朱い月は、何処までも広がる風情な園に在った。

白き花達が月光の下にそよぎ、蛍の如き明滅を繰り返し、
たちのぼる馨しい花蜜さえ、淡く輝いて見せる幻想的に美しい花の園。

何人といえど心を奪われずにはいられない光景はしかし、
朱い月にはさしたるものではなかった――――――――少なくともこれまでは。

無論、現在とて美しさに魅せられてはいない。
目の前の光景を彼方に、脳裏へと描かくのは過去の逢瀬。
咲き乱れる花と大地を枕席に、幾度も汗に濡れた鮮烈な感覚を。
そしてそれが記憶であることに、胸の間隙を感じてさえもいた。

「くっ‥くははは」

今度こそ朱い月は音を出して苦笑した。
僅かだが上気する頬に、胸の奥が浮き立つ心地に、
そして躰の芯に点る火照りの先触れに、おかしさを感ぜずにはいられなかった。

初めて懸想する乙女ではあるまいに、この身がなんと愚にもつかないことであろう。
が、今更なのは解っている。
湯に放り込まれた氷が溶けたなら、
その凍っていた部分だけを掬い出すなど不可能なのだ。
出逢い情を交わした朱い月が、元の存在に立ち返るのもまた無理な事。

ならば衝動に身をまかせるのも一興だ。
何も思わぬ程に血肉を沸き立たせるか、
或いは彼の者が夢に落ち、その姿を見せるまで続けるのも良いかもしれない。

この身を空の銀盤の如き血潮の通わぬ存在とでも思っているらしいあの人間は、
さぞ驚愕するに違いない。
そうすれば多少の意趣返しにもなるやもしれない。
この身を惑乱させる、あの小憎い男に。

「最初で塵にし‥‥‥ふっ現でなく、常世の国へでも送ってやれば良かったか」

初めての邂逅を思い出して朱い月は呟き、けれど言とは異なる表情で、
花園の中心にて瞼を閉じ、自身の腕を掻き抱いた。

やがて右手から力が抜けて、豪奢なドレスの群青色へと落ちて行く。
乱れのないプリーツのひだが滑らかに触れ、指先の重さで静々と自身の躰に接近する。

「まったく本当に小憎いことだ、人間‥‥‥」

太腿の付け根、その窪みに手が収まると、朱い月は、くくくと喉を鳴らした。
ドレスの内、下着が股間へとつく感触は、ただ布地が肌に触れるそれではなく、
両者の合間で、粘りつく液体の存在があるものに他ならなかったから。

美貌に浮かべるのを艶笑へと変え、
朱い月は白魚の指に力と明確な意思を籠めて動かした。

微かな衣擦れが空気を揺らし、
伸ばされた二本の指――――人差し指と中指がシルクの布を滑る。
目視せずとも感じられる美しい下腹部の丘陵を下り、肢の付け根の谷間へと消えて行く。

邪魔をするプリーツに構わず、指先をさらなる奥地へと進める美身。
秘めやかな亀裂へ下着が張り付き、指の刺激が少しずつ確実になる。

「ん、ふっ」

麗しい顎が、くんと上向いた。
指が触れる部分から、甘い感覚が湧き上がる。
それは少しの間を置き、快感の痺れに変わる。
初めに下着に擦られた部分から、深い場所へと移動する。

整然としたスカートの襞を引きつらせ切った朱い月の足先から、
陶然としたものが這い上がった。
下腹から股間への曲線が発熱し、躰へと浸透する。
それは朱い月を内部から温め、その肉を溶かし、変質させてしまう。

「あ、くっ‥‥も、もう、これほど感じるとは‥‥‥は、あ、く、くるっ」

ゆっくりと指が引き出されて戻り、スカートの跡となった行程を再びなぞると、
艶めかしい感覚が背筋を駆け上がった。
湿った吐息を途切れさせて、躰を震わせる朱い月。
密着したことで蜜を吸った下着は秘裂に馴染み、指の刺激を強めてくれたのだ。

「んっ‥‥‥んぁ‥‥‥は‥‥‥ふぅ」

白い美影が悦楽に流転する。
指先の速度が増し、スカートの痕跡が消えなくなった。
布地が摺れる音は、徐々に湿り気を帯び、
それにつれて紅色の唇から吐き出される呼気が乱れ、熱くなる。

