24年春サシバ観察記録

                                           

 
 昨年の今頃は、 東日本大震災の影響で騒然とした雰囲気があったが、それに較べると今年はかなり平穏な春のように思える。 とはいえ被災地の復興は遅遅として進んでおらず、従前のような,のどかな里山風景は復活するとしても、まだまだ相当先の話になりそうである。     
 サシバは一体どのような影響をうけるのだろうか?その影響は今後の観察により、徐々に明らかになっていくのだろうが、今年の動向が当面、非常に注目されるように思える。
 なぜかというと、昨年は、大半のサシバは、災害を予知できずに繁殖地に向かった筈であるが、今年は昨年学習したことが、渡りに反映されると思えるからである。

 サシバは行きと帰りとでは、別のルートを渡るタカであり、神奈川県において、春と秋の渡りの数のバランスが大幅に違うとしても、注目するには値しないという意見があることは承知しているし、反論材料はなにも持ち合わせていない。 しかしながら、それでは具体的に行きと帰りのルートがどこなのかを示してもらわない限り、この意見に俄かには賛同できないのである。

 バランスが崩れるときに思わぬ現象が生じ、思わぬものが見えてくるのではないだろうか?今年はそんなことに注目しながら、サシバを見てみたいと思っている。
昨年の春は12羽のサシバしか観察できなかった。今年はどんな年になるのだろうか?

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3月19日(月)  晴
10:00−11:45 笛田公園にて観察。
これまでにも何度か、リハビリを兼ねて、笛田公園に来てみたが、本格的に観察するのは今シーズン初めてであった。北の風が4〜5mとやや強かったが、サシバがやってきそうな雰囲気はあった。しかし結局収穫はなかった。モズ、ツグミなどが目についた程度であった。

3月20日(火)  晴

10:45−12:00  笛田公園。

この日は風も穏やかで、寒くもなく、絶好の観察日和と思われた。しかしサシバの姿は見られなかった。なおこの日から長谷配水地でも観察が始まった由。

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今年の冬は冬鳥が異常に少なかったといわれている。 私は30年近く、サシバを追いかけてきたが、同じく30年以上にわたって、冬鳥としての赤い鳥を追いかけてきた。しかしながら今年は赤い鳥探しには一度も行く機会がなかった。体調不良が主因ではあるが、赤い鳥が来ているという情報がまったくなかったことも大きな要因である。昔はかなり遠出もしていたが、最近では目的地は丹沢湖か宮ヶ瀬湖周辺の幾つかのポイントに絞られ、長年通ううちに、独自の情報ネットワークができあがっていた。ところが今年は赤い鳥の観察情報が、皆無に近い状況であった。こんなことは私が知る限りでは前例のないことである。赤い鳥以外の冬鳥も飛来数は極端に少ないようである。(そしてこの冬鳥が少ない現象は神奈川県だけの現象ではなく、日本全域で見られる現象だそうである。3月25日観察記録参照)

冬鳥が少ない原因については諸説があるようだが、はっきりとは解っていないようだ。一口に冬鳥といってもシベリアから渡ってくるもの、北海道などから、来るもの、高山地帯から下りてくるものなど様々であり、一律に原因を論じることはできないのだろう。冬鳥の飛来数とサシバの相関関係について、詳しく査したわけではないが、直接関係はないようにも思える。しかし、一応念頭においておくべき問題なのかもしれない。

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3月21日(水)  晴

9:45−11:45 笛田公園。この日は4m程度の北北東の風が吹いており、寒かったが、真っ白な富士山が遠望でき、視界は良好であった。9:58 ハイタカが2羽上空を旋回。そして11:05ついにサシバがやって来た。高度は低かったが、距離があり、鮮明な写真は撮れなかったが、久しぶりに見る春のサシバらしい飛び方であった。3月21日のサシバ初認は格別早いわけではないが、昨年は3月中には一羽のサシバも見ることができなかったので、満足感のある一日であった。

 

3月22日(木)   晴

9:00-10:45  笛田公園。予報では昼頃から強い南風が吹くとのことで、観察時間を早めた。9時現在ではほぼ無風で、快晴、条件は悪くなかったが、サシバもその他のタカも、一羽も現れなかった。上空でヒメアマツバメが舞っていた。目に付く鳥といえば、モズ、ツグミ、ヒヨドリ、ムクドリ程度で、年々笛田公園で見られる鳥の数が減っているように思う。周辺でミニ開発が続き、緑が確実に減少しているためなのだろう。鎌倉市のなかでも、笛田、深沢、手広地区は、緑の少ない、鎌倉らしさが見られない地区になる一方だと思われる。街路樹を増やすとか、公園を整備するとか、都市計画の見直しが迫られているように思われる。

