君は抱きしめて。僕が僕を捨てても。




 セブルスが女生徒と初めて関係を持ったのは夏休みだった。

 人を煽るだけ煽っておいて、ジェームズは夏休みにセブルスではなく、グリフィンドールの友人と恋人を選び、彼らとしか会わなかった。勿論、ジェームズとセブルスの関係など甘いものではないし、むしろ二人で会う方が不自然なのだ。

 だけどもうセブルスはジェームズに心底縋りついてしまっているから。
 ジェームズだけが全てであるかのように。

 そんなセブルスを知っているからこそ、ジェームズは意地悪く笑って、突き放す。セブルスがうろたえるのを楽しんでいる。それでも離れないセブルスを笑っている。そしてそんなジェームズを知っているから、セブルスだって本当はもうそんな事嫌で仕方ない。だけど想いはどうしても止められない。

 だから、散々ジェームズに、グリフィンドール生との交友について自慢された夏休みは、セブルスにとって苦しくて仕方なかった。
 する事はいくらでもあった。宿題だってたくさん出ていたし、やろうと思えば宿題以外でもいくらだって自分で勉強ができる。だけど、一人でいればどうしてもジェームズの事を考えてしまった。
 今頃、自分の事など思い出しもせず、仲間と騒いでいるのだろう。
 彼女に優しいキスをしているのだろう。
 苛々して、ジェームズにも自分にも腹を立て、そして結局胸苦しさに溜息をついてぼんやり過ごしていたら、同じスリザリンの同級生からフクロウ便が届いた。
 気が乗らない別荘への招待を、気分転換と言い聞かせてすぐ承知した。



 腕の中の女生徒を、セブルスは抱き締めたりなどはしなかった。終った後にキスをしたりもしなかった。女性とがねだる分には応えたが、自分からは何もしなかった。



 同じ別荘に来ていた、美人ではあったが軽薄とも噂高かった女生徒に、セブルスはなんの関心も無かった。が、女生徒の方はセブルスに大いに気があったようで、積極的に誘ってきた。
 気晴らしに来たって結局気分が晴れる事など無く、くだらない話を合わせるのも億劫だった。そして思うのは、ジェームズの事。
 なんの疑問も無く、日々を満喫しているだろう男。
 きっと、セブルスがこうして夏休みの間もジェームズの幻から離れられない事を承知の上で。だから。

 だから、あてつけのつもりだった。

 お前などいなくとも。

 そんな、ジェームズへのあてつけ。



 夏休みが終って、ジェームズと会っても、セブルスは何も言わなかった。口に出せば、怒るだろうか。僕以外の人間と寝たのか、そう言って怒るだろうか。怒らせる事に少なからず怯えながらも、少し優越感があった。あの得意げな、常に優位を保ったような笑いも消えるのだろうか。手の中のものだと思っていたセブルスが、ジェームズ一人に縋らずともやっていけるという事に、うろたえたりはするのだろうか。
 ジェームズは知らない。
 夏休みが終ってから、セブルスは何度か女生徒と会っている。自分から誘った事は無いが、他の何人かとも関係を持った。
 ジェームズはいつか気がつくだろうか。


 上半身を起こしてぼんやり服を探そうとゆっくり頭を動かしたら、目が覚めたらしい女生徒が、背中から抱きついてきた。
「鬱陶しい」
 冷たくあしらうと、女生徒から不満の声が漏れた。セブルスの背中に爪を立て、唇を押し付けてくる。
「おい、痕を――」
 つけるな、といつものように言おうとして、留まった。
 ジェームズの事を思った。
「――好きにしろ」


 痕をつけさせた事は今までに一度も無かった。痕跡は完璧に消していた。
 急に、ジェームズに見せてやりたくなった。


    



TOP