J〜Cryforthemoon


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 ジェームズは舌打ちして、動きを止めたセブルスを、勢いつけて連れ戻る。そのままセブルスは放心したまま、漸く抵抗を止めた。ただ歩く事すらおぼつかず、時々つまずいている。それでも、セブルスは表情を失って。
 やがて、呟いた。

「では……ブラックの奴が…私を…人狼に食わせようと……」

 もうかなりホグワーツへと戻ってきていたので、ジェームズはその声をきっかけに、漸く足を止めた。震える声を絞り出したセブルスの目はどこも見ていなかった。
「違うスネイプ、シリウスはそこまで考えていたわけじゃない」
 ジェームズはセブルスの肩を掴み、そう真剣に訴えたが、セブルスは即座に首を振ってそれを否定する。
「何が違う、満月の夜の人狼がどれだけ危険か、誰でも知っている。奴らの大好物が人間だと……」
 自分の言葉に怯えたように、セブルスの体が震えた。顔色はすでに真っ白だった。ジェームズは下唇を噛んで、言葉を探す。
「シリウスは少し君を驚かせようとしただけだ、スネイプ。あれは……」
 そう言うと、セブルスは恐怖で浮かんだ笑みを見せながら、ジェームズの手を払い除けた。
「驚かすだけだと?驚かしついでに、私が死んでも構わない、と?」
「そんなわけ無いだろう、そんな事をすれば殺人だ」
「ああそうだな、殺人だ。例え死ななかったとしても、噛みつかれただけで、私には人狼としての人生が始まるわけだ。忌まわしき人生が。」
 違う、聞いてくれセブルス。言うべき言葉を探すが、何を言えば良いのか分からない。ジェームズも混乱する。どうすれば良い?
 言葉は見つからないまま、突然何かを思いついたようにセブルスは目を見開いた。震えながら、力無くジェームズを見た。
「ブラックに聞いてここに来たわけで無く、最初からお前もグルだったのか……これも私をあざ笑う計画の一端か」
 ジェームズから視線を離して、壁に力無く凭れたセブルスに、ジェームズは眉を顰める。
「何の話だ?」
「だからお前は今更私を止めに来たのか?冷静に考えれば、こんな事はすぐにばれて、自分達は揃ってアズカバンに送られる。だから、今更計画を取りやめる事にしたのか」
「スネイプ、違う、捕まるとかそういう事じゃなく、君を殺させない為に来たんだ」
「自分たちが犯罪者にならない為にな!そうでなければ、あの人狼が人を食わない為にだろう!!お前は自分の友人を救いたかっただけだ!」
 セブルスの叫びに、ジェームズも叫び返した。
「君を助ける為に来たんだ!」
「都合の良い事を言うな!それともそう言えば私が喜んで、お礼を言うとでも思ったのか!?誰が言うものか、人狼にけしかけられかけて、止めてもらったからとて誰が礼など言える?」
「それは、本当に悪ふざけが過ぎた。シリウスも反省している」
「見え透いた嘘をつくな、あの男が反省などするものか」
「セブルス」
「気安く私の名を呼ぶな!!」
 悲鳴。セブルスの悲鳴。心の声、そのままに。ジェームズを拒絶した。
 どうすれば良いのだろう。ジェームズは途方にくれる。セブルスに、心が届かない。セブルスは視線を逸らせ、壁に半身を預けながら、よろよろと一人でホグワーツの方へと歩き出した。
「お前達はもう御終いだ。私が戻って、ことの次第を校長に打ち明ける。これでお前達は退学処分だ」
 そう呟くと同時に、セブルスが突然崩れ落ちた。セブルスの全身が震えていた。
「スネイプ…!」
 ジェームズが慌ててセブルスを抱き起こそうとする。しかしセブルスは震える体で、必死にもがいてその腕から逃れようとした。
「離せ!!」
「しっかりしろスネイプ、君は殺されかけたというショックで恐慌状態に陥っているんだ。何も考えずに休んだ方が良い」
「殺人者の片棒が何を言う!!」
「言い訳なら後でする、とにかく君は……」
「離せポッター!!!全員、お前達全員退学にさせてやる!!私を馬鹿にした事を後悔させてやる!!お前もブラックもルーピンもペティグリューも、まとめて退学にしてやる!!」
 もう何も写さず、憎しみばかりを燃やしたセブルスの瞳。全身で、叫んでいた。理性など無く、我を失って。

哀しくなる。

 ひとまずジェームズは冷静な思考を呼び戻す。暴れるセブルスを必死で押さえながら考える。このまま戻っても無駄だ。セブルスはこのまま、ダンブルドアの前どころか、学校中で騒ぎまくるだろう。
 ジェームズは暴れるセブルスの両腕だけを掴んで、その場に引き倒した。そして、押さえつけるように上に乗り、唇を押し付ける。
「離ッ……!!どこまで私を馬鹿に……!!」
 ジェームズの体の下でセブルスが暴れ叫ぶが、ジェームズは今度は片手でセブルスの両腕を封じ、片手をセブルスの服の下に潜り込ませた。
「やめろっ……」
 セブルスがもがくが、ジェームズは、セブルスがどこをどうされると大人しくなるか知っている。どうされると感じるのか知っている。
「は……なせ……」
 顔を赤くして、ジェームズが与える快楽に堪える事に集中し出したセブルスの耳元で、低く囁く。
「疲れて、恐怖も何も考えられないくらい疲れさせて、眠らせてやるよ、セブルス。それから、ゆっくり落ちついてから僕の話を聞くんだ」
「今更お前の話など……!」
 即座に拒絶の返事が返ってくる。しかし、少なくとも体はジェームズを求めているはずだ。そして、少しでもジェームズへの服従心が残っているなら。
 依存心があるなら、ジェームズをセブルスは拒めない。ならそれを利用する。
 声を必死で押さえているセブルスの瞳に、涙が滲んだ。
「……何故止めたんだ……」
 ジェームズの愛撫は続き、やがてセブルスが息を弾ませながら、独り言のように呟いた。
「こんなに惨めな思いが続くのならば、いっそあのまま人狼に食われてしまえば良かった、そうすればお前達を犯罪者にして、一生を失わせてやれたのに……」
 涙を流して空を見つめるセブルスの瞳を、ジェームズは強引に自分と見つめ合わせた。
「――どうせ食われるなら、僕にしとけよ、セブルス」
 そう言って、深く深くキスをする。
「僕に全部食われちまえよ」
 すでに何度も抱いた体を、愛しく抱きしめる。何度も自分に開いてきた体。今はそれが遠かった。


 失うくらいなら。

 失うくらいなら、僕が殺すよ、セブルス。

 なのに、心はもう届かない。


「お前に全部食われるくらいなら、人狼になって生きて行く方がまだマシだ……」



    




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