過去の実績を見ても、西日本の各地で、まだサシバが一羽も確認されていない時点で、鎌倉にサシバがやってくることが多い。これは春のサシバの七不思議の一つだと思うが、今後観察体制が整備されるにつれ、徐々に原因が解明されていくのだろう。

3月25日(日)   晴

8:45−10:00  逗子大山林道入口にて観察。昔の逗子の仲間が大山林道にオオルリの巣箱を設置するということで、全く久しぶりに出かけてみた。この場所は視界は悪いが、過去に観察実績がかなりあり、期待して観察したが、サシバを発見することはできなかった。、 日本野鳥の会横浜支部の鈴木支部長と懇談する機会があったが、今年冬鳥が少ないのは、神奈川県だけではなく、日本全体で見られる傾向であるとのことであった。また南房総でのサシバの繁殖地がほぼ全滅の状態であるとのことであった。房総ではまだ中部に繁殖地が若干残っているとのことであるが、いずれもショッキングなニュースであった。

3月26日(月)   晴後曇

10:00−12:00 笛田公園。快晴で北東の風2m程度と絶好の条件であった。しかしサシバは1羽も現れず、ノスリが1羽通過したのみであった。この日ツバメを初認。私が笛田公園で一番早くサシバを観察したのは、過去10年間では平成18年の3月16日であり、同日には2羽が観察されている。こんな早い時期にやってきたサシバは一体どこへいくのか?私が、その第一候補として想定していたのが、温暖な南房総であったのだが。

3月27日(火)  晴

10:15−12:15   笛田公園。 この日も快晴で、弱い北風と絶好の条件であった。西日本の各地を通過するサシバもまだ数は少ないが、カウントされるようになってきた。こんな条件であれば、鎌倉を通過するサシバは必ずあるはずだと思うが、数は少ないので、笛田公園にやってくるかどうかは運次第か?結局成果はゼロであった。

なお日本野鳥の会の自然保護室と千葉県立館山野鳥の森に電話で、南房総のサシバの繁殖状況を聞いてみたが、現時点では正確に把握していないとのことであった。

 

    

この写真は今年3月19日に撮影した笛田公園のイチョウの木だが、昨年の台風に伴う塩害で、向かって左半分の葉が枯れ落ちてしまった。木自体が枯れてしまうのではと危惧する声もあったが、果たしてどうなるのだろうか?回復を祈りつつ、今後の推移を見守っていきたい。

3月28日(水)   晴  

 9:30−11:15  笛田公園。 初めは弱い北風がふいており、絶好の条件と思われたが、サシバはやってこなかった。この日はめずらしくオナガが1羽見られた。だんだんと南風が強くなってきたので、観察をきりあげた。

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ところでサシバとオオタカはどちらが絶滅危惧が深刻なのか?環境省が平成14年からレッドリストの見直しを進め、平成18年度の改定でオオタカは絶滅危惧種から、準絶滅危惧種にランクを下げているが、それまでランク外であったサシバが絶滅危惧種に加えられている。30年前に私が初めてサシバ観察を始めたころ、日本に渡ってt来るサシバの数は10万羽から12万羽程度(20万羽という説もあった?)だといわれていたように記憶している。それが現在では3万羽プラスαというのが共通認識のように思えるが、いかがなものだろうか?総数はともかくとしても大幅な減少カーブを辿ってきたことは事実であるし、なんとか歯止めをかけないととりかえしがつかないことになりかねない。

サシバは人間との共生を前提にしないと生息できない特別なタカである。仮に日本列島が無人島になったとした場合、他の大半のタカは生息数が増える筈であるが、サシバは恐らく絶滅するのではないだろうか?

