平成28年春サシバとともに

東日本大震災から、本日で5年が経過した。随分長かったようにも思うが、あっという間のような気がするときもある。鎌倉でサシバを観察していて、東日本大震災がサシバにどのような影響をあたえたのか?実のところ全く影響がなかったように思える。それは私にとっては想定外のことであったが、鎌倉を通過するサシバ(特にハルサシ)はもともと深刻な被害を受けた福島、宮城、岩手方面には向っていなかったのだと考えるのが妥当なのだろう。しかしそれが結論だと決め付けるのは早すぎるようにも思える。もともと鎌倉を通過するサシバは春と秋とでは、バランスがとれていないという現実がある。即ち我々の眼がとどかない、とんでもない高空か、海上か、その他想像もできないようなルートを飛ぶサシバが存在していて、その姿は昔も今も見えていないので、震災の影響が出ていても見えないということも考えられるのだ。
最近アサギマダラの生態はかなり解明されてきているようである。私がサシバ観察に熱中しだした30年前、確かアサギマダラの北限は筑波山だといわれていた。しかし最近わかっているのは、アサギマダラは津軽海峡を渡って北海道まで北上しており、さらに北方領土からシベリア方面にまで、渡っている可能性もあるそうである。
サシバについては、何故か西高東低で、東に行くほど観察者の数がすくないようで、とにかく情報が少なく、良くわからないが、思いもよらないような事実が隠されている可能性は十分ありうるのだろう。
今年は、果たして何羽のサシバにであえるだろうか?
3月11日
3月23日(水) 晴
この日は観察というより、リハビリと下見をかねて笛田公園に13:30頃でかけてみた。正月以来体調が優れず、殆ど外出もしなかったので、足がすっかりなまっていて、公園の駐車場からグラウンドに登る85段の階段を登るのに四苦八苦した。まだ各地とも殆ど飛んでいないようだし、時間的にも全く期待していなかったが、13:50サシバが1羽比較的低空で現われ、長谷の方向に消えていった。尾羽に損傷が見られる個体であった。
各地に観察実績がないのにサシバが鎌倉に現われるのは、春には、決して珍しいことではない。しかしこの時間に笛田公園で見られるとは、驚きであった。


3月29日(火) 晴
8:30−10:00 笛田公園
思いがけずサシバを初認してホッとしたのか、その後体調が優れず、ほぼ1週間ぶりの観察になった。この日も予報では午後から南風で、晴れ間がでるのは9時前後のみとなっていたたので、通常よりはやや早い時間帯となった。いかにもサシバが現われそうな雰囲気であったが、結局成果はなかった。
鎌倉山の桜はまだ全く咲いてない木もあるが、平均すると2分咲程度か?


3月30日(水) 薄曇
8:00−9:30 笛田公園
昨日までに静岡170羽、秦野で104羽飛んでいる。しかし鎌倉ではこの日も早朝のひと時を除き、条件的に期待できそうになかった。笛田公園の開門(駐車場)をまって、観察したが、オオタカが2度、ハイタカが1度出現しただけであった。
3月31日(木) 晴
10:00−11:30 笛田公園
この日は絶好のサシバ日和であったが、前日静岡で2羽、菜の花台では0、その他西日本各地の記録を勘案すると、悲観的にならざるをえない。しかしハルサシの7不思議の一つとでも言うべきか?こんな日でもサシバはひょっこりと、笛田公園に現われることがある。そんな偶然(もしかすると必然なのかもしれない)に期待して、かなり集中して観察したが、成果はなかった。
2日前、2分咲きであった桜の木が、あっという間に満開に近いものも相当数見られた。桜は開花して、その日の内に満開になることもあるそうである。
なおトカラ列島の中之島に観察ポイントが出来たことは素晴らしいことだと思う。私は中之島には行ったことはないが、すぐ隣の諏訪瀬島に昔一昼夜滞在したことがある。時期的には今頃であったが、当時サシバには全く関心がなく、もっぱら海鳥ばかり見ていた記憶がある。

