私は学生時代から、カヌーには興味をもっていたが、当時日本ではあまり一般に普及していなかったし、なかなか実際に接する機会もなかった。鎌倉山に引越した直後だったと思うが、手広から鎖大師方面を散歩しているとき、 カヌーショップ「サンバースト」という看板を見つけて訪ねてみたのが、カヌーとの出会いであった。昔カヌーを売っている店を色々探したこともあるが、なかなか見つけることができなかったのに、鎌倉のこんな身近なところにあるとは驚きであった。
当時のサンバーストはカヌーやアウトドアライフ愛好家の溜まり場になっており、店主の古橋さんは、根っからのカヌー好き、アウトドア好きで、私と同年輩のサラリーマンでありながら、御夫妻でカヌーショップを経営していて、時には商売抜きでカヌーの普及に力をいれており、カヌーの世界ではかなり有名な人物であった。何度か相模川や千葉の亀山湖などに連れていってもらって、実際に漕いでみたが、予想していた通り、海でも河川でも湖沼でも、水深が20センチ以上あれば、自由に乗り回すことができ、多目的に利用することができ、非常に快適なものであった。カヌーにも色々なタイプがあり、随分迷ったが、結局フジタカヌーの折畳式二人乗りのファルトボートを購入し、軽自動車に積み込んで、主に海釣りなどに使っていた。海釣りには貸ボートなども良く利用したが、カヌーは、水面すれすれに浮かぶので、目線が随分と低くなり、陸を見渡しても、随分と違った景観に見えた。ファルトボートの特に二人乗りのものは、重量は30数キロとややかさばるが、安定が非常に良く沈没の危険はまずなかった。アンカーがないと、流されやすいのが欠点であるが、葉山の沖にある定置網に固定させてもらって、キスやワカシなどを釣った。

江ノ島沖にて
古橋さんからは、四万十川とか石狩川等への遠征を随分薦められた。四万十川等の清流を何日もかけて漕ぎ下るのはカヌーイストにとって最大の楽しみだそうで、カヌーは畳んで宅急便で送れば、良いとのことであったが、休暇が取れず実現はしなかった。相模川は門沢橋の近くに何度か行ったが、流れが急で、あまりゆったりとは漕げなかった。
丹沢湖はカヌーの持ち込みが禁止されていたが、富士五湖の本栖湖あたりでは、カヌーを漕いでいる人をかなり見かけたことがある。
その後一時カヌーブームが起こり、愛好者の数が激増したそうで、サンバーストの業績も随分向上したそうだが、現在では廃業してしまった。きっと古橋さんのことだから、今ごろは悠悠自適の生活をしながら、カヌー遊びを楽しんでいるにちがいない。
私も定年後には、RV車にカヌーや釣りや探鳥等の七つ道具を積み込んで、自由気ままに旅にでるのが、夢であったが、健康を害し、実現が困難になってしまった。それでもなかなか手放す気にはなれず、長いことカヌーは庭の物置に眠っていたが、このほど物置を取り壊すことになり、RV車も手放すことになって、行き場がなくなってしまった。どなたか有効に活用してもらう人はいないかと思っていたところ、KJG(鎌倉自主探鳥会グループ)で快く引き取っていただけることになり、ほっとした気分である。このカヌーは恐らく購入後10回程度しか使用していないと思うが、長いことメンテナンスをしていないので、新品同様という訳にはいかないし、お荷物にならなければ良いなと心配である。 (平成16年5月)