「夢つぶしの歌」 詞、石毛拓郎 曲、鈴木常吉

さあ、つぶしてごらん
ゆっくりと時をかけて
今にも腐りそうな
熟れすぎたイチゴを
そう、それのひとつひとつを
お前の指の腹にのせて

さあ、つぶしてごらん
しっかりと目をひらいて
擦りつぶす時の指に
ひろがる虚ろな命
擦りつぶされたイチゴの血と肉
息をふさいだイチゴの望み

さあ、つぶしてごらん
小さく息を吸って
お前の指にふるえて残る
イチゴの青いつぶつぶ
つぶされてもつぶれても、なお残る
血まみれの青い種


「ただ歩く人」 詞、曲 鈴木常吉

その日、俺が目を覚ますと
そこには俺がいなかった
大きな声で叫んでみたが
誰も振り向かなかった

いつもと同じ電車に乗った
いつものドアを開けた
いつものように挨拶したが
誰も振り向かなかった

突然、頬を風が撫でた
世界から音が消えた
ただ動いてくだけの車の流れ
ただ歩くだけの人

土手の上を川に沿って
海まで歩いて行った
昨日と同じ夕暮れだった
でも、そこに俺はいなかった

あの人の手に触れた
あの人の腕を掴んだ
あの人の目を覗き込んだ
でも、そこに俺はいなかった


「雨」 詞、鈴木常吉 曲、牧野琢磨

雨が降ったので
蛙になった
ずぶ濡れになったが
寒くはなかった
泥水が流れた
きっと明日で世界は終るさ
何処へ逃げても 朝日は昇る

風が吹いたので
魚になった
鰓を閉じて
海の底を泳いだ
息が詰まった
届かぬ光、波の音だけが聞こえる
溢れる涙は海の中に溶けた

喉が乾いたので
牛乳になった
車に積まれて
街まで行った
子供の声が聞こえる
屋根は飛ばされ床は崩れた
青空の下に、ただ壁だけの家がある