ヨーロッパ連合(EU)加盟国(2004年5月1日現在)
ドイツ、フランスなど西ヨーロッパの15カ国で構成されていた「EU(ヨーロッパ連合)」に5月1日、東ヨーロッパの国ぐにを中心とする10カ国が新たに仲間入りしました。25カ国になったEUの人口は4億5千万人になり、アメリカ合衆国並みの大経済圏となりました。ヨーロッパ全体をひとつの国のようにする統合はまた一歩進みました。
統合はもともと、80年足らずの間に3回も戦争をした(1870〜71プロイセン=フランス戦争 1914〜18第一次世界大戦 1939〜45第二次世界大戦)、ドイツとフランスとの間を正常化しヨーロッパの安定をはかるため第二次世界大戦後に始まりました。EUの母体のEEC(ヨーロッパ経済共同体)は両国など6カ国で出発しました。
初めは、おたがいの輸入品にかける関税をなくすことなど市場の統合が進められました。次は同じ通貨をもつことです。これは2002年1月から12カ国(イギリス、スウェーデン、デンマーク参加せず)で使われ始めた通貨「ユーロ」で実現しました。
残る課題は政治面での統合です。強い経済力を保つには、強い政治力が必要だからです。EUにはすでにヨーロッパ議会があります。新しくできるEU憲法によると、大統領も誕生します。こうなると、一つの国のようにみえますが、実態は限りなく国に近い国際機関です。
たとえば、イラク戦争にイギリスが賛成し、フランスが反対しています。EUの公用語も今までの11から20に増えました。これでは一つの国になるのはむずかしいでしょう。
どの国も長い歴史と伝統、さらに豊かな文化をもっています。つぎの図はそのことを示しています。
ヨーロッパの分断線
ヨーロッパには歴史的背景からおもに6つの分断線があるといわれています。この分断線上では、それが原因となって紛争がうまれやすい。また、分断線がこみあう地域では、紛争がうまれやすく、かつ複雑化する傾向にあります。その典型が第一次世界大戦の発火点になったバルカン半島です。
6つの分断線
@ローマ帝国の範囲
ローマ帝国が支配し、その文化の影響がおよんだ範囲
Aギリシア正教会とカトリックの境
395年の東西ローマ帝国の分裂によってうまれた分断線
Bカトリックとプロテスタントの境
1517年にはじまる宗教改革によってうまれた分断線
Cオスマン帝国の境界
イスラーム教の影響が強かった地域とそれ以外の地域
D19世紀の工業化の範囲
1760年代イギリスではじまった産業革命による工業化 が進展した地域
E資本主義諸国と社会主義諸国の境
第二次世界大戦後の東西対立による政治的分断線
現在、この分断線にかかわることで大きな問題になっているのが、トルコのEU加盟問題です。イスラーム教国トルコの加盟を認めるかどうかで、EU内部の大国イギリスとフランスではっきりと意見がわかれています。イギリスが「トルコにはEUに加盟してほしい」といえば、フランスは「イスラーム文化が色濃いトルコはEUにふさわしくない」と反論します。将来、普遍的な「ヨーロッパ合衆国」をつくるうえで、トルコの加盟問題はもっかの試金石とみられています。
ところで、ヨーロッパの統合がすすむなかで、孤高を保つスイスの存在が際だってきました。なぜスイスはEUに加盟しないのか、その答えはスイスの国民が「世界で最も徹底したスイスの直接民主制がくずれるのではないか」との懸念ををもっている点にありそうです。主権の一部放棄を意味するEU加盟には国民のあいだでは反対論が根強く、現在のところ加盟が国民投票で承認される見通しはありません。しかし一方で、EUの外に居続けることがしだいに困難になってきており、スイスの孤立感も深まってきています。「長い目でみれば、EU加盟は時間の問題」とみられています。
フランスを公式訪問したトルコのエルドアン首相は2004年7月20日、シラク仏大統領と会談しました。トルコが希望するEU加盟問題で、シラク大統領は加盟支持の立場をあらためて伝えました。ただ、フランスは与党内や国民世論に根強い反対論を抱えています。シラク仏大統領は「条件さえ整えばEU加盟が望ましい」との考えを重ねて表明、国内改革の実績をたたえ、一層の努力を促しました。
シラク仏大統領は2004年6月末、北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が開かれたイスタンブルで、トルコ加盟は「後戻りできない動きだ」と認めました。しかしジスカールデスタン元仏大統領は「地図をよく見てほしい。トルコは端っこがわずかにヨーロッパにかかっているだけではないか」とトルコの加盟に批判的です。EU憲法案の生みの親だけに、元大統領の異議は無視できません。
トルコは1999年のEU首脳会議で正式な加盟候補国と認められました。加盟交渉については、2004年10月にも出るEU委員会の報告書をもとに、2004年12月半ばのEU首脳会議で開始の是非を最終判断します。
EU憲法が定めるEUの機構
ヨーロッパ連合(EU)が2004年6月18日、EUの基本法になる憲法条約を採択しました。地域共同体で憲法を持つのは世界でもEUだけです。
憲法は前文と第1〜4部で構成されます。過去の諸条約を集約・簡素化し、民主主義や持続的開発、人権保護、死刑廃止などの基本的理念をうたっています。
大統領は最高意思決定機関の首脳会議の常任議長を務め、共通外交・安全保障政策でEUを対外的に代表します。EU外相は外相理事会の議長を務め、外交交渉の指揮をとります。大統領や外相ポストがない現在、EUを代表するのは議長国の首相や外相です。しかし半年ごとの持ち回り制ですので、存在感があまりありません。
また地方分権を進め、各国議会がヨーロッパ議会に意見を提出する権利や、100万人以上の市民が求めればヨーロッパ委員会に法案作成を要求できる権利を盛り込みました。
憲法を頂点とするEU法体系が整備され、ヨーロッパ司法裁判所の判決を通じて、各国の法的一体性が強まる可能性もあります。ドイツやフランスなどヨーロッパ統合推進派の国ぐにの間には、EUが「一つの国」にさらに近づくとの期待がたかまっています。