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里の外れに、カカシとイルカの住まいがある。
平屋の小さな家は二人で暮らすには十分だった。庭もあってイルカが好きな植物を植えて楽しんでいる。その中に、真っ赤に咲き誇るあの花もあった。
夕方になるとお使いの子供達が家の前まで来てその日の食料など、必要な物を置いていってくれる。
この日は七班の連中がこぞって遊びに来ていた。
もちろん家に入ることは出来ない。接触も無理だ。ただ結界の内と外ならば害はないと分かったので、普通に話すことは出来る。
「今日はまた迷子のネコ探しでさー。参ったってばよ」
「ナルト、ネコには好かれるから楽ですよ」
「まだそんな任務やってるわけ? お前達……」
溜息を吐くカカシに七班の連中は、誰のせいだ! と声を揃えて怒鳴っている。そんな光景をイルカは縁側で笑ってみていた。
「ねーイルカ先生とカカシ先生、いつになったら病気治るんだ?」
ナルトの素朴な疑問に、カカシは笑って、もう少し、と答えた。
「早くランクの高い任務をやって一人前の忍者にならねーと!」
意気込むナルトにサスケは小さく笑っていた。それが気に入らなかったようでいつもの小競り合いが始まる。
「こーら。まだ触れないからこんなところで喧嘩するの止めなさい」
カカシが止めると、舌打ちをした二人はどうにか大人しくなった。
「イルカ先生ー。一楽のラーメンいつ食いに行けるんだよー」
「もうちょっと待っててくれよ」
と言ってイルカは笑う。もう二度とそれは叶わないと知っていても、ナルト達には本当のことは言えない。
自分たちの命が尽きるのは明日かもしれないと、そんなことを言ってこの子達を煩わせたくなかった。
「さて、ちょっと冷えてきたし、そろそろお開きねー」
夕暮れが少し冷えた空気を連れてきていた。イルカの調子は始めに比べたらかなりいい。こうやって普通に暮らせているのも全てカカシのおかげだった。
「じゃーまたなー。次のお使いは二日後だからまた来るー」
ナルト達は任務という形でカカシ達の買い物を頼まれているのだ。
「おうー。気をつけて帰れよ」
三人の後ろ姿を眺めて、イルカはふと肩に掛かる手に温もりを感じた。
「冷えてきたので入りましょう」
優しい顔で笑うカカシにイルカは幸せを感じてしまう。
死ぬだけのためにここにいるのに。
この幸福感はなんなのだろうか。
「ご飯、何にします?」
小首を傾げてイルカに聞いてくるカカシもまた、同じ幸せを感じてくれていればいいと願う。
堪らずに、少しだけ高い位置にある唇を、背伸びをして塞いだ。
ビックリした顔が可愛い、と思ってしまう。
イルカからの誘いにカカシは少し戸惑った顔をした。
ここに来て一ヶ月が経つ。それまではイルカの調子もまちまちで、立てたり立てなかったりだった。それが今は普通の生活をしても大して苦痛ではなくなった。
だからここに来てから、と言うかカカシがあの日任務に言ってしまった時から身体を繋げていなかった。
「イ、ルカ先生……ダメですよ……」
「どうして……?」
今なら出来ると思う。そこまで体力が回復しているのが自分でも分かる。
「チャクラ、足りなくなったら死んじゃいますよ?」
「昨日アスマさんから少し頂いたので……大丈夫です」
このくらいではもう死にませんから、とカカシの首に腕を巻き付けた。
まだ夕焼けが空を染めている時間に、二人は布団に潜り込んだ。
互いの服を脱がせあって、その合間に何度も啄むようなキスをした。正直それだけでも十分気持ちよかった。
まるで壊れ物のように丁寧に扱われて、焦れったさを感じてしまう。
だからイルカはカカシのモノをいきなり握ってやった。
「っちょ! 何するのっ! イルカ先生っ」
焦る声がまた可愛いと思う。
「オレはそんな簡単には壊れませんから……だから……」
前みたいに抱いてください、と耳元で囁くと、カカシのそれはグンと大きさを増した。
「もうっ……知らないからね?」
そう言って噛み付くようなキスが振ってきた。
(ああ……カカシさんだ……)
つい最近までこんな風に何度も身体を重ねてきたのに、今日はとても大切に思えた。
カカシを感じられることの幸せを、今この時を噛み締める。
もしかしたら、明日朽ちるかもしれないこの身体を、それでもカカシは愛してると言ってくれる。
布団に寝かされたイルカの上にカカシがのしかかってきて、もう一度キスをした。
何度も角度を変えて、そして口腔内を隈無く舐め回されて、イルカは甘い吐息を漏らした。
「……んっ……」
頬や瞼、そして耳朶を甘噛みされる。イルカの感じるところは全て熟知しているからカカシは何度も繰り返して耳朶を嬲った。
「あっ……やっだ……だめ……」
「気持ちいいくせに……」
耳元に息を吹き込まれて、さらにぞくりと背骨を甘い痺れが走った。
「やっ……ん……」
ほら、ともう一度噛まれて身体が揺れた。久しぶりの快感に身を捩って逃げようとしても、押さえつけられてしまう。