「っ!!」

会陰に生じたむず痒さに朱い月の肢体がびくりと仰け反り、
金色の髪が光りを放ち舞い、ゆらめきまた白いドレスを包む。

はふと零れた火照る吐息で、朱い月の唇が艶やかに濡れた。
鼻の奥がつんとする様な切ない感覚に、端正な顔が陶然となる。

朱い月から聖堂に満ちる如き荘厳な気が徐々に消え失せ、
何者をも戦慄させる紅の魔眼が朧月に似て霞み始める。
潤み、弱々しささえ感じさせ、口づけしたくなる儚さを帯びて―――。

「染み出す程に濡れて‥‥‥んふっ‥は、はぁ‥‥‥」

スカートに滅り込んだままで小刻みに蠢く指先、そこで感じる自身の体液。
ふっくらと綻びた割れ目は、いよいよ蕩ける快感を齎らす様になっている。
蜜を含んだ布地が、開いた二重の襞の間を擦る心地は、朱い月の背筋を震わせる。

「うくぅっ‥‥!」

快楽に占有され始めた意識。
腿を寄せ、腰を屈めた崩れそうな姿勢で朱い月は股間を摩擦する。
スカートを破り、指先を自身へと挿入せんばかりに、青玉の如き布地に皺を刻む。

浅く短い呼吸で悶える躰。
汗に変わって快楽が肌から気化している。
それどころか内が溶け出して蒸発する様に、躰の境界が曖昧になる気がする。
感覚だけは天上知らずに鋭敏になり、脳内ではずきずきと恍惚が脈動していた。

「あっ‥‥ああ‥なんと‥‥っ!」

なんと―――――気持ちが良いのだろう。
躰も心も魂も、目眩く快感一色になってしまう。
鼓動の如き振幅で躰を嬲る悦楽が堪らない。

指先を曲げてみた。
爪で己の形を辿り、恥蜜の源泉である秘孔を探り出すと、
貫く光景を脳裏に浮かべ、その通りに指を突き上げた。

瞬時に訪れる獰猛な絶頂。
秘部から肢体を貫通し、脳髄を白熱させる。

「はっ!!!」

朱い月は硬く目を瞑り、甘美な快感にわなないた。
幾重にも悦楽の波が訪れ、自然と腰が引けてしまう。
はしたなく唇から唾液が筋となり、押しつけた指先でスカートの色が変わって行く。

「は、はあ‥‥はぁ‥‥く、ん‥‥あ、な、なんと愚かな。
独り慰めて果てるなどと‥‥く、くく、ははは」

朱い月の自嘲と嘆き、なのにその相貌に浮かぶのは裏腹の色、
喜色としてもあながちな、性の昂ぶりとは思えぬ仄かな薄紅色に染まる頬、
それはあたかも逢瀬を前に胸を高鳴らせ、
想い人へと縋りつく、ときめく瞬間を待ちわびているかの様であった。

「‥‥淫らな」

見下ろす胸元に目を細めた朱い月は、双乳を支える形になっていた左手を僅かに上げる。
たわわな膨らみが腕の中で程好く締め付けられ、その頂きでは両の蕾が刺激される。
強まる屹立はドレスを押し上げ、魅惑的な天幕が形成された。

「斯様に胸を尖らせて‥‥服の上からでも判る、んっ!」

はち切れそうな胸、少しの身動ぎでも柔肉とドレスが擦れてしまう。
特に微細な天幕を支える突起は、微妙に接合した布地に引かれて撓み、
限界に達すると元の位置へと摺れて戻るを繰り返す、それこそ嵐の直中で翻弄されるテントの如く。
その摩擦は、更なる充血と鋭敏さを突起に齎らし、また痼る蕾は一段上の快美感を呼び起こす。

「は、あ‥‥はぁ‥‥‥」

吐息を桃色に染め、小刻みに肢体を揺する朱い月。
股間を押さえる指にも双乳を圧する左腕にも、渾身の力が籠められている。

「い、いい‥っ‥‥ああ、幾らでも溢れてくる‥‥ふはっ‥‥‥子宮が溶け落ちそうだ」

胸と秘裂を同時に弄る快感は、それぞれを別にした総和よりも上だった。
両者から齎らされる悦びの波動は、朱い月の中心で共鳴し、新たな脈動をする。
内臓が甘美の内に蕩け、擦り立てる割れ目の中心から粘液となって流れてしまいそうだ。

