君は抱きしめて。僕が僕を捨てても。




「は、離せっ……!!」
 身体中をまさぐるジェームズの腕の中でもがき、彼の胸を強く押して、その場から逃げ去りたかった。だけどもう、少しずらされたズボンのせいで上手く動く事すら出来なくて、あっさりと腕をジェームズに引かれた。
「や、嫌、嫌……っ」
 部屋の隅のシーツの方へと投げ出され、あっさりとそこに倒れこんでしまう。ローブを脱ぎ捨てたジェームズが、セブルスに覆い被さってくる。
「落ち着けよ、セブルス。君の気持ちはよおーく分かったから。本当は、僕に怒って欲しかったんだろ?僕に嫉妬して欲しかったんだろ?本当は、僕の目を君に向けたくて仕方なかったんだろ。仕方ないから、忙しいけど、今日くらい優しくしてやるよ」
「嫌、嫌だ、嫌だっ……や、」
 抗議の声はキスに消されて、足を割って入られて、先程の愛撫で既に熱くなっているそこを隠すことも出来ない。膝の裏を持ち上げられて、大きく開かされて、ジェームズがセブルスを口に含む。言葉通り、優しく、優しく。
「ひっ……ぁ、あ、や、いや、や……」
 優しく抱かれて、中に入ってくるジェームズに心が悲鳴を上げる。体が喜んでいる。
「背中、見せろよ」
 繋がったままうつ伏せに変えられて悲鳴を上げると、ジェームズのキスが背中に落ちてきた。
 つけられた痕の上に。
「気持ちは、よーく分かったよ、セブルス。僕の気を引きたくて仕方なかったんだろ?好きでも無い女を抱いて、君の心はこんなにも感じたかい?判ってるよ、無理するなよ。もう少し大事にしてやっても良いよ。君の努力に免じてさ。」
 笑い声が上で響く。セブルスの涙が、零れて落ちる。



 こんなのは嫌だ。
 こんな惨めなのは嫌だ。
 心の全部を見透かされて、彼の思うようにしかあがけない。
 彼の為につけた、彼以外の痕を背負って、笑われながら抱かれるなんて。

 嫌だ。もう嫌だ。

 こんなに惨めなのは、もう嫌だ。



 こんなにも、お前だらけの自分なんて。






 夜明け前にジェームズは先に帰った。グッタリと横たわるセブルスを置いて。「優しい言葉」と「優しい愛撫」そんな表面的だらけの夜を終えて。
 涙も枯れてしまった。シーツの上に身体を投げ出しながら、広がる殺風景な床を眺めていた。
 身体を外気が冷やしていく。あっさりと、高められた熱を奪っていく。
 狂いそうになるまで、彼の手の中で何度も喘がされていかされた。
 心も身体も、限界まで。 
 嫌味みたいに、身体に痕はつけなかった。彼の痕跡こそ、残らなかった。

 自分の心以外には。

 枯れた涙の代わりに、心がずっと泣いていた。疲れきった身体は動かす事が出来なくて、心はさめざめと泣くだけだった。砂漠に少しの風が吹くような寂しさで。



 遊びのくせに、手放さないくせに。

 以前は、あんなにも嫉妬していたくせに。



 自分の心が、もうジェームズ以外に向く事は無い。そんな事を自覚するから、セブルスの心は暗く壊れていく。







 狂った方がマシだった。



    



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