両手を塞がれて、そして今度は小さく尖った胸の突起を口に含まれた。
ツンと突きだしたそれを何度も何度もくちゅくちゅと吸うと、最後に歯を立てられた。
「ああっ……あ、あ……ん……」
ちゅう、と音を立ててわざとカカシがそれを吸う。
「んっ……あ、カカシさん……やだ、そればっか……」
「じゃあどうして欲しいの? ちゃんと言ってくれないと、分からないヨ?」
意地悪く笑うカカシに、手を外して、と言うとそれはすんなりと許してもらえた。
「で? どうして欲しいの? イルカ先生……」
ねっとりと胸から臍までを舐められて、イルカの身体は大きく背を逸らすように跳ねる。
「ああっ……! んっ、も、と……したも……」
なかなかあたえてもらえない刺激にイルカは泣き出しそうになる。
カカシに腰を捕まれて、下から覗き込むように見られていた。その光景が淫靡で、既に濡れそぼっていたイルカの性器から雫が垂れた。
「あっ……」
「見られただけで感じてるの? 下もなに? どうして欲しいの?」
言わないとしてあげないよ、と刺激を欲しがっている場所をわざと避けて触れてくれない。
「それ、……な、舐めて……っもっと、さわっ……ああっ!」
最後の言葉を言う前にカカシはイルカのそれを口に含んだ。生暖かい感触に震えが走る。気持ちよすぎてどうにかなってしまいそうだ。
久しぶりの口淫は刺激が強くて、イルカの我慢は呆気なく解き放たれてしまう。
「やっ、ダメ……! いっ、ちゃうからっ……あ、あ……」
離して、と言う前にイルカはカカシの口の中に全てを吐き出してしまった。
「ああっ――――」
ビクビクと震えるイルカにカカシはしつこいくらいそこを舐め回していた。
そしていつの間にか後ろへ回されていた指がイルカの最奥を開き始めていた。いつの間にか濡れている指に、
(用意周到……)
と心の中でこっそりと笑う。イルカの体調を気にしていたわりにはカカシも正直者だ。
「なに笑ってるの?」
余裕じゃない、とカカシはその指をグイッと奥へと進めた。
「あっ、あ、まって……」
今達ったばかりで全ての感覚が鋭いのに、カカシは容赦なくイルカの奥を暴いていく。
その仕草は強引だとばかり思っていたが、違うようだった。
「ゴメン、イルカ先生……オレ余裕無いかも……」
いつの間に増えた指でイルカの中を掻き回している。ぐちゅぐちゅとイヤらしい音が部屋に響き渡って、それがイルカにまた興奮を呼び起こさせた。
「んっ……だい、じょうぶ……だから……」
もっと、と促せば、カカシはイルカの中から指を抜き、カカシのものがイルカのそこに押し当てられた。
グイッと押し込まれた時には、なぜか涙が出た。
カカシとまた肌を重ねることなどもう二度と出来ないと思っていた。だから今この瞬間に死んでも良いと、本気で思っている。
「カカシ、さん……カカシさん……」
名を呼びながらイルカはカカシの背を強く抱き締めると、苦しい体勢だけどキスをしてくれた。
優しくねっとりと口の中をカカシの舌が動き回る。
イルカの中にいるカカシがゆっくりと動き出した。イルカの身体を気遣っているのだろう、いつもよりゆっくりな動きにイルカの中がずくりと疼いた。
「あ……イルカ先生、すごい……」
気持ちいい溶けそう、と吐息を漏らすカカシに、イルカも我慢が出来なくなっていった。
「ああっ……あ、んっ……カカシ、さん……」
もっと強く奥を擦って欲しい。
そう思っていたら、その通りにカカシが奥を強く穿ってきた。
「ひっ……ん、んっ……あ、あっ……」
「イルカ先生、気持ち、いい?」
揺れる身体が押さえられない。カカシのリズムに合わせてイルカも揺れている。
なんて幸せだろう。
そう思った瞬間、イルカの中がぎゅっと締まった。
「っく……やばい、イルカ先生……」
いくよ、と切ない吐息で言われて、イルカもまた共に極みに達していた。
「あんっ……あ、あ、あっ―――」
頭が真っ白になった瞬間、イルカの奥がじわりと温かく濡れていく。
カカシが力を無くしてイルカの上に落ちてきた。その背中をぎゅっと抱き締める。
「……カカシさん、ありがとう……」
自分といることを選んでくれて。
本当なら自分はとっくに花に食われて死んでいるはずだった。
それを変えてくれたのは、カカシだ。
「あいしてる、よ」
小さく囁かれた言葉に、イルカは嬉しくて、そして切なくて、泣いた。
毎日をカカシと二人で過ごしていく。
何も考えず、ただカカシを愛していけばいいだけの時間。
それは今までにないほどの幸福感だった。
ここにいるのは、死を待つためだけだ。
奇跡は起こすことは出来なかったけど。
それでも今までの人生の中で一番幸せだと言えるかもしれない。
ただ愛すべき人のことだけを考えて生きていける、そんな幸せは今までの自分なら考えられないことだった。
カカシが縁側でひなたぼっこをしている。
そんな姿に幸福を感じながら。
イルカは静かに目を閉じた。
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