「うあ‥‥っ」

白い喉が震えた、まるで自身を甚振る加減に。
それでも衣擦れの音は静謐で、ただ身悶える様な自慰。
竦み崩れそうな、ぎりぎりの線で保たれた肢体。
それは白皙の麗姿に相応しい行為かもしれない。

躰が強張る毎に、喉が鳴る度に、紅唇が噛み締められる度に、
火照る肌が濡れ、蜜が芳醇になり、朱い月の濃艶さが増して行く。

「もどかしい」

ドレスの下で溺れそうに汗を滴らせた頃、
朱い月の唇が妖しく歪み、しなやかな指が一閃した。

間を置かず蒼のスカート、その真っ直ぐなプリーツの谷へと細く黒い線が疾る。
やがてそれは左右にわかれ、朱い月の眩しい程に白い肢を露わにする間隙となった。
それを包む天鵞絨のストッキングよりも滑らか内腿、すらりと伸びるラインは溜息しかない。

そして肉感的なのに細さを感じさせる太腿の付け根、
そこにある引き締まった三角形は剥き出しであった。
恥丘を覆う上品な金色の草叢も、夥しい量の恥蜜に光る秘裂さえも、
朱い月の股間を隠すものはない。

「この身も随分と染められたものだ。
んっ‥‥こうして服を纏ったままが興奮する‥‥あっ!
濡れて赤く腫れた花弁が‥‥くうっ‥‥垣間見えるのが‥‥愉しいのだろう?
いつもの姿で乱れるのが‥‥‥淫靡に感じるの――っ!!」

ただ快感を昂めたいのならば、一層全裸となれば良い。
どのような姿も瞬時に具現させられる。
スカートを斬った下でショーツを無くしたのは、その証拠だ。
だから朱い月がこうしたのは、その方が彼の者を悦ばせるから。

思い出せば自慰を教えたのは誰だったろうか?
後ろから抱きしめ憮然とする自分の指を取り、一緒になって股間を弄ったのは?
巫山戯た事を耳元で囁き、立ったままで、あるいは尻を掲げさせて指を使わせたのは?
朱い月の脳裏に淫戯の数々が浮かび、高揚する互いがイメージされた。

まだまだ指は焦らし、胸を締め付ける腕だけで躰を嬲る。
乳房に溜まる悦楽が秘裂までも蕩けさせ、後一歩で絶頂に―――――そこで指を許した。

「あ、はぁ‥っ!」

待ちかねた朱い月の指先が、下腹の始まりから亀裂へと一直線に疾る。
肌を擽り、恥毛を掻き分け、肉芽を弾き、
それは瞬く間にぐちゅりと陰唇へと滑り込んだ。

「はっ‥あ、ああぁ――――!!」

朱い月が啜り泣く。
直接には初めて触れた自らの肉襞は、熔ける寸前の柔らかさだった。
ずるずると奥へと進む指に開かれ、ついには終点までたどり着く。
細い指で覆われる花びらはところどころ皺が寄り、きゅっと刺激されるのに恍惚とする。
そのまま何もせずとも心地好く、自然に陰唇が蠢き、恥ずかしい音がするのが尚良い。

「こ、零れる‥‥ひ、ひあぁ‥‥!」

腹腔で子宮が一回りも収縮した感覚。
ねっとりと蜜が溢れ、甘美に膣をなぶりつつ秘唇から滴った。
紅熟した実から果汁が流れる様に、それは踝までしとどにしても足りず、
花弁からも直に、地へ届きそうな粘りを示す腺液となって垂れて行く。

背筋を絶え間なく這い上がる悦楽に、朱い月の膝頭はがくがくとぶつかり合う。
つとつと落ちる恥蜜がそこへ、付いては離れる肢の痙攣に捏ねられる。

「あくっ‥‥肉の芽も‥‥ああ、こんなに尖り‥‥はっ、弄って欲しいと催促している」

股座を往復する指の下で、屹立して己の存在を主張する陰核。
勃起したそこは指の節に引っ掛かり、先端まで硬くなっているから、
根元まで振り子のように大きく転がされ、鋭い快感を発生させていた。
軽く膨らむ乳暈もその余波で隆起と陥没を繰り返し、背筋を蕩けさせる。

