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「……すまん」
珍しく素直に謝るセブルスの顔には『やっぱり怒っているか……』と、ジェームズを伺う色がある。勿論、ジェームズはいいかげん待ち草臥れて、怒りも熱湯からドライアイスに変わってしまっていた。低温過ぎて十分火傷するレベルだ。部屋の片隅に置かれていた古いシーツをマット変わりにして寝っ転がっているジェームズは、無言でセブルスをジロリと睨み付けた。
「少し……人と話をしていて……出てくるのが遅れた……」
ジェームズを怒らせるとどういう目に遭ってしまうのか、セブルスは身を持って知っている。なるべく穏便に済むように、と、聞かれもせずに言い訳をし、恐る恐るジェームズに近寄ってきた。いつも肌を重ねる行為はそのシーツの上で行っているので、セブルスは、自分からは滅多にそこに近寄らない。なんとなくジェームズには『後ろめたい事があって機嫌を取りに来ている』ように見えてしまい(身に覚えがあるからか?)、それもまた気に入らなかった。
返事も返さず、ぐい、と手を伸ばして手首を掴み、セブルスを自分の下に押し倒した。掴まれた痛みに顔を顰め、怒りを含んだ視線で突き刺してくるジェームズに、セブルスは少し怯えたように身を竦めたが、それでも大人しくされるがままに、自分の上に乗るジェームズを恐々と見上げた。
「……話をしていて、かい?それだけ?」
発すると、思ったよりも低く陰にこもった声だった。自分の怒りと言うか、不機嫌さがよく表れてる、とジェームズは思う。言われたセブルスは、え、と戸惑う――でもなく。
赤くなった。
「それだけ――って、他に…何があるわけでも、ない…だろう」
セブルスの声は頼りない。ついでに視線も泳ぎ出した。待っている間にさんざん考える時間のあった嫌な想像が、ジェームズの頭の中でさらに膨らみ、顔を近づけて、息がかかる距離で問い詰める。
「そう?じゃ、誰とどこで話してたのさ?」
「…寮で、先輩と……」
「寮のどこ。何先輩と。どんな話」
「……どうでも、いいだろう…別に大した話しじゃ……」
間近で直視され、たまらず視線を背けたセブルスに、ジェームズは冷ややかに笑った。
「僕を2時間も待たす程の、どうでも良い話かい?良い度胸だね、君、いつからそんなに偉くなったの」
ジェームズとて別に偉くは無いが、脅している側はいつでも立場が強い。セブルスもそれに慣らされたものだから、反論ができず、困った横顔をジェームズに見せている。
見せられた横顔にジェームズは顔を落とし、柔かく耳朶を噛んでやった。
「っ……」
セブルスがますます身を竦める。ただし、恐怖では無く、与えられる甘い快楽に、だ。
唇で揉むように耳朶を食み、舌を伸ばして形を探ったりする。時々息を吹きかけて、セブルスの体が震えるのを楽しむ。それだけでもセブルスがだんだん熱くなるのが分かる。慣れと条件反射ですでに反応しかけているのだろうが、ジェームズは焦らして、絶対に触ってやらない。耳にだけの愛撫で、高める。
「…ル、……」
「うん?」
洩れかけた声に、さらに耳元で促す。とうとう堪らず、セブルスが口を割った。
「ルシウス先輩、だ……」
声を絞り出した事で、さらに甘い吐息がセブルスから洩れる。ジェームズは、やっと口を割らせた事に満足する。しかしまだこれからだ。聞きたいのはそんな事では無い。
「どうして黙ってたのさ。何か後ろめたい事でもあるの?」
「べ、別に……」
ジェームズはセブルスの下に手を指し入れて、背中をその指先でなぞってやった。悲鳴のような嬌声が上がって、セブルスの腰が反る。
「寮って言うのも嘘だろ。二人で、どこか外で隠れて会ってたんだろ?こんな時間に、君達みたいな門限に煩いスリザリン生が何してたのさ。まさか見まわりなんて言うなよ」
「……見、見まわ……」
ズボンの上から優しく掴んでやったら、息を飲むようにセブルスが口を閉ざす。
