ジェースネ新婚物語


年越し


 新年を迎えて、この小さな村でもそれなりに盛り上がっているらしい。遠くで花火の音が聞こえた。酒場では皆景気良く酒を手に見知らぬ者同士肩を組んでいる事だろう。
 ジェームズとスネイプも顔馴染みになった村人達から誘われはしたが、ジェームズが上手く断った。ジェームズはともかく、スネイプが賑やかに騒ぐのを好まない為である。
 少しばかり豪勢な食事をした後、のんびりと紅茶を飲みながらリビングで新年を無事に迎え、さも落着いた大人のようにジェームズは言ってみせた。
「たまにはこういうノンビリしたのも悪くないよ。もう学生時代のように若くもないしね」
「……そう言いながらこの手は何だと、貴様に問うてみたいのだがな」
 何の事かな、とジェームズは涼しい顔をする。
 二人がけのソファのど真ん中で足を組み、本を片手にしていたスネイプは、ソファの背越しにまとわりついてくる両腕を指差した。スネイプが本を読んでいようと一向に構い無く、ジェームズの手はスネイプのシャツの裾から中に潜り込もうとする。
「何だも何も、君に触ってるだけだよー」
「ほう、『だけ』ときたか。しかも段々エスカレートしているようにも思うが気のせいか」
「気のせい気のせい」
 そう言いながら、潜り込んだ片手はスネイプの素肌を直接這い、もう片手が彼の髪を撫で頬に触れ指先でスネイプの唇をなぞる。
「…駄目なら、とっくに怒ってるよね、君は?」
 耳に息を吹きかけ、耳朶を甘く噛む。本を開いてはいても、その目がまったく文字を追えず、身体中が愛撫に集中している事をジェームズは知っている。意地悪く誘ったら、案の定スネイプは不機嫌な顔を作った。
「駄目だと言っても、やめる気がないだろうが…『若くない』が聞いて呆れる、毎日毎日……」
 そして、諦めたように本を閉じる。頬に添えた手に少し力を加え、スネイプの顔の角度を変えさせると、ジェームズはソファの後ろから首を伸ばして被さるようにキスをした。
 最初から深いキスで、スネイプから甘い声が漏れた。同時に止まない胸への愛撫で身体が切なくなっているのか、スネイプの腕が自然に上がり、ジェームズの腕を掴んだ。


 ブー。


「……客、か?」
 無粋な呼び出しブザーの音に、スネイプが吐息のように呟く。しかしジェームズは言葉を封じるように、もう一度唇を被せた。
「――村の誰かが新年のお祝いに来てくれたのかもね」
 そう言いながら、ジェームズはスネイプを離そうとしない。ソファの背を軽く越えて、そのままスネイプを横たえる。
「ポッター、では…」
「放っておいたら、もう寝たんだな、って思ってくれるよ…」
 続いて響くドアノッカーの音も意に介さず、スネイプの肌に触れていく。スネイプも強く反論はせず、そのまま瞳を閉じて、ジェームズの愛撫に身体を負かせていく――


「ジェームズ、セブルスー。リビングの明かりがついたままだよー」


「!!」
 次の瞬間ジェームズはスネイプに思いっきりソファから投げ落とされていた。投げ落とされた表紙にテーブルに頭をぶつけ、さらに紅茶のカップが降ってきてコン、と軽く音を立てる。酷い。ジェームズは頭を押さえて呻いた。
「ルッ、ルーピン……!!」
 慌てて服を整え、真っ赤な顔でソファから立ちあがったスネイプは、玄関にすっ飛んで行く。再び繰り返されるドアノック。
「寝てるなら電気は消した方がいいんじゃないかなーおーい」
 スネイプが、鍵を開けて勢いよくドアを開けると、おや、と、にこやかな笑顔でリーマス・ルーピンが立っていた。
「起きてた?やあセブルス。新年おめでとう。これ、差入れだよ。貰い物のワインだけど」
 そう言いながら、クシャクシャの紙袋を差し出してくる。中を見ると、恐らくホグワーツから掠めてきたと思われる、スネイプに見覚えのあるワインが入ってあった。
「せっかくの新年のお祝いと思ってきたのだけどね。いやもし寝ているようなら帰るつもりだったんだけど、電気がついてたから。あ、やあジェームズ。新年おめでとう」
 痛む頭を押さえながら、ようやくフラフラとジェームズが玄関付近に到着する。良いところを邪魔されるし頭は痛いしルーピンと知るやスネイプはすっ飛んで行くしでジェームズはなかなか機嫌が悪い。そんなジェームズに、ルーピンはあくまでにこやかに挨拶をした。
「あ、もしかしてお二人の邪魔をしたかな?私がいない方が都合良かった、セブルス?」
「べ、別に都合の悪い事など……入りたければさっさと入れ、寒いだろうが!」
 なんで入れるんだよ!!とジェームズは心の中でスネイプに突っ込む。しかし面と向かって言えないので、上機嫌のルーピンに張り付けた笑顔を向ける。
「でも君もあまり長居はできないんだろう?シリウスはどうしたのさ」
 暗に帰れと言ってやると、リーマスは目を細めて、スネイプには見せない黒い笑顔でジェームズに言った。
「シリウスは今頃、ハリーとドラコに張りついてるよ。二人っきりにさせたくないらしい」
 あの親ばか犬!!子供は放任主義でも立派に育つってのに!!
「そんなわけで、私もせっかくだからたまには旧友と新年を迎えようと思ってね。今年も脱狼薬を貰いにきたりするわけだし、今年もよろしく頼むよ、ジェームズ」
 白々しい笑顔で右手を差し出してくるルーピン。
 チラリとスネイプを見ると、貰ったワインを早速開けていた。どうやらホグワーツの教授時代の好物であったらしい。僅かに顔を綻ばせている。

 今年も邪魔しに来るってか!!

 追い返すわけにも行かず、抜け目の無い友人の右手を力無く握って、今年1年を暗示するかのような年明け早々の出来事に、犬では無いが遠吠えしたくなったジェームズであった。








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