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「ジェームズ、出掛けるの?」
こっそり抜け出そうとしたジェームズに、目ざとくリーマスが声をかけた。透明マントを手に、ジェームズはチ、と足を止める。苛々していたので咄嗟の言い訳も考えていなかった。 リーマスの声につられてシリウスも顔を上げて、ジェームズを見る。
「なんだジェームズ、また食堂に何か盗みにでも行くのか?」
「人を大食漢みたいに言うなよシリウス、いつも一緒に食べてるくせに。違うよ」
「じゃあなんだよ」
「……内緒」
しまった、そうだと言ってしまえば良かった、と後悔する。結局理由が思いつかず、不自然な答えになってしまった。その答えに、シリウスが意地悪く面白そうな笑みを浮かべる。
「あ、お前、リリーに内緒で別の女と約束でもしてるんじゃ無いだろうな?それで俺達にも内緒なんじゃないのか?」
ジェームズは内心ぎくりとしながら、表面上は平然と言い返した。
「彼女いないからって絡むなよ。そう言えばこないだ告白された彼女はどうしたんだ?」
「なっ、ば、お、あれはっ……!!」
「え、何それ」
赤く青く顔色を変えるシリウスに、無邪気にリーマスが顔を向けた。シリウスは必死に首を振って、リーマスに『違う!』と訴えようとしている。シリウスはリーマスに思いを寄せているが、リーマスは全く気が付いていない。ジェームズは勿論シリウスが告白を受けた女生徒を振った事は知っていて、告白を受けた事自体リーマスに言っていないのも知っている。どうにもリーマスに誤解を受けたくないのだ。
と言う事で、シリウスを黙らせるにはこの手に限るな、とジェームズはドサクサに紛れて部屋を出ようとした。
しかし、ドアが閉まる直前、後ろからリーマスの呟きがジェームズに届いた。
「さっきセブルスも、あのルシウスと一緒に出ていってたなぁ」
こんな時間に、何だって!?出ていった!?いつも風紀規則にうるさいスリザリンのくせに、何を二人でコソコソと!!大体、もうそろそろ僕と約束した時間だろう!!
別にコソコソ、とリーマスが言った訳では無いが、自分達がいつもコソコソとしているので、ついそう考えてしまう。そう、こんな時間に二人っきりで抜け出すなんて。いやらしい。自分の事を綺麗に棚上げして、ジェームズはルシウスとセブルスの二人の事を考えた。
ジェームズはルシウス・マルフォイが嫌いだ。
スリザリンの上級生・ルシウスは、スリザリン生の間では「憧れの先輩」の一人になっている。血筋も成績も良いしクィディッチのレギュラーだし(スリザリンの)後輩の面倒見も良い。
しかし他寮の生徒――何よりグリフィンドール生とは気が合わず、当然の事ながら、クィディッチのライバルであるジェームズとは口も聞かない。
いや、ジェームズにとってはそんなものどうでもいい。相手にしなければ良いだけの話である。
しかし必要以上に気に入らないのは――ルシウスが、あからさまにセブルスに目を付けている事だ。
疑り深い性格のくせに、どうにも尊敬する「ルシウス先輩」に対して、セブルスは異様にガードが甘い。そんなだから、ついジェームズはセブルスの前でルシウスを悪く言ってしまうが、そうすればムキになったようにセブルスはルシウスを庇ってくる。余計に腹が立つので、ますますジェームズはルシウスが嫌いになる。
ルシウスがセブルスに接する様を見ると、どうしたって下心ありありだ(身に覚えがあるだけに)。必要以上に肩や髪に振れている気もするし、顔も近付け過ぎだ。
優しさなんて下心を隠す為のものだ、とジェームズが言ってやると、セブルスは呆れた顔で、お前と一緒にするな、大体同じ下心持ちなら、優しいだけお前より先輩の方がマシだ等と言ってきた。
マシってなんだ!?優しけりゃ誰とでもやるのか!?乗り返るとでも言うのか!?(乗り返るも何も元々ジェームズが脅してできた関係であって、セブルスが進んで乗ってきた訳では無い)
苛々するのは、ルシウスにだけではない。最近性格も丸くなって、他人に対する態度も柔かくなって、ついでに容姿に磨きもかけて、かつそんな自分が他人にどんな目で見られているか等と気が付いていないだろうセブルスが、「尊敬する優しい先輩」に頼っていたり憧れていたりしている事である。
もしルシウスに下心で――しかもあくまで優しく――押されたら、セブルスは拒めるのか?(そもそも腕力では絶対にルシウスの方が上だ。)
こんな時間に二人で外に。ルシウスの下心が見え見えだ。
かと言ってむやみに探しまわっても見つかるものでもなく『セブルスはジェームズに絶対忠実』という日頃の態度を思い、ジェームズとの約束――というか呼び出し――をすっぽかすはずが無い、ジェームズは自分にと言い聞かせて、いつもの、逢引きに使用している部屋でセブルスを待った。
しかし、すっぽかしはしなかったものの、セブルスがそこへやって来たのは、約束よりも2時間も遅れてだったのである。
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