鎌倉の海の話

 

春一番が吹き荒れた日の翌日あたりに鎌倉の海岸に行ってみると無数の海草が打ち上げられています。この海草の中にカジメやアラメ等に混じってワカメがかなり含まれています.海流の関係で,腰越,七里ヵ浜,坂の下,材木座のどこかに大量に流れ着くようですが,どこにいっても多かれ少なかれワカメを見つけることができるはずです。以前はワカメが流れ着くのを待ち構えていて、大量に採取していく人が多くすこし遅れると全部採り尽くされていることが多かったのですが、最近はそのような人も少なくなったようです。

手でさわるとヌルッとした感触がありますので,すぐにワカメだと見分けることができます.煮沸すると実にきれいな緑色になります。虫がついているので熱湯消毒が必要なのだそうです。ゆがいたワカメをそのまま酢の物にすると酒の肴として最高ですし,日に干すと市販されているワカメのようになります。3月の上旬頃までは収穫出来ますので探鳥の帰りにでも浜辺でワカメ採集を楽しんでみてはいかがでしょうか?

鎌倉で潮干狩りが出来るなどと思っていませんでしたが、年によっては、大収穫が期待できることがあります。ハマグリはまず採れませんし、アサリも材木座に行けば結構数は採れることがありますが、形が小さく、あまり食用にはなりません。鎌倉で大量に採れる貝は、バカガイと呼ばれていますが、江戸前寿司のネタになるアオヤギのことです。かなり前のことですが、5,6月の干潮時に滑川に近い材木座海岸で、十分寿司ネタになるような、大型のバカガイをバケツ一杯採取したことがありました。こんな場所でこんなに採れるなんて誰も知らないのか、知っていてもバカガイでは仕方がないと思っているのか、他にこの貝を採っている人は殆ど見かけませんでした。

干潮時に和賀江島に行って見ると、重たいゴロタ石を持ち上げて貝を採取している人がかなりいます。この貝はここではタマと呼ばれていますが、一般にはシッタカといわれ、付け出しや酒の肴として珍重されるものです。和賀江島は、干潮時には歩いてわたることができます。この島は石を積み上げて人工的に作った島で、カサゴとかアイナメとかクジメ、ギンポウなどの根魚が沢山住み着いています。でもこれらの魚を釣り上げるのは容易ではありません。市販されている餌には、まず食いついてくれません。したがってまず餌採りから始めなければなりませんが、これがかなりの重労働です。また釣り方のこつをつかむのも難しく、あまり夢中になっていると潮が満ちてきて簡単には戻れなくなります。もっとも満潮の時でも。島の頭の部分はまず水没しませんが、急に波が荒くなったりすると危険ですので、岸にもどるようにしてください。

鎌倉の海も昔は随分綺麗でした。特に材木座海岸は少し沖に出ると、海水浴のシーズンを少し外せば、水が澄んでいて、下を泳ぐ黒鯛の姿を見ることができました。伊豆半島の各海水浴場等よりむしろ、綺麗だったように思われます。最近、海に入ることはないので、なんとも言えませんが、ボート釣りなどをした時の印象では、随分と海がよごれてしまったようです。滑川は一時はかなり汚れていましたが、最近少し綺麗になってきたようです。

稲村ガ崎に接する坂ノ下の海岸は以前は護岸がなだらかなスロープになっていて、海釣りをするには最適な場所でした。黒鯛なども時々釣れましたが、残念なことに、今では殆どが、コンクリートブロックで覆われてしまい、釣りができる場所は殆ど残されていません。稲村が崎の公園の最上部から南斜面を下っていく道があり、裏側にある磯に通じていました。現在は入り口がロックされていて下りることができませんが、この磯もウミタナゴ等の釣り場としては絶好の場所でした。

クロダイ  昭和56年9月27日  坂ノ下海岸  全長36cm

鎌倉で海釣りができる安全な場所といえば、今では腰越漁港の堤防ぐらいしかに残されていません。砂浜からの投げ釣りが出来る場所はいまでも何箇所かありますが、サーファーなどが多く、あまり釣りを楽しむという感じにはなれません。それに以前は結構釣れた、キスなどは遠投ができないこともあって、私にはまず釣れません。釣れるのはフグばかりで、まれにベラが混じる程度です。

そういえば20年程前に、坂ノ下の護岸の先端で高価なサザエやトコブシを餌にして石鯛を狙っている釣り人を時々見かけました。その時は、こんなところで石鯛など釣れる訳がないのに、随分酔狂な人がいるものだと思っていましたが、最近読んだ那須良輔氏の本によると40年ほど前の鎌倉はクロダイや石鯛の宝庫だったととのことであり、旧き良き時代を体験した釣人が夢をもう一度とばかりに竿を出していたのかもしれません。

遠浅で見た目には、あまり感じられないのですが、鎌倉の海も確実に海荒れが起こっているようです。海荒れを回復させるため、漁協などが主唱して後背地に緑を植える運動が行われている地域がありますが、鎌倉の海に再び石鯛がもどって来る日はくるのでしょうか。  (2002年11月)

 

 

トップに戻る。