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その日から数日のセブルスは、ほとんど誰とも、まともに口をきかなかった。誘いをかけてくる女生徒など目にも入らなかった。様子のおかしいセブルスを心配したスリザリン寮生すら邪険にし、一人でぼんやりと過ごしていた。授業にすら身が入らず、教師に当てられてもろくに返答が出来ない。優等生であるはずのセブルスのそんな有様に、教師は怒るのではなく、医務室を勧めたほどだった。勿論そんな事でセブルスが治る訳では無く。
ジェームズは、何一つ変わらない様子で、仲間や、そしてリリーといつも一緒だった。
何かを考える気にすらならない。
何も見ずに廊下を歩きながら、セブルスはただ時間がゆっくりと流れるのを感じるだけだった。毎日がひどく遅かった。
足も教科書も、毎日着ているローブすら重くて、とにかく寮に戻って眠ってしまいたかった。目覚める事無く眠り続けたかった。だけど現実にそうはならず、目はいつも通り朝に覚めてしまうし、そして起きてしまった身体は日課をこなそうとした。食事の量だけは減った気がする。気分が悪くて、ほとんど何も食べる気にならなかった。このまま倒れて死んだら、ジェームズは何を思うだろうか。そんな馬鹿馬鹿しい考えがよぎった自分を嫌悪するのも面倒だった。
笑い声を立てながら、グリフィンドール生達が廊下を通り過ぎていく。ジェームズではないと分かっているのに、ジェームズと同じ寮というだけで、つい神経が彼らに集中してしまう。何をするのも億劫な気分なのに、そんなになっても、まだジェームズを無意識に探しているのだ。
あんなに酷いヤツなのに。
どんな酷い事をされても言われても、セブルスは自分の心からジェームズを切り離す事が出来なかった。そう、未だに、彼の仲間達やリリーを見かけて、痛む胸を感じるくらい。こんなにもぼんやりと過ごしていてさえ。
ジェームズはあの日から、まったく変わらない。セブルスに視線を向ける事すらしなかった。それなのに、彼のセブルスに対する優越を感じる。
――それでも、君は僕に縋りつくしかないだろう?
そんなジェームズの皮肉気な声が、いつも聞こえる気がした。
自分の感情というものが分からない。
理屈じゃないのだろう、と考えるのは、少し自分らしくないな、とセブルスはぼんやり思った。きっと、ただ慣らされてしまっただけなのだ。元の生活に戻れなくなるくらい、ジェームズがいる事に。
ただそれだけの事だ。
早い時間にスリザリンの寮に戻った時、入り口に、見たくもない顔があった。
「セブルス」
声を聞くだけで、頭が重くて痛くなる気がした。ひどく同情面したリーマス・ルーピンが、セブルスを待っていた。
「その……」
「ここはスリザリンだ。お前の寮じゃない」
ほとんど抜け殻のようだったセブルスの言葉に力がこもる。燻っていた想いが苛立ちとなって、目の前のリーマスに自棄気味に当たり出したようだった。
何も考えないまま、眠ってしまいたいのに。
よりにもよって、ジェームズの友人であるこいつが邪魔をする。
「分かってる、他の寮生にも絡まれたよ。でも君を待ってたんだ。」
ぎこちなく、リーマスは笑う。その笑顔がセブルスの癇に障る。
「どけ」
「少しだけ、話を――」
「話などない。どけ」
「セブルス、少しで良いんだ。僕はここからどかない」
ジェームズの友人の話など聞きたくない。セブルスはくるりと寮に背を向けて、今度は寮を囲む森の方へと早足で歩き出した。しかしすぐに、リーマスが追いかけてきた。早足で付いてきて、後方から声をかけてくる。
「セブルス、身体は大丈夫なのかい?顔色、良くない――」
「貴様に心配される謂れはない」
「スリザリンの友達だって、君は寄せつけてないだろう。他の誰か、近くで君に心配を口にしてくれる人がいるのかい?」
「そんなもの、口にして何か変わるというのか?」
立ち止まり、セブルスは強い瞳でリーマスを睨み付けた。少し怯んだように、リーマスは視線を逸らせた。それでも、躊躇いがちに続けた。
「口にしないと…君は、気付かないだろう?どんなにひどい顔色なのかと」
「余計なお世話だ。そんなもの知ろうと知るまいと関係ない」
「顔色の悪い、その原因を知ることは?」
睨み付けたセブルスに気を遣いつつも、意を決したように、リーマスはセブルスを見つめた。
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