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「……?」
お互い1度達して、その気だるい余韻はまだセブルスを熱くさせる。心はまだ感じたまま治まっていない。ペタリとうつ伏せに果てたセブルスだが、いつもなら続く愛撫が早々に離れ、立ち上がるジェームズに「帰るのか?」と掠れた声で問いかけた。
放り投げた自身の制服に身を通し、ジェームズはセブルスを見ずに頷く。
「うん。今日は早く帰って、寝る。」
あっさりとしたその答えに、セブルスは裸の背中に、熱を奪う冷えた外気を感じ、シーツを肩まで引き上げた。それは先程までの情事の名残があって、それだけでジェームズに包まれたような錯覚を覚える。身体もまだ、ジェームズが足りてない。
「……そうか」
言う事もなく目を逸らせて、もそもそとシーツの中で身を丸くする。完全に身支度を整えたジェームズが、後ろを振り返って、ニヤリと笑って、言った。
「物足りない?」
「もっ……!!」
馬鹿を言うな!と赤くなり、絶句して言葉は出てこなかった。そして、シーツの温もりを感じながら、まだ自分を細い目で見下ろしてくるジェームズの目に、ふとセブルスは思った。
物足りない。そう言ったら、ジェームズは帰らずに一緒にいるだろうか。
そんな自分の考えに恥ずかしくなり、慌ててジェームズから目を逸らした。早く行け、と怒鳴っておいて、シーツを顔まで引き上げて、ジェームズに背中を向けて丸まった。
遠ざかると思っていた足音が、逆に近付いてくる。セブルスはぎゅっと、引き上げたシーツを握り締め、強く目を閉じる。
「セブルス。寂しい?もっと僕にいてほしいの?」
からかうような声音に、頑なな背中は図星に震える。
「ふざけるのも大概にしろ、お前などいらん!!」
むやみに大声を出したのが、返ってジェームズには判ってしまっただろう。言葉は心の反対だ。
「セブルス」
ジェームズが側に屈みこむ気配がある。セブルスは目を閉じているのに、ジェームズの指先が自分の頬に伸びてくるのが判る。真上から、ジェームズが覗きこんでいるのが判る。
「セブルス。こっち向いて」
指先で頬から顔を上に向けさせれられ、セブルスは逆らえずに目を開ける。せめて拗ねたように眉を吊り上げて見せたが、熱い頬が、触れたジェームズの指先から伝わっているだろう。キスにも大人しく応じた。心が逆らえなかった。
「――」
ゆっくりと離れたお互いの瞳。
なのに、ジェームズはまたあっさりと立ち上がってしまった。もう隠し様も無いセブルスの縋る瞳をものともせず。そして、言った。
「明日、朝からリリーと待ち合わせしてるんだ。」
その瞬間、セブルスの心が締め上げられたように、声までをも奪った。
「ま、レポートなんだけどさ。共同制作で、暫く一緒に調べるんだ。だから、当分ここには来ないね。」
セブルスの心など気に求めず、ジェームズはローブを整えながら言う。
「そんな暇じゃないから」
ジェームズを見上げたまま凍りついてしまったセブルスに、ジェームズはクスリと笑った。
「寂しかったら、君も彼女くらい作ってみたら?」
じゃあね、と笑いながら、ジェームズはセブルスを置き去りにして立ち去った。
最近、一緒に部屋を出ない時は、いつもセブルスがここに置いていかれる。ジェームズよりセブルスが先に出ることは無い。
少しでも、長い間この部屋に留まっていたいと思っているから。
二人しか知らない、この秘密の部屋に。
「馬鹿にするな……」
顔を隠すようにシーツに埋めて、泣きたくなる声で呟いた。
馬鹿にするな。
他の誰かで、埋め合わせができるなんて思っていない。
ジェームズがリリーを想うように、他の誰かを想うなんて出来ない。
勿論、ジェームズはそれを判って言っているのだろう。
「馬鹿にするな……」
セブルスはもう1度、ジェームズに聞こえるはずの無い言葉を呟いた。
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