18年度にサシバが絶滅危惧種に指定されたにもかかわらず、一般にそれほど深刻感がないのは、全国的なタカ渡り調査のネットワークができるなどして、タカの観察能力が高まり、毎年かなりの数のサシバが継続的に観察されているからなのかもしれない。環境省が指摘するように3万羽というのは最低必要ラインであり、それを割り込むようになれば、一気に負の連鎖が加速される可能性は排除できないだろう。

それ故に南房総の現況が気にかかるし、里山環境を再生し、サシバを呼び戻そうという西湘グループに続く動きが起こることが期待されるところである。

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3月29日(木)  晴。 

 9:00−10:30  笛田公園。この日も初めのうちは絶好の条件であったが、徐々に南風が強くなってきた。各地の状況から判断して、鎌倉にも少数のサシバが来ているだろうとは思うが、このように風向きが、180度変わるような日は鎌倉の中でも、どこを通過するのかは、予測すらできない。こんな日はサシバばかりに集中せず、その他の鳥の状況も確かめようと思ったが、信じられないほど、鳥の数が少なかった。サシバもその他のタカ(トビは含めず)も全く見ることができなかころった。

笛田公園ではサシバの他はありふれた鳥しか見られないだろうとは予測していたが、この日はありふれた鳥すら殆ど目に付かない。それでも耳を澄ませば、どこからかウグイスのさえずりが聞こえてきたが、こんなに鳥の少ない笛田公園は初めてである。

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1958年頃日本でも上映されたイタリア映画「最後の楽園」で紹介されたフレンチポリネシアンとよばれる南太平洋の島々の美しい風景と、音楽、それはとても印象的であった。特にその中の一つの曲はまるで鳥のさえずりのような美しい旋律が心に残ってはいたが、その後50年近く、まったく聞く機会がなかった。映画の題名だけはわかっていたが、曲名もわからず、いくら探してもその曲に行き着くことができなかった。

ところがごく最近、思わぬことから、そのレコードがなんと鎌倉図書館に所蔵されていることを知って、早速借りてきたのだがターンテーブルがなくで聞くことができず、雪ノ下にある音楽喫茶「カフェサンスーシ」にDVDへの変換を依頼した。ところが、運わるく、機器がトラブルを起こすなどして上手くいかず、やむなく自分でなんとかPCにとりこむまでに相当な時間がかかってしまったが、多くの人のご協力のおかげで、ともかくも50年ぶりに、思い出の曲と再会することができ感謝、感激である。雑音が多く音質は最悪だが、私としてはイメージ通りの曲であり、とても満足である。曲名は「パピエテ(タヒチの首都)の夜明け」という意味のようだ。(その後、雑音がなく、素晴しいものがyoutubeにアップされているとの、ご指摘をいただき差換えさせていただきました。にわか作業とはいえ、レベルの違いに唖然とするばかりですが、本来このように美しい曲です。)

http://www.youtube.com/watch?v=MT1ZHE-Zr6U

サシバとは直接関係がありませんが(私個人にとっては極めて、密接な関連があるような気がします。もしかすると30年間もサシバを見てきた原点の一つなのかもしれません。)もし気が向いたら是非視聴してみて下さい。

 

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4月1日(日)  晴。

 笛田公園。 9:00−11:00。 ここ数日、南風が強く、観察が出来なかった。この日も初めは1m程度の東南東の風が吹いていたが、徐々に南南西の風に変わり、3,4m程度と強くなってきた。こんな日はサシバは期待薄である。最近笛田公園でよくお会いする手広在住の人と、鳥談義をしながら、観察したが、成果はゼロであった。しかし鎌倉山の桜もいつの間にか、つぼみが膨らんで、開花しているものも数輪見られた。来週はサクラが満開、サシバもそろそろ本格化するのだろう。

なお最近自宅周辺でウズラが良く見られるとの情報がある。ウズラは、神奈川県では、近年幻の鳥に近く、俄かには信じられないが、固定概念をすてて、注視してみたい。

4月2日(月) 晴。 

 9:30−11:30 笛田公園。ごく弱い南風が吹いていたが観察に支障はないと思われた。しかしサシバの姿は全く見られず、他にも見るべきものがなかった。ウグイスが何箇所かで囀っていたが、ガビチョウの囀りに圧倒されているようだ。昨年は自宅でホトトギスの声がほとんどしなかったが、ガビチョウの進出が影響しているのだろうか?

