13
嵐のような晩を終え、分かったのはどうやら何か――人狼にけしかけた、という事ではなく、もっと別の何かを――セブルスが誤解しているらしい事だった。しかしセブルスは固く口を閉ざして、何も答えてくれなかった。
校長室の中では今セブルスがダンブルドアと話している。ダンブルドアはリーマスの良き理解者の一人だから、きっと上手くセブルスを説得してくれるだろう。セブルスも校長を尊敬している。
扉の前はシリウスが立っていて、少し傷ついたような顔をしていた。自分の行動を一晩冷静に考えて、リーマスに対してひどく反省したらしい。しかし未だにセブルスの事は許せないようだった。
やがて校長室の扉が開いて、セブルスが出てきた。シリウスがその顔を睨みつけながら、部屋に消える。セブルスは、シリウスの顔など見ていないようだった。くたびれきった無表情が、廊下を歩き出そうとしたとき、その先に立っていたジェームズを見つけた。くたびれて、傷ついた顔をしていたのはジェームズも同じだった。
「すまない、セブルス」
心の底から、そう謝った。しかし、セブルスはもう目を合わせようともしなかった。
「かのジェームズ・ポッターが、私に頭を下げるとはどういう風の吹き回しだ?」
そのセブルスの瞳には感情すら無かった。
「どうせ私は、お前に逆らう事など許してもらえないのだろう?」
私の意思など最初から無い。そう言い切ったのは初めてだった。
「――」
その時、ジェームズの胸の中で激しく動いた感情はなんだっただろう。ジェームズにも分からなかった。怒ったのか。寂しかったのか。セブルスにだって想像はつかないだろう。ただ、体の動くままに、ジェームズはセブルスの肩を思いきり強く押し、セブルスを壁に押し付けた。衝撃にセブルスが顔を顰めたが、それすらも一瞬で、ジェームズは唇を強く重ねた。
そして、思いきり強く。
噛み付いた。
「……っ」
一瞬、セブルスが流石に身悶えた。すぐにジェームズは離れた。肩を掴んだまま、セブルスの瞳を捉える。
「――そうだよ」
押し殺した声でそう告げると、早足でジェームズはその場を離れた。セブルスは壁にもたれたまま動かなかった。
そうだよセブルス、よく分かってるじゃないか。
胸に荒れ狂う感情をもてあまし、その内情緒不安定で泣き出してしまいそうだった。
そうだよセブルス。君には僕に逆らう権利なんて無い。何をされても、何を命令されても、セブルスはジェームズのものだから。
だから、そうだよ。君は僕のものだ。
少しずつ開いていたはずの心。
笑顔や仕草や何気ない会話や思考。
ジェームズに全て委ねきって、ジェームズの腕の中で眠っていたセブルス。
ジェームズの記憶に残る、セブルスの全て。
全てが崩れた事を感じた。
それから卒業までの約2年、ジェームズはセブルスを呼び出す事を止めなかった。何度も、数え切れないくらい、抱いた。しかし馴れ合う事はもう無かった。傷つける為に、傷つけられる為に一緒にいるようなものだった。最初に戻っただけだ。ジェームズはそう思った。屈辱を与える為に、自分の意のままにする為に。なおさら傷つけるのを目的として、セブルスを抱いた。
心を閉ざしたセブルスと、その扉を無理にこじあけようとしたジェームズ。二人の心はお互いをますます頑なにさせて、かつて重なったかに思えた二人の関係は、もうすれ違ったまま手の届かないものとなっていった。
卒業が近付く頃にはお互いに忙しくなり、なかなか会う暇も無くなった。そして気が付けば、最後にキスをした日さえ明確に思い出す事はできず、二人の関係は曖昧なまま卒業を迎えて終りを告げ。
そして永遠に終った。
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