25年秋サシバと共に

年とともに、一年が過ぎ去るのがあっという間だと感じられる。しかし春に最後のサシバを見送って、秋のサシバ・シーズンまでの間は年々長く感じられるから不思議である。5月、6月から7月上旬位までの間は野鳥の声を追って、車を利用して山野を駆け巡ってきたが、行動範囲が年々狭まり、今年は6月に一度相模川を越えただけであった。6月に西湘グループがサシバを呼び戻そうと、休耕田で田植えを行うという行事があった。当日は参加できなかったが、地図をメールしていただき、後日現地に行ってみた。驚いたことに、その場所は、40年程前に義父母が住んでいた小田原市小竹の家の直ぐそばであった。
当時サシバが繁殖していることは知っていたが、場所はもう少し丹沢寄りの、高尾付近だと思っていたので、少し驚いた。神奈川県でのサシバの繁殖地は年々減少し、今ではほんの数箇所しか残されていない。しかし、若干手を加えれば、サシバが戻ってきそうな場所は、何箇所かありそうだ。サシバを呼び戻すために、実際に行動されている、西湘グループの情熱、ご努力には、頭が下がる思いであった。
今年もほぼ例年通り、8月上旬にサシバが鎌倉に帰ってきたとの情報をいただいた。しかし酷暑の中で、フィールドに出ようという意欲は、全く湧かず、やっと本日になって、笛田公園に、久方ぶりに行ってみたが、まだ観察ができる状態には程遠い慢性夏バテ状態で30分程度で退散せざるを得なかった。
果たして、今シーズンまともに観察ができるのか?


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秋のサシバの最終目的地であるインドネシア、面積は日本の約5倍、人口は日本の約倍という大国である。この国に生息する野鳥の数は何と1600種、世界の野鳥の20%が生息していることになる。しかし野鳥の世界ではそれほど注目されている訳ではなく、むしろ未知の領域といったイメージである。
野鳥王国として有名なのは中南米の小国であるコスタリカで、日本の7分のT程度の国土になんと850種の野鳥が生息しているそうである。この数はアメリカ合衆国とカナダ、メキシコに生息する野鳥の合計を上回るといわれている。
ところで日本と韓国とでは、どちらが野鳥の生息数が多いのだろうか?私はなんとなく大陸続きである韓国の方が数が多いのではないかと思っていたが、実際の韓国の野鳥数は約400種だそうで、日本の580種より少ないのは意外に思えた。私は昔、老後にはフレンチポリネシアといわれる南太平洋の島で暮らしてみたいと思ったことがあった。しかし、これらの島々の野鳥生息数は200種前後と意外に少ないのが物足りないと思ったこともあった。
現在私が見たい鳥といえば、サシバと赤い鳥のみである。したがって、どこの国にどんな鳥が住んでいようと、昔みたいに興味はないが、やはりインドネシアという国は魅力的だなあと思える。
余談(いや本論かな?)であるが、昔インドネシアのジャカルタに滞在していた時、ある人から、ジャカルタは南半球に位置しているので、日本でなら、例えば風呂の水を流すと、右巻き(時計回り)のウズができるけれども、当地では、これが左巻きになるという話をきいた。まさかと思ってホテルで実験してみると、なんと左巻きのウズができていた。これは地球の引力の関係だそうだ。
皆さん、タカ柱は右巻きか、左巻きか注目したことがありますか?実は私も、タカ柱を形成するサシバの数を数えるのに手一杯で、全体像を注視することは殆どありませんでした。なんとなく右巻きだというイメージが残っているだけです。しかしタカ柱の形成に地球の引力が作用しているのであれば、右巻きになるケースが多いのでしょう。ただし赤道を越えた瞬間から、サシバのタカ柱は左巻きになるのでしょうか?
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9月20日(金) 晴
10:00−11:00 笛田公園。 この時間帯はほぼ無風であったが、まだかなり暑かった。そろそろ渡りの第一陣があらわれそうな雰囲気であったが、タカの動きは皆無であった。