すでに高知では2,644羽、静岡では213羽が通過している。

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灰面鷹

日本にやってくるサシバは当然台湾を通過してくるものと考えられる。現在台湾では5ヶ所の観察ポイントがあるが、その内一番南にある墾丁國家公園というところの観察結果をみると、3月7日の初認以来現在(4月3日)までに16,184羽が通過している。勿論この観察ポイントだけで、台湾を通過する総てのサシバをカバーしている訳ではないが、非常に参考につなるデータだと思われる。観察は5月初めまで続けられる予定であるが、3月中旬で12,000羽のサシバを観察していらい、サシバの飛来は低調になり、既に大半のサシバが渡りきったかのように思えた。ところが4月3日になって、4,374羽とシーズン最多のサシバが通過している。この勢いだと、まだまだやってくるのだろうか?日本でも幼鳥が5月一杯は渡ってくる。その状況を掴むためには5月まで、観察が必要なのだろう。

台湾から日本まで、航空機なら約3時間、船なら3日程度かかる筈だが、サシバは一体何日かけて日本にたどり着くのであろうか?台湾では3月16日から3日間で約7000羽が通過している。一方高知では3月29日に2000羽以上飛んでいる。乱暴な推計だが、台湾の南端から、高知まで、12,3日かけて渡っているのではと数字上は受け取れる。

台湾ではサシバは灰面鷹とよばれるそうである。一時年間5000羽のサシバが食用に捕獲されたと伝えられるが、最近では観察体制も整備され、そのようなことが起こることはなさそうに思われる。

他の通過ポイントである、フィリッピン等の観察データがタイムリーに公表されていないのは残念であるが、今後観察体制が整備されることが期待される。

余談だが私は昔、マレーシアのクアラルンプールから台北経由で成田までの便に乗ったことがある。この便はサシバの通過ルートにもっとも沿ったコースを飛ぶ筈だと思って選らんだのだが、残念ながらあまり陸地は見えなかった。しかし殆どのサシバは台湾は間違いなく通過する筈である。

勿論台湾を通過したサシバが総て日本の本土まで飛んでくるとはいえないのだろう。また総てのサシバが渡る訳ではない。現に沖縄では留鳥のサシバもいるそうである。しかしサシバの総数を抑えるには台湾でのカウントがもっとも正確なのではないだろうか?

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4月6日(金) 晴後曇

9:30−11:30  湘南平展望台で観察。このところ天候条件が悪く、4日振りの観察となった。わずかの間に鎌倉山の桜はほぼ満開となっていた。笛田公園は花見をかねたハイキンググループで賑わっていたので、今シーズン初めて湘南平まで足を伸ばして見た。

南風でもサシバは渡っているとの見方もあるが、滞留しているものも相当ある筈で、そうしたサシバが今日は一斉に飛び立つ筈なので、大いに期待して湘南平に着くと、上空こそ青空であったが、春霞に覆われ意外に視界が悪く、風向きもぐるぐるとかわる不安定な天候であった。

サシバは10:53、11:15,11:28と3羽がいずれも大磯ロングビーチ方面から海側の比較的低空を一気に通過していった。この調子であればまだまだやって来そうであったが、11:30頃、突然雨が降り出し、寒くなってきたので、観察を中止した。

4月7日(土)  晴。

8:00−1015 笛田公園。駐車場確保のため、早めのスタートとなったが、北北東の風が3m程度吹いており、はじめはかなり寒かった。しかし富士山がくっきりと見渡せ、条件的には悪くなかったのに、成果はゼロであった。

昨年静岡では、春に685羽、秋には10,640羽のサシバが観察されている。春は葵区の平山農道、秋は清水区の杉尾山展望台、平山新道と異なる場所で観察されている。私は静岡の地理に詳しくないが、この数字が何を意味するのか、非常に興味深い。

静岡県を通過するサシバの数は春と秋とでは、この数字のようにドラスティックな差があるのか?それとも、春は通過ルートが広域に分散していてカウントが難しいが、総論的には秋とバランスがとれた数のサシバが渡っていると推測しうるのか?秋は1万羽も渡る杉尾山展望台が春は全くゼロなのだろうか?