4月1日(金) 曇
9:30−10:30 笛田公園
曇空で、視界は良くなかったが、風の状態は悪くはなかった。昨日同様、サシバの群れは期待できない状況であったが、それでも何かが起こりそうな雰囲気はあった。しかし成果はゼロ。笛田公園にやってくるサシバは当然に静岡を通過してくるのであろうか?何千キロにもおよぶ旅を終えて、はるばる笛田公園にやってくるサシバの数は少ないが、こうしたサシバに出会える感動、縁は素晴らしいものだと思える。しかしこれらのサシバがどの国から、どのようなルートを辿って笛田公園にやってくるのか?それは未だに解明ができていない。せめて静岡と神奈川(笛田公園)そして千葉に至る正確なルート位解明したいものだと思いつつ、今日も時が流れていった。
14:20 自宅上空をサシバが1羽通過した。肉眼ではっきりサシバとわかる低空、最近こんな低く飛ぶサシバにであうのは珍しい。
4月2日(土) 曇
10:30−11:30 笛田公園。
昨日は静岡で午前中47羽、菜の花台で午後14羽が飛んでいる。この日は北風が4m程度吹いており、視界も悪かった。こんな日でも十分チャンスはあると思って観察したが、なんら反応はなかった。
4月6日(水) 晴
このところ天候が芳しくなく、観察ができなかったが、この日は素晴らしい観察日和だと思われた。昨日は静岡で382羽のサシバが観察されているが、神奈川では視界が悪く菜の花台でも1羽も観察されていない。静岡は昨年1647羽観察されているが、過去5年の平均では815羽であり、一日300羽台は滅多にないようだ。静岡を通過したサシバのうち相当部分は神奈川に向う筈であるが、それらのサシバはどのように行動したのであろうか?もし昨日の雲がそれ程高くなかったとすれば、サシバは神奈川県を通過して千葉方面に去っていったのではないか?神奈川をサシバが通過していないのではなく、見えなかっただけなのだろう。ただ神奈川の気象条件がサシバが飛行出来ないほど悪かったとすれば、恐らく静岡圏内のどこかで、待機していたのであろう。その場所はどこか?秋の逆だとすれば十里木高原の可能性が高いのだが。神奈川県には私が調べた限りでは、このような多数のサシバが待機できるような場所はないのだろうと思う。十里木高原・鎌倉間の距離は約80kmであり、サシバは2時間程度で飛んで来る筈である。サシバが何時に飛び立つのか不明だが、まず笛田公園の開門を待って30分だけ観察することにした。
4月7日(木) 晴
8:00−8:30 笛田公園
快晴というにはやや雲が多かったが、弱い北風で、条件は悪くなかった。しかしサシバは1羽も現われなかった。静岡、鎌倉の中間点を早朝飛び立ったサシバ(if any)はもう鎌倉を通過したものと思われたので、一旦観察を切り上げた。
10:30−11:30 江ノ島外防波堤