「……何してたの。何されてたの、ルシウスに。」
セブルスの体に触れていたら、だんだんジェームズ自身も高まってきて、そしてここに来るまでの2時間の間にルシウスが――もしもこの体に触れていたのか、と思うと、ひどく自分が暗く熱くなるのが分かった。
「な、何も……」
ほとんど泣きそうな声でセブルスが言う。説得力がない、と、ジェームズは思う。
「今更隠さなくても良いよ。ルシウスは君を狙ってた。君は、ルシウスを慕ってた。二人で何してたのか、さあ言ってみなよ、それとも言えないほどの事かい?」
だんだんと口調がきつくなる。同時に、手の動きも荒く、セブルスの体を弄り始めた。身を捩ったセブルスをさらに押さえこみ、ジェームズはセブルスの服の中に手を入れてポイントを攻めた。
「お、お前が!!!」
セブルスが悲鳴を上げるように、ジェームズと視線をぶつけてきた。ほとんど泣きそうな顔で。
「……お前が、何」
弄る手を止めて、ジェームズはそんなセブルスを見下ろす。泣きそうな顔で、困ったような顔で、そして赤い顔で。
セブルスは、言う。
「お前が、……怒る、から……」
赤い顔はますます赤くなり、語尾は小さくなる。
「私はお前のものだからって、怒るだろうから……何も、させてない……」
さらにカアァと赤くなる顔のセブルスは、やはり泣きそうな、困ったような顔で、ジェームズを見上げてくる。
ジェームズは。
「……え?」
と、目をきょとんとさせた。セブルスのその言葉、それよりも、その表情と口調は。脅されて関係を持った弱者というよりも。
まるで、『彼氏が嫉妬するから、クラスの男子とも話が出来ないの。』なんて溜息をつき、疑われる事に拗ねてる彼女のようで。
「……え?」
「だから……その……」
それ以上何を言えばいいのか、セブルスにしてははっきりしない語尾で、その場に妙な空気が流れる。
妙なって言うか。
花でも飛んでいる気分だ。
「……じゃあどうして2時間も?」
とりあえず、浮かんだ疑問を思いつくまま言ってみる。セブルスが急に目を吊り上げて、叫んだ。
「そんな理由、先輩に説明できるか!?理由を隠したままで、熱心な先輩を断るのにどれだけ苦労したと思っているんだ!!ただでさえ尊敬している先輩にっ……」
ハ、とセブルスは口を噤む。セブルスがルシウスを良く言うと、決まってジェームズは機嫌が悪くなるからだ。
そして、ジェームズは無表情を作り――言った。
「信じられない」
セブルスがビクリと身を竦める。
「信じられない、2時間も一緒にいて。本当かどうか――」
ジェームズはそこで、不敵な笑みを浮かべて見せた。
「隅々まで調べてあげるよ」
「っ!!ポッター、お前、それは口実だな!?本当は私が何をしてたかなんでどうでも良いんだろう!!ただやりたいだけだ!!」
急にいつものジェームズを発見し、セブルスは赤くなって、暴れる。それを楽々と押さえつけ、ジェームズは手早くセブルスの服を脱がす。
「当たり前だろ、何の為に呼び出したと思ってるのさ。2時間も待たされたツケはしっかり払ってもらうよ。」
「それもこれも、元々は誰のせいだと……ふ……、あ……く……」
その真っ白な、何の痕も無い素肌に唇を寄せて、ジェームズは、自分だけのその体に浸っていく。
「君のせいさ、セブルス。君が僕の事、『尊敬する先輩』を断る事しか考えれられないくらい、そんなに好きで仕方が無いから。だから、優しい僕は、それに付き合ってやってるだけ」
「か、勝手な事を言うな!!」
真っ赤になったセブルスが、ジェームズを引き剥がそうと暴れる。
それこそも、もう最近では、二人の間では日常的なラブのやりとり。すでに誰の入る余地も無い。
クスクスと笑いながら、ジェームズはセブルスを抱きしめた。
「だって、そうだろ?」
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