なお日本野鳥の会千葉支部に電話で千葉県(特に房総半島)におけるサシバの状況につき、聴取したが、千葉県は守備範囲が広く、南房総までは、手が回らないのが実情で、日帰り調査などが行われているが、サシバについての正確な情報は公表できる状況ではないとのことであった。

4月8日(日)  晴。

10:00−12:00 笛田公園。はじめのうちは、弱い北風で、快晴。条件的には絶好であった。昨日は長谷配水地でサシバが3羽観察されているが、超高空を飛んでいたようだ。これまで私が観察したサシバは4羽にすぎないが、それらはいずれも不鮮明であるとはいえ、写真を撮ることができた。いいかえればその程度の距離のサシバしか、観察ができていないということなのだろう。体力、視力の衰えは、悔しいが、どうすることもできない。結局この日も1羽のサシバも確認することができなかった。

最近春のサシバが高く飛ぶようになったと言われる。低く飛ぶサシバが減ったことは事実だと思う。しかし高く飛ぶサシバは昔からあったように思う。ハルサシの観察にプロミナが必需品だと考えていた時期があったことを思い出す。

4月10日(火) 晴

9:00−11:00 江ノ島外防波堤にて観察。はじめは弱い北東風で絶好の条件であった。春の江ノ島は最近殆ど実績がないが、何故かシーズンに一度は行って見たい場所である。江ノ島にオオグンカンドリが来た頃は春も秋もかなりの数のサシバがカウントされていたように記憶している。しかしこの日は、完全にゼロ回答で、その他のタカはもとより、イソヒヨドリの姿すら全く見られなかった。鎌倉山のサクラはまさに満開で車が混んでいた。

台湾北端の観察地点では4月8日現在で22,063羽のサシバが通過している。30,000羽以上観察されれば、今年日本にやってくるサシバは減少していないと安心できるのだが。フィリピンや先島、南西諸島などの島国に比べると、台湾のような地形ではサシバの渡りの全貌を比較的把握しやすいものと思われる。とはいえ100%を把握するのは無理なのだろう。22,000羽という数字はここ数年では最高であり、時期的に見ても、ほぼ渡りきったと考えて良いのだろう。高知では3009羽、静岡では296羽が通過している。台湾から鎌倉まで、サシバは最短で何日かけてとんでくるのだろうか?

4月12日(木)  

9:00−11:00  藤沢長久保公園で観察。 北風から南風に変わるパターンの日に期待できそうな場所として、兼ねてからリストアップしてあった場所であるが、実際にサシバ観察をするのは初めてである。藤沢警察に近く、引地川沿いにあって、広くはないが、なかなか良い公園であった。このような日、藤沢駅付近を南から北に飛ぶサシバは恐らくこのあたりを通過する筈だと期待して、観察したが残念ながら、サシバの姿は見られなかった。

4月13日(金)  晴

8:30−10:30 笛田公園。快晴ではなかったが、弱い北風がふいており、条件としては悪くなかった。笛田公園では3月21日にサシバを見て以来、9日間連続で、空振りに終わっている。条件が良い日もかなりあったのに、こんなことは記憶がないように思う。

サシバがやってこないのには、それなりの理由があるのだろう。あまり期待もせずに公園内の「サシバが見える丘」で、ガビチョウの奇妙な囀りを聞いていると9:59サシバが1羽、鎌倉山ロータリー方面から比較的低く現れた。まだ南風に変わったようにも思えなかったので、当然住生住宅の方向に向かうものと思ったが、予想に反し、台峰の方向に飛び去っていった。このように南西から北東に一直線に飛ぶことは、他の場所では風向が替る時点で時折見ることがあるが、笛田公園では極めて珍しいことである。

Where are you going?

4月15日(日)  晴

8:30−11:30 笛田公園。北風が弱く吹いており、絶好の条件であった。もっとも条件というのは過去のパターンであり、必ずしも今年には当てはまらないような気がする。9:22、スポーツで賑わう、サッカー場の上空にサシバが2羽低空で現れ、一度旋回した上で、源氏山方向に、一列になって飛び去っていった。その後10時過ぎに藤沢から来た女性が超高空を飛行するサシバを一羽発見したが、高すぎて私は確認ができなかった。その後も期待したが、サシバは発見できなかった。

4月6日、台湾を4527羽のまとまった群れが通過している。恐らくこれが最後の大群であろう。鎌倉まで何日かかるか不明であるし、確実にやってくるという保証はないが、期待するしかない。何日君再来!

