16,愛を成す全てものをα












 どちらの部屋が近いかと言えばイルカの部屋だった。数ヶ月ぶりに入ったイルカの部屋にカカシは安堵する。
 何も変わっていないことがこんなにも嬉しいだなんて。
 この暑い中走り回ってしまったので二人とも汗まみになってしまったため簡単に交代でシャワーを浴びた。
 先にシャワーを終えたイルカはベッドの縁に座ったまま上半身裸のままカカシを待っていた。イルカはカカシに先にシャワーを浴びるように進めてきたが、カカシがごり押しして先にイルカを入らせた。その間この懐かしい部屋を堪能してそれから少し熱を冷ますようにシャワーを浴びた。
 シャワーを終えて部屋に戻ったカカシは久々に見るイルカの体に息を飲む。
 以前より痩せてしまった身体に胸が痛くなる。そして何よりも胸にある大きな傷がカカシの罪を物語っていた。

――――オレ、のせいだ…

 そっと、震える手でイルカの身体に触れる。肩先に指が触れるとイルカが小さく笑う。

「カカシさん、触ってください…俺に触れて、俺を思い出してください」

 そんな臆病なカカシの手を握ってその胸へとイルカが自ら導いてくれた。
 傷を、ゆっくりとなぞる。カカシを取り戻すためにイルカが自分で突いたその傷は、カカシが付けたも同然だ。

「……痛、かったでしょ…?…」

 どうすればいい?どうしたらオレはこの傷を償える?任務として処理されたがカカシは罪を犯したのは確かだ。それに加えてイルカを傷つけた。

「どう…したらいい?」

 それは傷に対してなのか、自分の犯した罪に対してなのか。多分それは後者だったろう。それも分かっているのか情けない声を出したカカシにイルカは大丈夫、と言ってくれた。

「今までと同じでいてくれたら、俺はそれだけで幸せだから…」

 そう言ってイルカは動けずにいるカカシの首にしがみついてきた。直接触れた肌が長いこと忘れていたイルカの温もりを思い出させてくれる。

「…イルカ、先生…」

 溜まらずにその身体を強く抱き締めた。そして耳元で何度も言う。

――――ゴメンナサイ、と。

 自分の犯した罪をカカシは十分に分かっている。本当はこんな風に許されて生きていくことが許されないことも。
 それでもこの人だけはもう誰も自分から取り上げないでくれとカカシは願う。
 たとえこの命と引き替えだと言われても、カカシはイルカの為にならば簡単に捨てられる。
 もうこんな風に汚れてしまった命など、執着もない。それでもイルカがいてくれてここにいて良いと言ってくれるのなら、生きていこう。
 イルカの手がカカシの髪を掴む。そして噛み付くようなキスをされた。
 こんなにも欲しいと言ってるのに、とイルカは口吻の合間に囁く。その言葉で、カカシはまたイルカを求めての良いのだと思えた。
 罪悪感と後悔と。全てがごっちゃになって何処にも進めないカカシに結局手を差し伸べるのはいつもイルカだ。

「イルカ先生イルカ先生…イルカ…」

 もう止められなかった。堰を切って溢れ出した想いがカカシの中を巡っていく。本当に欲しいと思ったのはこの人しかいない。この人がいれば何もいらないと本当に思っている。
 だから、オレを許してください。心の中で願うように、そしてその想いをイルカに伝えられない代わりにカカシは口吻を深くした。
 熱いイルカの粘膜を、舐め回すように全てを絡み取る。その細胞の一つすら誰にも与えたくないと思うほど、今のカカシにとってイルカは生きる全てだ。
 カカシの罪を、ここに生きていくことを赦してくれた人。

「…っふ…ん、…っ……」

 何度も角度を変え重なる唇がくちゅりと音を立てている。カカシの背中に回るイルカの手が小さく震えていた。それを感じたカカシは胸が切なくなる。イルカだってずっと不安だったのだ。おかしくなってしまった自分を見てしまって、イルカを信じられないで馬鹿なことをした自分を繋ぎ止めてくれたのだ。
 そのくらい愛されていると、何故分からなかったのだろう。
 カカシは堪らずにイルカを強く掻き抱いた。貪る、と言うのが正しいくらいそのイルカの柔らかい粘膜を奪う。
 そして先ほどから何度言ったか分からない言葉をまた口にする。

「ゴメン、ネ?イルカ先生…」

 愛してるって言ったのに信じられなくてゴメン、と。
 するとイルカの頬を涙が伝っていた。泣かせたい訳じゃないのにいつもカカシはイルカを泣かせてしまう。もう一度ゴメンねと言ってまた唇を奪った。