9月22日(日) 晴
9:30−11:00 梶原野村総研跡地
笛田公園は駐車できず、やむなく野村総研にいった。この場所はバックが常盤山で、見通しが悪く、むしろ春に適した場所だと思う。グラウンド周辺の樹木が、すっかり繁って、長谷方面の眺望はゼロになってしまった。しかし源氏山を通過するのとは同一ライン上とも考えられるし、それなりの期待感はあった。グラウンドはソフトボールの練習場になっていて、騒々しかったが観察に支障はなかった。しかしオオタカ「が一羽、西から東を向かった以外、見るべきものはなかった。
何時の間にか、各地とも観察が開始されているようだ。今年はどのようなパターンをたどるのだろうか?
9月23日(月) 晴後曇
9:30−11:00 笛田公園。北風が5,6m吹いており、渡りのサシバは期待薄であった。常盤山付近をチラチラする鳥影の中に地付きのサシバがいないか、チェックして見たが、成果はなかった。
9月24日(火) 晴
10:00−11:15 江ノ島外防波堤
台風接近の情報があったが、若干北東風が強かったものの、観察には支障はなかった。しかしサシバの姿は見られなかった。

9月26日(木) 曇後晴
10:00−11:30 笛田公園。北の風が5,6m吹いており、サシバがやってくるとは思いにくい天候であった。そろそろサシバに会いたいものだが、なかなか条件の良い日がやってこない。
9月27日(金) 晴
9:45−12:00 湘南平展望台。 通院の関係で、この場所を選定。到着した時点では、北風がやや強かったが、富士山、箱根、丹沢、大島、利島からスカイツリー、東京タワーまで、晴れ渡っていた。 こうした日は一見期待できそうであるが、実績はあまり芳しくないのが、実情である。初めてお会いした、地元の愛鳥家で、写真家でもあるベテランの人と、色々と話をしながら、観察した。サシバは11時38分に2羽、少し間をおいて1羽がかなりの高空を矢倉岳方向に向っていった。しかし高くて写真はとれなかった。この日はミサゴが何度か現れた。湘南平にはヒタキが沢山きているそうだが、私は発見できなかった。豆粒のようなサシバであったが、ともかく今秋も、出会うことができ、ほっとした気分であった。

9月28日(土) 晴
笛田公園 9:00−11:00 昨日は稲村ガ崎で276羽、矢倉岳で394羽のサシバが観察されている。稲村ガ崎を通過したサシバの大半が矢倉岳に向ったと推測される。サシバは時速40kmで飛ぶといわれているので、稲村ガ崎を通過後一時間程度で、湘南平の周辺を通過している筈である。稲村ガ崎での観察時間から逆算すると140羽前後のサシバが、私が観察していた時間帯に通過したものと思われる。然るに私が発見できたサシバはたったの3羽、ショッキングな数字であるが、受け入れざるをえない、現実なのであろう。この日の笛田公園は北北東の風がゆるやかにふいており、条件は悪くなかった。気を取り直して、肩の力を抜いて観察するしかない。9:50サシバ1羽、10:03、サシバ2、ハチクマ1羽を観察することができた。笛田公園でハチクマを観察するのは久しぶりのような気がする。
9月29日(日) 晴
9:30−11:00 逗子披露山公園。 笛田公園は駐車場が満杯で、やむなく逗子に向った。条件的には絶好だと思われたが、暑くて、集中できなかった。11:11 ハチクマが1羽通過した。比較的低かったので写真がとれた。サシバも期待したが、1羽も姿を見せなかった。