「ああ柔らかく熟れて‥‥内から‥腐汁の如く蜜が‥‥ん、響いて‥‥‥ふぁっ‥ま、また、あ!」

朱い月の指先は狂ったように往復し始め、秘裂の峪底を抉り続けるようになった。
淫花の美妙な縁を揃えた指先の間隙に挟み、合わせ目から奥へと扱きながら進む。
甘美な摩擦と伸ばされる心地が、花弁を摺り切れる程に弄らせる。
右の陰唇を滑り、帰りには左を、尖った肉芽を転がし、最奥の会陰にまで指を這わせる。

押しつける力が強くなり、表面が引き攣れ、次第に内部にまで刺激が及ぶ。
指の圧力に抗して盛り上がる花芯、寒紅に色づく襞は捲れ、
可憐な佇まいは、嬌声に喘ぐ口唇の如くに開き、その身へと満遍なく指の洗礼を受ける様になる。
その方が快楽が溜まる浅い呼吸に、やがて朱い月の秘孔がひくつきながら開き、擦る指が。

「う、あぁ―――っ!!」

朱い月が仰け反った。
充血した自身の内壁は、そのとば口に触れただけで果ててしまう。
剥き出しの神経を爪弾くに等しい衝撃、たおやかな肢体が激痛にのたうつ如く痙攣する。
反して弦を揺らす法悦の余韻は、どこまでも甘美に朱い月を骨の髄まで溶かしてしまった。
頬を濡らす紅涙が、すぐさま蒸発する程に肢体は火照っている。

「は、はは‥‥こうなると容易にいくものだ。
一体どれ程うれているのやら‥‥この身も知らぬのに‥‥あの者は‥‥んっ知っているのだな」

恥ずかしげに綻ぶ秘孔へと、朱い月が中指をあてがう。
硬い爪に収縮するのを軽くさすって宥めると、ぬめりが擽ったい位の濡れた穴へと挿入する。

「うぁっ!!」

少し戸惑うものの悦楽を求める秘孔は、己を満たす指をきっちりと受け容れ、
朱い月は、表皮とはまるで異なる柔軟な粘膜に呆気なく触れた。
粘りとも滑りとも微妙に違う感触は何とも形容し難いが、甘美な痺れは明確であった。
ぴたりとした何かを密着を剥がすのを感じつつ、朱い月はさらに自身の内を弄って行く。

くんと顎がはねる。
敏感な粘膜は少しの動きでも、どっと蜜が溢れそうだ。
僅かに折り曲げて進む指先に触れる個所は甘い心地で蕩けてしまう。
ずきずきとした脈動が根を張り、躰の内側すべてを瘧がかかったように震わせる。

「うあぁっ‥‥指を‥‥くあっ舐られている様‥‥‥入れているのに切ない。
なぜ埋め尽くせない感覚が‥‥‥ああ、狂おしいっ!」

曲げて挿入した指で肉襞を掻き回し、股間を覆った掌で揉み付けた。
圧迫され指間から大量の粘液が零れ落ち、その内部では甘露な愉悦が搾り出され、
弓なりになった背骨を甘露な悦びが痺れさせる。

「い、いく―――っ?!」

意識を削り取る絶頂が、何度も朱い月を通り抜ける。
汗を散らす強さで痙攣する肢体。
股間を淫する指先は、白く透けた美しい肌を裂く程に掴んでいる。
突き立てられた指先は鋭く、ぬたりと筋を引き滴る恥蜜が鮮血にも見える。

「はぁ‥‥は、はあ‥‥‥倒れ‥くっ!」

よろける躰で、苦労して朱い月は息を整える。
ぼうっと恍惚に潤んだ紅眼、前に屈んでほっそりとした鎖骨が覗いている。
その様は弱々しく、却って嗜虐心を煽った。

「んっ‥‥あぁ、いやらしい粘りだ‥‥こんなにも糸を引いて匂う。
濁りは擦り立てたからか‥‥それとも感じ切っていたからか‥‥‥んうぅっ!」

引き抜いた指先は湯気を昇らせていた。
先端から根元まで、そして掌へと濃密な水飴の様に、朱い月の腺液が粘りついている。
自らの昂ぶりを眺める先で、それは淫らさを教える如く、ねっとりと這い落ちる。
媚肉を擽り、肉襞に締め付けられる味を覚えた指は、淫水に撫でられる感覚にぞくりとする。

