数週間ぶりの逢瀬は濃厚だった。
 カカシの任務は一つではない。子供達を引率しつつ、別の任務もこなす。時には一人でランクの高い任務に向かうこともあるのだ。
 今回は面倒な任務を引き受けた、と出掛けに笑っていたので単独任務だったようだ。内容はイルカには分からないが、この身体の求めようからして大変なものだったに違いない。
 カカシは酷く疲れるとイルカの身体を貪るように求めてくる。ここにいるという証が欲しいかのように、その行為は執拗だった。
「んっ……! あっ……ま、って……」
 一度放ったはずの欲望はまだ熱を失っていない。イルカの中にあるカカシのそれが容赦なく奥を抉る。
「ひっ……! ああっ……!」
 耐えきれない声が上がってしまう。
 絶頂を迎えたばかりのイルカの身体は敏感で、苦しさも伴うからもう少し待って欲しいと懇願しても聞き入れて貰えなかった。
 まるで獣みたいだ、とイルカは思った。ただ本能のままに身体を貪る。だがその中にちゃんと気持ちがあることも分かっていた。
 時々見せるカカシの仕草にそれが垣間見える。いたわるように、愛しく背中を撫でていく。
 それだけでイルカには十分だった。
 まだイルカを気に掛けてくれている、それだけでもカカシに愛されているのが分かるから。
 カカシは他人にあまり興味がないのか、優しいようで冷たい部分がある。いつもにこやかにしているのも、興味がないからただ笑ってやり過ごしているのだと分かったのは、自分の同僚と話してるときのことだった。
 笑っているのに笑ってない目がどこか冷たくて、それが分かるようになったのも多分身体を重ねるようになってからだった。
 表情を読まれることなく、隠すのが上手いことも上忍のなせる技なのだろう。
 そんなカカシにイルカはどんどん惹かれていくようになった。自分だけが、とは言わない。カカシの小さな変化を読み取れる、数少ない人間に入れたのならそれだけで嬉しい、と。
 そしてカカシも、イルカに対してはとても敏感だった。表情を読み取られまいとしてもすぐにばれてしまう。
 カカシは、それがイルカ先生だから、と優しい目で言っていたけれど、嬉しいやら情けないやらで複雑な気持ちだった。
 不意にズンと強く奥を抉られた。
「あっ! な、に……強い……、まって……」
「なに考えてんの? オレのこと以外考えてるなんて余裕じゃない? イルカ先生」
 今はオレだけのこと考えて、と耳元で囁かれてイルカはカカシを振り返った。
 四つん這いの状態で、まるで本当に獣みたいだ、と笑みを浮かべるイルカに、カカシは何? と眉を寄せて不機嫌な顔を見せた。
(もっと、そんな人間みたいな顔を俺に見せて……)
 自分だけが知っている、と思いたいのは贅沢だろうか。
 そして、もう一度カカシの不機嫌な声がする。
「何?」
「す、き……ですよ、カカシさん」
 笑ってそう言えば、ずるい、と無理な体勢で噛み付くように口を塞がれた。
「もう、黙って……こっちに集中して……」
 腰を抑えられて奥の奥まで穿たれる。熱く爛れそうな粘膜を擦られてイルカは快楽に震えた。
 もっと自分を求めて欲しい。今だけは、この瞬間だけは確かにカカシは自分だけのものになる。
「あっ、あっ……! も、だめ……カカシ、さんっ」
 いく、と震えるイルカにカカシは容赦なく腰を送り込んできた。激しくなるカカシの腰の動きに絶頂が近いのを知る。
 腰を押しつけるようにして動きの止まったカカシが、イルカの中に熱い欲望を撒き散らした。
 それを感じたイルカもまた二度目の絶頂を迎えていた。


 軋む身体を抱き締めて、カカシは眠りにつく。
 容赦なく貪られた身体は手を動かすのも億劫になってしまうほど疲弊する。カカシはイルカの身体を清めながら、そんな事を思ってもいない表情で何度もゴメンネ、と謝っていた。
 そして全て終わるとイルカの身体を抱き締めて目を閉じた。
 この瞬間だけは幸せを感じていたい。
 刹那に生きる自分たちに、今唯一許された自由だとイルカは思っている。
 二人抱き合うこの時だけが全てだと、言える日など来ないと知っていても、それでも何度でも、こうやって身体を重ねていくのだろう。
 カカシは子供のようにイルカに抱きついて、静かに眠る。
 そんなカカシも、イルカが想っている幸せを、この眠りの時だけでも感じてくれていればいいと、願わずにはいられなかった。






 次の日は、良く晴れた日だった。
 カカシは急な呼び出しでバタバタと出掛けていき、イルカはそれを笑って見送った。
『いってきます。今日も帰ってこれるから、来てもいい?』
 と去り際に唇を掠めていったカカシを思い出すと、胸が痛くなる。
 約束など意味がないと分かっていても、せずにはいられない。
 必ずここに還ってきて、と本当は言いたいけれど、それを伝えたらいけないと心の何処かで思っていた。
 必ずなんて言葉は、自分たちには不似合いだからだ。
 明日死ぬかもしれない、そんな中で自分たちは生きている。今までも、これからもずっと。
 だからカカシがあんな風に約束をしていくことが、なぜか切なかった。そう言って還ってこなかった人達を自分たちはたくさん知っているから。
 イルカは自分の感傷に自嘲して、カカシが歩いて行った方を見つめていた。
「……あ」
 そう言えば昨日帰り道で見つけたあの花はどうしただろうか。
 イルカは空になっている植木鉢を持って表に出た。家のすぐ近くにあった枯れそうな花。
 きっとこれも何かの運命だ、とイルカは小さく笑って、その枯れかけた花を植木鉢に入れ持ち帰る。
 土は腐葉土を入れた方が良いだろうか、とそんな事を考えながら花に話しかける。
「お前は運が良かったな。どんな花が咲くか、それとも咲かないか。楽しみにしてるよ」
 手入れをして、窓の近くに置いて水をやる。これで花をちゃんと咲かせてくれればいいな、とイルカにささやかだけど小さな楽しみが出来た。

 

 



 













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――――2009.5.14.up