ヤイロチョウが家にやってきた。

 

「夢か現か幻か」まさにそんな表現がぴったりとする瞬間であった。

平成17年6月6日の午後5時頃、家でぼんやりとくつろいでいたら、裏山から突然ポポピー、ポポピー(シロペン、クロペンという聞きなしもあるそうである)という独特な声が聞こえてきた。私は瞬間ヤイロチョウの声だと思った。

それまでヤイロチョウを見聞きしたことはなかったが、テレビやCDでその声は何度も聞いており、アカショウビンと同様とても特徴のある間違いようのない声であった。その声は5,6分続いていたように思うが、2,3分だったのかもしれない。でも何故ヤイロチョウが、箱根でも丹沢でもなく、鎌倉に、しかも我が家にやってきたのだろうか?

ヤイロチョウは夏鳥として、東南アジアから主に九州、四国などに飛来するとても綺麗な鳥であるが、その数は非常に少なく、滅多に見られる鳥ではないはずである。17年の鎌倉は日頃あまり見られない鳥が、色々と確認されており、サプライズの多い年であった。私も初心者の友人がツルを見たというのを、それはありえないのではと決め付けてしまったが、その後多くの人がツル(アネハズル?)を見ていることを知り、固定概念でありえないと決めつけることは、まずいことだということは再認識したつもりである。でもいくらなんでもこれだけは、ありえないのでは?などと自問自答を繰り返していた。ただ裏山からストレートに声が聞こえてきたので、飼い鳥であるとか、CDであるということは絶対にないと思われた。

もしかしたらウトウトとして、夢をみていたのではないだろうか?夢の中で、その年亡くなった母がヤイロチョウに姿を変えて、私に会いにやってきたのだろうか?いまとなればお恥ずかしい話だが、そんなことすら考えていた。母は千葉に住んでいて、朝まで元気だったのだが、1月25日の朝8時ごろに突然たおれたとの連絡があった。早速かけつけようと思ったが、私自身が心臓発作を起こしてしまい、結局死に目には会えなかった。そのことがとても気になっていたので、ヤイロチョウと結びつけてしまったのだろうか?

それから20分もしないうちに、KJGのリーダーから、北鎌倉でヤイロチョウらしい声を収録して、分析中であるとのメール連絡が入り、私が聞いたのは間違いなくヤイロチョウだったと確信することができた。結局ヤイロチョウは20日近く鎌倉に滞在し、4名の人がそれぞれ別の場所で声を確認されているようだが、間違いなく1羽ないし2羽のヤイロチョウが鎌倉にやって来たことが公式記録として、日本野鳥の会にも報告されている。ヤイロチョウが神奈川県で観察されたのは、これが初めての記録だと思う。長年野鳥観察をしていると、いろいろと思いがけない出会いはあるが、これほど感激的な出会いは、おそらく空前絶後であろう。

                                        (平成18年2月)

注:本文に掲載したヤイロチョウのイラストは、「Common Birds of Malay Peninsula」より抜粋したものですが、日本で見られるヤイロチョウとは、別の亜種のようです。正確には図鑑等をご参照ください。

 

 

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