「まだ‥満たされぬ‥‥‥ああ、そうだあの者は‥‥ひぅ‥‥これしきで止めはしない。
果てたさきからまた嬲り始める‥‥‥‥この身を放しはしない‥‥も、もっと深く‥‥‥うぁ」

樹液を垂れ流す割れ目へと、またぞろ朱い月の指が差入れられた。
劣情に操られるまま、それは躊躇いなく柔肉を掻き毟りだす。
切なげな鳴咽がすぐに始まり、朱い月の麗姿がまたも震え出した。

今度は左手も秘裂を甚振るのに加わっていた。
双乳を両脇から締め付ける様に腕を垂らし、太腿の付け根にそって股間へと入れている。
それは休むことなく前後する指に味方し、捲れた襞や、弾けそうな肉芽を弄る。

「はぁっ‥あうぅっ!!」

膝を折り、腰を曲げた姿勢で朱い月は、可愛らしい程の喘ぎを放ち、甘い痺れに絶頂を連続させた。
半ば泡だっているのではと疑う程の秘裂は、蜜だけでなく潮の匂いも漂わせ、
裂け目からスカートまでも淫液の飛沫で濡らしている。

「う、疼く‥‥ああ、こんなにも蕩ける心地なのに‥‥はくぅっ‥‥乳房も貪欲に疼いてくれるっ!」

鷲掴みにして責めないのは何故かと、双乳が熱を出して悶えていた。
ずきずきと、内包する欲望が膨らみの中で渦巻いている。

「欲しいか‥‥‥んあ、な、ならば‥‥嬲ってやろう‥こうして、痛めば良いのだろう?」

譫言の様に口走り、朱い月は腕の間隔を狭めて、たわわな膨らみを絞り上げる刺激を味わった。
もぞりとドレスの下で乳首が蠢く度に、堪らない快感が溢れて朱い月の柳眉が歪む。
割れ目の中心で恥蜜がびゅっと噴き出し、股座をまさぐる手の内で飛沫となる。
その熱い感触が引かぬうちに真紅の突起が潰されて、ふやけた神経を灼熱させる。
整った爪の先が秘孔を引っ掛け、溢れ出る粘液をさらに散らして朱い月に己が匂いを堪能させる。

荒淫で皮が剥けた状態にまで腫れた花弁、それでも尚たおやかな白い指は止まらない。
早さと強さを増し自ら疼痛を増加させて、痺れる刺激を求め続けた。
愉悦の牙が何度も腹の内でのたくる子宮を突き刺し、傷口から粘つく蜜を流し出させる。

尽きる事のない快感、果ての見えない悦楽の高み、幾らでも悦びに耽溺できた。
胸を撓め、花芯を引っ掻き、下腹を息めば、おもしろいくらい気をやる事が叶った。

「んふぅ‥‥‥もっと爛れさせよう‥‥はっ‥‥抉りだしたいっ‥‥ああぁ蠢く女を!」

いつしか朱い月の秘裂からは、濡れた指で硝子を擦る様な音が連続する。
半ば膠化した蜜が陰唇が捲れる程、弄る指先を粘着させているのだ。

しなやかな白い内股を赤く腫れた花びらから、つうと恥蜜が踝まで一気に滑り落ちる。
ぬらぬらと光り一筋が過ぎると休む間もなく、その上を次の滴りが通って行く。
朱い月の雪原を幾つ筋もの熱泥流が溶かして湯気を上げていた。

「んっ‥‥ん、あっ‥と、とけて‥‥この身が‥ああ、力が抜ける‥‥うあっ」

内股で力むと快感が鮮やかさを増した。
朱い月は両の膝頭をつけ、密着した股座を掻き毟るように指先を前後させる。
指先で媚肉に襞が生じるのも、粘液が飛び散る時の振動が花芯を揺らすのも気持ち良い。
触れる女陰の一つ一つ、その感覚が際立ち、また共鳴して躰が蕩けて淫水になる。