4月16日(月) 晴時々曇

9:00−12:00  湘南平展望台で観察。 上空は晴れていたが、春霞がたなびいていて、視界は良くなかった。特にゴールデンタイムである10:00−11:00は、暗雲に覆われ、視界が著しく悪く、観察を中断せざるを得なかった。天候は11時過ぎになると回復してき気温も上昇してきた。サシバは11.24と11:42に各1羽が上空を通過したのを確認しただけであったが、ノスリやオオタカ、ハヤブサ等が絶えず出現して、賑やかであった。

4月17日(火)  曇

9:00−11:00 逗子の披露山公園で観察。笛田公園は視界が悪く、小雨が降っていたので、急遽場所を変更した。標高92.5mのこの場所はほぼ無風で、晴れてはいなかったが、視界も悪くなく、まあまあの条件だと思われた。しかしサシバは全く現われなかった。飛んでいなかったのか?それとももっと内陸側を飛んでいるのか?

4月18日(水) 

9:00−11:30 笛田公園。予報では今後一週間晴れの日がないことになっていた。予報は予報にすぎないし、まさかラストチャンスではないだろうと思ったが、この日は初めは弱い北風で、条件は悪くなかったので、大いに期待して、観察した。9:53サシバ1羽がヒタキ桜の上空をかなり高く通過したが、太陽に入いり、見失ってしまった。その後しばらくは後続が来そうな条件であったが、なにもやってこなかった。笛田公園では珍しくアオバズクの声がしていた。

これでやっと10羽をカウントしたことになる。昨年は12羽、一昨年は31羽であった。過去には一日で10羽以上観察したこともあり、馬鹿馬鹿しく少ないともいえるが、何故かとても満足感、達成感のある数字でもある。

イチョウの芽ぶき

4月19日(木) 曇後晴

8:30−10:30 笛田公園。予想に反し、好天が見込まれたが、初めは雲が多く寒かった。北東の風が2m程度吹いていて、サシバがやって来そうな雰囲気はあったが、結局成果はなかった。体調が悪く、集中できなかった。

4月20日(金)  曇

11:00−12:00 笛田公園。曇りだからサシバが飛ばないということはないと思う。問題はサシバが渡るその日のルート全体を通しての天候だと思う。もっともアマツバメが出てくるような日はまずサシバには出会えないが、そうでなければ、可能性は十分あると信じたい。この日は北の風がやや強かったが、条件は悪くないように思われた。しかしサシバの姿を発見することはできなかった。

午後15:05、深沢図書館から出てきて、ふと空を見上げるとなんとサシバが1羽モノレールの線路のすぐ上から現れ、超低空で、「いたち川」にそって直進、丁度双眼鏡をもっていたので、後を追うと、常盤山の方向に消えていった。小雨がパラつく、最悪の条件で、しかもこんな時間にサシバが移動しているとは、驚きであった。

4月21日(土)  曇

8:00−10:00 笛田公園。 曇っていて、北風が3m程度吹いており、寒かった。若干の期待感はあったが、結局見るべきタカの動きはなかった。

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日本人の祖先はどこからやってきたのか?遺伝子工学とかDNAの技術等が進歩して、簡単に解明が進むのではと考えていたが、それほど簡単なことではないようだ。

昔、日本における民俗学の権威である柳田國男の「海上の道」という本を読んだことがある。伊良湖の海岸に流れ着いた椰子の実を見て、構想を練ったといわれるこの本によると、日本人のルーツは南方から、サバニと呼ばれる小船を操りながら、島伝いに北上をつづけ、日本本土に到着し、水稲稲作を定着させたのだそうだ。

勿論日本人のルーツや稲作文化の伝来経路については、「海上の道」説以外にも、北方説といわれる、中国や朝鮮半島を経由して伝来したとする有力な説がある。恐らくどちらかが正解というのではないのだろう。即ち日本人のルーツは南方系もあれば、大陸系もあるのだと思う。

ところでサシバの渡りは、いつ始まったのか?日本人のルーツが日本本土に到達し、稲作文化を定着された時期にさかのぼると考えるべきだろう。もし柳田國男氏が伊良湖岬で、椰子の実だけでなく、サシバの渡りに着目していたら、「海上の道」論はもっと違った展開を示していたのではないだろうか?