9月30日(月) 晴後曇
9:45−11:00 笛田公園。サシバは各地で、順調に飛んでいるようだ。この日は北の風がやや強く、雲が多かったが、それほど条件は悪くなかった。しかし10:20サシバ1羽が高空を西に向っていった以外は、収穫がなかった。9月中のサシバ観察数はやっと7羽、春並みのペースには苦笑するしかない。
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サシバの謎
秋にくらべて、春に見られるサシバの数は、大幅にすくない。私は長いこと、春のサシバには、何らかの謎というかトリックがあるのだろうと決め付けていた。しかし最近もしかすると春のサシバが日本の本来のサシバの姿であり、謎はむしろ秋にあるのではないかと思うようになった。きっかけは東日本大震災で、里山の実情などについて、多少関心をもって考えるようになったことだ。春に日本に渡ってくるサシバの数は、秋のように正確な統計がなく、高知、徳島、広島等限られたデータから判断したものであるが、多くても1万羽程度のサシバが日本の里山に生息しているという方が正しいのではないのかと考えるようになった。
現在絶滅危惧種であるサシバの日本における生息数は最低3万羽といわれている。そして、日本のほぼ中心部にある、白樺峠、静岡杉尾山等で秋に2万5千羽程度のサシバが観察されているという事実がある。サシバは日本列島に概ね均分に生息していると考えられるが、この数字を見ると、日本のサシバの75%が東半分に生息しているという計算になる。しかし東日本大震災の影響は今のところ全く反映されていないし、どのように積み上げても、東日本にそのような数のサシバが生息しているとは、思いにくい。
現状の観察データ(タカの渡り全国ネット等、公表されている資料)を分析すると、春に日本にやってくるサシバは10,000羽以下、秋に日本から東南アジアに渡って行くサシバが約30,000羽、この差額約2万羽の中に謎があるということになるが、極論すぎるのだろうか?
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10月3日(木) 晴
しばらく悪天候が続いたが、今日は絶対飛ぶはずだと大いに期待して、9:00より笛田公園で観察した。北の風がやや強く、気温が高かったが、サシバはいかにもやって来そうな雰囲気で、相当集中して、観察したが、11:00まで1羽のサシバも観察することができず、疲労困憊であった。
10月7日(月) 晴
10:00−12:00 笛田公園。10月に入って、満足に観察できる日がすくなく、久しぶりの絶好の条件が期待された。しかし10時台は雲が多く、やっと11時台になって条件は良くなってきた。しかしものすごく暑く、タカの動きも閑散であり、サシバは1羽も発見できなかった。



