ただ、そこにある永遠が欲しかった。
 ほんの一時でもそれを手に入れたのなら。

 それだけで幸せだと思えたから。






+そこに在る永遠+






 月が男の髪を照らしていた。
 奏でる色は取りどりだ。
 銀の髪を靡かせた男は足下に転がった死体を蹴りつけた。
 戌の面で素顔は見えないが笑っているのがわかった。男が身に付けているのは普通の忍服とは異なっていて特別な戦闘用だ。俗に言う暗殺部隊の物だった。

「もっと楽しませてくれなきゃ。何も感じないんじゃ、つまんないデショ?」

 そう言ってその男は笑った。

 自分でも狂ってるな、と自負しながらもその狂気を求めずにはいられなかった。




 その日、カカシはとある国での任務を遂行していた。
 依頼は殺し。相手の不甲斐なさに呆気なく幕を閉じたつまらない依頼だった。
 任務への期待。それはカカシにとって生を実感させてくれる唯一の物。生と死と。それれが混じり合ってなるカカシの世界。
 今回はそれを感じることなく終幕を迎えた。
 なんて呆気ない。自分はもっと生と死と、その狭間を感じたかったのに。
 そして普段、身につけている装束を脱ぎ捨て街に出た。
 この熱を持て余していた。それが性欲となって違う場所で熱を持て余し、何かに叩きつけたいという欲求が駆け巡る。だからカカシはいつも纏っている服を脱ぎ捨て、見知らぬ土地の花街にやってきていた。
 任務が単独だったので助かった。誰に咎められることなく動く事が出来たから。でなければ、任務の後に任務地で花街に出向く事など出来る訳もない。
 何処の国もこの場所だけは同じ空気が流れているように感じる。求める欲が同じだからなのか。
 ふらりと入った遊郭は陰間の店。今日は女を優しく抱く事なんて出来そうになかった。このモヤモヤした気持ちを思い切り吐き出したかったから、カカシは敢えて男の色を選んだ。
 店の主人は見慣れぬ客に無愛想な男だったがちらりと見せた大金に急に態度を変えて媚を売ってくる。

「お客様、どういった感じのをお望みですか?うちはとりわけ可愛いのが揃っております故」

 そう言ってカカシを部屋に通した。何でも良い。ただこの欲望をぶつける事が出来ればそれで。
 だからカカシは一つだけ条件を言った。

「乱暴にしても平気なヤツ、連れてきてちょうだい」

 ぶっきら棒に答えると主人は手をポンと叩き、「それなら良いのがございますよ」と太々しい顔を歪めて、気持ちの悪い顔で笑った。
 主人が部屋から消えて、次に来た時に男を従えてやってきた。
 
「今日はこの子があなた様のお相手を致します。名は……『黒(くろ)』とでもお呼び下さいませ。あなた様のご期待通り乱暴にしても大丈夫なヤツでして。…何せ声が出ませんから」

 ニヤリと笑った主人の顔がカカシの苛立ちを誘った。
 いいから出て行けと手で払うと「ではごゆっくり……」と主人は去っていった。

 入口に座って居た男に声を掛ける。

「こっち来なよ」

 『黒』と呼ばれた男は言われたとおりカカシの近くへ腰を落とした。
 そして盆に用意されていた酒をお猪口に注いだ。スッとお猪口をカカシの方へ差し出し、飲めと進めた。

「悪いけどアンタ先に飲んでよ。毒味」

 カカシは何の迷いもなく本当の事を告げる。こんな所で出された物をそう易々とは口にするわけもない。
 そう言うと『黒』と呼ばれれている男は少し困った様な顔をしてそしてカカシに進めたお猪口を手にして口へ運んだ。グイッと一口で飲み干して、そしてお猪口をカカシの方へまた差し出した。それを見たカカシはそれを受け取り酒を注がれた。
 『黒』は差ほど自分と年も変わりなさそうで、肩まである髪とそれと同じ色を放つ漆黒の双眼が印象的だった。だから『黒』なのだろう。着ている着物も全て黒に統一されていた。
 そして何より特徴的なのは顔に走る真一文字の傷だった。
 まじまじと相手を観察する視線も慣れているのかあまり気にしない様子で『黒』はカカシの酌を続けた。――――………



(てなお話しです)