むさぼる空気が重いのは、その蜜液が水嵩を増し、自らを溺れさせているからだ。
足首から膝、太腿から腰、胸から口許までが浸かっている。
生温かく躰を包み込む心地が良く、そして息苦しく噎せる苦痛が鮮烈であった。

快楽に喘ぐ秘孔の蠢きで、生々しい腺液の透明な糸は太さを変じつつ、
地と朱い月の花芯を途切れることなく繋ぐ。

「ああ、熱い‥‥蜜が‥‥くっ肉襞が、内奥が、何もかも‥‥‥燃えて‥お、堕ちて‥しまう」

揺らぎの存在しない真空、身を横たえる孤高の月は過去へと遡り、
間断なく降り注ぐ隕石に熔かされ灼熱の天体へと変わっていた。

「い、いや‥ぁ‥く、くる‥‥‥ぞわぞわと‥‥と、止まらない‥‥‥うあぁ、中が蠢くっ!!」

柔肌を突き破りそうに張り詰めた双乳を、ぎゅむと両腕が引き絞る。
突っ込んだ指で秘孔を抉じ開け、わななく間隙へと更に指を。
甘い愉悦が駆け巡る中、舌を噛み締め鋭痛のエッセンスとすれば、
絶頂の津波が崩れそうな躰を押し流した。

「ひぁあああ―――――っ?!」

屈んだ朱い月の肢体が、股間を押さえてさらに縮こまった。
それでも堪えられぬと踵が上がり、白皙の美貌が切なげに歪み、
悦びに美身が激しく痙攣し、柔らかそうな喉が鳴咽に振動する。
涙をぽろぽろとこぼし、底なし沼の歓喜に朱い月はか弱く啜り泣いていた。

「あ、はぁ――――」

肺の奥から快楽に濁った息を吐き出し、永遠に続きそうな絶頂の響きから漸く解放されても、
朱い月の相貌はなお蕩け、潤んだ瞳の奥に常の怜悧さを微かに点しただけ。

「んふぅ‥‥‥この身が霧散する程の悦楽‥‥悪くはない。
いや‥この怠惰な余韻も‥‥‥良い按配だ」

数え切れない絶頂、快楽に泥酔した意識と肢体は浮遊しているかの様だった。
躰中を腺液に塗れさせ、目眩く官能の高みを堪能した筈。

けれど魂までをも溶解する歓喜の果てには何かが欠けている気がした。
朱い月が腫れぼったく厚みを増して開く花弁を指で弄ると、
それを証明して、今し方始めたかの様な新鮮な恥蜜が滴り出す。

「これだけして未だ不満、か‥‥」

白皙の美影は、夢の身を少しだけ呪った。
現身ならば待つこともなかったろうに、と。
はしたなく割れ目を弄るのよりも簡単に逢えるだろう。
自身を慰め求めるの気振りを隠す必要もない。

「んあぁ!!」

身を焦がす切なさに、朱い月は二本揃えた指を蜜に爛れた秘孔へ沈めた。
ぬるぬると自身を掻き分け、息を吐き出して奥の奥まで弄る。

「んあ‥‥と、届いているのに!
さ、触れない‥‥欲しい奥には触れていな――――いぃんっ!!」

月下で息を殺す草木達も恥じらう妖艶で、甲高い悲鳴が夜の庭園に木霊する。
伸ばした指先は、濃い粘液の深みで奥まった肉の心地を感じた。
饐えた快楽は、たちまち頭の芯まで蕩けさせ、悦楽に肢体を溺れさせ、
時を忘れる様に、空虚を埋める様に、月明かりの下で快感と哀切に身を震わせ続ける。

「あ‥‥っ」

幾度果てただろう。
喉を嗄らせ、汗と腺液の区別がつかぬまで肌を濡らし、
疲れを知らぬ躰が、湿ったドレスを重く感じるまで。

蜜で茹った指先を眺めて尚癒されぬ乾きに、
やるせない想いに、本気で落涙し咽びそうな予感に襲われたそんな折り。
感じたのは気配、夢に鮮やかな色を与える、けれど茫洋とも取れる人の気配。

「待ち人きたる‥か」

呟く朱い月、その内心は自身にも計れなかった。
ただ、それが負ではないのだけは解る。
微かに頬が緩むから、待つのが―――近付く姿を待つのが最早苦痛ではなくなったから。

