暗闇の中に一つだけある窓から見えていた空には白昼の月が浮かんでいた。 それはいつの日かアナタと見た空と重なって。 あの時に還りたいと。 4,空 招集はこれから長期に渡る作戦の打ち合わせだった。その主要人物だけが呼び出され事の詳細が知らされる。 上忍ばかりが名を列ねる中にイルカがいる事にカカシは首を傾げた。確かにイルカの能力は高い。だが今まで一度もこう言った場所で顔を会わせたことは無かったのだ。 一番後ろで分をわきまえ控えているイルカを目の端に居れながら胸を締める不安を隠せなかった。 五代目火影綱手から大まかな概要を聞き、話の内容は解った。 新薬が開発され、それが木の葉や火の国に出回り始めていた。 新薬、と言うより麻薬。それを使って根を腐らせようとしている所がある、と言うことだ。 前々から麻薬の流通に関与していると疑われている有権者がいて、だが確信たる物がどうしても掴めずにいた。 そこにまた新種の麻薬が出回り始めてしまったのだ。 早めに潰さなければ。と言う事でこの招集が掛けられた。 「隠密調査に数ヶ月かけ、綿密に行う。こんなもんが広がったら木の葉は愚か、火の国が腐っちまうからね。」 カンッとキセルを打ち付けて火種を落とす音が室内に響き渡った。 「…で、だ。今回その隠密をやって貰うのは、うみのイルカ。お前にやってもらうからな」 名前を呼ばれてカカシはどきりとする。これか、嫌な感じがしたのは。 「まあ、みんなも知ってるとは思うがイルカは中忍だが能力は三代目のお墨付き。今回の任務も前々から隠密はイルカと決まっていた。三代目の意向でね。とりあえず事を起こすのは先にイルカが潜伏して内情を探ってからだ。それまでイルカとの繋ぎはアスマ、そして暗部二人にやってもらう。他国の忍も関与している可能性が高いから繋ぎも慎重に行うこと。以上だ。潜伏は『あれ』が終ってからだ。先方にはもう返事はしてある。いいな?イルカ」 そこまで一気に話した後、イルカの方を見て綱手は椅子の背持たれに体を預けた。 それを聞かされたイルカは一言「御意」とだけ言うと頭を下げた。 当面はイルカが内情を探る事が主になるのでここに集まった上忍達が動くのはまだ先の話だった。とりあえず、任務についてと情報を渡されこれ以上その新薬が広まることを防ぐことになった。 すべて居なくなった火影の執務室にはイルカが残っていた。綱手はじっとイルカを見据えてそして目を細め笑顔を見せた。 「ったく、私も甘ちゃんだ。」 その言葉に残っていたイルカは苦笑する。自分がどうしても近付きたいと願った存在の事を綱手は全てお見通しだったのだ。この話を受けたときに洗いざらい白状させられた。カカシの事も自分がどうして上忍になりたいと願ったのかも。 「あのバカにお前の気持ちが解れば良いがな。あいつはお前が思ってるより単純だぞ?」 今のカカシをこんな風に言える人間も少ない。それを聞いたイルカは思わず笑いが溢れた。 そうなのだ。カカシはあの風体からは想像が付かないが根はとても優しい人で純粋なのだと、付き合いが深くなればなるほど解ってきた。 不器用な、優しい人。 だからこそイルカは上を目指そうと思った。愛しい不器用なあの人の手助けが出来るのならば、自分の力を信じて進んでいこうと。 「解って貰えなくてもいいんです。あの人の力になれればそれで。」 その言葉を聞いた綱手が、全くしょうがない奴らばかりだ。と苦笑した。 それを聞いたイルカはすみません、と笑って答えた。 「もう先方に話は伝わっているから、明日からは任務だと思え。その辺もカカシに十分言い含めておけよ。」 こくりと頷いて、失礼します。とイルカは部屋を出た。 「明日から任務になってしまうので当分は会えなくなると思いま…」 最後まで言葉を言う前に手を引かれ、そのまま抱き寄せられた。きつくなる腕に、苦しいですよ。と抗議してもイヤイヤと子供のように首を振った。 イルカの部屋に帰ってきて早めの夕飯を食べた後、ちゃんと伝えておかなければならない事がイルカにはあった。 だが、どうしても言い出せず、結局こんな風に言葉を濁した言い方しか出来ない。 やっと解放されたかと思えばそのまま唇を奪われた。角度を変えて早急に深く入り込むカカシの舌を従順に受け入れていく自分にイルカは苦笑いを含む。