君は抱きしめて。僕が僕を捨てても。


11



 自分で言った事なのに、口に出すと、ひどく心は暗い方へ向かって撥ねる。他人に肯定されると尚更堪えた。
「お前達の行為に愛情など存在していない。」
 ルシウスはそして、セブルスの手首を掴み、引っ張り上げ――
「!」
 ルシウスのベッドへ、セブルスを押し倒した。
 咄嗟にそこから逃げようとセブルスはあがいたが、あっさりと両手を顔の横で押さえつけられた。ルシウスの変わらない表情が、セブルスをやはり冷たく見下ろしていた。
「愛情など奴はお前に持っていない。ただお前を相手に性欲を満足させているだけだ。そして何より、支配欲とな。力ある者が他人を支配するのは、この世の成り立ちと変わらん。奴も案外、スリザリンに入っていれば、それなりに使える奴だったかもしれないな」
 手首を押さえつけられたままセブルスは身を捩ろうとしたが、まったく叶わなかった。ルシウスは続ける。
「支配するならば、弱い者よりはより強い者を。そうすれば自分は更に強い事になる。そうして自分をより高めていける。もっとも、あいつは下品な手だがな」
 そして、低く笑った。

「そういう下品な手で、お前は支配されたわけだ。」
 
 凍り付く。
 手首にかけられた力の重みがセブルスから動きを奪っていたけれど、そうでなくてももう動けなかった。ルシウスに浮かんだ笑みも目は笑っていなくて、ひどく馬鹿にされたようだった。

 ひどく恥ずかしかった。情け無かった。 
 そうだ、そんな事で。力で押し負け、無理矢理犯され。
 脅しに屈し、持っていたプライドは回りに知られる事を拒否する方を選んで、何度も呼び出されるままに、相手の言うがままになった。
 そして快楽を教えられ、それに溺れるようにまでなって。

 なんて淫らな自分。ただ欲に溺れるなんて。
 自分を強引に押さえつけた奴の、そんな強引な快楽に溺れるなんて。

 それから……

 すっかり脱力して、涙すら流しそうになるセブルスから漸く片手を離し、ルシウスは空いた手でセブルスの髪を梳いた。
「そう落ちこむ事も無い。体格の差は生まれ持ってのものだ、負けたのも仕方が無い。そしてどうせそれを楯に脅されでもしたのだろう。そんな情け無い事を回りに知られるわけにはいかないと、お前が屈するのも無理は無い」
 優しく髪を梳いて撫でて、そして低い声を心地良く、ルシウスはセブルスに言う。
「お前は仕方なかった。そして対処の方法も見つからなかった。心配するなセブルス、お前は悪くない。お前は奴の下品で卑怯な手で負けて、どうしようも無かっただけだ」

 それから……

「勘違いするな。お前は奴に好意など持っているわけでなく、単に支配される事に慣れさせられただけだ。逆らえない状況ならば、それで生きるしかないとお前が諦めてしまったからだ。大人しく言うことを聞いていれば、奴は優しかったのだろう?支配とはそういう物だ。お前は、支配される事に、慣れてしまっただけだ」

 それから……。


 そう、言う事さえ聞いていればジェームズは優しくて、それが冷たい瞳だとしても、ただ屈辱を与え続けられるよりは余程マシだった。
 大人しくなると、だんだんと扱いが優しくなって。
 優しくなって。
 冗談を交わしたり、勉強もした。教えられる事も多かった。
 惜しみなく。
 笑顔で。


 ジェームズ。
 でもそんなもの、セブルス以外の誰かに向ける事ばかりだ。


 ルシウスの言葉に次々自分の現状を押しつけられ、惨めな心を蒸し返される。力は抜けきって、手首を押さえつけられているのが少し痛いなどとぼんやり考えながら、セブルスは呆然としてルシウスを見上げていた。
「身体の支配は下手な暴力よりも効くらしいぞ。本当に心が逆らえなくなるまで、何度も犯されたんだろう。だがなセブルス、お前は知らないから、奴の言いなりになっているんだ。」
 セブルスを見下ろしながら、ルシウスは言った。

「あいつしか知らないから、あいつにだけお前は支配される。試してみろ、セブルス。俺の物になってみろ」


    



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