13
「――お前は正しい選択をした」
淡々としていながら、その声は自信に満ちている。
ルシウスが態勢を変える為、片手をベッドについて軸にすると、ぎし、とスプリングのきしむ音がした。横に座って見下ろしていたはずのルシウスがセブルスにまたがり、片手をセブルスの頬に当てる。冷たい指先にセブルスの閉じた瞼が少し震える。
やがてゆっくりと、しかし躊躇いも無くルシウスの唇が下りてくる。重ねられる感触。キス。一瞬だけ離れて、すぐに深く重ねられる。
唇の柔らかさで味わい、甘噛みされ、セブルスの呼吸が早くなる。
「んっぅ……」
促されるまま口内に招き入れて、絡んでくる舌に戸惑いながら、応える。荒荒しさは無いのに強引な強さで、深い深いキスをされる。
「はぁ……んっ、う……ん、ん……」
堪える事無くセブルスの甘い声が、キスだけで漏れる。力を抜き切って、されるがまなになる。
――違う、とは分かっているけれど、何度も、確認するように目を開いてしまった。
「――先輩」
息と一緒に囁かれた声はルシウスの耳に届き、ん、とルシウスがキスをやめて間近でセブルスを見下ろす。キスで上気したセブルスの頬、ルシウスを見つめて潤んだような瞳がまた閉じられると、また深いキスが始まった。
そして、彼の手はセブルスの服を手早く脱がせていく。ローブのボタンを外され、ベストをたくし上げられ、中指でしゅっとネクタイがゆるめられ。
そんな全てを、セブルスはまるで遠くの事の様に思いながら、ルシウスに委ねきった。
ぎ、ぎし、揺れるスプリングの微かな音と同じに、セブルスが喘ぐ。断然逞しいルシウスの首に両腕を回して、突き上げられる衝動に耐える。
何度もルシウスを呼んで、キスをした。声も隠さずに上げた。
ジェームズ以外の同性に抱かれて、セブルスは与えられるままの甘い痺れに声を漏らす。力を抜いて、委ねきる。
何度も目を開けて、呼んで。
抱いているこの手が、ジェームズでは無い事を何度も確認して。
目を閉じたって、ジェームズでは無い肌を感じきっているけれども。
――僕のものに、誰が手を出していいなんて言った?
気が付けばジェームズがそんな事を言いながら、窓の側に立って見下ろしているんじゃないか。
部屋の入り口に立って、セブルスの腕を引っ張りあげるんじゃないか。
時々そんな事を思いながら。
ルシウスに抱かれ続けて、その腕の中、朝を迎えた。
次の日、肌を合わせたばかりの、少しの気恥ずかしさと気まずさを覚えたのは自分だけらしく、ルシウスの様子にこれと言って変化は無かった。ただ、セブルスが自分のものだという確信を抱いたらしく、学年の違うセブルスを、何かにつけて横に置きたがった。これは俺のものだ、と誇示しているのかもしれない。ルシウスが以前からセブルスに目をかけていたのは皆知っているから、今更陰で何を言われる事も無かった。同性同士の関係など、と以前のセブルスなら話だけでもひどく嫌悪していたものだが、実際寮生活を送っていればそんな事は、日常茶飯事とはいかなくとも、特に珍しいものでは無いし、ましてやルシウスを前にそれを嘲笑する者等存在しなかった。
自分は黙って、ルシウスの言う通りに従っていれば良いだろう、セブルスはそう思い、深く考える気も起こらず、ルシウスに呼ばれればそれに従った。
そう選んだのは自分だ。
――食堂でグリフィンドールと居合せた時には、あえてそちらを見る事はやめた。
午後の最初の授業はグリフィンドールと合同だった。前夜の辛さもあって、セブルスはだるさと眠気で誰とも口を聞く気にならず、一人で教室を移動した。
だから、突然腕を引かれて、素早く透明マントに隠されたセブルスに、誰も気付かなかった。
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