いつの間にかこんなにも心も体もカカシを受け入れていた。受け入れてすでに掛け替えの無い物へと変わっているカカシの存在を無くす事は出来ない。何があっても。 そう思って今回の任務を受けたのだから。 「…ふっ…っ……」 鼻に掛かる息が漏れ、やっと唇を解放された。混ざり合った唾液を伝うようにカカシの舌が這いずってそのまま首筋に落ち、所々で強く吸われ鬱血した痕を残す。 この温もりと暫くの間は離れないといけないと思ったら、今日はたっぷりと味わいたいと言う欲求がカカシの中を駆け巡った。 折角手に入れた温もりが任務だとはいえ長い間離れる事に不安を感じながら。 背中をまさぐっていた手がイルカの脇腹に直接触ると、思わず体がピクリと跳ねた。緊張の為かカカシの指先が冷たくなっている。イルカの肌の体温がやけに高く感じて、そっと指でその肌を伝っていく。 こんなにもアナタと離れる事に不安を感じるなんて…。 そう思いながらこの不安がずっと消えない事をカカシは何となく感じていた。 ぞわぞわと背中に走る痺れを感じながら、イルカは身を捩る。ベッドの上に倒されてカカシの体が圧し掛かって来て更に密着度を増した。 いつになく性急なカカシの不安がイルカにも伝わるようで、イルカはカカシにしがみついて、そして、切ない声でカカシの名を呼んだ。 「カカシ、さん……」 「……?イルカ、先生…?……」 不意に目と目が合い、カカシがイルカに口吻を落とす。ちゅっと軽く触れるとまた触れる。手は休む事を知らず気が付けば下腹部へと伸びていた。 今まで誰かにこんな事を言った覚えがあっただろうか。いや、こんな言葉を今まで口にした事は無かった。だからこそカカシに伝えたかった。 だって、自分はいつだってカカシの事を変わらずに想っているという自信もあったから。 それを今、言わないといけないような気がした。それは言ってもカカシに伝わっているかどうかは解らないけど。 「――――愛してます、カカシさん」 初めて聞く言葉にカカシの手が止まる。 アイシテル。 今までカカシはその言葉を「なんて陳腐なんだ」と想っていた。だがイルカから聞いたその言葉は、自分の魂を揺さぶるような衝撃を与えていた。 その言葉を飲み込んでカカシは強くイルカを求めた。下腹部に伸びていた手がイルカの中心を掴んで撫で上げる。 「…ぅっ……ふ……」 撫でられて先走る蜜がイルカの先端から流れ落ちた。くちゅりと音を立てカカシが更に扱きあげるとイルカは溜まらず声を上げた。 「…ぁあっ………」 身を捩ってシーツをギュッと掴むイルカに耳元で囁いた。何度も何度も愛しい名前を繰り返して。 「…イルカ先生……イルカ先生…」 耳朶を口に含ませ、何度も耳の中に舌を差し入れて名前を呼ぶ。 扱きあげられるイルカ自身も既にもうはち切れそうなくらいに高ぶっていた。体をずらしてイルカの中心へ顔を降ろしていくカカシはイルカの上着を脱がして放り投げた。露わになった上半身は均等の取れた筋肉が付いていて、カカシはその度にイルカの忍としての能力の高さも感じていた。 既にピンとその存在を主張する二つの突起。それを引っかけるように指で弾けば面白いようにイルカの体が跳ねた。 舌で、指でその突起を弄ぶとそれに反応してイルカ自身に力が宿る。どんどんと固くなるイルカの中心をカカシは指で翻弄していく。先から零れ落ちる透明な液がぬるりとカカシの指を滑らせて粘着質な音を立てるのだ。 その水音に羞恥からか目をきつく閉じた。 「…ここ、凄いね。もうこんなになってる……」 カカシは時折こうやって言葉でイルカを責め立てたりする。それがまたイルカの興奮を誘ってもう何も考えられなくなっていくのだ。 「…ひっ…あぁっ……あ……」 「余計に興奮しちゃった?いやらしいね…」 その言葉に首を振って体を起こそうとした時、イルカの物をカカシが口の中に含んだ。肘を突いて上半身を支えた状態のイルカが仰け反った。髪がばさりと解けて色香を更に醸し出す。 じゅっじゅとイルカのそれを上下運動で扱きあげると、イルカはもう声を押し殺す事は出来なかった。喘ぐ声が部屋中に響く。 その声がカカシの興奮を誘って、カカシも限界に近づいていた。 イルカの後口にカカシの手が伸びる。