月ノ欠片ヲ手放シ難ク。




※  ※  ※


 6年生も終りに近付き、少しは精神的に大人に近付いた。「あの日」から、ジェームズ達のくだらない悪戯も減った。セブルスが彼らに、執拗に絡む事も減った。ただ、彼らとセブルスの間には、「あの日」以前以上の緊張感が漂った。シリウスは以前に増してセブルスを嫌うようになったし、リーマスは、常に遠慮のようなものが以前に増して付き纏った。とりわけセブルスに対して。ピーターは必要以上にセブルスを避けて、ジェームズは――リリーと二人で過ごす時間が増えた。



「スネイプ」
 放課後の図書室に一人で座っているセブルスを見つけ、ジェームズは側
に近付いた。セブルスは目を上げなかったが、ジェームズが図書室に入
ってきた瞬間から気付いていたに違いなく、目が字を追っているように
は見えなかった。強張って、ジェームズに全部が集中しているはずだ。
 持っている本を返しに行くような素振りで、ジェームズはセブルス
のいる机にさりげなく片手を置いて、腰を少しかがめて耳元で囁いた。
「今日の夜」
 最低限の言葉だけ伝えて、さっさとその場を離れる。読みかけの本
の上に置かれていたセブルスの手が、強く握り締められて震えた。



 リリーと過ごす時間が増えても、ジェームズはセブルスを手放さず、関係は終らなかった。
 あの日――リーマスが人狼だと発覚し、そしてセブルスが、「ジェームズを含めた4人に殺されかけた」と誤解した後も。




「夏休みはどうするの?」
 腕の中のセブルスに、ジェームズは聞いた。
 肌を合わせた後の気だるさ。暗い部屋の中で、お互いのローブに包まって、体温に浸ってる。
 セブルスが大人しいのは、甘えでは無く諦めだ。諦めつつ、細い身体はジェームズの腕の中で強張っているのがすぐ分かる。時々いつの間にか気を抜いていて、そして思い出したように、身体はすぐにまた強張る。
 最初の頃はこんな感じだったな、とジェームズは思う。
 心のやりとりなんてなくて、ただ肌を合わせていた頃。ジェームズがセブルスを押さえつけて犯す事を繰り返していた頃。
 それでもあの頃は、抵抗しながらも、ジェームズに対して少しずつ力を抜いてくるセブルスが、だんだんと可愛くなっていった。
 たくさん言葉を交わすようになって、肌の合わせ方も優しくなって、少しずつ打ち解けたようなあの頃。

 今は。寂しくて、痛い。
 あの時とは事情が変わった。

 もうセブルスは、力を抜こうとしない。

「……勿論、家で勉強をしている。最上級生になるのを前に、遊んでなどいられない」
 固く、わざと感情を殺したような声で言う。ジェームズはセブルスを抱き締め直す。
「勉強も大事だけど、息抜きも大事だよ。なんなら僕の家にでも遊びに来る?」
「冗談じゃない」
 吐き捨てるように即答し、セブルスはジェームズから離れようとするが、離す気の無いジェームズは、身体を起こして逃れようとするセブルスの上に重なり、そのまま唇も重ねた。両手でセブルスの顔を挟んで、奥深くまでキス。苦しそうにくぐもった声がセブルスの喉の奥で漏れた。
「――ルシウスとは?会うの?」
 キスから離れ、ジェームズはセブルスの瞳を間近で見下ろす。囁いた声は、少しだけ凄むようで。
 キスで潤みかけたセブルスの瞳が、キ、と強くジェームズを睨みつけた。
「さあな。お前との関係のおかげで、私の信頼はガタガタだからな」
「引っかかる言い方だね。誘われたら、断る意思は無さそうだ」
「断る理由なんて無い」
「あるさ」
 セブルスはセブルスの足を広げ、そして気付いたセブルスが暴れる前に、挿入した。
「………!!」
「僕との関係。僕以外を見るなって言ったろ?」
「……!……!……!」
 先程の行為のせいで、そこはまだ充分に湿っている。繰り返す抜き差しで、すぐに卑猥な音が溢れる。突然の圧力に顔を真っ赤にしたセブルスが、唇を噛締める。
「ルシウスはまだ君を狙ってるさ。君自身への執着は勿論、君を手に入れることは僕へのあてつけにもなるだろうからね」
 止まらない動きにとうとう喘ぎ声を上げながら、セブルスは、声を絞り出した。
「お前だって……ん、っふ、あ、あてつけがない、とは、言いきれまい……?」
 言葉に、ジェームズは動きを止めて、セブルスをまっすぐ見下ろす。 
「……まあね」
 もう一度キスをしながら、再びセブルスを出入りする。





 部屋の中には、月の灯りも映らない。





    


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