滑川のハゼの話

いまの家に引越す前、私は一の鳥居のそばにあるアパートに7,8年間住んでいた。

丁度すぐ横を滑川が流れており、年末近くになると毎年のようにハゼ釣の人で賑わっていた。 今でこそ滑川で、ハゼを釣る人など、まず見かけないが、20年前までは、ここでかなり良形のハゼが良く釣れており、テンプラはもとより正月用の甘露煮にする人もいた。

ハゼは河口よりも多少上流に遡った場所の方が大型が釣れるようで、河口から少し離れた海岸橋なども、ハゼ釣の人で鈴なりになることがあった。 多い日には20センチを超える良形のマハゼが30匹前後釣れたが、不思議なことに翌日は条件はあまり変わらないのに全く釣れなくなることがあったり、一日のなかでも急に食いが良くなったり、全く当たりがなくなったりと変化が多かった。 私は近くに住む村上さんという老人に手ほどきを受けたが、ハゼ釣は単純なようで意外と腕の差がでるもので、師匠以上の数を釣ることはまずなかった。 私はアオイソメやジャリメを餌にしていたが、師匠は、食いの良い日はミミズやゴカイを使っていた。そのほうがコストが安いのだが、滑川は海水が混じっていてミミズ等はすぐに魚が食わないと、弱って生餌としては使えなくなってしまうので、下手をするとかえって高くつくことがあった。

小和田湾でボートでハゼ釣をしたことがあるが、形は滑川の方がはるかに粒ぞろいであった。私の勤務していた浜松町の近くは船宿が多く、江戸前のハゼ釣船が出漁していたが、釣果を聞いても、全く遜色がなく時がしばしばであった。 そんな訳で、滑川はハゼ釣の穴場であったのだが、何故かその後パッタリとハゼが寄り付かなくなってしまった。河口付近の水の流れが変わったせいかと半ばあきらめていたが、それでも毎年一度は見回りをしていた積もりである。

それが昨年は、全く珍しいことにかなりのハゼが登ってきた。11月に釣ったので、形はやや物足りなかったが、4,5回出かけて100匹近い釣果があった。12月は寒くて 行けなかったが、行っていれば多分もっと形の良いのが釣れた筈である。 ところが今年はまたサッパリで、今までハゼは一匹も釣れてない。 河口付近は他にボラやシマイサキの稚魚が豊富である。竿をだしてもボラは食いつかないがシマイサキの稚魚はいくらでも釣れる。骨ばかりで、食用にはなりそうにもないが水槽で飼うと結構きれいな魚である。こうした小魚を狙って河口付近は鳥が多い。カワセミ、コサギ、イソヒヨドリ、ハクセキレイ等が良く見られる。

イソヒヨドリ

 

なお昨年の春、山崎谷戸の前の川かあるいは倉久保の通称清水ヶ淵のちかくで採取した稚魚(ヨシノボリだと思っていた)を庭の睡蓮鉢で飼育していたら、なんと10センチ程のハゼに育っていた。元気が良すぎて鉢を飛び出し、猫にとられてしまったが、こんなところにハゼが登っているのには驚いた。 (2002年12月)

 

 

 

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