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最後の瞬間と言うのは、たくさんのことを考えられるものだ。
ジェームズはスローモーションの光の中で、そう思った。そして思いを巡らせた。ああ、リリーは上手く逃げられるだろうか。
たくさんの仲間の事を思い出した。生まれてから、今まで。たくさんの事があった。たくさんの人と出会った。自分のみに何が起こったのか、今がどう言う状況なのかはよく分かっている。さよなら、皆。
シリウスやリーマスを初めとする、たくさんの友人達を思った。ピーターの事も。生まれてから今までの楽しかった日々を振り返った。何よりも楽しかった、輝いていた学生時代。世話になった教師達。
たくさん、たくさんの事を一瞬で思い、そして最後に漸く。
セブルスの事を考えた。
最後の最後まで、後回しにしてごめんね、セブルス。
君は今でも固く心を閉ざしているのだろうか。誰もその心を開けることは無いのだろうか。君が誰かを愛する事は無いのだろうか。僕は君に酷い事をたくさんした。きっと、僕にとってはそれが過去になったとしても、君の心には一生残るのだろうと思う。この上なく、僕は悪人だ。
何より申し訳無いのは、僕がそれを後悔していない事なんだ、セブルス。
入学して君と出会って、君と憎み合った。そして、その挙句に、人に言えない秘密を共有した。僕は君を押さえつけた。押さえつけて、手に入れた。
僕はこんなにも自分が残酷だなんて思いも寄らなかった。おかげで、君を恨みさえもしていたんだ。そんな自分など本当は知りたくなかった。だからと言って、君の人生を、どれだけ狂わした事だろう。だけどごめんね、やっぱり後悔していないんだ。
でもこれだけは分かって。君が側にいたら言えないだろうけど、僕は――
僕は、セブルス。僕は君の事を本当に――
残酷な願いを、もう1つだけ聞いてくれないだろうか。
セブルス。
できる事なら、君は一生僕を忘れないで。
君の中に存在させて。君の心の楔になれば良いと思ってしまう。
君は僕のものだよ、セブルス・スネイプ。
君は僕のものだ。
だから、忘れないで。
僕を。
優しい笑顔の妻と、そして何も知らない無垢な瞳の息子の顔が浮かんで、ジェームズは願った。
リリー、そしてハリー。君達に別れは言わない。例え僕が死んでも、君達の前から離れない。幸せになれ。
ああ神様、お願いです。
リリーとハリーを無事に逃がしてください。そして、幸せに暮らせますように。
僕が過ごしたあの楽しい日々を。輝く日々を。
大切な人に囲まれたあの日々を。
どうか、彼らにも。
ジェームズは、永遠に開かなくなる目を閉じた。
■Fin■
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