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「その――君が、そんなにひどい状態なのは――」
「貴様に何がわかる!!!!」
セブルスの激昂した声が、静かな森の中に、全てを断ち切るように響き渡った。リーマスの言葉だけでなく。
セブルスは目の前のリーマスを激しく睨み付けた。
身体が熱い。怒鳴りつけた声に含まれていたのは。
怒り。嫉妬。寂しさ。哀しさ。自分自身の情け無さ。
全て、ジェームズの為の。
ジェームズのかわりにそれらをぶつけられたリーマスは、とても切なくて――泣きそうな顔をしている。
「グリフィンドールの――貴様なんかに――」
目の前の彼の顔がひどく憎らしかった。哀しげに見せる顔は、自分を哀れんだ、上位者からの見下した顔にしか見えなかった。
馬鹿にするな。
分かったような同情面で、事実を突きつける。セブルスの心をえぐるように。セブルスがもう気付きたくもない事実なのに。
わざわざ口に出して「ご忠告」してくれて、人が傷つく様を見たいのか。
ひどい顔色。そんな事は言われなくても分かっている。
原因など、他人に言われるまでもない。
口に出したところで何が変わる?何もできないくせに。してくれないくせに。
他の誰か。自分の近くに誰か。
そんなもの、いない。
いないから、ジェームズしかいないのに。
口に出せば自分の情け無さを思い知らされるような気がしたから、結局一言も口には出せず、その堪えた気持ち分の辛さを、さらにリーマスを激しく睨み付ける事で埋め合わせた。ただ、そんな自分から目を逸らさずに見つめてくるリーマスの瞳が、また自分が下手な同情をされているようで辛くて、風の音が森の葉を揺らす音を合図に、自分から目を逸らせた。
もう話は済んだだろう。そう口にする事すらできず、セブルスはリーマスの横を通り過ぎ、寮の道を歩き出した。
「――待って、セブルス……!」
躊躇った後に再び追いかけてきたリーマスが、セブルスの腕を無造作に掴む。
「セブルス――僕――僕は――」
セブルスは足を止めたが、リーマスの顔は見なかった。言葉にもせず、全身で、拒否の意思を伝えた。
「……ごめん。でもセブルス、僕は……」
セブルスからそっと離れたリーマスの手は、まだ何か言いたげに宙に浮いていた。
「僕――セブルス、君は…もっと、…せめて」
もう止まらずに歩き出したセブルスに、リーマスが呟いた。
「せめてもっと、自由になって良いと思う……」
自由?
そんなもの、無い。と、もう分かっている。
縛られた心と、それに甘んじてしまっている自分。
寮に戻ったセブルスは、誰もいない談話室で軽く紅茶を飲んだ。生徒達はまだ戻っていない。ティカップを持ったまま柔らかいソファに座り、温かい暖炉の火を眺めていた。揺れる炎はなんとなく心を落ち着けて、ただ脱力していられた。
静かなまま、誰も帰ってこなければ良いのに、と思っていたら、背後から足音が響く。どうでも良くて振り返りもしなかったが、相手はセブルスを放っておいてはくれなかった。ソファのすぐ後ろで、セブルスに声をかけてきた。
「セブルス。何をしている」
耳慣れた声に、あ、と重たい身体を起こして、座ったまま振り返った。笑みも無く、ルシウスがセブルスを見下ろしている。クィディッチのユニフォームを着ていた。時間的に、練習中のはずだから、何か忘れ物でもあって、寮に戻ってきたのだろう。
「別に――何も」
顔を逸らし、そう答えるしか無い。以前に話をしたのは、数日前の図書館だ。あの時のように何か言われると辛い。何も言えないのだから、何も聞かないで欲しい。セブルスはそう願う。じっとセブルスを見下ろしていたルシウスだが、あの時のような事は、今は口にしなかった。そのかわりに、セブルスの肩に手を置いて、言った。
「食事の後で、俺の部屋に来い。ちゃんと食事をしてからだ」
セブルスは顔を歪める。
「食事は……食欲が」
「少しでも食って、顔色を戻せ。それから、忘れずに来るんだ」
セブルスの返事を待たず、ルシウスは部屋に上がっていった。
部屋に呼び出され、また問い詰められるのかと分かっていても、呼び出しに応じない充分な理由など無かった。
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