「…っカシ、さんっ……んっ…」

 口吻の合間に自分を呼ぶ声がする。確かめるように何度も背中を撫でる手が愛おしかった。
 頬を落ちる涙を舌で絡め取って、そして眦に唇を落とす。

「もう、泣かないで…?」

 アンタに泣かれるとどうして良いか分からない、と苦く笑えばイルカも泣きながら笑ってくれた。
 イルカを見下ろしながらその耳朶へと吸い寄せられるかのように覆い被さる。そのままベッドに倒れ込んでその柔らかい耳朶に吸い付いた。ちゅっと音を立て、そして耳の中も舐め回すとイルカの身体が小さく震えた。

「…っや、…ん…」

 変わっていないイルカの感じる場所。それだけで嬉しくてカカシはイルカの感じる場所を執拗に攻め続けた。
 舌先で耳の輪郭をなぞってそして何度も甘咬みすると、ビクビクとイルカの身体が跳ねる。

「っあ、あっ…まっ、て……そこ、ばっかり……」
「なんで?ここ、好きでしょ?…ずっと覚えててくれたんだ…」

 嬉しいネェ、と吐息を吹きかければ、またイルカが身を震わせた。

「…も、…っと…違う…とこ、も……」

 恥ずかしそうに、それでももっと触って欲しいと訴えるイルカに嬉しくて。カカシはその要望に応えるべく、身体を下へとずらしていった。
 首筋を舐めあげて、鎖骨をきつく咬んだ。

「っあ、…んっ…」

 感度の良いイルカの反応が自分を待ち望んでいてくれたのだと思えて、カカシの身体も熱が籠もる。太腿に当たるイルカのそれも硬く滾っていてカカシはそれを刺激するようにグイッと腿を押しつけた。

「ひっ…やっ、あ、あっ……」

 イルカのベッドから出ている脚が空を蹴った。そのまま裸の上半身に舌を這わせるとイルカは身を捩ってその愛撫から逃げようとする。

「なんで、逃げるの?」

 グイッと引き留めて、そして中途半端に倒れ込んだベッドにイルカをちゃんと寝かせてやるとまた身体を引いてしまう。こら、と寄せて抱き締めればそれすらダメだと腕でカカシを押し返してきた。

「だっ、め……感じ、すぎて怖い…から…」

 ちょっとまって、と涙目で言われてしまえば、それは煽ってるとしか思えないだろうとカカシはまたイルカを抱き締めて、ダメだというのを聞かずツンと上を向いた乳首を口に含ませた。

「あっ…ん…、や、まって…カ、カシ…さ……ん、あー…」

 口に含んだ痼りを舌先で何度も弾いてやるとイルカはイヤイヤをするように何度も首を横に振る。
 待てない、とイルカの言うことを軽く無視して、そしてさらに反対の乳首も抓るように捏ねてやると身体が浮いてしまうのを恥ずかしがった。
 久しぶりに感じる愛撫にイルカは酷く怖がった。カカシの何処かを必ず触っていて、カカシがここにいることを確かめているようで切ない。

「気持ち、イイ?」

 喘ぎ善がるイルカにそう問えば、何度も頷いた。喘ぎ声が恥ずかしいのか口を手の甲で塞いでいるのが気に入らない。その手をわざと絡めるようにして繋ぐとイルカの中心がひくりと反応を示した。
 下穿きも全て脱がせて自分も裸になる。イルカのそれはもうべとべとになっていて先端から蜜が溢れていた。

「イルカ先生、スゴいね…感じてくれてるんだ?」

 嬉しい、とその繋いだ手に唇を落とすと、またひくりと揺れる。

「あ…んっ……カ、カシ…さ…」

 その手を外して、そしてイルカの濡れそぼったそれに触れる。先端の割れ目から先走る蜜は茎を伝って下生えまで流れ落ちていた。ぬるぬるとするそれを何度もさすりながらカカシはイルカの脚へ身体を入らせその脚をグイッと開かせた。

「もっと開いて、オレに見せて?」
「ひゃっ…あ、だめ、…見ない、で…くださ…」

 先端に親指を何度も引っかけて擦る。するとイルカの身体が揺れてさらにその滑った物が溢れ出てきてくちくちとさらにいやらし音を立てた。
 ずっと焦がれていたイルカにやっと触れていると思うだけでカカシのそれも既に膨れあがっていた。早く突っ込んで掻き回したい。そんな危ない欲求に打ち勝つのも大変だった。だから必要以上にイルカを泣かせてしまうのかもしれない。
 まって、やめてというのを聞かずにカカシはイルカを攻め続けた。いつもの場所に用意されていたローションに手を伸ばしそれを十分に暖めてから、イルカの双丘のその奥にある粘膜へ塗りつけた。ゆっくりと襞を伸ばすように傷つけないようにと注意を払う。
 暖かい粘膜がカカシの指を誘っているようにしか思えなかった。ゆっくりとその入り口を解した後、ひくひくと誘い込むような動きを見せるそこにカカシの長い指を突き入れた。