サシバと日本人と稲作農業、それは太古の昔から密接に結びついてきたのだろう。食糧庁が発表する日本の稲作米の生産量は、着実に左下がりで推移している。しかしサシバの渡来数(推定値)の減少カーブははるかに急である。それは越冬地での環境悪化が影響しているのだろう。東日本大震災でサシバが受ける影響は定かではないが、決して軽微なものではないだろう。災害からの復旧、それはこれら地域での、米の生産量がどの程度回復するのかにかかっているのだろう。

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4月22日(日) 曇

8:00−9:30 笛田公園。この日も曇りで、北風が3,4m吹いており、寒かった。丁度夏鳥が渡ってくる時期で、鎌倉でも野鳥の楽園のような、羨ましい観察場所もあるが、その点笛田公園はいささか無味乾燥である。それでも夫婦池の方向に歩いていくと、結構鳥の多い散策コースはあるが、サシバを見ながら、他の鳥を楽しむという点では、物足りなさを感ぜざるをえない。サシバがひょっこりと現れそうな予感もしていたが、寒さに負けて、早めに切り上げた。

 

4月24日(火) 晴

9:00−11:30 湘南平展望台。北東の風が初めは4m程度とかなり強かったが、徐々に収まって、条件的には良くなってきた。八重桜の花が数本見られるだけで、一面に咲いていたさまざまな種類の桜の木はすべて、新緑になっていた。10:28と11:22サシバ各一羽が通過したほか、オオタカが何度か姿を見せた。サシバはまだやってきそうであったが、暑くなり疲れたので、切り上げた。

昨日昆虫に詳しい人と冬鳥の異変などについて話していたら、鳥だけではなく、昆虫の世界でも、異変が起こっているとのことで、例年見られるものが、見られなかったり、説明のつかない現象が起こっているとのことであった。

4月25日(水) 曇

予報に反し、雲の多い日であった。8:45−10:35 笛田公園。北東の風が緩やかにふいていた。晴れ間はなかったが、それほど悪い条件とは思えなかった。9:44、サシバ1羽が中空を一直線に西から東に飛行していった。セピア調の背景の中を行くサシバもなかなか、美しいものだ。後続に期待したが、その後は動きがなかった。

静岡では昨年の春、685羽((内132羽は5月に観察されたものである)のサシバが観察されているが、4月24日の時点では524羽が通過していた。今年の通過数は425羽で100羽程度少なくなっている。これは数の減少なのか?遅れなのか?

                                         雲の中、サシバが行く

4月28日(土)  曇

8:00−10:30 笛田公園。 予報では晴であったが、初めのうちは雲が低く垂れ込めて、視界が悪かった。10時近くになるとかなり空は明るくなってきたが、サシバは1羽も発見できなかった。

すっかり回復したイチョウの木

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最近サシバ観察はクラシック音楽のような感じがしている。春のサシバシーズンの終了、それは、「交響曲サシバ」の第一楽章が終了したにすぎないように思えるのだ。第二楽章は5月に於ける若鳥の渡り、第3楽章は8月に於ける、原初的なサシバの渡り、そして最終楽章が「本格的な秋のサシバの渡り」ということになるのだろう。ともかく本日をもって、第一楽章が終了し、幕間に入った、まあそんな感じである。

過去三年間、私が春に観察したサシバの数は30、31、12羽であった。それに対し今年の観察数は14羽であった。この数字は秋とのバランスにおいても、他の観察地点とのバランスにおいても、到底納得できるものではない。昨年よりもサシバについて、少しでも多くの事実を知ることができたという実感があれば、多少は救われるのだが、残念ながらサシバについて、今シーズン新たに知りえた知識はneary nilである。東日本大震災の影響、それは極めて重大なものであると机上では想定されるのだが、今のところ明白に認識できる現象は把握できていない。

このように納得のいかないことだらけではあるが、ことし観察できた14羽については、大半を写真に撮ることができ、現時点で、その軌跡をトレースすることができ、とても満足である。正確な記録ではないが、過去には500羽をカウントしたシーズンがあった。しかし今残っている印象は、カウントに追われて、やたらせわしなかったということだけである。その点14羽という数は、サシバの個性を認識することができ、今後も写真を見るたびに、記憶がよみがえってくるであろう。だから500羽見るより、14羽のほうが良いという訳では絶対にないのだが、14羽だから満足度が低いとは必ずしも言えないのがサシバの面白いところだと思う。

今シーズンも本当に様々な方から貴重なアドバイスをいただき、深謝いたします。特に突然の電話にも関わらず、懇切丁寧に応対していただいた、多くに方々に御礼申し上げます。

 

 

 

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