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「暴れるなよ、見つかる」
口を塞がれ、透明マントの中でセブルスは強い力で身体を押さえこまれた。誰だ、と聞くまでも無い。
「うぐ……」
「もうすぐ先生が来る。大人しくしな」
耳元でジェームズが凄むように囁く。力では敵う訳がなく、暴れれば人目を引いて逃れられるかもしれないがそうする勇気もない。セブルスは引きずられるように、その場から連れ去られた。
「――いい加減離せ、こんなところまで入りこんで――」
漸く透明マントが外された所で、セブルスは、せめて呟くように言った。移動中ジェームズは一言も、囁く事すらしなくて、その沈黙の時間にセブルスはひどく圧迫された。
ジェームズが怒っている、とすぐに分かった。
「なんの、用だ……」
セブルスを掴んでいるジェームズの手の力が抜け、漸くセブルスは解放される。数歩下がり、距離を作った。
顔を背け、連れてこられたスリザリンの談話室でセブルスは、乱れたローブを片手で直す。ジェームズの目は直視できなくても、視線が自分に突き刺さるのは感じた。心臓が高く、鳴る。
以前、関係を持って間もない頃――ジェームズは、セブルスが自分の物だとセブルス自身に教えこんだ。痛み、快楽、ひどく屈辱的な方法で。
上位者を教えこんだ。
屈辱に負ける、セブルス自身が自分に感じる惨めさと、それを与えるジェームズへの恐れから。
その「教え」は、まだセブルスから消えていない。
「『なんの用』?君から問い返されるとは思わなかった。分かってるくせに」
「…知らない……」
「それともまだ隠している気なのかな?君の愛しい先輩は、結構あからさまだけどね」
ジェームズの言葉はからかい調だが、軽い響きは一つも無かった。それでもルシウスを揶揄する言葉に、セブルスは気を取りなおした。
「そんな事を言う為に、わざわざこの寮まで入りこんだのか?」
ギ、とジェームズを睨みつける。何も言わずに、ただ酷く冷たい視線のジェームズが、笑った。
心臓が、まるでじわじわ掴まれているみたいに思う。
「か……関係、無いだろう、貴様には!私が、何をしようと――ど、どうでも良かったくせにっ……」
「――認めるんだ」
ふうん、とジェームズが笑みを消す。セブルスの顔から、血の気が引く。
しかし動き出した心は止められなかった。
終った事を、今更、ジェームズに向けて「許してくれ」等と言う気にならなかった。
いつまでも――すがるだけだなんて。
「昨夜――私は、ルシウス先輩に――抱かれた」
震える声で、告げた。身体も震えた。
「だから…どうした?お前には、関係ないだろう。私が何をしても、お前は気にしないんだろう?私が女を抱いたって――笑っていただけの、くせに」
「分かってないなあ、セブルス。また教えこまないと駄目なのかい?」
ジェームズが平坦に、言う。
少しずつ、離れた距離を縮められている事に、セブルスは気付かない。
「僕が許したのは、君が『君は僕のものだ』と自覚した上で遊ぶ事だよ」
ジェームズの言葉が、セブルスの心を身体を縛る。
「そう、セブルス・スネイプはジェームズ・ポッターのものだとね。」
セブルスが、ハ、と気付く。が、遅い。
強い力で、ジェームズの手がセブルスの腕を掴みあげる。
「誰が、他の奴に心を預けていいなんて言った?」
掴み挙げられた腕が悲鳴を上げる。
「朝からルシウスの得意げな顔を見せつけられて、食堂でも休み時間でも君はルシウスに呼ばれるがままだし、温和で心の広い僕でも流石に怒るよ。それとも何、あれも僕の気を引く為の行動?僕がルシウスを嫌いだとは、何度も言ってるだろ?」
誰が温和で心が広いものか。セブルスは、痛みに顔を顰めながら、その痛みに任せて、悲鳴の変わりにセブルスは叫ぶ。
「先輩は優しかった!!」
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