「っあ…っあ、ん…やぁ…」

 時間を掛けて解したそこは既に柔らかく溶けていて、あっという間に二本の指を飲み込んでいく。指を入れただけでこんなに気持ち良いのはイルカしか知らない。それだけイルカはカカシにとっても特別な存在だった。

「も…、だめ…カカ、シさ、…入れて?…」

 かなり時間を掛けて愛撫したからなのか、イルカはもう朦朧として快楽に言うことが少し幼い感じがした。それがいつもの凛とした彼とはまた違いカカシは参ってしまう。
 このギャップが堪らないんだよな、と以前からの行為を思い出せば、またカカシのそれも限界が近いと、イルカから指を抜き、そしてその硬直した物を押し当てた。
 ひくりと動く粘膜誘われたような気がした。

「入れるよ?…これ、欲しい?オレのこと…まだ欲しいって思ってくれる?」

 ここまで来て、まだ不安が抜けないのは事実だ。こんな風になってまだなおカカシはイルカにこんな事を言わせてしまう。
 その言葉で正気に戻ったのか、イルカが快楽に潤んだ目でそれでもしっかりとカカシを見詰めて来た。

「…欲しい……カカシ、さんしか…いらないっ……だから、もう…離れなっ…っああ――…っ」

 最後の語尾はカカシの挿入で掻き消された。ゆっくりと腰を進めて、そして馴染むまでイルカを抱き締めて。
 そこはまるでイルカそのものだった。暖かくて優しくて。いつもカカシを受け入れてくれるイルカそのもの。

「イルカ先生…愛してる。オレが死んでもこの気持ちは変わらないから…」

 イルカの胸の傷にそっと手を当てたカカシはまるで誓いを立てるかのように、そこへ口付けた。
 繋がったままでの体制では少し苦しかったけど、それでもイルカにはちゃんと分かっていて欲しかった。

「何があっても、どんなことがあってもオレはもうアンタを見失わないから…」

 そう告げるとイルカの目からまた涙がこぼれていく。ひくりと息を詰まらせて泣き始めたイルカが何度もカカシの名を呼んだ。

「カカシさん、カカシさ……貴方で一杯にして……もう一人じゃないって…教えて……あ、っん…」

 ゆっくりと腰を揺らしたカカシにイルカが泣きながら感じていた。
 馴染んだそこはカカシを柔軟に受け入れて、溶けていく。ゆっくりした動きをさせて、さらに奥へと腰を進めるとイルカが大きくのけぞった。

「ひっ…ん…っ…や、そこ、だめ…すごっ……」
「ここ?奥スゴいの?」

 グイッと何度もその場所を穿ってやると、イルカのそれからダラダラと蜜が溢れ出してくる。

「あ、あっ…も、イっちゃ、…あんっ…」

 ぐちゃぐちゃと淫猥な音がしている入り口をカカシは自分が入っているのを確かめるようになぞる。ここに自分がいるのだと確かめたくて。それがまたイルカを感じさせたのか中がきゅっと締まった。

「…っ…く……やばい、そんな締めないで…」
「…し、らない……もうっ…イクっ…あ、あ、あ…」

 それでも決定的な刺激を与えられてないイルカはダラダラと白濁した液を流し続けている。そこをカカシの手が優しく包んで擦ってやると、イルカはもうダメと何度も首を横に振った。

「…カシさっ……わすれ、ないで…?」

 俺がここにいるから、とイルカは朦朧としている中で呟いた。それはあの日と同じ事を言っているのだろう。

――――…愛して、ます。……どんなことがあっても、貴方を…愛しているという事を忘れないで……

 その言葉にカカシは胸の奥が痛くなった。
 忘れない、もう二度とわすれやしないと、そう心に誓って。

「…ん…忘れない……アンタが、愛してるって、事を……忘れないから…」

 その言葉にイルカは泣きながら、笑った。
 イルカの手を取って、全ての指を絡め取るように繋ぐ。
 そしてカカシは包み込まれて溶けそうな粘膜をさらに強く穿った。

「あ、あ、…っや…ん、もう…イっちゃ…う、ああ――…」
「オレ、もっ……」

 繋いだ手を強く握るとイルカの中が締まって、そしてイルカのそれを穿つ早さと同じに扱いくと、イルカの物でカカシの手が濡れた。
 それと同時にイルカの中をカカシが濡らしていった。



 

 カカシは疲れ果てて眠るイルカを抱き締めていた。
 窓から見える青い空。
 何度でも蘇ってくる白昼の月。
 
――――オレはみんなに赦されて、生かされている。

 忘れないように、この空を、そしてこの月を。
 自分の戒めとして生きていこう。




 アナタは教えてくれた。
 人を愛すると言うことを。
 この先に何が待とうとも。
 もう、迷わないから。







 人を愛する事は。
 全てを愛するという事。
 背負う罪も罰も。
 あなたの全てを。



 愛しているという事。

















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―――― 2008.9.24up