10月8日(火) 晴
9:00−10:30 笛田公園。昨日は武山39羽、矢倉岳44羽、稲村ガ崎2羽であった由。この日は一見絶好のコンディションに見える日であったが、風が南風2m程度、10月というのにものすごく暑かった。 初め北風で、それが南に変わった場合には若干期待できるが、朝からの南では、期待薄である。結局なんの成果もなかった。
10月9日(水) 晴
10:00−11:15 葉山城ガ崎海岸。 昨日は弱い南風であったが、 稲村ガ崎では20羽のサシバが観察されたとのこと。この日は台風の影響で、8mの南南西風、いくらなんでもサシバは無理と思ったが、オオグンカンドリでもやってこないか?とでかけてみた。グラグラゆれる車の中で、サシバがこれから向うであろう、台湾、フィリッピン、タイ、ベトナム、インドネシア等の歌を集めた、CDを聞きながら過ごすひと時も悪くはないが、いまだにサシバ7羽はさびしすぎる。カウントに疲れて、もう来ないでくれと思った日があったことを思いだしていた。
10月10日(木) 晴
9:30−11:30 湘南平展望台。今日こそは100羽が狙えるような絶好な条件と思われた。昨年もこのような条件で若い人と一緒であったが、96羽を観察している。ところが期待に反しサシバは9:51、10:07、10;46に各1羽、ほかにはノスリが1羽見られただけであった。各地の状況は不明であるが、こんな条件で飛んでいないとは思えないし、見落としの公算が濃厚と考えざるをえない。
目のことで、こんなに悩んでいるのに、運転免許の更新に行ったら、何故か視力が良くなっていて、眼鏡使用は不要とのこと。一体どうなっているのだろうか?
なおこの日矢倉岳では778羽も出たそうです。スポーツ選手が引退を決意する日って、きっとこんな心境なのでしょう。
10月13日(日) 晴
9:30−11:30 逗子披露山公園。 ゆるい北風。絶好の眺望。条件は最高レベルと思われた。まだサシバは全部渡ってしまったとは思えない。必ずサシバはやって来るだろう、とかなり集中して観察したが、この日もサシバは1羽も発見できなかった。サシバを完全にギブアップしたら、このような美しい公園で、2時間も時を過ごすことはなかっただろうと納得するしかない。
10月14日(月) 晴
8:30−10:30 笛田公園。 この日も暑くなく、寒くもなく、弱い北風で絶好の条件と思われた。しかしノスリが1羽現れただけで、サシバの影はみられなかった。今シーズンはいまだに10羽である。数は想定内であるが、まったく満足感がない。それは記録はあるが思い出がないからであろう。数は少なくとも、殆どが写真に残っていて、どのような状況で出会ったかの記憶がたどれるようだと、満足度が格段と高いものになるのである。
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サシバとはどんな鳥?
サシバという鳥を長いこと見てきたが、この鳥について、一体どれだけ知っているのか?と問われると実は知らないこと、わからないことだらけなのだ。サシバというキーワードでインターネット検索をしたら現時点で309,000件の情報が掲載されていた。勿論その中には、貴重な情報も多いが、私が本当に知りたい情報は、意外に少ないのが実情である。
たとえばサシバの寿命は何年か?繁殖適齢期は何歳から何歳までか?といったこともはっきりしない。勿論非公開の研究論文等もあるのだろうが、なかなか目にする機会もない。最近サシバの研究にもっとも熱心なのは台湾ではないかと思うが、中国語で書かれた報告書を読んでもなんのことだかサッパリ分からないのが、残念である。
スズメは留鳥であるが、平均寿命は2年以下であると言われている。これに対して渡り鳥であるサシバは、仮に寿命が12年であるとしても、渡りに伴うリスクが高いため、実際の寿命は、以下の理由により、5年程度ではないかと想定される。渡りは平均して片道30%の成功率だそうだ。これに対して私はサシバの渡りの成功率は90%強であると想定している。この想定は高すぎるのではないかと思われるかもしれないが、それでも相当ショッキングな数字である。すなわちサシバは物理的な寿命にかかわらず、渡り鳥であるが故に平均5年しか生きられないということになる。
サシバは幼鳥といわれる生後一年目は繁殖に参加しない。また平均5年生きるとしても、これは平均であり、年の順番ではない。何歳まで繁殖が可能かははっきりしないが、確率的に5年の内、約3年、言い換えると60%程度のサシバしか繁殖に参加しないと考えるのが合理的だと思える。また繁殖するとしても、一つの番が平均何羽のヒナを孵すのか?成功例だけ見ると2,3羽ということになるが、ペアリングの段階から失敗する例は、決してすくなくないことから、結論としては25%程度の増加率が確保されているのではないのか?と私は考えている。こうした数字が確保されて、サシバは種を維持しうるという方程式がなりたつといえるのである。いわば机上の空論の最たるものなのかもしれないが、一つのメルクマールにはなるのだろう。
なおサシバの記事をネットで見ていたら、サシバ(タカ)を見る目的で新幹線で青森まで往復した人の話が掲載されていた。私も東北地方のサシバ情報の少なさに、イライラしていたので、こうした記事を見ると、その成果はともかくとして、本当に嬉しくなる。私もかねてから、熱海発大島行きの東海汽船の船上からサシバを見ること、鎌倉沖1000m位のところにボートを浮かべてサシバを見ることを実行して見たかったが、実現することはできなかった。
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10月17日(木) 晴
10:00−11:30 葉山城ヶ崎海岸。 台風が去り、好天が期待されたが、北風が5m程度と強く吹いていた。もうサシバは殆どが渡りきったと判断され、観察を中止したポイントも多い。それでもサシバがやってきそうな雰囲気はしていた。ここからは伊豆大島が正面に見える。大きな被害が出た、三原山から元町に続く山林は、昔何度か歩いた記憶がある。三原山の噴火に伴う被害は想定できたが、まさかこのような崩落が起きるとは、びっくりであった。空気の澄んだ日であれば、プロミナーでその傷跡が見えるかもしれない。海上をミサゴが盛んに行き来していたが、サシバの姿は見られなかった。
10月18日(金) 晴
10:00−12:00 湘南平展望台。 今シーズン最後の観察場所をどこにするか、ずいぶん迷ったが、この場所しかないとの結論となった。現地に到着した時は5m程度の北風が吹いており、気温が低くとても寒かった。10:28 かなりの高空をサシバが1羽、真っ直ぐに、矢倉岳の方向に向っていった。まだまだ、来そうだったが、結局この1羽しか発見できなかった。他にはハヤブサが何度か出現した。
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今シーズンは体調が全般に芳しくなく、サシバも11羽という数はともかく、あまり納得のいく観察ができなかった。とても疲れたが、サシバを愛する多くの人々に励まされ、なんとかシーズンを終えることができ、ほっとした気分である。皆さん本当にありがとうございました。