器用に片手で潤滑液を開けてイルカの後ろにあてがった。ビクリと身体が跳ねてその行為をイルカはやり過ごした。 何度身体を繋げても、この行為に慣れる事はなかなか出来ない。この後に快楽が待っていると思えば、この時を我慢する事が出来た。 いつもはゆっくりと慣らすそれも、今日はカカシも余裕がないようで無理矢理二本の指が押し入ってきて、その苦しさにイルカの息が詰まる。 「…ゴメン、ネ。イルカせんせ……オレも結構限界です。…」 そう言って、入った二本の指を強引に動かした。 「…ちょ…っ、待って……」 あまりの強引さと苦しさにイルカが声を上げてもカカシはそれを止めようとはせず、イルカの中を掻き回した。 潤滑液の力も助けてなめらかな滑りを見せる指をカカシは引き抜いて、自分のズボンの前を寛がせてはち切れんばかりの己の物をイルカの口にあてがった。 イルカの膝裏をすくって身体を折り曲げる。ぐぐっと先端が潜り込み、イルカの身体が弓なりに仰け反った。 「…ひっ…あぁっ……!……」 「力…抜いて……イルカ、先生……」 イルカの狭い中はカカシのそれを強く圧迫して進入を拒んでいた。肩でふぅふぅと息をするイルカ自身に手を伸ばし、力を失いかけていたそれをまた指で扱くとすぐに力を取り戻した。 それと同時に後ろに入っていた力も緩み、カカシはそのまま最奥まで自分の物を突き入れる。 「あぁ…っ……あ……ぁ……」 イルカの悶える姿はカカシの視覚を刺激する。なんてイヤらしい。昼間はあんなに健全な教師が、自分に股を開いて銜え込んでいるなんて。 知らぬ間にイルカも快楽を求めるように腰を揺らしていた。カカシのピストン運動に合わせてイルカも腰を揺らす。いつの間にこんなに気持ち良くなったのかは覚えていない。だが、気が付いたらカカシに後ろを突かれただけで達してしまう様になっていた。 それだけ身体の相性も全て良かったのか、とイルカは渦巻く快楽の中でぼんやりと思った。 カカシのそれはイルカの感じる前立腺を上手く突き、部屋には肉の当たる音と結合部のぐちゅぐちゅと言う水音と、イルカの喘ぐ声が響いていた。 「…も、…だめ……カカ、シ、さん……」 愛しい人の名を呼んで、イルカは自分の腹に呻き声と共に達した。 ビクビクと吐き出す白い液と共に後ろに入っているカカシを締め付けて、それがカカシの絶頂を呼んだ。 息も荒くそのままイルカに入ったままカカシはイルカの唇を探した。 キスしたい。 そう思ってイルカの唇に自分の物を重ねようとした時。 イルカがカカシにしがみついて来た。 耳元で囁かれる言葉。 それが、どんなに嬉しかったか。 「…愛して、ます。……どんなことがあっても、貴方を…愛しているという事を忘れないで……」 「オレもアナタを愛してます。」 カカシは今まで陳腐だと思っていた言葉を初めて口にした。そして心の中で「忘れるもんか」と呟いて、やっとイルカの唇に自分の物を重ねた。 そう言えば、先程の帰り道でもイルカは同じような事を言っていた様な気がする。 招集の後、イルカは半休を貰えたと言ってきた。カカシの方は招集の前に7班の軽い失せ物探しの任務を終えていたので共に帰宅することになった。 天気の良い午後だった。 散歩がてら遠回りをして帰り、土手を歩いていた時、イルカがカカシの方を振り返り言った。 「お願いがあるんです。」 何をだろうか。イルカの願いであるなら何でも聞いてやる。そんなことを考えながらカカシは笑って答えた。 「何ですか?突然。イルカ先生のお願いならなんでも聞きますヨ。」 と、おどけて言うとイルカは少し寂しそうに微笑んだ。 「この先、何があろうと、どんな事が起きようと――――俺を信じていてください。」 カカシは小首を傾げた。 何を当たり前な事を。アナタを信じる以外、今を生きている意味がないのに。 「もちろんです。」 簡潔にそう答えてイルカの方を見れば真摯な顔をしていた。 「……信じてます。イルカ先生……」 それ以上は何も言わなかった。その変わりそっとイルカに近づいて手を伸ばした。 誰もいない土手に2人の影が伸びていた。 白昼に出ている白い月をアナタの肩越しに見ながら。 その空と一緒にアナタを胸へ閉じ込めた。 二度と離しはしないと。 心に誓って。 |
――――2005.2.1.up