Cryforthemoon


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 追い出してやる。そればかりがセブルスの心を占めた。偶然ジェームズとリーマスの話を聞いてしまってから、セブルスはすぐそう決意した。全員追い出してやる。この学校から追い出して、二度と会わないで済むように。魔法社会からも追い出して、この自分を騙した報いを受けさせてやる。
 ジェームズに裏切られたというこの気持ちが、自分でも意識しないような奥深いショックである意味を自覚するでもなかったが、とにかくほとんど追い詰められた心境で、セブルスは一心にそれだけを思っていた。そしてその機会は、次にジェームズに呼び出されるより早く、すぐに巡ってきた。
 リーマス・ルーピンが月に一度、姿を消す日だ。以前から気になっていた事だった。いつも誰の目をも避けるようにして、マダム・ポンフリーに付き添われ、姿を消す。もしかして、彼を追い出す何か重大な秘密が隠されているのでは無いだろうか。違うのかもしれないが、探ってみる価値はある。少なくとも、追い出す足がかりになるのかもしれない。セブルスはその日、ルーピンにばかり注意を払った。そして、夜の校庭を歩いていく姿を見つけ、こっそりと後をつけた。周りを見る余裕も無く、一心に憎しみだけで突き動いて。



「……暴れ柳か……」
 距離をおいて追ってきた為、セブルスがそこに辿り着いたときには、リーマスとマダム・ポンフリーの姿はすでに暴れ柳の根元に開いた穴に消えるところだった。後を追おうにも、迂闊に近寄れば暴れ柳のパンチを食らう事になる。ここまでか、とセブルスが悔しさで歯をギリリと噛みしめると、突然背後から声がした。
「木の幹のコブを長い棒で突つけば良い。」
 セブルスは驚き、鋭い瞳で振り返る。そこにいたのは、燃えるような瞳の、シリウス・ブラックだった。
「コブを刺激してやれば、暴れ柳は大人しくなるよ。そのすきに穴にもぐりこめば、後をつけていける」
「……なんのつもりだ」
 シリウスは冷たく乾いた笑いを見せてセブルスを睨みつけている。セブルスも用心深くシリウスを睨みつける。個人的にはリーマスよりもこの男の方が嫌いである。ジェームズと並ぶ成績の持ち主のシリウスが何を企んでその秘密を教えるのか、セブルスは警戒せずにいられない。セブルスの問いに、シリウスは面白く無さそうに答えた。
「お前があんまりこそこそかぎまわるから、鬱陶しいだけだよ。何も無いって分かったらリーマスの事も諦めるだろ?さあ、さっさと行って、確かめてこいよ。もっともお前に暴れ柳をくぐり抜ける勇気があればの話だが」
 シリウスはそこらに落ちていた長い枝をセブルスに投げ寄越す。反射的に受け取ると、シリウスはフンと軽蔑するような視線をセブルスに向け、その場を去った。残されたセブルスは、しばしその枝を眺め逡巡したが、意を決したようにそれを伸ばして暴れ柳のコブを突ついた。柳が本当に大人しくなり、硬直するすきに、とうとうセブルスはリーマスの後を追った。
 シリウスはああ言ったが、リーマスの秘密を隠そうとしてわざとああ言ったのかもしれない。セブルスがまさか本当に暴れ柳を越えられると思っていなかったのかもしれない。本当に何も無いのかもしれない。しかし、ここまで来た。何か一つくらい、何か掴んでやる。
 長い長い道を休まずに歩き続けながら、心の中で、まるで取り憑かれたようにひたすら、彼らを追い出す事だけを念じながら、セブルスはリーマスの影を探して歩き続けた。


「セブルス!!!」

 突然鋭い叫び声が腕を掴み、痛い程に引っ張られた。その腕を掴んでいたのは。

「ポッター!?」


 どうしてジェームズがここに。誰にも見つからないように来たのに。シリウスが喋ったのか?セブルスの、不意を突かれた驚きの表情を睨みつけ、ジェームズは掴んだ腕を力任せに、元来た道へと引っ張った。
「早く戻れ、スネイプ!!」
 険しい形相で、ジェームズがセブルスを連れて行こうとする。セブルスはすぐにその腕を振り解こうと暴れた。
「お前に命令される謂れは無い!離せ!」
「命令とかそんなくだらないことを言ってる場合じゃないんだ、すぐにここから離れるんだ!!」
 力では到底ジェームズに敵わない。それだけに悔しかった。引き摺られるように戻されながら、セブルスは叫んだ。
「そんなに仲間の秘密を探られるのが恐ろしいのか!?いつも仲良しで結構な事だな、人の秘密にはおおっぴらなくせに!!」
「なんの事を言ってるんだ、スネイプ、とにかく早く来い!!命が惜しく無いのか!!」
 本当に切羽詰った表情のジェームズが、チラリと窺うように、リーマスの消えた先の道を見た。そしてますます焦ったようにそこを離れようとセブルスを引っ張る。
「お前こそ、なんの事を言って……」
 引き摺られながら、セブルスはジェームズが視線を向けた方向へ顔を振り返らせた。そして。

「――人……狼……?」

 呆然と、呟いた。



    



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