静岡を本日通過したサシバを観察するのに条件的には悪くないと思われたが、サシバは1羽も現われなかった。春の江ノ島での実績は最近惨憺たるものである。しかし何故かシーズンに一度は行ってみたい場所なのである。江ノ島の灯台の側で常識的には、釣れるとは思えないイシダイを狙っている釣り人がいる。しかし最近その人の姿を見かけないのがきがかりである。
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本日は鎌倉山の桜が満開である。鎌倉山の桜は、昔は鎌倉でも有数の名所といわれていたが、今では最盛期の恐らく三分の一程度しかなく、年年寂れていく。残念ながらこの傾向を食い止める手立てはないようだ。それは鎌倉山の桜が、総て道路に隣接した民家の庭に生えているからである。相続等で民家を手放すしたり、分割したりすることで、桜はどんどんと切り倒されていく。ところで日本の桜はソメイヨシノという品種が有名だが、お隣の韓国では一時、この桜は日本の占領下に持ち込まれたものだとして、伐採されたそうである。しかしその後、ソメイヨシノの原種は韓国の済州島であるということが判明したとして、現在では韓国でもソメイヨシノは全国で栽培されているそうである
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4月8日(金) 曇り後晴
11:30−13:00 笛田公園
所要で平塚に行ったので、帰りに湘南平で観察しようと、車を走らせたが、桜が満開で頂上付近が大混雑、駐車場がなくやむなく、予定を変更して笛田公園で観察した。11:59と12:30サシバが各1羽比較的低空を東に向っていった。この日は午前中は北風、午後から南に変わるというパターンであったが、現地についた時点ではほぼ無風であった。
4月9日(土) 薄曇後晴
8:00−9:30 笛田公園
この日は9時で南風2m、正午で5mという予報であった。早朝はまだ北風であったが、8時の時点ではほぼ無風で、視界もまあまあ、条件的には悪くないように思えたが、サシバは1羽も確認できなかった。
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過去の実績でも笛田公園では早朝サシバは殆ど見られない。静岡・鎌倉間の距離は102km、サシバは約2時間半で飛んでくるのだろう。静岡を7時に通過したサシバは9時半頃やってくる計算になるが、実際静岡の観察記録を見ると、むしろ10時以降、午後にかけて通過するものが多いように思われる。静岡では一日300羽以上飛んだ日が昨年は3日、今年は1日あるが、いずれの日も午前中より午後に多く飛んでいるようだ。一方静岡と千葉の富津は直線で129km、休まず飛べば、所要時間は3時間20分弱と言う計算になる。
鎌倉の観察ポイントは、数箇所あるが、それぞれに地形的にも、条件がかなり違っているようで、一概には言えないが、少なくとも笛田公園では、ハルサシを見るなら午前より午後の方が静岡から飛んでくる数が多いので、条件が良いのではないのかという疑問がある。もっとも午後は南風に変わることが多く、現実には、殆ど観察したことがないが、原点に帰って再検討する必要があるのかもしれない。なお以上は静岡・笛田公園当日直行便についてであり、途中で、何らかの事情で滞留するサシバについては、考慮していない。
体調の悪いときはなにも考えず、ただぼんやりと空を眺めているだけだ。フィールドに立てることだけで、十分幸福であり、サシバは1羽見られればそれで満足だと思う。しかしある程度体調が回復してくると、だんだんと欲が出てきて、より多くのサシバが見たくなる。しかし有効な方法が見当たらず、最近はドローンでも飛ばして見たら、道が開けるのではなどと思っている。
昔ある先輩と一緒に大崎公園で良くサシバを見ていた。幻のタカ柱もこの先輩と一緒に発見したものである。その先輩は逗子にお住いであったが、何故か、野鳥の会の会員として南富士支部に属していた。そして、私にも南富士支部にはいることを勧めていた。今日はふとそんなことを思い出した。
最近鎌倉在住だった著名な作家林房雄の「釣人物語 緑の水平線」のなかに「私の釣っていたのは、魚ではなく、少年の日の夢なのであろうか?」という言葉があるというメールを昔の釣り仲間が送ってくれたが、非常に共感できる言葉だと思う。
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4月10日(日) 晴
9:00−10:30 野村総研跡地
春霞たなびくという感じで、視界はあまり良くはなかったが、上空は青空でハイタカが2羽、かなりの高空にたえず出現した。笛田公園の喧騒にくらべると、うそのように静かであった。10:05と10:07サシバ各1羽がかなりの高さで、源氏山または台峰方向に飛んでいった。今日はKJGの探鳥会の日なので、誰かがチュックしている?


4月11日(月) 晴
9;00−10:30 笛田公園
北北東の風が7mという予報であった。グラウンドに行っても帽子は飛ばなかった。こんな日は意外に面白い。少なくとも南2よりははるかに確率が高い。問題は静岡を7時前後にスタートしたサシバがあるかである。もしあれば鎌倉に向うものが多い筈だ。その場合海側を通過するのが多いだろうが、過去の事例からみても笛田公園にもチャンスはある。そうした皮算用をしながら、寒風に耐えて観察していたら、あっと言う間に時間がすぎてしまい成果はなかった・
静岡の通過記録をリアルタイムに把握できるようになり、静岡・鎌倉間に存在している?ブラックボックスを解明できれば、鎌倉におけるハルサシの観察レベルは飛躍的に向上することになるだろうと思うのだが。
Old soldiers never die, but fade away
4月12日(火) 晴
9:30−11:00、逗子披露山公園。弱い北風で、視界も良く絶好の条件であった。かなり集中して観察したので、ぐったり疲れたが、サシバは1羽も見られず、ノスリが1羽低空に舞い降りてきただけであった。


なお今年の春もハチクマはどこの観察ポイントでも、殆ど見られていないようだ。昔はサシバとともにかなりの数が渡ってきたが、最近その姿を見ることがめっきり減ってしまった。それが昨年の秋には、ある程度の数が見られて、ハチクマの無事を確認できたが、今年はまた以前の状態に戻るのではと心配になる。(もっとも昨年も春には、ハチクマは殆ど見られなかった。それが秋にはかなりの数が見られている。一体ハチクマはどういったルートを辿っているのだろうか?)ハチクマが減少した理由は、単純に言えばハチが減少したからだと言う人もいるが、スズメバチ等はむしろ増えているように思える。それほど日本のハチは減少したのであろうか。原因はそれだけなのだろか?ハチクマは絶滅危惧種であるが、具体的にどのような保護策がとられているのだろうか?
4月14日(木) 曇
14:00−15;30 笛田公園
予報では午前中晴となっていたが、小雨が降っており、やっと午後2時ごろになって、観察可能になった。しかし上空の一部が青空であったが、東側は曇り空であった。こんな時間帯にサシバを見るのは珍しいが、鳥の動きが活発で、期待感はあった。14:37サシバが1羽中空で東に向った。この方面はまだもやっており、もしかすると常盤山に降下したのかもしれない。オオタカが数回出現した。