「また来たんだけど‥‥‥‥‥あ?」
「なんだ?」
「いや、いつもは邪険な感じで暇人とか何とか言ってくるから。
それが何だか嬉しそうで、逢うのを楽しみにしていたみたいだからさ。
「そうだ」
「ん、何が?」
「お主が来るのを待ちわびていたのだ‥人間」
「え?」

志貴は驚いた。
きっと朱い月は苦虫を噛み潰した顔をして、戯言だとそっぽを向く筈なのに、
それが素直に肯定するとは思いもしない。
ましてや、自分に微笑みを見せるなど在り得ない事態だった。

「待たれるのは嫌か?」
「そうじゃないけど‥‥さ」

普段とは違う様子に戸惑う志貴へ、朱い月はゆるりと歩を踏む。
衣擦れの音、微かに浮くスカートの裾、そして斬り裂かれた隙が開く。
向き出しの朱い月は、濡れた様子も具に判った。

「お前‥‥」

志貴の驚く唇は途中で柔らかく塞がれた。
後ろに回された腕が甘く馨しい肢体を密着させる。
動きの背中を細い腕が滑り落ち、下半身を覆う邪魔な衣装を這い回る。
忍び込んだたおやかな指先で弄られ、剥き出しにされた時にはもう志貴は硬かった。

「立ったままでしておくれ」

微笑みを艶笑に変え、朱い月は強請る。
玲瓏に、恥じらいを浮かべつつ。
志貴は完全に魅了された。
疑問など浮かべず、紅唇を奪い折れそうな腰を抱きしめる。

「このまますぐに?
自分で弄って濡らしてたから?」
「訊きたいのか?」
「うん、どんな風にしてたのか‥‥‥‥いや、何を考えてしてたんだ?」
「それが知りたいのか、いや言わせたいのか?」

全てを告げたい、聞いて欲しい、志貴に首肯され、朱い月の肢体は妖しく戦慄いた。
それだけでここまでの絶頂よりも濃い悦びに達してしまいそうな程に。
自身には考えるのさえ躊躇う事、それが不思議と気持ち良い。

股間をしとどにする淫水で手を濡らし、朱い月は志貴へと塗り付けた。
幹の周囲を撫で回し、張り出しを擦り、先端を包んで愛撫する。
朱い月の指は、白い蔦となって志貴を妖しく締め上げる。

「強張りでこの隙間を埋めたなら、熱い滾りで内を満たしたならば、いくらでも答えよう。
この身の真意は、きっとお主の望むものと同じ筈だ」

肉茎を切っ先から根元まで、繊細な指先がなでて行く。
反り返りを強めるそれに紅潮し、吐息を白く染めて朱い月は憑かれた様に繰り返す。
その快感に腰を震わせてしまう志貴に感極まり、する方からも甘い喘ぎが迸る。

「‥‥‥‥さあ、答えさせておくれ」

待ちきれないと火照る肢体が擦り寄せられ、
頤が志貴の肩に預けられ、張り詰めた胸が押し付けられた。

「いくよ?」
「ああ、早く」

膕を持つ手が左足を上げる。
そそり勃つ切っ先が柔肉に触れる。
躰の芯が燃えている。
妖美な予感に背筋が蕩ける。

「―――んあぁあっ!!」

みっちりと拡がる秘孔、ぬるぬると擦られる感覚、喉まで貫かれた様な衝撃。
甘く収縮する女の快感に朱い月は悦楽を極めた。
白濁する意識の中で志貴にしがみつき、弱々しく身悶え絶頂を享受する。

「なんか‥‥すごいな。
ぬめぬめと絡み付くと感じで‥‥‥それに吸い付いて放してくれない。
ん、こっちの形のままに、すごく馴染んでるみたい」
「嗚呼そうであろう‥‥‥お主に馴染んでいるのだ‥‥この身は‥‥‥はくっ‥当たり前だ」

朱い月の鼻先は志貴の匂いを求めて項をなぞり、
首筋を這い回る艶めかしい紅唇が甘えて囁く。

―――――ずっとそなたに想いを馳せ慰めていたのだから、と。



(終了)



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あとがき

スリットと言う単語が持つ微妙な響きにつられてこんな風になりました。