4月15日(金) 晴
9:00−10:30 笛田公園
北風が3m程度、晴天で絶好の条件であったが、サシバは1羽も現われなかった。
4月16日(土) 晴
9:30−11:00 笛田公園
北の風が弱く吹いており、申し分のない条件。しかしサシバはこの日も見られなかった。昨年は8羽、今年はこれまでに7羽、このあたりが実力か?観察時間を1日90分に自主規制しているが、それでも目の具合がかなりおかしい。
4月19日(火) 晴
9:00−10:00 笛田公園
サシバはこれからも5月20日頃までは断続的に渡って行くのだろう。しかし大きな群れはもうお終いかなと思いつつ、昨年の記録を見ていると、4月22日に長谷配水地で15羽のサシバが観察されている。条件さえ合えば、まだまだ期待できそうだ。この日は早朝から9時位までは期待できそうに思えた。しかしサシバは見らなかった。サッカー場の上空にトビ、ハイタカ、カモメ(ウミネコ)という珍しいタカ柱が出来た。こうした組み合わせは初めて見たが、なかなか美しいものだ。しかしカモメが来るようではサシバはダメである。
4月20日(水) 晴
9:30-11:00 笛田公園
初めの内は、素晴らしい条件で、サシバは今にもやってきそうに思われた。しかし残念ながらそれらしい影を見つけることはできなかった。
それにしても熊本の地震は驚きであった。なんとなく、九州には火山爆発はあっても、大地震はないものと信じていたがとんでもない誤解であった。日本列島には中央構造線断層帯がはしっているということも初めて知った。ただ九州では活断層の帯は熊本から大分にかけて走っており、宮崎でも若干影響が出ているが、鹿児島には、殆ど影響が及ばないのも不思議な感じである。なお神奈川では、伊勢原付近と鎌倉をふくむ三浦半島に活断層の線が走っているそうである。
4月22日(金) 晴
9:30−11:00 笛田公園
コンディションは絶好と思われた。珍しく顔なじみのN氏にあって一緒に観察した。N氏は8時前にサシバ1羽を観察した由。今日は期待できそうだ。予想通り、10:00、10;23.10:45にサシバが各1羽グラウンド上空を通過していった。初めに見たサシバは比較的低く飛んだので、成鳥であることを確認できた。あとの2羽は高くて、確認できなかった。

4月26日(火) 晴
9;30−11:00 笛田公園
北の弱い風が吹いており、絶好の条件であった。しかし、サシバは1羽も発見できず、ガビチョウの声がけたたましく響いていた。現時点で静岡1、415羽、秦野367羽、鎌倉の正確な集計は未入手であるが、例年に比べそれ程大きな増減はないものと推測される。(その後現時点での鎌倉における総通過数は46羽で、これは過去10年間の平均をやや上回る数だとの報告をいただいた。秋には1000羽見られることもある鎌倉だが、春のサシバは希少品?Why? That is the question!)
4月28日(金) 晴
7:30−8:30 笛田公園
9時過ぎると北風が強くなるとの予想であったので、普段よりは早い時間帯での観察となったが、サシバは見られなかった。
サシバはやってくるだろうという期待感がなければ、15分待つのが限界である。5月のサシバ、昨年の実績を見ても静岡の段階で、1日10羽が最高、殆どが3羽とか4羽という数しか観察されていない。そんな低い確率なのに、何故期待感をもつのか?それは5月における港南台での観察実例と、幼鳥特有な秋の渡りでの原初的な渡りが影響しているのだろう。私は以前から神奈川のサシバは春は大半が三浦半島から、房総半島方面に向うものと考えていた。しかし、鎌倉での積年の観察や諸情報から考えて、消去法によっても、相当部分が三浦半島ではなく、東京方面に向っているのだろうと考えざるをえない状況である。ただし幼鳥は別なのではないか、原初的な渡りの裏返しで、鎌倉にやって来るものがかなりあるのではないかと思うからである。
そんな訳で、5月のサシバは、私にとって大きなテーマであるが、寄る年波には勝てず、本日をもってドクター・ストップに従うことといたします。今シーズンも多くの方々から、様々な情報をいただき深謝申し上げます。